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2010年3月17日 (水)

元祖ならず者国家

Philip Giraldi

2010年3月11日

Antiwar.com

アメリカ合州国は、世界中のいかなる場所においても、アメリカに戦場で敵対できるような敵になど直面していないという事実にもかかわらず、2011年国防予算は、現行よりも7.1パーセント増える。新規支出の多くは、地上の広い地域を監視し、空から死をもたらすことができる、西洋文明に対するアメリカ最新の貢献、無人飛行機向けとなる予定だ。これは、地球の裏側にある机の前に座った"パイロット" がボタンを押せば、はるか下方の標的を殺害できるという、アメリカ独自の戦争構想だ。衛生的で、機械的で、事後の面倒な後片付けも不要で、いささかテレビゲームに似ている。最近発表されたアメリカ合州国の4年毎の国防政策見直しは、長時間にわたり滞空可能で、世界のどこでも、いつでも攻撃可能で、アメリカの敵を殺害できる新世代のスーパー無人飛行機を、ペンタゴンがどのようにして開発する予定かを報じている。スーパー無人飛行機の中には、超音速で飛行できるものや、核兵器を搭載するのに十分な大きさのものが含まれている。新型無人飛行機のあるものは、海軍用に設計される予定で、これは航空母艦から離陸でき、アメリカの威力を、更に遠方の紛争地域にも及ぼせる。こうした飛行物体は、無人で、地上近い低空で飛行可能なので、必ずしも外交上の事件を生じることなしに、"うっかり" 他国領空を侵犯することが可能な為、無人飛行機は特に政策立案者たちにより高く評価されている。

ワシントンが、国際的暗殺用に好んで使う兵器武器として、無人飛行機を採用していることが、アメリカ合州国が、悪の帝国となってしまった主要な理由の一つだ。無人飛行機は、かつてブッシュ・ドクトリンと呼ばれたものを延長した拳骨に他ならない。ブッシュ・ドクトリンの下、ワシントンは、もしホワイト・ハウスが、そのような行為が、アメリカ合州国の防衛と見なされると決定すれば、いつでも、世界の誰に対しても、その軍事力を、先制的に行使する権利を有すると主張していた。ディック・チェイニー副大統領は、政策をパーセント表記で定義し、世界のどこにおける、いかなる出来事であっても、もしもアメリカを危機にさらす可能性が1%あれば、アメリカ合州国政府は行動する義務があると主張した。バラク・オバマ大統領は、ブッシュ・ドクトリンも、ディック・チェイニーの1%対策も否定してはおらず、実際アメリカは、キリスト教が承認した"正しい戦争"を戦っているのだとまで主張するに至っていることに留意が必要だ。この"正しい戦争"には、数ある中でも教皇ベネディクト16世が異議を唱えている。戦争と殺害を慎むなどとはほど遠く、無人飛行機攻撃の回数と激しさは、オバマの下で増加し、"巻き添え被害"という、素晴らしい、情のない婉曲表現で呼ばれるもので、民間人死傷者数も増えた。

無人飛行機は、現在、アフガニスタン、パキスタン、イエメンと、ソマリアの人々を殺害している。アメリカ合州国は、こうした国々のどことも、戦争をしているわけではないことに留意が必要であり、正気の世界では、国際法、アメリカ憲法いずれの下でも、殺害は違法なのだ。アメリカが武力に訴えることを困難にすべく、アメリカの建国の始祖たちは、議会による戦争行為宣言を必要とするという、憲法上の制限を作った。不幸にして、ことはそのようには運ばなかった。アメリカは、第二次世界大戦以来、ほとんど絶え間なく戦争を続けているが、最近、議会が戦争を宣言したのは、1941年12月8日のことだ。そこで、世界に広がる、特殊な秘密作戦というわけだ。イスラエルは別として、あちこち動き回って人々を殺害するという政策を、あからさまに宣言している国は世界中に存在しない。結果的に、国際社会は、テルアビブもワシントンも社会ののけものだと見なすだろうと、誰もが考えるが、世界唯一の超大国と、その一番の属国を怒らせる恐怖から、批判はほとんど抑えられたままだ。大半の国家は、暗殺チームと、ヘルファイア・ミサイルを装備した無人飛行機が好きなように活動するのに、甘んじている。もしも、イランが無人飛行機を操作して、ドバイのような場所で、敵を殺害していたなら、反応は全く違っていただろうことは確実だ。

