「イラク侵略後の世界では、米国が中国について語る話を信じるのは狂気の沙汰だ」ケイトリン・ジョンストン
Caitlin Johnstone: In post-Iraq invasion world, it’s absolutely insane to blindly believe the US narrative on China
RT 論説面
ケイトリン・ジョンストン
メルボルンを本拠地とする独立ジャーナリスト。彼女のウェブサイトはこちら。ツイッターはこちら。
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年9月5日
私のソーシャルメディアからのお知らせがここ数日間チカチ光り続けている。それは毒のある中国に対する醜聞を煽るものたちが動画を共有しようとしてくるからだ。その動画はウイグル族のイスラム教徒が、電車に乗せられて収容所に送り込まれるところを映していることを非難する動画だ。
その動画は実は古い動画で去年出回っていたものだ。しかし2020年になって魔法仕掛けのように再び登場し、みなを驚かせる新着動画のように出回っている。西側の反中国主義者たちは公的に発作的混乱状態に足を踏み入れ始めたようだ。この動きはまさに米国が南シナ海での緊張を高めている中で、ここ数年でもっとも危険で挑発的な軍事演習を実施した時期と重なる。
So this old video from #Xinjiang of inmates transfer from Kashgar to Korla is making rounds on social media again. It 1st surfaced in Sept, 2019 but appeared to be older video from 2018 based on image analysis. Thread: pic.twitter.com/qhY6jhVopp
— Carl Zha (@CarlZha) July 17, 2020ckquote>
この動画に私をタグ付けしに来る人たちはみな、この動画が「そらみたことか!」と、私が言ってきたことが間違っている証拠になるかのように言っているが、この行為はロシアに対する醜聞を主張する人たちが「巨大な爆弾の壁が近づいている」かのような情報に対して私をタグ付けしたのと全く同じだ。そんな情報は、陰謀論のようなバカげた情報で、ほとんど裏付けが取れない情報だったのに。ロシア政府が高い水準にある周到に守られている米国に入り込むことなんてありえないのに。
このような人たちがこの動画がウイグル族の人たちが電車に乗せられて収容所に送られている模様を映していることを100%信じている根拠はひとつしかない。それは動画内で表示されているちょっとした文章に「そうである」と書かれてあるからだ。この人たちは本当の情報を見ているわけではないし、その情報を批判的に考えることもしていない。彼らはただ流される言説を見て盲目的にそれを信じているだけだ。イラク侵攻後の世界では、米国を中心とする帝国が敵国とみなした国に対する情報が示された時、そうすることは狂気の沙汰なのに。
本当のところ動画を見ても、その動画がウイグル族の人たちが「再教育施設」に運ばれているところを映しているものなのかどうかはわからない。単なる通常の刑務所に罪人を輸送しているのかどうかさえも分からない。そんな輸送であれば囚人の数がずっと多い米国の刑務所体制においては常に起こっていることなのだが。
とにかくわからないのだ。私たちは、BBCのアンドルー・マー(何年も前にノーム・チョムスキーが彼のもつジャーナリストの素質を嘲笑った、かのアンドルー・マーその人だ)の話を聞かされる。彼は「このウイグルのことは西側の諜報機関やオーストラリアの専門家たちにより権威づけられている」と話している。しかし実際のところはこのふたつの機関は同じ機関だ。ウイグルの件の証拠は、そのくらいの信憑性しかない証拠だ。もう一度言おう。これも、イラク侵略後の世界で真に受けることが狂気の沙汰であるもうひとつの事例だ。
実は支配者たちが新疆のウイグル族に起こっていることについて伝えている内容を強く疑わないといけない理由は大量に存在する。しかし今私が強調しようとしているのはそのことではない。This thread is a reproduction for posterity of a good thread by @OohTheChilliOil, an account deleted by Twitter for unknown reasons, on the "Uighur Genocide". The only archives I've been able to find of this thread are damn near unreadable, so I'm piecing it back together here: pic.twitter.com/4ET5fjnjz9
— Caitlin Johnstone ⏳ (@caitoz) July 8, 2020
