イラク戦争五周年に、ブッシュ米軍駐留の継続を主張
Bill Van Auken
Global Research、2008年3月 20日
ジョージ・W・ブッシュ大統領は、水曜日、アメリカのイラク戦争五周年に、更に30,000人のアメリカ兵を被占領国に派兵する「増派」の成功とされるものを大げさに売り込み、「混沌と大虐殺」を避けるべく、増強した兵員レベルを維持せねばならないと主張した。
多くのこうした演説と同様、ホワイト・ハウスは、大統領がステージにあがる際には気をつけの起立をさせ、合図にあわせて拍手させることができる軍幹部と兵士という聴衆を動員した。軍紀に縛られていない普通のアメリカ人という聴衆の前で、ブッシュがあえて演説していれば、やじと口笛の嵐に見舞われたろう。
五周年とたまたま重なるCNNケーブル・ニューズ・ネットワーク発表の世論調査では、2対1の差で、戦争に反対するアメリカ人が多く、同じような比率で多数が、そもそも戦争は行われるべきではなく、次期大統領は、大統領の座についてから、数カ月以内に、イラクからアメリカ軍を撤退させるべきだと意見を述べた。
世論調査対象者の71パーセントにものぼる人々が、一カ月に120億ドルの費用と見積もられているイラクでの膨大な戦費が、アメリカ経済をとらえている経済危機を深めていると非難した。
アメリカ大統領として、ほとんど歴史的低支持率のままでいる、ブッシュは、威張った風情でペンタゴのでステージに上がると、「アメリカ合州国は、抵抗する敵とは戦い続け」、「攻勢を続ける」と宣言した。
彼の演説の中心となる政治的要点は、彼が一年前に命じたイラクでの兵力強化で、兵員数を160,000人に増やしたものは、継続せねばならず、少なくとも140,000人の兵士と海兵隊員をイラクに無期限に釘付けにするのだ。
これは、それに対し、軍自体内部で幹部からのかなりの反対に直面しており、多数の高官が現在の派兵レベルを継続すれば、アメリカ軍が「破滅する」と警告している立場だ。最近のおよそ3,400人の現役、退役アメリカ軍当局者に対する海外政策雑誌による世論調査で、88パーセントが「イラクでの戦争によって、アメリカ軍が危険なほどに薄く広がりすぎている。」と考えていた。
しかしブッシュは、五周年の演説を軍部という聴衆の不安を和らげるために使いはしなかった。そうではなく、彼は軍服姿の兵士を、戦争に反対する人々、あるいは単に増派の継続を疑問視する人々への政治的攻撃の小道具として利用したのだ。
演説の大半は、戦争開始時に、戦争正当化に使われた、くたびれ果て、徹底的に疑われている嘘のリサイクルだった。ブッシュはまず、バグダッドの「衝撃と畏怖」爆撃と、それに続く国土の侵略が、「イラク国民を解放し、自由な諸国を脅かした政権を排除するため」2003年3月に開始されたと言って、演説を始めた。
この「脅威」だとされるもの本質について彼は一切詳細を示さなかった。当時言われていた、イラクの「大量破壊兵器」備蓄だとされるものや、サダム・フセイン政権とアルカイダとの間のつながりは、ひどく露骨なでっちあげであったことが暴露されている。
ブッシュ演説の数日前、ペンタゴンは、侵略後に捕獲したおよそ600,000ものイラク政府文書の包括的調査に基づく所見をそっと公開した。バグダッドとイスラム教テロリスト・ネットワークの間にはいかなる作戦上の連携も存在しなかったと結論づけているが、イラクのバース党政権について知っている人々には以前から既知の事実だ。
それにもめげず、ブッシュは25分間の演説で、少なくとも20回「テロリスト」という言葉を用い、15回アルカイダに言及した。
アメリカの侵略が「イラク国民解放」に役立っており、更に馬鹿げたことに、侵略は「中東の中心にデモクラシー」を造り出すのに役立ち、「他国に対するお手本になるだろう」などと主張する大統領の詭弁は、この詭弁が隠そうとしている悲劇がこれほど深刻でさえなければ、ただのお笑いぐさだったろう。
外国による占領下のイラクでは、百万人を大きく上回る国民の命が奪われ、少なくとも更に四百万人以上が家から追い出され、海外への難民、あるいは国内難民となった。イラクの経済と基本的インフラは破壊されてしまった。そうした環境の中、半数以上の労働年齢の人口が失業しており、40パーセントが一日1ドルあるいは、それ以下でかろうじて生き延びている中、侵略以前にあった生活保護や貧困者援助も廃止されてしまった。
