キューバは感染蔓延の最終段階に入った
<記事原文 寺島先生推薦>Cuba in the Last Stretch of the Pandemic
Socialist Project 2020年7月12日
フェルナルド・ラブズバーグ
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年9月5日
はじめに
以下の記事はフェルナンド・ラブズバーグ氏による記事である。元記事はサルバドリアン・デジタルのディリーニュースサイトコントラパントに6月24日に掲載された。本記事は「バレット欄」の担当者がスペイン語から翻訳し、少し注釈も付け加えたものである。
考慮しておいて欲しいのは、ラブズバーグ氏の記事が初めて公表されてからすでに2週間たっており、その間にも重大な変化が起こっているということである。
記事の要点
・このウイルスに対するキューバの努力は目を見張るような結果を出している。7月7日、新型コロナウイルスによる死者が11日連続で一人も出なかった。7月7日時点で、キューバでのウイルス感染例はたったの2399例で、うち感染した2242名はすでに快復している。死者数はたったの86名だ。
・強調されるべきことは、北米や西欧の裕福な国々で見られたような医療従事者の死亡は、キューバでは一件もなかったことだ。医師だけではなく床掃除の仕事をしている人を含めても、だ。
・キューバは警戒を緩めてはいない。キューバの最終目標はウイルスを国中から根こそぎにすることだ。ラブズバーグ氏が記事で書いているウイルスに対する積極的な取り組みは、今も続いている。以前との違いは、今ウイルスは後退しているが、ウイルスに対する対策はより効果的になっているというところだ。しかしながら、ウイルスはハバナ州ではしつこく残っている。首都ハバナは特にそうだ。同地方にはキューバの感染例のうち57%が存在し、コロナウイルスによる死者の半分は首都ハバナから出ている。
・社会や経済をもとにもどすために、注意深い取り組みが進められている。そのために客観的な指標が、3段階にわけて導入されている。州や地域では、この段階に応じて感染流行に対応するよう取り組まれている。6月18日、15ある州のうち13州が、第1段階に入ったことが公式に発表された。マタンサス州も数日後そうなるだろう。7月3日には、ハバナ州が第1段階に入った。そして、マタンサス州を除く残りすべての州が第2段階に入った。
・州間の交通の行き来はまだ止められているが、都市間の公的交通機関は再開されている。広大な面積を持つハバナ市においては、郊外の交通機関を再開することは経済活動や社会生活において重要なことであり、現段階では乗り越えるべき難しい課題がある。交通機関の許容量には限りがあり、混雑をさけるため特別な配慮が不可欠であり、バス社内やバス停において社会的距離を保つことやマスクを着用することが強制されている。何よりも大切なのは、人々に責任ある行動をとってもらうよう説得することである。
・キューバは外国からの観光客を迎え入れはじめている。これはラブズバーグ氏の説明による。
・キューバによる世界での医療活動は、感染蔓延時において非常に力強く行われた。その医療活動は世界から広く注目を集め、また敬意をもって迎えられた。キューバのヘンリー・リーバ救護隊をノーベル平和賞に推薦しようという動きが世界的に進行中だ。誓願書に署名した人々の中には、ノーベル平和賞受賞者であるアドルフォ・ペレス・エスキベル氏も含まれている。他にも元エクアドル大統領のラファエル・コレア氏。俳優のダニー・グローヴァー氏やマーク・ラファロ氏。作家のアリス・やウオーカー氏。ノーム・チョムスキー氏とナンシー・モレホン氏。映画制作者のオリバー・ストーン氏やペトラ・コスタ氏。さらにはキューバのシンガーソングライターであるシルビオ・ロドリゲス氏がいる。現時点で、「キューバの活動についてのカナダのネットワーク募金団体」は、4万5千ドルの募金を集めており、キューバが世界に派遣している流行蔓延と闘う救護隊を支援している。

キューバは感染蔓延の最終段階に入った
フェルナンド・ラブズバーグ
キューバはコロナウイルスの隔離政策をあとほんの数日で終わらせる。ハバナ州は例外だ。ハバナ州以外のすべての州では感染例が出ておらず新しい通常生活に向かって動き始めた。首都ハバナではもうあと2、3週間待たないといけない。まだ一日平均1~10の新しい感染があり、新型コロナウイルスに苦しんでいる人が約100人いるからだ。
