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習近平のダボス会議発言は、彼がグローバリストの手先だという証明になるのか?「その果実によって、あなたがたはそれを知ることになる」

習近平のダボス会議発言は、彼がグローバリストの手先だという証明になるのか?「その果実によって、あなたがたはそれを知ることになる」

<記事原文>
Do Xi Jinping’s Davos Remarks Prove He Is a Globalist Shill? ‘By Their Fruits Ye Shall Know Them’

マシュー・エレット

Matthew Ehret

Matthew J.L. Ehret is a journalist, lecturer and founder of the Canadian Patriot Review.

2022年1月31日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年2月11日
 

 真実は時に苦い薬となる。しかし、患者を救う苦い薬は、糖衣毒よりもつねに優れている。

 「良い木はすべて良い実を結ぶが、腐った木は悪い実を結ぶ。良い木は悪い実を結ばず、堕落した木も良い実を結ばない。良い実を結ばない木は、すべて切り倒され、火の中に投げ込まれる。だから、あなたがたはその実によってそれを知るのである」(マタイによる福音書7章20節)

 1月17日、習近平国家主席はダボス会議で演説した。ダボス会議では、ITを駆使した新しい封建主義のもと、世界をディストピアに改変しようという野望を抱く億万長者たちが集まり、数日間にわたって自己満足の演説や、野望実現に向けた各勢力との連携作りに明け暮れた。

 案の定、習近平の演説は、大西洋の向こう側の米国の多くの民族主義者からかなりのヒステリーを引き起こした。このことからも、彼ら米国の民族主義者たちが、人類の文明をリセットしようとする非常に社会病的な超国家的存在によって自国政府が乗っ取られ、生活が脅かされるという醜い事実にうまく対応していないことがよく分かる。

 歴史的に一帯一路構想(BRI)を支持してきた「LaRouche PAC」という名の独特な国家主義者たちが運営しているニュースサイトは、習近平の発言は、不快なメルトダウンにつながるものだとして、ロバート・イングラハムの1月22日付け社説で次のように報じた。
(ラルーシュ運動LPACは、物議を醸したアメリカの政治家、リンドン・ラルーシュの政治組織の一部である。LYMの「ウォー・ルーム」はバージニア州リーズバーグにあり、LPACの本部でもある。)

 「習近平の演説は非難されるべきものだった。『グローバルな協力』や『ウィン・ウィン』などという表現を使ってはいたが、彼の発言は、ベールで隠してはいるが、ドナルド・トランプに対する攻撃であり、ダボス会議の企みを明確に支持しているとしか読み取れない。彼は、『全体論的』環境主義、カーボンニュートラル、『グリーン経済への完全移行』を支持した。彼はTTP(Trans-Pacific Partnership環太平洋戦略的経済連携協定)を支持し、自由貿易を賞賛し、保護主義を非難した。COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)の計画や、WTO、WHOにも絶賛の声を上げた。中でも最も反吐が出そうだったのは、大量虐殺を目的とした政策である国連の『持続可能な開発』を(スピーチの中で2度も)強く賞賛したことだ」

 ラルーシェPACは、習近平の演説を、中国がWEFの「世界大リセット」に加担している証拠だと批判する多くの報道機関の一つに過ぎないけれども、私は習近平擁護の主張をこの組織に向けて発することにした。その理由は2つある。

 ●(習近平批判を棚に置けば)、同ニュースサイトのこの論説記事は多くの非常に良いアイディアを提供してくれていると見ることができるからだ。そのアイディアが、文明を恐怖で圧倒している業火を消すという重要な役割を果たしうると私は心から信じている……ただし、その業火が最も激しく燃えさかっているいま、愚かなポピュリズムに甘んじることによって、彼らが自己破壊的行為をしてしまわないか、という懸念はあるが。

 ●この論説の著者は、私がこれまで読んだ中で最高の歴史的研究をおこなっていて、読者の心や自分の組織、そしてもっと一般的には、真実の目的に大きな損害を与えるような、許しがたい判断ミスをしないように予防しているはずだからだ。

