■ グループ3戦目U-19のアジア選手権のグループリーグ3戦目。初戦でUAEに2対1で勝利、2戦目でベトナムに4対0で勝利したU-19日本代表は2連勝でグループ首位通過を決めている。U-2O世界大会の出場権獲得が決まる準々決勝ではオーストラリアか韓国と対戦することになっている。
日本は中1日の試合が続いていることもあって、これまでのスタメン組を温存して。2トップを除く9人が初スタメン。GK中村。DF田中、内田、寺岡、古林。MF風間、加藤、古田、小林。FW永井、杉本。2トップはC大阪のコンビ。MF宇佐美はベンチスタート。DF田中、DF寺岡は大学生。ポルトガルでプレーするMF風間は解説者の風間八宏氏の長男で清水商出身。
■ 3対0で勝利試合はフレッシュな日本が優勢で進む。接触プレーで簡単に倒れるイエメンのプレーに対して「日本のファール」の判定が下されることが多く序盤は戸惑ったが、MF加藤とMF風間がいい形でボールに絡んで攻撃のリズムを作る。しかし、前半の日本はチャンスに決めきれず無得点。0対0で折り返す。
勝たなければグループ敗退が決まるイエメンに対して、日本は後半5分に待望の先制ゴールを挙げる。バイタルエリアでうまくボールをコントロールしたFW永井が右足でミドルシュート。うまくコントロールされたシュートが決まって先制する。さらに後半32分に右サイドMF小林の精度の高いロングパスから途中出場のFW指宿が見事なトラップからGKと1対1となってシュート。これが決まって2対0。FW指宿は今大会2ゴール目。
意気消沈したイエメンに対して、日本は後半39分にもFW永井が強烈なミドルシュートを決めて3点目。FW永井は2ゴールの活躍。結局、3対0で日本が快勝。グループリーグ3連勝で大一番を迎えることになった。
■ フレッシュなボランチコンビ大一番に向けてスタメンを大幅に変更してきた日本だったが、出来としては3試合の中で一番良かった。すでに2連勝で首位通過が決まっていて心理的なプレッシャーが軽減されていたこと、相手の守備がそれほど強くなかったという理由もあるが、これまでの2試合で再三見られた中盤でのミスが少なくて、前に運ぶ意識が高かった。
これまでの試合ではセーフティ・ファーストの意識が高すぎて、ボランチが前を向いてボールが持てそうな状態でもリスクを冒さず安全にプレーしていた。そのため、横パスが多くなって、攻撃のスピードが上がらず攻撃の時間がかかり過ぎて、相手に引かれた状態のところに攻め込んでいかざるえなかった。よって上手く攻撃は流れずに「個人技頼みのサッカー」になってしまっていたが、この日は一味違った。
これまでとは違うスタジアムであったが芝の状態はそれほど良くは見えなかったが、この日の日本イレブンはボールコントロールに戸惑うシーンは少なかった。MF風間とMF加藤のボランチコンビは後半になってややスタミナが切れたのか目立たなくなったが、前半の二人の出来であれば、準々決勝の大一番にそっくりそのままボランチで起用したくなるような出来だった。
■ 二人のサイドハーフサイドハーフで起用されたのがコンサドーレ札幌のMF古田と、東京ヴェルディユースのMF小林。J2の札幌でレギュラーポジションをつかんでいるMF古田はさすがに落ち着いたプレーで見せた。もう少しドリブルで仕掛けたり、積極的にシュートを放ってもいいような気もするが、簡単にボールを失わずに左サイドでうまい具合に起点になった。
MF古田と左サイドバックのDF古林のコンビネーションは非常に良くて、これまでの2試合でうまく機能していなかった左サイドの攻撃が機能し始めたことも収穫だったといえる。湘南のDF古林が左サイドを駆け上がってクロスを上げるシーンは多く、この試合では右サイドよりも左サイドからの攻撃が目立った。
一方のMF小林は前半は波の乗り切れずにイマ一つだったが、後半になって両チームの選手が疲れてきて、中盤が間延びし始めた時間帯からパフォーマンスを上げていった。2点目につながったFW指宿へのアシストのシーンは高精度のMF小林のパスが見事で、パーフェクトなカウンターを成立させた。
初戦と2戦目は草津のMF菊池と新潟のMF酒井がサイドハーフで起用されたが、このポジションもMF古田とMF小林のパフォーマンスの方が総じて高かったといえる。布監督自身が「23人のメンバーに大きさ差はない。」と語っているが、次の試合ではどういうスタメンで来るか?あくまでの初戦と2戦目のメンバーで来るのか?パフォーマンスの良かった選手を使ってくるのか?一番のポイントになりそうだ。
■ 永井龍が2ゴールベトナム戦でハットトリックのFW宇佐美は温存されたが、その代わりにチームの主役となったのがC大阪のFW永井龍。チャンスがありながらも前半は無得点に終わったが、後半開始早々に右足のミドルシュートで先制ゴールをマーク。後半39分にもダメ押しのゴールをマーク。6度ほどあった決定機のうちの2度を仕留めて、チームのチャンスのほとんどに絡んだ。
初戦のUAE戦は前半のみの出場。2戦目のベトナム戦ではベンチスタート。これまでの世代別代表での活躍を考えると、少し不本意な大会になりかけていたが、2ゴールで強烈にアピールした。2点ともに右足の見事なミドルシュートだったが、精度が高くて右足のパンチのあるシュートは非常に魅力がある。
この世代は、FW宇佐美を筆頭に、京都のFW宮吉、横浜FMのFW小野らアタッカーにタレントが多いが、FW永井は典型的なストライカータイプであるが、特に優れていると感じるのは、相手に体を当たられても少々でビクともしない体の強さ。バイタルエリアでボールをもったときに、強引にドリブルで進んでシュートまで持ち込むことが出来る。まだJ1でも出場は1試合のみであるが、今後も、「力強さ」を失わずに成長していってほしいところである。
■ 大一番次は準々決勝。初アジア制覇というのが最終目標であるが、とにかく世界大会の出場権を獲得することが何よりも大切であり、大事な試合となる。もし次の試合で敗れてしまうと、このチームの活動はこれで終了してしまう。日本サッカーにとっても大きな損失となるが、特にこの世代の選手にとっても大きな目標がなくなるわけで、個人としても大きな痛手となる。
ここまでの3試合を見ると、チーム作りに対して全幅の信頼がおけないのは事実であり、このまま世界大会に出場してもあまり大きな成果を期待できない展開になることが多いが、切符を勝ち取らなければ先は見えてこない。A代表のアルゼンチン戦も大事な試合であるが、次の試合は、ワールドカップ後の日本サッカーにとって、一番大事な試合といえる。
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