キューバ政府がとった対策は大成功を収めている。この島国では、ウイルスに感染した例がたったの2319件で、そのうち2130人が快復、死者は85人という結果でコロナ危機を乗り切っている。[編集部より ほぼ100名は今でも治療中である] 。キューバ政府の医療体制は、多数の犠牲者が出ることを見越して準備をしていたのだが、実際は最悪の危機的状況においても必要となる病院施設の稼働率は60%で済んだ。
現時点で地方や州間の交通機関は再開しているがハバナ州は例外だ。ホテルもキューバに休暇に来る人々のため、営業を再開している。海外からの観光客も7月1日からの受け入れ再開が計画されている。しかし観光客が訪問できるのは本島に近接した、空港がある島[珊瑚礁の島であるケイズ諸島]だけである。このリゾート地を訪れるすべての観光客は新型コロナウイルスの検査を受けることになっているし、同地で働く従業員も同じだ。観光客やホテルの従業員たちは、ケイズ諸島を離れたり地元の人と接触をもったりすることは許されないことになっている。
キューバの対策
隔離政策を基本とするキューバの流行蔓延に対する対応は徐々に進められた。最初は国境封鎖措置や休校措置をとることが遅れていることを批判するキューバ国民もいた。しかし全面的な封鎖措置が実施されたのちは、外国への渡航は完全に止められた。キューバに上陸した旅客機は、キューバに救急医療救援を要請した国が送った旅客機だけだった。このような旅客機には、救援先から戻ってきたキューバの医療チームが搭乗していた。それ以外の通常航空に関しては、政府が期限を決めて、その期限の後にはだれも国外渡航できないようにした。他国に在住していてキューバに帰国していた7000人程度の人々と5000人程度の外国人は、キューバに残りキューバで流行蔓延をのりきることを決めた。
政府は全ての州間や郊外の交通機関を停止した。すべての乗り物は医療従事者やその他の必要最低限の人員の輸送にだけ使用された。警察は街を監視し、マスクの着用を強制したり、人が集まっていたら解散させたり、店の外で人々が列を作っている時に人と人との間で必要な距離をとらせたりした。この食べ物を買うための列にどう対処するかが、健康上の大きな懸念の一つだった。[編集部より 基本的な食品が深刻に足らなくなるのはキューバでよくあることだ。食料が届いたときに店の前で長い列ができることも]。
普段は化学兵器や生物兵器に対応するよう準備している軍の部隊は、タンクローリーにポンプを取り付け、街中に塩素をまいた。ウイルスが拡がるのを防ぐために、何千もの兵士が感染の進んでいる地域から人が出ていかないよう人の流れを阻止していた。感染者がほとんどいない地域から来ている人々だけが、感染地域に入ることが許された。[編集部より 感染状況に応じて、地域レベルでの隔離措置はしばしば行われた。感染がおさまるのにあわせて、その措置は緩和された]
税金、電気料金、水道料金、ガス料金、電話料金、インターネット使用料金の支払いは先延ばしされた。企業の9割を所有しているキューバ政府が、流行蔓延のために先延ばしされたそのような料金を負担した。福祉事業従事者たちが食料を買って一人暮らしのお年寄りに届けたので、お年寄りたちは街に買い物に出なくてよくなった。レストランは、持ち帰りの食事を販売した。
公的な医療関係者が、ウイルス保有者を認知したときは、感染源の可能性のある人々や、感染者が感染後接触した人々を調査した。その過程で特定された人々はすべて感染の疑いありとされた。特別な治療をうけるために隔離場所に隔離された人もいた。また、自宅で14日間隔離され、近所の人々から見守ってもらうような措置を取られた人もいた。医師たちは毎日往診した。どんなに小さな症状であっても病院に移送し、ウイルス検査を受けさせた。いまでも毎日2000件程度の検査が行われている。このような体制のおかげで、多数の無症状の人たち(そのような人たちが流行蔓延において一番危険だといわれている)を検知することが可能となった。同時に、キューバ中の家を回る検査が実施された。医師や看護士、医学や看護学を学ぶ学生や口腔専門医たちが各家庭を訪問し、症状が出ている家族がいないか調べて回った。まさに今朝方も、ある学生が私の家に立ち寄ってこう質問した。「みなさんお元気ですか?風邪や熱が出ている人はいませんか?」厚生大臣ホセ・アンへル・ポルタル博士は、この方策についてこう説明している。「ウイルスが出るのを待っている訳ではありません。ウイルスを追い出し、探し出すための方策です」