ワシントンの「分割して統治せよ」戦術によって、長い間混住していた共同体が、敵対的な棲み分けされた陣営に分裂するような、野蛮な宗派間対立が解き放たれ、何百万人もが威嚇され、家を失った。町を歩く男性も、女性も子供たちも、アメリカ兵士あるいは民間警備会社企業によって、警告無しに即決の処刑の対処にされかねない。少なくとも60,000人のイラク民間人が、アメリカ軍やイラク傀儡軍が運営する留置所や刑務所にとらわれておいるが、彼らの大多数は告訴もされておらず、まして裁判など皆無だ。拷問ははびこったままだ。
こうした状態を「自由」や、「解放」や「デモクラシー」という言葉で呼ぶとは実にいまわしいことだ。
信じられないことだが、ブッシュは、バグダッドは、アルカイダのアメリカ攻撃用に、存在もしない大量破壊兵器を提供するだろうという、イラク侵略の為の昔からの主張をひっくり返し、イラクの継続的占領を正当化するのに利用した。現在の兵士増派を維持しないと、イラクは「混沌」状態に陥り、「イラクの石油資源を手に入れられれば、アルカイダはつけあがり、連中はアメリカや他の自由諸国を攻撃するための大量破壊兵器を獲得するという野望を追求することになる」と警告した。
この新たな嘘は、その隅々まで、そもそも戦争の正当化に用いられたものと同じくらいグロテスクだ。イラクでアメリカ軍に抵抗している人々のほとんど大半はアルカイダではなく、外国による占領や自国の再植民地化を認めることを拒んでいるイラク人だ。アメリカ軍によって検挙されている何万人もの人々の中で、他国からのイスラム過激派などほんのひとにぎりにすぎない。アメリカが、軍事的「体制転覆」を遂行する前には存在しなかったイラク国内のアルカイダ組織でさえも、オサマ・ビン・ラディンが率いる組織や、2001年9月11日の攻撃の犯人と目されている連中とは、何の作戦上のつながりもない。
民主党の大統領候補バラク・オバマ上院議員は、アメリカ軍のフォート・ブチッグがある、ノース・キャロライナ、フェーエットビルを発言の場として選び、戦争五周年の演説を行った。いわゆる「対テロ」戦争に対するコミットメントを彼は強調し、「我々に必要なものは、我々の真の敵と戦う実際的な戦略」に集中することだと宣言し、パキスタン内部のテロリスト標的とされるものを、パキスタンの承認があろうとあるまいと、アメリカは攻撃すべきだ、という彼の立場を再び主張した。
民主党指名を争うライバル、ヒラリー・クリントン上院議員が、アメリカ軍のイラクからの撤退という約束について、彼が言葉を濁していると非難したことへの答えとして、彼はこの演説を活用した。オバマは再び2002年のクリントンの上院におけるアメリカの戦争を認める賛成票を指摘したが、将来の軍撤退に対する二人の姿勢は事実上同じであることを認めた。
今週初めの発言で、クリントンは、イラクにおけるアメリカ軍の駐留を「責任ある、慎重なやり方で」縮小すると主張した。イラク人に対するアメリカの戦争の影響を彼女は讃え、「自由という貴重な贈り物を彼等に与えた」と宣言したが、ワシントンは「イラクの内戦に勝つこと」はできないと冷笑的に断じた。
クリントンもオバマも、アメリカ軍の「対テロ」の目的によるイラク作戦継続を継続し、アメリカの施設や利益を守り、イラク軍訓練をするという綱領を提出しているが、これはつまり、何万人ものアメリカ兵士がイラクに無期限に駐留するということだ。
共和党の大統領候補となった、ジョン・ マケイン上院議員は、ブッシュの増派賛美をオウム返しに繰り返し、「アメリカとその全同盟国は、イスラム教過激派に対する重大な勝利をかち取るべく、背水の陣にたっている」と宣言している。
ブッシュは水曜日の演説を、イラク戦争は「高貴で、必要で、正しい」という主張で終えた。
世界中で、そしてアメリカ自体の国内で、何百万人もの人々が、事実は正反対であることを知っている。これは、世界の中でも、主要な原油産地の中心地の一つに、アメリカの覇権を確立しようというアメリカの金融エリートの狙いを追い求めて行われた犯罪的な侵略戦争なのだ。戦争は、膨大な数のイラク国民の苦悩を生み出した、薄汚い植民地型の占領をもたらした。同時に、この戦争は、アメリカの戦略的利害を崩壊させ、アメリカ政府は取り返しのつかないほど多くの人々の信頼を失ったのだ。
Bill Van AukenによるGlobal Research記事
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