しかも話はそこでは終わらない。オバマの司法長官エリック・ホルダーは、アメリカの政府職員(その多くはCIA)による拷問の利用に関わる、あらゆる調査を、事実上阻止した。政権は、そうした行為は止めたと主張してはいるが、捕虜を水攻めにしろという命令に服従したことに対しては、誰も処罰されないと言明しており、これは1946年のニュルンベルク裁判では受け入れられなかったし、現在もなお受け入れられるべきでない主張だ。アメリカ合州国は、拷問に関する国際的合意の調印国であり、連邦と州の両方に、拷問行為を実行することも、拷問を、黙認ないし放置することも禁ずる法律が存在しており、従って、ホルダーの裁定は、本質的に、多くの場合、無力かつ全く無辜の個々人に対して犯された重罪を、不問に付するという決定なのだ。裁定は、拷問に、司法省の弁護士とCIAの医師が関与していた事実、大半が道義に反し、倫理にもとると見なされる関与も、不問に付している。最悪なのは、ジョージ・テネットや、そうした行為を承認したホワイト・ハウスの連中のような、本当の戦犯たちを見逃してしまっていることだ。テネットが大統領自由勲章を受賞し、400万ドルの出版契約をしたことを覚えておられよう。彼はいまでもジョージタウン大学で教えている。拷問是認の法的主張をした元司法長官補佐、ジョン・ヨーとジェイ・バイビーは、現在それぞれ、カリフォルニア大学バークレー校の終身地位保証を得た法律学教授と、連邦控訴院判事を務めている。CIAの拷問者の本人連中が連邦政府に雇われ続けていたり、快適な隠居生活を楽しんでいるであろうことは、想像にかたくない。オバマ大統領下での戦争犯罪の説明責任については、これくらいにしておこう。

最後に暗殺の問題がある。2月3日、国家情報長官デニス・ブレアは、議会での説明に際し、アメリカ合州国は、テロリストと見なされている集団に積極的に"関与している" 在外アメリカ国民を、殺害する権利を留保する、と発言した。関与というのは、もちろん、きわめてつかみどころのない表現で、即決の処刑に賛成を唱えている連中に、最大の自由裁量を与えるものだ。暗殺対象者リスト作成は、誰をリストに載せるかは、ガイドラインに基づいて、政府職員が決めるのだから、ある種の適正手続きによっているごとくなのだが、被疑者には、異議申し立てや、証拠に異議を唱えることが認められていない。議会の誰一人として、ブレア発言に反対せず、しかもマスコミも、この話をほとんど報じておらず、違法で不道徳な行為の認容が、今や体制中に浸透していることを示唆する点も、留意が必要だ。レーガンの元司法副長官、ブルース・フェインが言っている通り、ある人物の憲法上の権利を、海外で一時停止する権限とされるものは、その人物が軍事委員会法条項の下で、敵性戦闘員である、と宣言することで、アメリカ合州国在住の誰にでも拡張することが可能なのだ。ホセ・パディーヤは、アメリカ国民であり、海外でなく、シカゴで逮捕されたにもかかわらず、公正な裁判を受ける憲法上の権利を拒否された。対テロ戦争の一環として、アメリカに暮らすアメリカ国民の裁判なしの殺人を、我々は予期することができるだろうか? もちろん、ウィー・キャン。