私が強調したいのは、西側の諜報機関と彼らの言っていることを速記するだけのメディアにより流布する帝国に吸収されることに抵抗している国々についてのすべての言説に対する唯一の正しい対策は、厳しく容赦のない猜疑心を持つことだ、ということだ。これらの機関にはこのような嘘をついてきたという長期にわたるよく知られた歴史がある。その嘘のせいで私たちはひとつの選択肢しか持てないのだ。その選択肢とは、彼らの言っていることはなんでも信じることだ。 ひとつひとつの事柄について検証可能な証拠を山のように積み上げることをしないで、だ。普通であれば、真実を確認するためには事実に基づいた吟味が必要になるはずなのに。
今私がいっていることは、中国政府が素晴らしい政府であるということでは全くない。私たちが聞かされてきた中国政府が行っているすべての悪い話が間違いだという訳でさえもない。動画が示していることが、私たちがそう信じるよう強いられてきた内容と全く同じであるということは完全に有り得ることだ。私がいいたいのは、何が正しいかを確かめようとしていないというだけのことだ。 事実はその通りかもしれないし、逆かもしれないのに。情報が広まる過程において喧伝的な言説操作により情報が激しく汚されているというのに。
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Give us evidence’: Chinese consul general demands proof amid mounting accusations of espionage & order to close Houston consulate
中国政府が何の罪も犯していないなどということはありえない。中国の権力者が、国家の秘密を守り政治宣伝を使おうとするのは常のことであり、汚い手を使って物事の収拾を図ろうとするのもいつものことだ。 しかしだからといって冷戦を進めようとする人たちが、西側諸国の権力構造を使って、飽きるくらい私たちに聞かせてくる話を信じていいという話にはならない。CIAの喧伝家たちにタダで奉仕するよう騙されることを避けたいのならそんなことをしてはいけない。 殺人的な戦争マシンの一部分に知らず知らずのうちに組みこまれることを望まないのであれば。
今第三次世界大戦がゆっくりと進行中だ。それは米国を中心とする同盟国の勢力と中国のようにその勢力に取り込まれることに抵抗している国々との間の戦いだ。そしてその戦争は喧伝により大きく前進させられている。自分が喧伝家になりたくないのなら、聞かされた話を真に受けず距離をとるべきだ。その話とは、米国を中心とする勢力に取り込まれまいとしている国々がしていることがとんでもなくひどいという話だ。そんな国々にはお返しに、大規模な制裁を課し、政権を転覆させ、介入が必要になる、という話だ。
聞かされた話と逆のことを信じろ、といっているのではない。どちらか一方の話だけを信じることはやめて、簡単に信じない気持ちを持ち続けようと言っているだけだ。そう、確固たる検証可能な証拠が示されるまでは。米国が敵視している政府に損害を与えるような言説を信じるということは、虚言癖があるとみなに知られているAさんがいたとして、AさんがBさんを嫌っているのをあなたが知っているのに、AさんがいうBさんの悪口を信じてしまうのと同じくらいバカげている。
中国は言説により作られた架空の世界において、不思議なくらい異常な国として扱われている。普段は西側諸国の政府が言っていることに対して疑いの目を向ける多くの人々も、中国のことになると簡単に西側諸国の政府が吐き出す話を信じてしまうのだ。西側諸国の政府によるそんな話をすべて真に受けるだけではなく、その話に疑問を挟む余地を持つことさえ決してないのだ。まるで、中国についての言説に疑問をもつという選択肢さえもともと持っていないようなものだ。西側諸国の政府による言説は人々の脳内の「信頼できる情報」枠にすっと入り込むのだ。批判的思考力などというものは全く作動しないままで。
ALSO ON RT.
COMUS abruptly informs Beijing to CLOSE consulate in Houston – Chinese Foreign Ministry
私は様々な政治的立場をもつ人々とネット上で中国について議論している。その際驚かされるのは、そういう人々のうち中国についての言説について批判的に検討したことがない人の割合が高いことだ。普段は西側諸国の外交政策に比較的批判的な考えを持っている人でもそうなのだ。 彼らがしばしば完全に見落としているのは、彼らが正しいと思っている言説の真偽が定かではないだけではなく、その言説に反する事実が山のように大量に存在しているという事実だ。なぜそうなるかというと、彼らは聞かされた言説が本当に正しいことなのかを確認するために自分で調べようとしていないからだ。 イランのことなら調べるし、ロシアのことやシリアのことなら調べるのに、だ。 しかし中国のことになると彼らの猜疑心は急にどこかに行ってしまうのだ。これは本当に奇妙な話なのだが。
米国を中心とする帝国を取り仕切っているお馴染みの嘘つきたちが、敵国とみなしている国の政府について主張する内容については、常に厳しい疑いの目を向けよう。ずっと、ずっと、ずっと、ずっとそうしよう。帝国主義者たちの喧伝を前に進める手助けをするということは、 彼らが押し進めようとしている流血と苦難への道を幇助した罪をおかしたことになるのだ。その罪は、ミサイルを発射する者たちと同罪だ。
友よ!常に猜疑心を持ち続けよう。
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