 以下の反論の際、私は手厳しい言葉を使うかもしれないが、それはこの論説の著者が中国の動機について誤った分析をしていることを真摯に主張するためなので、ご容赦いただきたい。

主張1:「中国は脱炭素を支持しているから、悪である」

 COP26の脱炭素目標が、実は産業文明(と現在の世界人口規模を持続させる手段)の解体を意図していることを発見したひとたちに、祝辞を捧げる。グレタ・トゥンバーグやチャールズ皇太子やビル・ゲイツが気候変動専門家であるとか、われわれの集団行動を根本的に変えて産業文明を直ちに停止させなければ、世界は12年後に地獄の竈(かまど)になって終わる、と信じてやまない洞窟から抜けだし、誤った情報を切り抜ける知的能力を身につけたのだから。

 この問題に関して洞窟から抜け出せた人々にとって、習近平の公の発言は確かに混乱を招くものだった。中国国家主席は本当に「グローバリスト」の人口削減計画を支持しているのだろうか?先進工業文明の解体を支持しているのだろうか?
 
 ダボス会議で習近平が使った単なる表面上の言葉に惑わされず、彼の行動に注目すれば、答えは明確に「ノー」である。

ユーラシアの「脱炭素」と大西洋両岸の「脱炭素」の差異

 「脱炭素」と「持続可能な発展」に対する中国のアプローチは、NATO(北大西洋条約機構)とファイブアイズ(米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国から構成され、政治的、軍事的な情報を共有する同盟)の檻の中での支配的なアプローチとは多くの面で大きく異なっている。「この先生活必需品が欠乏するので、生活水準を落とし、生産量を下げ、さらには個人の持ち物の所有権を返上しないといけない時代が来るから、それに備えよう」と言われている西側諸国民とは異なり、中国の「グリーンアジェンダ」は、天然ガス、石炭、石油、原子力を中心とした炭化水素開発(脱化石燃料の動きを支持し、将来的な再生可能エネルギーへの移行のために、エネルギー源の中心に天然ガスを据え、自国の経済成長に必要なエネルギー確保を目指すこと)に向けられている。

 中国の強力な原子力発電部門(CO2排出量ゼロ)は、溶融塩トリウムや高速増殖炉など、現存するすべての第3・第4世代の原子炉を利用している唯一の国で、実用的な商業核融合に向けた取り組みは他のどの国よりも進んでいる。

 中国は風車やソーラーパネルなどのいわゆる「再生可能」エネルギーへの投資も積極的ではあるものの、大西洋共同体とは異なり、資本集約型産業(機械化が進み、労働生産性の高い産業のこと)の基盤についてはこうした低強度で信頼性が低く高価な電力に依存させず、主に家庭用消費に「グリーン」エネルギーを利用する方向を選択している。

 また、中国が、コンクリート、鉄鋼、鉄などの鉱物を必要としている世界有数の国家であることは周知の事実であり、これらは「一帯一路」構想に象徴される大規模プロジェクトの建設に欠かせない。

主張2:「中国はTPPを支持しているから、悪である」

 
 習近平が「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)推進派」だと捉えるのは、単純すぎる。

 ペペ・エスコバールが非常にうまく説明しているように、「誰が“第二次グローバル化”のを支配することになるのか?」をめぐる戦いだと見るべきである。

 50年にわたり世界を蹂躙してきた第一次グローバリゼーションはすでに水面下では死に体であり、このグローバリゼーションは、新しいタイタニック号が暗い深淵に引きずり込まれるように、間もなく訪れる衝撃で船がバラバラになるのを待つだけである。この崩壊は、多くの人が推測しているのだが、何かのシステムが崩壊して起こるのではない。実際にはとうの昔から時限爆弾が仕掛けられていたのだ。1971年にドルが金準備制度から変動相場制に移行して以降、現在の全体的なバブル崩壊を迎えるまでずっとそうだったのだ。

