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ジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト) 2019年:
フランスの民主主義は死んだのか、それとも生きているのか?

Gilets Jaunes in 2019: French Democracy Dead or Alive?

ダイアナ・ジョンストン

グルーバル・リサーチ 2019年1月12日

(翻訳:新見明 2019年1月18日)

<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/gilets-jaunes-2019-french-democracy-dead-alive/5665302



もしくは、埋もれたのか、それとも生き返ったのか?というべきか。なぜならパリの政治、金融、メディアの権力中枢とは無縁の多くの庶民にとって、民主主義は既に死にかけていて、彼らの運動はそれを救うための試みだからだ。かつてマーガレット・サッチャーが「他に代わるものがない」と宣告して以来、欧米経済政策は、金融市場の利益になるようにテクノクラートによって作られている。そしてその利益は庶民にトリクル・ダウンするだろうと主張する。おこぼれは大部分干上がっていて、人々は必要や願いが満たされるかどうかなどと考えるのにうんざりしている。そして願いは「わけありの」エリートによって全く無視されてきた。

エマニュエル・マクロンの新年の国民向け演説は、次のことを完璧に明らかにした。マクロンは、ジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト)抗議運動にわずかなパン粉を投げつけ、説得力がない中傷をした後、強行策をとる決意をしたのだ。

フランスは動乱期に入っている。状況はきわめて複雑だが、これが一体何であるのか把握するのに役立つ点がいくつかある。

方法

イエロー・ベストは、人目を引く目立った場所に集まる。例えばパリのシャンゼリゼや、他の都市の中心街や、小さな町外れの交通量の多い環状交差路などである。伝統的なデモとは違って、パリの行進は非常に緩やかで、自然発生的である。人々はただ歩き、お互いに話している。指導者もいなければ演説もない。

リーダの不在は、この運動につきものである。あらゆる政治家やデモに好意的な政治家でさえ信頼されておらず、だれも新しいリーダーを求めていない。

人々は自分たち自身で集会を組織し、苦情や要求のリストを明らかにする。

ドムレミーから車で30分行ったロレーヌ地方のコメルシ村は、ジャンヌ・ダルクが生まれたところであるが、そこで住民が集まって、彼らの宣言を6人が代わる代わる、節ごとに読んでいる。そんなところから彼らが指導者や特別なスポークスマンを求めていないことがはっきりする。彼らは時々言葉に詰まるが、テレビの語り手のように公衆の前で話すのに慣れていないのだ。コメルシでジレ・ジョーヌの第2アピールは、1月26日、27日の「集会の中の集会」に他の人もコメルシに来るように呼びかけている。



要求

去年の11月17日、イエロー・ベストを着て街頭に最初に出た人々は、表面的にはガソリンやディーゼル税値上げが、フランスの田舎の生活を直撃するものとして反対していた。「世界的都市」を大切にする余り、フランス政府は小さな街や村、そこに住む人々を犠牲にして次々に政策を行ってきた。もう我慢がならない状態だった。運動は急速に根本的問題に移った。つまり生活に関わる問題での人々の発言権だ。一言で言えば民主主義である。

何十年もの間、左派政党も右派政党も、選挙期間のスピーチがどんなものであれ、いったん権力の座につくと「市場」によって命令された政策を追求する。このため人々は全ての党や政治家を信用しなくなり、彼らの要求を聞いてもらえる新しい方法を求めている。

燃料税の問題は、要求項目が多くなるとすぐに忘れられた。運動の評論家は、非常に多くの要求を達成することはきわめて難しいと言う。人々の要求に注意を払っても無駄である。なぜなら愚かな人々は、あらゆる事を求めるからである。そして全くその反対のことを求めることもある。

その異議申し立ては、最も重要な唯一の要求「市民イニシアティブ国民投票(CIR)」として素早く表明された。

国民投票

この要求は運動の良い面を表している。「ねばならない」リストをつくるより、GJ(ジレ・ジョーヌ)は単に人々が選択できるように求めていて、国民投票は選ぶための手段だ。その要求には一定数の署名がいる。選択する国民投票の権利を得るには、多分70万人、あるいはもっと多くの署名者を必要とする。「市民イニシアティブ国民投票(CIR)」の権利はスイス、イタリア、カリフォルニアで存在する。その考えは、よくわかっている専門家はみな恐れる。もし人々が投票するなら、人々はあらゆる種類の愚かな事に投票するだろうと、知識人は身震いして見ている。

マルセーユ短期大学の温厚なエティエンヌ・シュアール先生は、何十年も国民投票を中心に、直接民主主義をどのように組み立てるか考察してきた。イエロー・ベストによってそのときが来た。国民投票は、感情的で即席の決定を避けるために、長い討論と考察の時を持たなければならない。そのような国民投票は、特定の利権によって左右されない、誠実で、独立したメディアを必要とする。法律を作る政治家は国民投票によって表明された国民の意思を尊重することが求められる。このことは全て、人民の憲法制定会議を必要とする。

