■ 解説者のレベルの高さソチ五輪を観ていて感心したのは、解説者のレベルの高さである。もちろん、全員が全員、良かったわけではない。女子フィギュアの解説などは「どうなのか?」と思ったが、その競技に精通していて、日本人選手だけでなく、外国人選手の情報もしっかりと持っていて、さらにはその競技を楽しむためにはどこに注目すべきか?を分かりやすく言葉で伝えることができる人が多かった。
スピードスケートであったり、スキージャンプなど、メジャー競技に関しては多くの人がルール等を理解しているが、スノーボードやカーリングといったあまり馴染みのない競技になると、「ルールは良く分からないけれども、日本人選手を応援したい。」と思ってテレビを観ていた人が多かったと思う。そして、そういう人に競技の魅力を伝える能力を有している解説者が多かった。
ウインタースポーツの場合、男女のフィギュアスケートを除くと、テレビ中継される機会は少ない。特に地上波で中継されるのは五輪の本番くらいなので、4年に一度である。となると、元選手であったり、競技の役員であっても、テレビ慣れしていないのが当たり前であるが、そういったハンディを感じさせなかった。ソチ五輪では「解説者の重要性」を改めて感じることになった。
■ 主な解説者の簡単な経歴と特徴間もなくW杯が開幕する。現地に行って試合を観戦する人もいると思うが、大部分の人はテレビで試合を観ることになる。なので、試合中継で解説者を担当する人たちには、「サッカーは面白い。」、「W杯が最高。」と思ってもらえるような解説を期待したいところである。W杯というのは新たなファンを拡大するための絶好の機会なので、解説者の重要度は高いと言える。
日本代表が出場するW杯のアジア予選はテレビ朝日系列で独占中継されたので、松木氏、名波氏、中山氏、セルジオ越後氏などはお馴染みの解説者と言えるが、普段、Jリーグの試合をあまり観ていない人がブラジルW杯の中継を観た場合、「この解説者はいったい誰なのか?」、「この解説者の言うことは信用できるのか?」と感じるときもあるだろう。
稀に解説者の発言が気になって、試合に集中できなくなるときもある。解説者の言うことが絶対的に正しいわけではないので、受け流すことも必要ではあるが、せっかくのW杯の試合で楽しないのは勿体無い。ここではブラジルW杯のテレビ中継に登場する可能性の高い主な解説者(21名)の簡単な経歴と特徴をまとめてみた。W杯中継を観るときの参考になれば幸いである。
福西崇史 (NHK) ・・・ さわやかなNHKのエース。
→ 2002年と2006年のW杯メンバーで黄金時代の磐田の中心選手。FW中山、MF名波、MF福西など、磐田OBは解説者としても華々しく活躍している。現役時代はさわやかな顔をしてダーティーなプレーもできるボランチだったが、解説者としてもさわやかな印象がある一方で、選手やチームに対して厳しい発言をすることは少なくない。2008年限りで現役を引退。前回の南アフリカW杯のときは解説者としての経験が浅かったが、4年間で押しも押されぬNHKのエース核となった。
山本昌邦 (NHK) ・・・ 人間力の高い名参謀。
→ トルシエジャパンのときにコーチとしてチームに携わった「名参謀」。日韓W杯の後、アテネ五輪代表チームを指揮してアジア予選を突破したが、本大会ではGLを突破することはできなかった。その後、磐田の監督に就任したが、主力の年齢が高くなってきて下り坂に入っていたチームを立て直すことはできず。「勝者のメンタリティ」、「したたか」、「給水」、「世界基準」など、特定の言葉を多用する傾向があるが、解説者としての評価はまずまずである。
宮澤ミシェル (NHK) ・・・ 父親はフランス人のハーフ。
→ 父親がフランス人で、母親が日本人のハーフ。1993年に日本国籍を取得して、ファルカンジャパンのときに日本代表候補に選出された経験がある。長女は乃木坂46に所属した宮沢セイラで、長男はプロサッカー選手の宮澤勇樹。長男は2013年はJ2の松本山雅でプレーした。解説者としての経験は豊富で、観る目も確かである。トーク力も高いので、安定感のある解説者の1人と言えるだろう。「宮澤ミッシェル」という名前でプレーしていた時期もある。