 したがって、問題は「システムが崩壊するかどうか」ではなく、むしろ「誰がこの新しいシステムを形成する」のか、であり、「どのような運営システムにそのルールが基づくことになるのか」、である。

 それは創造的成長と自主的改善が可能な開放型システムなのか、それとも同質性(エントロピー)と収益の不変の法則によって定義される閉鎖型システムなのか?そのシステムはゼロサム(参加者全員が負け、勝ち分の総和がゼロになる)なのか、それとも全体が部分よりも多くなる(共に利益となるウィンウィン、両者に有利な)のか?

 オバマ時代のTPPは、2016年にトランプが正当にも破棄したが、それは中華人民共和国、とくに主権国家システム全般に対する露骨な経済攻撃以外のなにものでもなかった。この攻撃は、以下のようないくつかの要因を前提としていた。

 A) 太平洋沿岸のすべてのTPP加盟国を、ロンドンとウォール街が支配するNAFTAのようなトップダウン型のシステムに縛り付けていること。

 B)TPPが定めていた「自由貿易」のルールを破った国を直接訴える権利を企業に与えていること
(多国籍私企業が、世界経済フォーラムのような機関を通じて調整するなどして常に支配力を維持しようとするため、「自由貿易」といっても実際には自由ではなかった)

 C) 2016年以前のTPPがつねに中国を除外していたため、中国を近隣諸国から切り離していること。

 習近平が言及している「第二次TPP」は、(第一次TPPとは違い)その名の通りの「環太平洋パートナーシップ協定」だ。

 運営システムの観点から言えば、第二次TPPは、2020年に世界人口の30%を占める太平洋地域15カ国が参加する史上最大の貿易協定として発足したRCEP(地域包括的経済連携)の延長に近いように見える。

 第二次TPPは、真の意味での自由貿易を含んでいるのだろうか?答えはYESだ。第二次TPPにおける自由貿易は、貧しい国々に対する帝国主義による強姦を正当化するために使われるだろうか?答えはNOだ。

自由貿易はどのような意図で運営されるのか?

 アダム・スミスが1776年に悪名高い『国富論』を書いて以来、多くの悪が「自由貿易」という隠れ蓑のもとでおこなわれてきたことは明白な事実にちがいない。

 アヘン戦争、ジャガイモ飢饉(19世紀のアイルランド島で主要食物のジャガイモが疫病により枯死したことで起こった大飢饉)、度重なるインドでの大虐殺、そして現代のグローバリゼーションの下での略奪に至るまで、英国が提唱する「自由貿易」はしばしば、対象国に安全装置のスイッチを切らせているすきに、その国民を丸裸にするまで搾取し尽くす手段として使われてきたのである。

 中国式自由貿易と英米式の自由貿易の違いは、その目的にある。

 英米式が国家の発展を破壊するために設計されたのに対し、中国式(あるいはそれ以前の米国のハミルトン方式)は、参加するすべての国の産業向上と表裏一体となって設計されている。一方が分割、征服、破壊を意図しているのに対し、他方は団結、協力、創造を意図しているのだ。大きな違いだ。

 ここで、ある人は叫ぶかもしれない。「意図なんてどうやって見極められるのか?」

 その答えについては、かつてイエスが問いに答えたように、「あなたがたはその果実によってそれを知るであろう」だ。唯物論者にはどう処理したらいいかわからないだろうが、世界の歴史を見れば、政治の世界では、自分の意図が透けて見えるような言葉を使うと、ほぼ必ず目的が台無しになることがすぐにわかるだろう。私たちはジョン・F・ケネディの強靭な率直さを愛しているが、その率直さ故に、就任してわずか1000日で殺害され、彼の持つ偉大な良さが花開くことがないままになってしまった。ベンジャミン・フランクリンのようなもっと賢明で精通した政治家がいたなら、そんな事態が起こることは決して許さなかったであろうが。