情報はキューバでは一番不足しているものの一つだったが、今回はかつてないほど民衆に情報が知れ渡るようになった。それは、毎朝9時に公衆衛生疫学長フランシスコ・ドゥラン博士が国営テレビで報告を行い、前日の統計結果を知らせたからだ。キューバ国民たちはそのおかげで、病状を観察されている人が何人いるのか、検査は何度行われたのか、深刻で致命的な病状にある病人は何人いるか、ここ24時間で何人が亡くなったかを知ることができている。
キューバ国民のDNAには危機管理が備わっている
キューバは小国で人口も少なく資源も不足しているが、感染蔓延への対策では、世界でもっとも成功した国の一つだ。
キューバが成功した秘訣のひとつは、キューバは米国の攻撃に対抗してきた60年の歴史があることだ。キューバ国民は危機の中で生活することに慣れているのだ。国民の4分の3が米国の経済封鎖の影響に苦しめられてきた。キューバには食料提供手帳を配布するという仕組みがある。その仕組みのおかげで物品を平等に配分することができる。キューバの民間防衛体制を使えば数時間で何十万人もの人を動員することができる。

キューバでは統治者と国民は、いざというときこそ、より効果的により素早く機能する。それは危機を乗り越えるために、政治中枢でものごとを決定し、国中の資源や人材の動員が必要となるようなときだ。そんなときには、国中が戦時体制を取る。命令に疑問を挟むものはいない。市民の自己統制が活性化され、不審者は慎重に観察される。コロナ危機の間は、付加的な措置が取られた。たとえば、ウイルスを保有していると診断された人と接触した人々の追跡、必要な際は街や近隣地の隔離、感染者が数名いる特別な居住地区での強制的な治療、さらにはブロック単位での健康状態の包括的な警戒などだ。
何よりもキューバには信頼できる医療体系がある。
すべての市民に例外なく行き渡る医療体系だ。1100万人の住民に対して85000人の看護士と95000人の医師がいる。スペインとくらべて一人当たりの医療従事者の数は3倍だ。全てあわせるとキューバの医療体系は50万人以上の医療従事者で支えられている。その中には医療技術者や口腔専門医も含まれている(というのも口腔治療も無料だからだ)。私企業が薬品産業を運営することは禁じられているし、地域の病院や総合病院や個人病院、医療に関する人材や資源もすべて国の所有物となっている。
熟練した医師たち
キューバの医師は感染蔓延に対応する豊富な経験を持っている。キューバに駐在しているキューバ国際医療派遣団は、様々な国であらゆる種類の疾病に取り組んできた。彼らの医療業務の例をあげると、アフリカでのエボラ熱に対して派遣された業務、ブラジルで8000人の医師が活動した業務、世界保健機関(WHO)と協同した業務などがある。そしてWHOとはキューバは今でも親密な協働関係を維持している。
キューバで最初の感染者が見つかる数週間前から、キューバの専門医たちはすでにWHOによるコロナウイルスとどう闘うかの研修を受けていた。1月には、最初のキューバの医師たちが中国に入り状況を研究した。2500人程度の団員からなる20団以上のキューバの医療団が他国からの支援要請に応じてきた。今も彼らはアフリカやラテンアメリカやカリブ海諸国やイタリアやアンドラで活動中だ。
キューバが果たすべき使命を遂行することは特に困難を極めた。というのも、流行蔓延期間にトランプ政権は、キューバと交易しようとする国々に対する圧力を増していたからだ。米国は寄贈された医療用品や医療器具がキューバに届くことさえ遮ろうとしていた。たとえば、米国はコロンビアの航空会社アビアンカ航空に金銭的な制裁を加えると警告した。そのため、同社は中国からハバナに届けられた医療器具やマスクの輸送契約を解除せざるを得なくなった。その医療用品は中国の企業家から寄贈されたものだった。さらに米国政府は、企業がキューバに人工呼吸器を売れなくするよう介入してきている。
米国政府は、各国が医療の提供を求めてキューバを訪問することを思いとどまらせようとあれこれと画策している。米国政府はキューバを訪問しようという国々に制裁を課すことを認める法律を準備している。米国政府は、これはキューバ経済に対する対抗策だということを理解している。というのも医療関係の売り上げがキューバの外貨収入の75%を占めているからだ。米国からの圧力にも負けず、キューバの医療団はいま60カ国以上で活動しており、その数はさらに増え続けるだろう。たとえば、アラブ首長国連邦はキューバに恒久的な医療援助を要請したばかりだ。