国民投票はフランスの痛いところで、全てのジレ・ジョーヌ運動の力強い静かに横たわる大義である。2005年シラク大統領は(彼の観点からは愚かにも)、きっと承認されるだろうとEU憲法の批准を国民投票に求めた。政治家階級は、2・3の例外を除いて、全力で訴えた。新憲法の下で、新たな世界権力として繁栄する未来を求めよう。さもなければヨーロッパは第一次、第二次世界大戦に逆戻りしてしまうと。しかし普通の市民は、自主的に勉強する大きな運動を組織した。グループごとに膨大な法律資料に目を通し、それらがどんな意味で、何を意味しているかを解明しようとした。2005年5月29日、フランス人は68%の投票率で、55%が憲法に反対投票をしたのだ。パリだけがかなり賛成投票が上まった。

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3年後国会は、つまり全政党の政治家たちは、同じ内容の条文を実質的に採用することに賛成投票をした。それは2009年にリスボン条約となった。

明確に表明された人民の意思は打撃を受け、多くの者が力を落として政治から離れていくという幻滅を味わった。しかし今、それらが戻ってきたのだ。

暴力
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最初から政府は暴力で対応してきた。運動を暴力的だと非難するため、明らかに暴力行為を誘発するように意図されていた。

警察隊は、ロボットのような装備で、平和的なイエロー・ベストのグループを取り囲み、阻止した。催涙弾の煙で覆われ、フラッシュ・ボールのゴム弾をデモ隊に直接撃ち込み、何百人も怪我をした(公式の数字はない)。大勢が視力を失うか手が動かなくなった。政府はこれについて何も述べていない。

抗議行動の三日目の土曜日、この警察隊はデモを止めることが出来なかった。そして許可された命令のもとでか、大勢の暴力団やブラック・ブロック(不明の黒衣の集団)が運動に侵入して、器物を壊し、店を破壊し、ゴミ箱や駐車した車に火をつけ、世界のメディアにイエロー・ベストは暴力的で危険であるイメージを与えた。

これらのあらゆる挑発にもかかわらず、ジレ・ジョーヌはきわめて冷静で、確固としていた。しかし感情を害し、やり返そうとする人もいないわけではなかった。

ボクサー

8回目の土曜日、1月5日にプレキシガラスで保護された警官が、セーヌ川の橋のジレ・ジョーヌを暴力的に攻撃した。そのとき大柄な男が怒って群衆の中から出てきて、反撃した。彼はげんこつを握り、一人の警官を殴り倒し、他の者を退却させた。この驚くべき場面は撮影されていた。イエロー・ベストは彼を止めようとしたが、「ランボー」は止まらなかった。

これはクリストフ・デティンガーで、フランス系ジプシー、ボクシング元ライト・ヘビー級フランスチャンピオンであることがわかった。彼のニックネームは「マッシーのジプシー」である。彼は現場から消えたが、登場する前にビデオをセットしておいた。彼は警官が女性や他の無防備な人々を攻撃しているのを見て私がとった、「対応はまずかった」と彼は述べた。彼は運動が平和的に進められるように願っていた。


デティンガーは7年の拘留が迫っている。1日以内に彼の弁護資金は116,433ユーロ集まった。政府は拒否した。どんな法的理由かわわからないが。いま彼のための嘆願が回っている。

中傷

マクロンは大晦日のスピーチで、人々を叱った。「あなた方は、少し働いて、たくさん儲けることはできない」。まるで彼らがみな、ヨットでのんびり過ごし、株価が上がったり下がったりするのを眺めて過ごすのにあこがれているかのように言う。

それからマクロンは戦いを宣言した。

「最近、私は考えられないことを見て、受け入れがたいことを聞いた」。明らかに、デモ隊と共鳴しようとする2・3の反対派政治家を指して、「人民のために話している」振りをしていると激しく非難した。「しかし、憎むべき暴徒のスポークスマンは、選ばれた代表、警察、ジャーナリスト、ユダヤ人、外人、そしてホモを追いかけているだけなのだ。それは単なるフランスの否定だ。」

「ジレ・ジョーヌは誰も追いかけない。警察が彼らを追いかけているのだ」と、人々は組織的に運動を歪曲するチャンネルの撮影隊に対して、実に誇らかに声を上げたのだ。

運動からは一言も外国人やホモに反対する声は聞こえてこなかった。

キーワードはユダヤ人

飼い犬をおぼれさせたい人は、その犬が狂犬病だと言って非難する。(フランスの諺)

フランスの諺では「犬をおぼれさせたい人は誰も、犬が狂犬病だと言う」。今日、成功を台無しにしたい人、ライバルに対して仕返しをしたい人、個人の面目を失わせたい人、もしくは運動を破壊したい人は誰でも、彼らは反ユダヤ主義だと言って責めてくる。

だから、民主的運動の高まりに直面し、「反ユダヤ主義」カードを切ることは不可避だった。それはほとんど統計的に確かなことだった。何十万人の不特定多数の中で、ユダヤ人を否定的に言う者が一人や二人いるかもしれない。それはかまわない。タカ派メディアは見張っている。わずかな出来事も、運動の本当の動機がホロコーストの復活にある事を示すために使われる。