 悪いことをしようとする悪人が良い言葉を使い、良いことをしようとする善人が悪い言葉を使うことがある。その意図や善意をどうやって知ることができるのだろうか。言葉ではなく、その果実で知るしかないのだ。

中国のハミルトン的果実

 一極集中の帝国主義が数十年にわたる飢餓、貧困、戦争を生み出しただけであるのに対し、中国は8億人以上の人々を絶望的な貧困から救い出したことが証明されている。中国は、国有銀行を通じて何兆ドルもの生産的な長期信用を立ち上げ、その資金を債務の投機ではなく、実際のインフラの建設に結びつけた。

 西側の金融システムは、投機的・架空的資本の誇張された上昇率に完全に依存しているが、中国の金融システムは物理的な生産と価値のシステムを前提としている。エバーグランデ(中国恒大集団Evergrande Groupは、中華人民共和国広東省深圳市に本拠を置く不動産開発会社)のバブル崩壊は、西側なら原子爆弾のような破壊力をもつことになっただろうが、中国では十分に抑制可能な異常事態なのである。

 もし習近平を攻撃しているラルーシュPAC(LPAC)系の著者が、経済学者アレクサンダー・ハミルトンの原著の趣旨をきちんと読み解けていたのなら(その著者は読んだと公言してはいるが)、著者が信奉するアメリカのシステムは、本質的に自由貿易に反対ではなく、またつねに保護主義的でないこともわかるはずなのだ。

(ハミルトン:合州国憲法の実際の起草者。合州国憲法コメンタリーの古典『ザ・フェデラリスト』の主執筆者。統一された中央政府を有する必要があると考え、近代的な資本主義の基盤は、連邦政府によって成し遂げられるものとした。これは連邦主義といわれる。)

ハミルトンは何を創造したのか?

 ハミルトンが1791年の議会への報告で指摘したのは、破産した未成熟状態の新生国家は悲惨な内部分裂と混沌に追いやられるだけだということであった。最初の7年間、アメリカは大英帝国に奪還されるのを待つ財政破綻国であった。各州は経済の優先順位や通貨発行を自州内で管理し、13州のうちどの州も相互の自由貿易さえおこなわず、連合というにはほど遠い状態であった。

 このように、初期の連合体には統一性がなかったため、共通の行動をとることは不可能であった。共通の行動力を持たなければ、ロンドン中心部に集中していた高度に中央集権化された世界規模の金融寡頭政治と戦うに足る強力な武器は存在しえなかったのである。

 ハミルトンが行ったのは、アメリカ独立戦争中に発生した多くの局所的で返済不能な州債務を連邦が肩代わりし、それらを新しい国家銀行システムの資産に転換することだった。その資産が包括的な国家インフラ目標のために信用供与を開始することになり、亡国の危機を解決したのである。各州は「やりたい放題」にできる自由を失ったが、貿易障壁は取り除かれ、国家通貨が発行され、この飛躍的な進歩によって、若い国家は生き残るどころか、繁栄することさえできたのである。ハミルトンのもとでは、借金はもはやインフレを引き起こす装置などではなく、国民全体の利益に貢献する自己清算可能な「国家の恵み」であった。この点に関して、中国が国営放送の報道でハミルトンをよく引き合いに出すのも、偶然ではないだろう。

 ハミルトン計画の最初の数十年間で、アメリカの人口は4倍に増え、技術的知識、産業生産性、相互接続性、発明は飛躍的に成長し、やがてアメリカは世界最大の帝国への道に挑戦するようになった。

 (習近平批判の記事を書いたサイトのラルーシュPACの)イングラハム氏は、ハミルトンが独断的な関税支持者(つまり保護主義者)ではなく、自由貿易を支持していたことを知ったら驚くかもしれない。ただしその条件は、その自由貿易が、或る統一目的に従って形成されている場合に限られる。そしてその統一目的とは、その自由貿易により、全体の多くの部分の産業と創造が最大限に発展できるようにしようという目的だ。この目的は、米国憲法の重要な第1条第8節を含む「公共の福祉」条項の本質的な目的に繋がるものである。

