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【ドキュメンタリー】「8人のサッカー部」という番組が非常に面白かった。(長崎県立宇久高校) | | |　

■　「8人のサッカー部」というドキュメンタリー番組

2020年9月26日(土)の深夜に放送された「8人のサッカー部」というドキュメンタリー番組が非常に面白かった。テレビ長崎の制作で「第29回FNSドキュメンタリー大賞」にもノミネートされているという。関東圏では2020年9月30日(水)の「26時50分～27時45分」にフジテレビで放送される予定になっているがフジテレビのホームページを見ると以下のように紹介されている。

「舞台は長崎県の離島・宇久島。島唯一の高校・宇久高校のサッカー部は、部員がたったの8人しかいない。人数不足という大きなハンデを抱え、試合でどれだけ点を取られても、諦めずに最後まで走り続ける8人。彼らは何のためにサッカーをしているのか。その先に何を見ているのか。人口減少や高齢化など過疎の島に生きる若者の生き様を通して、友情、絆、親子の愛などを描く。」

五島列島の最北部にある宇久島は佐世保市に属するが「佐世保港まで高速船を利用しても1時間半ほど」を必要とする。宇久高のサッカー部の2019年度の部員は8名のみ。試合開始の時点ですでに「相手よりも3人少ない。」という大きなハンディを背負っている。よく知られているとおり、「サッカーの試合は7人以上いれば成立する。」というルールになっているが宇久高は最初から8人のみで戦っている。

「8人しか部員がいないのであれば5人のバスケットボールや6人のバレーボールに転向した方がいいのでは？」と最初は思ったが8人のサッカーに賭ける思いは相当に強い。2019年度のサッカー部員は3年生が2人で、2年生は6人。春になって宇久高に1年生が4人だけ入学してきたが男子は1人のみ。「その1人は熱烈にサッカー部員から勧誘を受けたが陸上が好きなので陸上部に入部する。」という展開もなかなか面白い。

■　最後の大会で奪った1つのゴール

部員数は増えずに変わらず8人で参加することになった長崎県高校総合体育大会。3年生にとっては高校生活の最後の大会になる。口之津海上技術学校との試合は10失点を喫して敗れたが後半に見事なロングシュートが決まって1ゴールを奪った。前半に宇久高の選手の1人が怪我をしてほとんど動けなくなった(※ 後日、骨折と判明。)「7人対11人」に近い状態だったが宇久高にとっては大きな意味を持つゴールになった。

「怪我をしても代わりがいない。」というのは大変である。周りの選手からは「7人でやろう。」という声も出たら最終的にはプレー続行となった。「怪我(骨折)をしている選手にストップをかけなかった。」、「顧問の先生やキャプテンが止めるべきだった。」と批判をする人もいるとは思うが怪我(骨折)をした選手は2年生。号泣しながら「プレーをしたい。」と訴えたら強制的に止めるのは難しくなる。

「最初から8人しかいないという中でどう戦うべきなのか？」についてはいろいろな考え方があると思うが『3人少ないにもかかわらず、相手を10得点のみに抑えて、かつ、1ゴールを奪った。』となると『勝利に匹敵するほどの価値のある敗戦なのでは？』と思ってしまう。1ゴールを奪った瞬間はサッカー部員の父兄はもちろんのこと、周りで宇久高の試合を観ていたと思われる他校のサッカー部員も大騒ぎだった。

6月初旬の長崎県高校総合体育大会が終了して3年生が部活を引退するとサッカー部員は2年生の6人のみとなる。「少なくとも7人以上は必要」というのがサッカーのルールなので6人のままだと大会に参加することすらできない。同じように部員不足で苦しんでいる長崎県内の他の高校と合同チームを結成することも選択肢の1つになったが「合同チームを結成すること」に賛成する部員と反対する部員に分かれた。

■　サッカー部員は8人から7人に・・・。

最終的には話は進展せずに今いるメンバーのみで戦うことになったが陸上部に入部した2019年度の唯一の1年生男子の勧誘に成功したことで何とか7人を確保できた。ただ、3年生が引退するまでは8人で試合を行っていたので7人になってさらに人数は少なくなった。「7人と8人の差も相当に大きい。」と言えるが秋の新人戦は0対6というスコア。負けてしまったが多くの選手は手ごたえを感じることが出来た。

高校サッカーでも、Jリーグでも、日本代表の試合でも、試合中に退場者が出て「10人対11人」になったら相当に追い込まれた精神状態になるが「(最初から)4人少ない中で諦めることなく奮闘する姿」には胸が熱くなる。「人数が足りなくても大会にエントリーすることが出来るし、試合をすることも出来る。」というのはサッカーの面白いところである。野球の場合は9人以上いないとエントリーすらできないはずである。

3月になると3年生が島を離れて次の道に進んでいくことになる。2020年度に入学してくる1年生男子を多く勧誘できないと新・高校3年生が引退する時点でサッカー部の活動は難しくなる。少子化の時代なので野球と並んで人気のあるサッカーであっても「部員数の確保」に苦しんでいる中学や高校は増えていると思うが新型コロナの問題も絡んで長崎県高校総合体育大会は中止。新・高校3年生は最後の大会が消滅した。

新型コロナの影響で宇久島への渡航も大きく制限されたので番組を制作するスタッフもほとんど取材活動が出来ない事態に陥ってしまった。最後の最後まで大会が実施されることを信じて頑張った部員の姿にも胸が熱くなる。番組のディレクターの松永悠作さんは「8人と8人を取り巻く人たちを通して番組を見た人にも、いつの間にか忘れていたものを感じ取っていただければと思っています。」とコメントしている。