シリアで動けなくなったトルコ、イラクの‘スンニスタン’を狙う
Pepe Escobar
2015年12月12日
"RT"
トルコのイラク“侵入”は、冷酷で計画的な動きだ。そして、またしても、何よりも重要なのは - ほかならぬ - 分割して統治せよだ。
トルコは、イラク国家の一部であるクルディスタンに、25台のM-60A3戦車に支援された400人強の大隊を派兵した。今や、モスル北東のバシカ・キャンプに駐留するトルコ軍は、総計約600人に達したと報じられている。
簡潔な分析。これは、アンカラが歪曲して言っているような“訓練所”ではない。これは本格的な、恐らくは、恒久的軍事基地だ。
先月アルビルで、極端に腐敗しているクルド地域政府 (KRG)と、当時のトルコ外務大臣フェリドゥン・シニルリオールの間で、怪しい取り引きがまとまった。
トルコの歪曲発表の奔流は、これは、ISIS/ISIL/ダーイシュと戦うための単なるペシュメルガ“訓練”だというものだ。
全くのたわごとだ。重大な要素は、アンカラは、イラン、イラク・シーア派と、シリア・アラブ軍(SAA)、更にヒズボラが、ロシアと団結する“4+1”対「イスラム国」戦争同盟を恐れているということだ。
“背後から一突きした”Su-24撃墜後、シリアで、アンカラは事実上麻痺状態だ。トルコ大統領の家族の盗まれたシリア石油への連座をロシアが暴露した(ビラル・エルドアン、別名、エルドアン‘ミニ’は全てを否定している)。ロシア空軍は、トルコの第五列、トルクメン人を容赦なく爆撃している。S-400や、カリブル巡航ミサイルを装備した第三世代潜水艦配備は言うまでもない。
そこで、今やアンカラは、トルコが作り出した、KRG (石油をトルコに、違法に売っている)と、無秩序に広がるモスルのヌセイフ部族の指揮下にあるとされる北イラクのスンナ派の“反撃同盟”を使う、イラクへと注力先を切り換えたのだ。
これは典型的な新オスマン主義の発動だ。アンカラで権力の座にあるAKPにとって、北シリアと、北イラクは、旧オスマン帝国の県にすぎず、トルコ・ハタイ県の東側の延長であることを我々は決して忘れてはならない。‘オスマン・トルコ皇帝’エルドアンの(口には出さない)夢想は、ここをまるごと併合することだ。
一方、ダーイシュが依然モスルを支配している。しかし、イラクのスンナ派と、イラク軍は、ゆっくりと、攻勢を準備しつつある。
アンカラが、このモスルに近いこの軍事基地で狙っていることは、下記二つの“見えない”狙いと結びついている。連中がどこにいようと、彼らの第五列、トルクメン人を保護すること、そして、イラクのクルディスタンに避難しているPKKクルド人と戦う、より多くの兵力を現地におくことだ。
‘オスマン・トルコ皇帝’エルドアンの理屈は、バグダッドは、北イラクをもはや支配できていないことだ(いい点を突いている)。しかしアンカラにとって問題は、地域における本当の権力者が、シーア派とPKKになりかねないことだ(ありそうもないことだが、エルドアンはそう考えているのだ。)
‘オスマン・トルコ皇帝’エルドアンは、KRG‘暴力団最高司令官’マスード・バルザニと、極めて緊密な商取引をしている。彼等の石油輸出取り引きは、違法にバグダッドを迂回している。バルザニは、予想通り、トルコ軍の構想には何の問題も感じていない。結局“彼の”石油に、トルコが金を払ってくれるのだから。
決定的要因は、地政学のエース、ミック・ジャガーが言う通りだ。ガス、ガス、ガスだ。(訳注:ローリングストーンの歌、Jumpin' Jack Flashの歌詞)
アンカラの動きは、究極の‘パイプラインスタン’戦争に直結している。競合する二つのガス・パイプライン、カタール-サウジアラビア-ヨルダン-シリア-トルコ経由と、イラン-イラク-シリア経由の衝突がシリアの悲劇の核心なのだ。
ロシアが、Su-24撃墜後、トルコへのガス供給を止めかねないというエルドアンの被害妄想から、ガスプロムがよもやするはずもないのだが、カタール ガス・パイプラインが、シリア領ではなく、イラクを通過することを“受け入れる”ようアンカラは、バグダッドにギャング流で必死に強いているのだ。