 ハミルトンの後進であるフリードリヒ・リスト(1828年に「アメリカ政治経済システム」という言葉を作った)は、このシステムを用いて、バラバラだったドイツを、歴史上初めて、地域的に分裂していた国家間の自由貿易を推進する「ゾルフェライン」(別名:関税同盟)の下に統一した。リストの計画のもと、国内改善(鉄道、運河、新産業、純粋科学)と結びついた国家の信用が、ドイツを近代時代へと導いたのである。

 このシステムが適用された地域(19世紀のロシアを含む)ではどこでも、人口が量的にも質的にも増加し、国内の各地域間の調和的な関係が改善され、寡頭制はその支配力を失い、創造的な変化が生まれたおかげで、終わりのない成長をどんどん実現できるようになっていった。

 これは良い果実であったと言っていい。

 英国の自由貿易は、「第一次グローバリゼーション」のように、いつも耳あたりの良い言葉を使うが、本質は腐った果実を実らせるものであった。

 どこに適用されようとも、英国式の自由貿易は経済主権国家を破壊し、長期計画を不能にし、民間資本の規制を解体し、つねに「分断して征服せよ」政策に利用されたのである。

 英米のアイビーリーグの大学で教え込まれたこのシステムの信奉者たちは、知らず知らずのうちに、金の亡者の悪党の一員に成り下がり、ますます近視眼的な見方しかできなくなり、局所的で利己的な自己認識の先にある全体像が見えなくなってしまった……それこそまさに、悪夢のビデオゲームのようなシステムを動かしている寡頭エリートがつねに望んでいた姿だったのだ。

主張3:「習近平はWTOを賛美したので、悪である」

 世界貿易機関(WTO)には、国連憲章と同様に、多くの立派な言葉や経済行動のルールが埋め込まれている。このルールと言葉に従えば、どちらの組織も誰にも害を与えることはなく、むしろ多くの利益をもたらすかもしれない。

 「健全な競争」、「公正さ」、「取引の自由を促進する」、という素敵な言葉がちりばめられたルールが問題なのではない。

 問題は、これらのルールの多くを、それを破ることを意図して書いた勢力の意向にあるのだ。

 WTOのルールは、19世紀にこの小さな島を世界の大部分に対して支配的なアルファ位(αの位置、炭素原子の位置)に保つために、各国国家が自由貿易に服従することを求めた英国の要求とよく似ていて、欺されやすい犠牲者には信じやすい書き方になっていたものの、グレートゲームを形成する支配者層の人々にとっては、つねに植民地主義や奴隷制度の単なる道具だと理解されていた。


 この意味で、1999年のWTOは、アダム・スミスの1776年の『国富論』と多くの共通点をもっている。

 アダム・スミスは悪の美徳を賞賛し、はたまた、弱者を支配する覇権主義者の権利を促進するような書き方をしていただろうか。

 そんなことはない。

 アダム・スミスの著書を読めば、素晴らしい言葉がちりばめられていることが分かるし、もし世界が本当に、国際的に拡大した金融寡頭政治のない、生活の質の向上を目指して共に暮らす国々の平等な場であったなら、何も悪いことは見つからないだろう。

 問題は、ベンジャミン・フランクリンやハミルトン、そして最も有力な建国の父たちの多くが(あるいはフリードリヒ・リストが後に)理解していたように、アダム・スミスはただの雇われ政治専門家で、スミス自身、自分が書いた文言を信じてはいなかったというところにある。歴史家のアントン・チェイトキンが『Who We Are: America's Fight for Universal Progress, from Franklin to Kennedy』の第1巻で指摘しているように、アダム・スミスは大英帝国の上層部と直接結びついており、『国富論』を(偶然にもアメリカ独立宣言と同じ年に)出版するまで、第2代シェルバーン伯(米国の独立に反対していた17世紀の英国の政治家。首相や内務大臣を歴任)によって何年も教育されていた。