オバマ大統領、三振したらアウトですよ。あなたの政府は、アメリカと戦争中ではない国々に暮らす人々を先制殺害し、ミサイル攻撃することに賛成し、拷問者や、拷問を黙認ないし放置した連中を野放しにし、しかも、世界のどこででも、秘密の証拠に基づいて、自国民を暗殺する権利を強く主張している。ロナルド・レーガンは、かつて、彼のアメリカ像を、「丘の上の輝ける都市」と表現した。過去十年間の間に、この輝ける都市は、はっきりと見える衰亡の兆しがあり、否応なしに壊滅的崩壊に向かって進みつつあるにもかかわらず、権力と傲慢さに夢中な、究極のならずもの国家となってしまったのだ。

Philip Giraldiは元CIA職員で、The American Conservativeの寄稿編集者であり、American Conservative Defense Allianceの特別研究員である。

記事原文のurl:original.antiwar.com/giraldi/2010/03/10/the-rogue-nation/

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無人飛行機攻撃については、何編か翻訳してある。例えば下記。

ラスベガスでタリバン狩り 無人機による空爆

名護市辺野古で、女性海軍兵士の酔っぱらい運転で?軍用車ハンビーが民間人に追突した。海軍兵士は、日本の警察ではなく、米憲兵隊に逮捕された。

アメリカ軍基地、基地がおかれている国の、傀儡為政者のためにはなっても、一般民間人のためには、なっていない一例だ。そして、憲法9条を破壊するよりも、まず、安保条約を見直すことが必要であることの一例だろう。

主力野党のつまらない分裂騒ぎやら、宗教政党との連立見込みの報道など聞きたくはない。話題になっている人物、政党、誰一人として、こうした安保・基地問題には、触れない。歌舞伎の七変化と同じで、衣装や、役は変っても、演じているのは同じ役者。

古びた芝居の世界を、自分たちで、勝手に盛り上げているだけのこと。敵に塩を送るだけだろう。つまりは、敵ではなく、二大政党制度なるものをもりたてようとしている、同じ派閥仲間なのだ。

意味ない村芝居に、つきあう暇はない。威勢よく、9条破壊だけは言う。ならず者国家の走狗として。そう、消費税の増税も。しかし、裕福な人々への増税は決して触れない。こうした人々、もしも、問題点がわかっていないのであれば、IQに問題があるだろう。もしも、問題点がわかっていて、全く触れないのであれば、人格に問題があるだろ。いずれにしても、まともな人々とは思えない。

ブログ晴耕雨読に、「続:アメリカはいかにして日本を滅ぼしたかという、ある本を引用した記事がある。 一読すれば、こうした皆様、なぜ、本質的な論議をしないのか、理由が少しは分かるかも。不思議なことに、引用されている本、絶版らしい。書かれていることが、デマであれば、書かれた皆様、名誉毀損で訴えているはずだ。

2010/3/18追記:

検索エンジンで、ならずもの国家を調べ、下記の本があるのに、恥ずかしながら、今頃気がついた。

『ならずもの国家アメリカ』クライド・プレストウィッツ
日本語訳は、2003年に刊行されている。
宗主国のオンライン書店でも原書の評価は、平均星4つ。心の広い方々は多いようだ。これから、日本語版を探して、読んでみよう。

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コメント

アメリカは、ダビデ対するゴリアテ、アーサー王の妖姫モルガン、退治されるべき悪龍、ダースベイダーの役割を自らに割り振ったのみならず、拷問用に感覚遮断タンクを創ったそうですよ?人類が呼吸可能な『含酸素過フッ素化炭化水素液』を満たした、溺死体験で失神と『死後の世界(仮想)』を行ったり来たり出来る麻酔&筋弛緩剤+幻覚剤込みの!
まあ、中々どうして、辺境のチンケと見做された『テロリスト』は使って貰えない高価な道具でしょうが。
建国の理想に燃えたフリーメイソンからホンの200年でコレです。
凄い勢いで『倒されるべき悪の帝国』に成り果てました!
よく言われる様に、米国を内側から喰らう軍産エネルギー複合体はW.W.Ⅱの当の1941年12月08日から始まったんですけどね!

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