Socialist Project 2020年7月12日
フェルナルド・ラブズバーグ
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年9月5日
はじめに
以下の記事はフェルナンド・ラブズバーグ氏による記事である。元記事はサルバドリアン・デジタルのディリーニュースサイトコントラパントに6月24日に掲載された。本記事は「バレット欄」の担当者がスペイン語から翻訳し、少し注釈も付け加えたものである。
考慮しておいて欲しいのは、ラブズバーグ氏の記事が初めて公表されてからすでに2週間たっており、その間にも重大な変化が起こっているということである。
記事の要点
・このウイルスに対するキューバの努力は目を見張るような結果を出している。7月7日、新型コロナウイルスによる死者が11日連続で一人も出なかった。7月7日時点で、キューバでのウイルス感染例はたったの2399例で、うち感染した2242名はすでに快復している。死者数はたったの86名だ。
・強調されるべきことは、北米や西欧の裕福な国々で見られたような医療従事者の死亡は、キューバでは一件もなかったことだ。医師だけではなく床掃除の仕事をしている人を含めても、だ。
・キューバは警戒を緩めてはいない。キューバの最終目標はウイルスを国中から根こそぎにすることだ。ラブズバーグ氏が記事で書いているウイルスに対する積極的な取り組みは、今も続いている。以前との違いは、今ウイルスは後退しているが、ウイルスに対する対策はより効果的になっているというところだ。しかしながら、ウイルスはハバナ州ではしつこく残っている。首都ハバナは特にそうだ。同地方にはキューバの感染例のうち57%が存在し、コロナウイルスによる死者の半分は首都ハバナから出ている。
・社会や経済をもとにもどすために、注意深い取り組みが進められている。そのために客観的な指標が、3段階にわけて導入されている。州や地域では、この段階に応じて感染流行に対応するよう取り組まれている。6月18日、15ある州のうち13州が、第1段階に入ったことが公式に発表された。マタンサス州も数日後そうなるだろう。7月3日には、ハバナ州が第1段階に入った。そして、マタンサス州を除く残りすべての州が第2段階に入った。
・州間の交通の行き来はまだ止められているが、都市間の公的交通機関は再開されている。広大な面積を持つハバナ市においては、郊外の交通機関を再開することは経済活動や社会生活において重要なことであり、現段階では乗り越えるべき難しい課題がある。交通機関の許容量には限りがあり、混雑をさけるため特別な配慮が不可欠であり、バス社内やバス停において社会的距離を保つことやマスクを着用することが強制されている。何よりも大切なのは、人々に責任ある行動をとってもらうよう説得することである。
・キューバは外国からの観光客を迎え入れはじめている。これはラブズバーグ氏の説明による。
・キューバによる世界での医療活動は、感染蔓延時において非常に力強く行われた。その医療活動は世界から広く注目を集め、また敬意をもって迎えられた。キューバのヘンリー・リーバ救護隊をノーベル平和賞に推薦しようという動きが世界的に進行中だ。誓願書に署名した人々の中には、ノーベル平和賞受賞者であるアドルフォ・ペレス・エスキベル氏も含まれている。他にも元エクアドル大統領のラファエル・コレア氏。俳優のダニー・グローヴァー氏やマーク・ラファロ氏。作家のアリス・やウオーカー氏。ノーム・チョムスキー氏とナンシー・モレホン氏。映画制作者のオリバー・ストーン氏やペトラ・コスタ氏。さらにはキューバのシンガーソングライターであるシルビオ・ロドリゲス氏がいる。現時点で、「キューバの活動についてのカナダのネットワーク募金団体」は、4万5千ドルの募金を集めており、キューバが世界に派遣している流行蔓延と闘う救護隊を支援している。

キューバは感染蔓延の最終段階に入った
フェルナンド・ラブズバーグ
キューバはコロナウイルスの隔離政策をあとほんの数日で終わらせる。ハバナ州は例外だ。ハバナ州以外のすべての州では感染例が出ておらず新しい通常生活に向かって動き始めた。首都ハバナではもうあと2、3週間待たないといけない。まだ一日平均1~10の新しい感染があり、新型コロナウイルスに苦しんでいる人が約100人いるからだ。