 アダム・スミスとロンドンの寡頭制の主人たちがつねに理解していたのは、自分たちが彼の「見えざる手(市場原理の万能性を説明する際にアダム・スミスが使用したことば)」の真の所有者だということだった。その「見えざる手」ということばこそ、規制のない市場を支配する「魔法の秩序原則」なのだ、と彼らが犠牲者たちに信じこませたいと願っていたことばなのである。

 ここ7年間で適用されたBRI(一帯一路構想)指向の自由貿易圏は、すべての参加国間で実際に測定可能なインフラと産業力を構築するという意図によって形成されている。アフリカ-中国自由貿易協定、中国-パキスタン経済回廊、中国のRCEP(アールセップ、東アジア地域包括的経済連携)、中国-EU取引、中国-南米自由貿易協定などを見ていると、大英帝国の暗黒時代やJFK後の米帝国資本の時代におこなわれたこととは正反対であることがわかる。これらの条約が適用された地域では、略奪や債務奴隷が蔓延するのではなく、産業成長、大規模インフラ、製造業、教育が爆発的に発展している。その意図は、第一次グローバリゼーションの時代に見られたものとは全く異なっている。

 中国がわかっているのは、もし国連憲章とWTOの規則が、3兆ドル以上のBRI(一帯一路構想)が追い求める意図のもとで施行されうるならば、第二次グローバリゼーションは、基本的に反独裁的、人口増加的、国民国家的、協力的、反人口削減的な規則に支配されることになる、ということである。

 これはなんと良き果実だろうか。

主張4:「習近平はWHOや、COVID協力体制を賞賛したから、悪である」


 最後に言っておかなければならないのは、習近平の「世界保健機関・パンデミック対応」に関する発言について、である。

 この話をすると嫌がる人々もいるだろうが、あえて述べることにする。

 今日に至るまで中国は、ソロスの諜報員である趙紫陽(ちょうしよう、党中央委員会副主席、国務院総理、党総書記などを歴任)治世下の1980年代に動き出したトランスヒューマニスト志向の西側寄り第5列(諜報活動家)を、まだ完全に粛清しきれていない。

(トランスヒューマニスト:超人間トランスヒューマンは、遺伝的な生物学と、デジタル技術や遺伝子組み換え技術を組み合わせたもの。ヒトゲノムの改変は、様々なナノテクノロジーを挿入することでサポートされ、自然界と非自然界の融合によって変化した生命のほとんどは、現在急速に進行中のAIの管理下に置かれることになる。)

 趙が中国政府に影響を及ぼしていた時期、トランスヒューマニスト(超人間主義者)、マネタリスト(通貨主義者)、テクノクラート(技術部門出身の官僚)が大量に流入し、現代の中国のディープ・ステートを形成していた。これら寄生虫らの多くが、1989年に始まり、1997年に再びおこなわれ、そして2012年の習近平体制の発足とともに始まった最近の粛正で、段階的に駆除されたことは喜ばしいことである。今日まで150万人以上の官僚が汚職容疑により粛正されている。

(マネタリスト:通貨供給や金利操作などの金融政策の重要性を主張する経済学者。主唱者は経済学者ミルトン・フリードマンらで、マネタリストの考え方は「新貨幣数量説」とも呼ばれる。ケインズ学派とは立場を異にし、1980年代の金融政策に大きく影響を与えた。通貨主義者)

(テクノクラート:技術部門出身の官僚、権力者。大衆国家において、国家行政が経済統計や社会計画を含む段階に至ると、従来の法律・組織・宣伝等の技術以外の社会工学的な高度の専門技術の保持者が官僚・行政官・管理者として重用され、支配者集団に入っていくことから生まれた)


 こうした粛正にもかかわらず、中国国内における世界経済フォーラムや英米の存在は、特定の方面でまだ感じられる。それが最も明確に表れているのは、江沢民(こうたくみん)元国家主席を中心とする「上海閥」や、ジャック・マー(アリババグループの創業者)など欧米寄りの億万長者たちが、何度も中国の経済主権を覆そうと様々な試みをおこなってきたことである。