この穏やかな反語的な小歌が、フランスのある交差点で演じられ、「よい」体制が「悪い」普通の人と対比されていた。それはYouTubeで大ヒットだった。それは運動の雰囲気をよく醸し出している。「優しい人、意地悪な人---ジレ・ジョーヌ」。



この陽気な人々が、反ユダヤ主義だと責められるのに時間はかからなかった。なぜか。批判が皮肉にも二人の最も有害なジレ・ジョーヌ批判者に向けられたからである。それは68年5月革命世代のダニエル・コーン・ベンディットと、古い「新哲学者」ベルナール=アンリ・レヴィである。新たな世代は、彼らに我慢ならない。しかし待て、彼らはたまたまユダヤ人だ。ああ!反ユダヤ主義だ!

抑圧

政府スポークスマン、ベンジャミン・グリボーが、「政府転覆」を望む者たちを「扇動者」とか「暴徒」と描いたが、そのデモに対決するため、エドアルド・フリップ首相は、デモの権利をうまく「保護する」新たな法律を公表した。その主要な方策とは、時間や場所の公式許可を得ないデモの組織者を厳しく罰することである。

事実警察は既に、33歳のトラック運転手エリック・ドルエを、運動の被害者を弔う小さなキャンドルセレモニーを開いたことで逮捕した。その他に情報が得られない逮捕がたくさんいる(ついでながら、祝日にわたって、いくつかの都市の周辺のチンピラたちが、駐車した車を燃やす儀式を行った。特別な公表とか弾圧があったわけではなく。それらは労働者階級の人々が仕事に行くために必要な車だった。パリの富裕層の高価な車が破壊されて反感のタネをまいたわけではなかった。)

1月7日、「哲学者」で元青年・教育・研究大臣のリュック・フェリーは、とても上品ぶったラジオ・クラシックでインタビューをされた。彼は宣言した。「警察はこの暴力を終わらせる事が出来ない。それは耐えがたいことだ。聞いてくれ。奴らがかわいそうな倒れた警官を蹴っているのを見るなんて、もうたくさんだ!今回だけでも警察に武器を使わせてくれ。もうたくさんだ!・・・思い起こせば、我々は世界第4位の軍隊をもっている。このくだらないことを終わらせることが出来るんだ」と。

フェリーは、「改革」を推し進めるためにマクロンに共和党と連立を組むように呼びかけた。

先月、「市民イニシアティブ国民投票」に反対するコラムで、フェリーは書いた。「現在の専門家に対する非難やエリート主義に対する批判は、この時代の最悪の惨事である」と。

アンティファ

アンティファ・グループは、人々が集まるところはどこでも、「ファシスト」を根絶するために無差別の捜索するかもしれない。先週の土曜日ボルドーで、イエロー・ベストはアンティファによる攻撃と闘わなければならなかった。

今はっきりしたことは(実にいつもそうだが)、自称「反ファシスト」が現状の番犬である事だ。彼らのたゆみない「ファシスト」探しで、アンティファは動く者は何でも攻撃する。結局、彼らは不況を守っているのだ。そして奇妙なことに、アンティファの暴力は、黙認されているのだ。より平和的なデモ隊を侮辱し、攻撃し、逮捕する国家や警察によって。

メディア

疑ってかかれ。少なくともフランスでは、主流メディアはしっかりと「秩序」の側、つまりマクロン側にある。そして外国メディアは、国家メディアが書いたり言うことを反復しがちである。また一般的に、フランスの場合、英語メディアはしばしば正しく理解していない。

終わりに

まだよくわからない。これが革命ではないかもしれないが、運動は「体制」の本質を暴露した。権力は、「市場」に奉仕するテクノクラートの手にある。つまり金融資本の権力である。このテクノクラート社会は人間社会を再編することを願っている。それは我々自身の社会や全地球の人々を、資本主義の利益に奉仕させることを願っている。それは「グローバリゼイション」計画で、経済制裁や、圧倒的なプロパガンダや、軍隊(NATO)を使う。それは人々の同意なしで、人々の生活を方向づける。マクロンはこの体制の体現者である。彼は、有名なエリートによって選ばれて、EUに押しつけられた「市場経済」に指示された方策を実行する。マクロンは諦めることができない。しかし人々はいま進行していることに目覚めた。彼らはやめないだろう。どれほど学校システムが劣化しようと、フランス人は今日よく教育され、人々があるべき合理性を持っている。もし彼らが民主主義を勝ち得ないなら、民主主義は不可能である。

続く・・・

*

ダイアナ・ジョンストンは『愚か者の十字軍: ユーゴスラビア、NATO、西欧の幻想』の著者である。彼女の新著は『カオスの女王、ヒラリー・クリントンの不運』である。『ダイアナ・ジョンストンの父ポール・H・ジョンストンの思い出「MADから狂気まで」』は、彼女のコメント付きでクラリティ・プレスから出版された。彼女の連絡先は[email protected].  ダイアナ・ジョンストンはグローバライゼイション研究センターの研究員である。
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