キューバ政府がとった対策は大成功を収めている。この島国では、ウイルスに感染した例がたったの2319件で、そのうち2130人が快復、死者は85人という結果でコロナ危機を乗り切っている。[編集部より ほぼ100名は今でも治療中である] 。キューバ政府の医療体制は、多数の犠牲者が出ることを見越して準備をしていたのだが、実際は最悪の危機的状況においても必要となる病院施設の稼働率は60%で済んだ。
現時点で地方や州間の交通機関は再開しているがハバナ州は例外だ。ホテルもキューバに休暇に来る人々のため、営業を再開している。海外からの観光客も7月1日からの受け入れ再開が計画されている。しかし観光客が訪問できるのは本島に近接した、空港がある島[珊瑚礁の島であるケイズ諸島]だけである。このリゾート地を訪れるすべての観光客は新型コロナウイルスの検査を受けることになっているし、同地で働く従業員も同じだ。観光客やホテルの従業員たちは、ケイズ諸島を離れたり地元の人と接触をもったりすることは許されないことになっている。
キューバの対策
隔離政策を基本とするキューバの流行蔓延に対する対応は徐々に進められた。最初は国境封鎖措置や休校措置をとることが遅れていることを批判するキューバ国民もいた。しかし全面的な封鎖措置が実施されたのちは、外国への渡航は完全に止められた。キューバに上陸した旅客機は、キューバに救急医療救援を要請した国が送った旅客機だけだった。このような旅客機には、救援先から戻ってきたキューバの医療チームが搭乗していた。それ以外の通常航空に関しては、政府が期限を決めて、その期限の後にはだれも国外渡航できないようにした。他国に在住していてキューバに帰国していた7000人程度の人々と5000人程度の外国人は、キューバに残りキューバで流行蔓延をのりきることを決めた。
政府は全ての州間や郊外の交通機関を停止した。すべての乗り物は医療従事者やその他の必要最低限の人員の輸送にだけ使用された。警察は街を監視し、マスクの着用を強制したり、人が集まっていたら解散させたり、店の外で人々が列を作っている時に人と人との間で必要な距離をとらせたりした。この食べ物を買うための列にどう対処するかが、健康上の大きな懸念の一つだった。[編集部より 基本的な食品が深刻に足らなくなるのはキューバでよくあることだ。食料が届いたときに店の前で長い列ができることも]。
普段は化学兵器や生物兵器に対応するよう準備している軍の部隊は、タンクローリーにポンプを取り付け、街中に塩素をまいた。ウイルスが拡がるのを防ぐために、何千もの兵士が感染の進んでいる地域から人が出ていかないよう人の流れを阻止していた。感染者がほとんどいない地域から来ている人々だけが、感染地域に入ることが許された。[編集部より 感染状況に応じて、地域レベルでの隔離措置はしばしば行われた。感染がおさまるのにあわせて、その措置は緩和された]
税金、電気料金、水道料金、ガス料金、電話料金、インターネット使用料金の支払いは先延ばしされた。企業の9割を所有しているキューバ政府が、流行蔓延のために先延ばしされたそのような料金を負担した。福祉事業従事者たちが食料を買って一人暮らしのお年寄りに届けたので、お年寄りたちは街に買い物に出なくてよくなった。レストランは、持ち帰りの食事を販売した。
公的な医療関係者が、ウイルス保有者を認知したときは、感染源の可能性のある人々や、感染者が感染後接触した人々を調査した。その過程で特定された人々はすべて感染の疑いありとされた。特別な治療をうけるために隔離場所に隔離された人もいた。また、自宅で14日間隔離され、近所の人々から見守ってもらうような措置を取られた人もいた。医師たちは毎日往診した。どんなに小さな症状であっても病院に移送し、ウイルス検査を受けさせた。いまでも毎日2000件程度の検査が行われている。このような体制のおかげで、多数の無症状の人たち(そのような人たちが流行蔓延において一番危険だといわれている)を検知することが可能となった。同時に、キューバ中の家を回る検査が実施された。医師や看護士、医学や看護学を学ぶ学生や口腔専門医たちが各家庭を訪問し、症状が出ている家族がいないか調べて回った。まさに今朝方も、ある学生が私の家に立ち寄ってこう質問した。「みなさんお元気ですか?風邪や熱が出ている人はいませんか?」厚生大臣ホセ・アンへル・ポルタル博士は、この方策についてこう説明している。「ウイルスが出るのを待っている訳ではありません。ウイルスを追い出し、探し出すための方策です」