 ロシアもまた、ゴルバチョフ-エリツィン時代に構築された独自のディープ・ステート問題に苦しめられている。

 銀行の国家管理を維持してきた中国とは異なり、モスクワのテクノクラート的なディープ・ステートは、ケインズ主義に侵された自由主義の中央銀行システムにおける絶大な影響力を依然として享受している。さらに中央銀行システムはロシアの大手製薬会社と密接に結びついている。(多くの例の一つとして、ズベルバンクを参照のこと)。

(ズベルバンク:ロシア貯蓄銀行は、ほぼ太陽の沈まない帝国といわれるロシア最大の商業銀行。もともとは帝政ロシア時代1841年に設立、社会主義のソ連時代に「貯蓄信用金庫」として国民に身近となり、それが市場経済導入に伴い商業銀行に改組され、現在でもロシアの銀行界では圧倒的なシェアを誇る。日本のゆうちょ銀行に近い存在。ロシア最大のIT企業であり、新型コロナワクチンの開発・生産もおこなっている。)

 北米やヨーロッパとは異なり、中国はつねに代替のコロナ救済策を提供してきた。単にワクチンに固執したり、コンピュータモデルに基づいて経済を停止させたりしない。中国がヒドロキシクロロキンに亜鉛を組み合わせた治療法だけでなくさまざまな東洋医学の治療法を使用して、当初から大きな効果を上げ、結果的に、コロナによる死亡率はアメリカの0.6%に収まっている。

 中国が明言しているのは、①コロナが国防総省とつながりのある200以上のバイオラボの1つから生まれたものなのか、②2000年のPNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)文書『アメリカの防衛を再建する』で血も凍るような詳細が説明されたごとく、将来的に遺伝子を標的とした創造物が中国社会に放出されたものなのかが、まったくわからないのだということだ。

 はっきりしているのは、2020年1月以来、中国は起こりうる戦争のシナリオであるかのごとくコロナ対応を行っているということだ。

PNAC(Project for the New American Centuryアメリカ新世紀プロジェクト、1997年設立のネオコン系シンクタンク。20世紀を「アメリカの世紀」となぞらえることにあやかって、21世紀を「アメリカ新世紀」と謳っており、防衛再建計画では、サイバースペースや宇宙のような情報空間や物理空間をアメリカがコントロールすることを主張して、「完全支配」と呼ばれるフル・スペクトラム・ドミナンスの確立を目指した。)

 ロシアと同じように、中国でもワクチン接種の義務化をめぐって、さまざまな地域勢力と連邦政府との間で、何度も衝突が起きているのだ。

 連邦政府が(地域・州政府の抵抗に対して)専制的なワクチン接種の主要な執行者となっているほとんどの西側の政府とは異なり、ロシアと中国には逆のパターンが見られる。

 これらのユーラシア大陸の国家では、主に連邦政府が、地方当局が市民達に対して行っている専制的で行き過ぎた追い込みに対して介入してきたのである。

 ロシアと中国の指導者たちは、自分たちの文明の存続のためだけでなく、自分たちよりもはるかに大きなもののために戦っているのだ。しかも、彼らはこの戦いから生還するだけでなく、システムが崩壊し、第二次グローバリゼーションが実行に移されている中で、支配的なポジションに立つことを意図している。

 アメリカ人の中には、自分たちの愛する共和国がファシストのクーデターに取り込まれているという事実を受け入れることができない人もいる。ドナルド・トランプがこの件に関して何かできる道徳的・知的能力を持っていなさそうなことも受け入れがたいし、ユーラシアの国々によって外部から強制される広範なグローバルな変化なしでは、今の米国は自らを変える不屈の精神が持てていないことも、受け入れがたいようだ。

 真実は時に苦い薬である。しかし、患者を救う苦い薬は、糖衣毒よりもつねに優れている。

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