この強引な構想が、“4+1”同盟の一員であるバグダッドにとっては絶対禁物であることは言うまでもない。しかも、イランとロシアが、あらゆる手を使って、内部対立で悪名高いクルド人の分裂につけこんで、エルドアンの入念な計画を爆撃させる可能性がある。
エルドアンの狙いは大物だ。トルコの安全保障構想のもとで、極端に腐敗したKRGと様々なスンナ派が共同管理する、ほかならぬイラクの‘スンニスタン’を狙っているのだ。ワシントンとテルアビブが、彼がそうしても放免するかのようだ。
事実は少なくとも、当面、シリアでの彼のゲームはお流れになりかねないが、エルドアンは、話をそらし、イラク分割という彼の戦略に全力を注ぐと決断したのだ。
そこで、またしても、ダーイシュが一体どのようにして、昨年、イラク第二の都市、モスルを戦闘なしに征服できたのかという疑問に到るのだ。そしてまた、シリアからイラクへ砂漠を横断した、連中の悪名高いぴかぴかの白いトヨタの車列が、宇宙の歴史始まって以来、最も先進的な衛星監視システムによる探知を避けることができたのかだ。
このミステリーに関しては、中東中や“4+1”連合での間で続いている諜報機関のうわさが火を噴く運命にある。
うわさによれば、昨年モスルで「イスラム国」と戦うはずのイラク軍が怖じ気付いて、逃亡したというペンタゴン公式説明は神話だ。
ペンタゴンに訓練されたイラク軍が大量の戦車や重火気を置き去りにし、それをISが、しっかり手にいれたといわれている。だからISが、この非常な力を持った‘贈り物’を収集できたのは実に幸運だったと。
新たな説明は、イラク軍に一種の戦術的撤退として、あらゆる並外れたハードウエアを置いて逃走するようペンタゴンが意図的に“指示した”というものだ。
つまりペンタゴンは、一見もっともらしい反証で完全に保護されているというわけだ。
かくして「イスラム国」はシリア内の代理/政権転覆軍として、しっかり兵器化された。シリアにおける‘混乱の帝国’という戦略目標に沿った完璧な混乱製造手段だ。ちなみに、混乱の帝国は、完全な政権転覆がない場合、シリアにおける‘スンニスタン’の形成も含んでいる。
うわー。しかしペンタゴンは決してそのような行為はおこなわないはずだろう?
Pepe Escobarは、独立した地政学専門家。RT、スプートニクや、TomDispatchに寄稿しており、アメリカから東アジアにまで到るウェブサイトや、ラジオやTV番組にも頻繁に寄稿、出演している。アジア・タイムズ・オンラインの元移動特派員。ブラジル生まれで、1985年から海外特派員をしており、ロンドン、パリ、ミラノ、ロサンゼルス、ワシントン、バンコクと香港で暮らした。9/11前から、特に、大国間の地政学、エネルギー戦争に集中して、中東から、中央アジア、東アジアに到る円弧の報道を専門にしている。彼の著書に "Globalistan" (2007)、"Red Zone Blues" (2007)、"Obama does Globalistan" (2009) および "Empire of Chaos" (2014)があり、いずれもNimble Booksより刊行。最新刊は "2030"で、これもNimble Booksから、2015年12月刊行予定。
本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。
記事原文のurl:https://www.rt.com/op-edge/325218-syria-turkey-iraq-war/
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忘年会?で、S紙読者、Y紙読者、A紙読者、T紙読者が、それぞれの紙面を自分の意見であるかのごとく言い合って遊んだ。某二紙の読者、ビールがもらえるやら、なにやら、もっぱら特典を喜んでいる。
今朝は全員読まずに済んでいる。
RT、今年で創立10周年らしい。宗主国政府は、理不尽にも、締め出しを検討しているというが、記事を読んでいると、締め出したくなる理由がわかる。
日刊IWJガイド 「『饗宴VI』まで1週間! 共産、社民以外の野党まで新設を認める『緊急事態条項』のヤバさを徹底解析し、来夏の参院選に備えよう!2015.12.14日号~No.1188号~
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