情報はキューバでは一番不足しているものの一つだったが、今回はかつてないほど民衆に情報が知れ渡るようになった。それは、毎朝9時に公衆衛生疫学長フランシスコ・ドゥラン博士が国営テレビで報告を行い、前日の統計結果を知らせたからだ。キューバ国民たちはそのおかげで、病状を観察されている人が何人いるのか、検査は何度行われたのか、深刻で致命的な病状にある病人は何人いるか、ここ24時間で何人が亡くなったかを知ることができている。
キューバ国民のDNAには危機管理が備わっている
キューバは小国で人口も少なく資源も不足しているが、感染蔓延への対策では、世界でもっとも成功した国の一つだ。
キューバが成功した秘訣のひとつは、キューバは米国の攻撃に対抗してきた60年の歴史があることだ。キューバ国民は危機の中で生活することに慣れているのだ。国民の4分の3が米国の経済封鎖の影響に苦しめられてきた。キューバには食料提供手帳を配布するという仕組みがある。その仕組みのおかげで物品を平等に配分することができる。キューバの民間防衛体制を使えば数時間で何十万人もの人を動員することができる。

キューバでは統治者と国民は、いざというときこそ、より効果的により素早く機能する。それは危機を乗り越えるために、政治中枢でものごとを決定し、国中の資源や人材の動員が必要となるようなときだ。そんなときには、国中が戦時体制を取る。命令に疑問を挟むものはいない。市民の自己統制が活性化され、不審者は慎重に観察される。コロナ危機の間は、付加的な措置が取られた。たとえば、ウイルスを保有していると診断された人と接触した人々の追跡、必要な際は街や近隣地の隔離、感染者が数名いる特別な居住地区での強制的な治療、さらにはブロック単位での健康状態の包括的な警戒などだ。
何よりもキューバには信頼できる医療体系がある。
すべての市民に例外なく行き渡る医療体系だ。1100万人の住民に対して85000人の看護士と95000人の医師がいる。スペインとくらべて一人当たりの医療従事者の数は3倍だ。全てあわせるとキューバの医療体系は50万人以上の医療従事者で支えられている。その中には医療技術者や口腔専門医も含まれている(というのも口腔治療も無料だからだ)。私企業が薬品産業を運営することは禁じられているし、地域の病院や総合病院や個人病院、医療に関する人材や資源もすべて国の所有物となっている。
熟練した医師たち
キューバの医師は感染蔓延に対応する豊富な経験を持っている。キューバに駐在しているキューバ国際医療派遣団は、様々な国であらゆる種類の疾病に取り組んできた。彼らの医療業務の例をあげると、アフリカでのエボラ熱に対して派遣された業務、ブラジルで8000人の医師が活動した業務、世界保健機関(WHO)と協同した業務などがある。そしてWHOとはキューバは今でも親密な協働関係を維持している。
キューバで最初の感染者が見つかる数週間前から、キューバの専門医たちはすでにWHOによるコロナウイルスとどう闘うかの研修を受けていた。1月には、最初のキューバの医師たちが中国に入り状況を研究した。2500人程度の団員からなる20団以上のキューバの医療団が他国からの支援要請に応じてきた。今も彼らはアフリカやラテンアメリカやカリブ海諸国やイタリアやアンドラで活動中だ。
キューバが果たすべき使命を遂行することは特に困難を極めた。というのも、流行蔓延期間にトランプ政権は、キューバと交易しようとする国々に対する圧力を増していたからだ。米国は寄贈された医療用品や医療器具がキューバに届くことさえ遮ろうとしていた。たとえば、米国はコロンビアの航空会社アビアンカ航空に金銭的な制裁を加えると警告した。そのため、同社は中国からハバナに届けられた医療器具やマスクの輸送契約を解除せざるを得なくなった。その医療用品は中国の企業家から寄贈されたものだった。さらに米国政府は、企業がキューバに人工呼吸器を売れなくするよう介入してきている。
米国政府は、各国が医療の提供を求めてキューバを訪問することを思いとどまらせようとあれこれと画策している。米国政府はキューバを訪問しようという国々に制裁を課すことを認める法律を準備している。米国政府は、これはキューバ経済に対する対抗策だということを理解している。というのも医療関係の売り上げがキューバの外貨収入の75%を占めているからだ。米国からの圧力にも負けず、キューバの医療団はいま60カ国以上で活動しており、その数はさらに増え続けるだろう。たとえば、アラブ首長国連邦はキューバに恒久的な医療援助を要請したばかりだ。
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