小島伸幸 (NHK) ・・・ キーパー目先での解説がウリ。
→ 1998年のW杯メンバーの1人。1番手のGK川口、2番手のGK楢崎に次ぐ3番手のキーパーだったが、年が近くて強烈なライバル関係にあったGK川口とGK楢崎の2人の間に入って、ムードメーカーとして岡田ジャパンの潤滑油的な存在となった。キーパー出身の解説者は非常に少ないので、キーパー目先で試合を解説することができる点が最大のウリであり、貴重な存在になっている。ベルマーレ平塚で活躍して、晩年はザスパ草津のJ2昇格に大きく貢献した。
名良橋晃 (NHK) ・・・ 病気というわけではない。
→ 1998年のW杯メンバーの1人。平塚と鹿島で活躍したが、現役時代は攻撃的なSBとしてならした。右のDF名良橋、左のDF相馬の攻撃参加は岡田ジャパンの武器だった。168cmとサイズには恵まれておらず、現役時代はがっちりした体格だったが、どうやら食の細いタイプのようで、現役を退いた後、急激に体重が減ってしまった。スポーツ選手の場合、現役を引退すると太ってしまって体型が変わる選手がほとんどであるが、数少ない例外である。病気ではないようだ。
岡田武史 (NHK) ・・・ 解説者としても日本人トップクラス。
→ 2度(1998年と2010年)もW杯を経験している日本人屈指の指揮官。初戦のコートジボワール戦で解説を担当する。2012年と2013年は中国の杭州緑城を率いていたが、W杯に合わせるかのようにフリーになった。数多くの修羅場を経験しているが、特に南アフリカW杯のときは大会前と大会後で評価が一変した。苦しい時期を乗り越えたことで悟りを開いたかのか、その後は、言動にオーラというか、余裕を感じるようになった。解説者としても日本人屈指の存在である。
山野孝義 (NHK) ・・・ 独特の関西弁が特徴。
→ ヤンマーで活躍した元日本代表。大阪出身で、「○○がいてる。」など関西弁の独特のイントネーションが最大の特徴になっている。一口に関西弁といっても様々で、大阪と神戸は全然違っているし、京都とも全然違っている。ちょっとした語尾や発音の仕方の違いで「どのあたりの出身なのか?」は何となく判別できるが、山野氏の口調はかなり独特で、地域を特定するのは難しい。関西を中心に活動しているので、関西のクラブに所属している選手の情報に強い。
木村和司 (NHK) ・・・ ミスターマリノス。
→ ミスターマリノス。国際Aマッチで24ゴールを挙げているが、これは1位のFW釜本、2位のFW三浦知、3位のMF岡崎、4位のFW原、5位のFW高木に次ぐ歴代6位となる。2010年に横浜FMの監督に就任。志半ばでチームを離れたが、1年目が8位で、2年目が5位。失敗扱いされるときもあるが、成績は悪くなかった。当時、(いい意味で)相手をおちょくるという意味の「ちゃぶる」が流行語になった。解説のときの口数は少ないが、ときおり、ハッとさせられる深い言葉を発する。
森島寛晃 (NHK) ・・・ 偉大な背番号「8」。
→ 1998年と2002年のW杯に出場しているミスターセレッソ。C大阪で背番号8を背負った選手は全員(=MF森島、MF香川、MF清武、FW柿谷)がW杯メンバーに選ばれているということで話題になった。海外サッカーについては「あまり詳しくない。」ということを自分自身でネタにするくらいなので、あまり詳しくないと思うが、いい人オーラが全開なので、NHKに登場する機会は多い。現役時代は「日本一、腰の低いJリーガー」と言われた。モリシの愛称で親しまれている。
松木安太郎 (テレビ朝日系列) ・・・ 人気ナンバーワンの解説者。
→ 1996年のアトランタ五輪の初戦のブラジル戦、1997年のジョホールバルのイラン戦、1998年のフランスW杯の初戦のアルゼンチン戦など、日本サッカー界にとって節目となる試合で解説を任されている。今、見返すとかなり普通であり、かなり真面目である。実はシリアスな解説もできる万能型と言える。持ち前のポジティブ解説がサッカー人気の向上、日本代表人気の向上に大きく貢献したことは間違いないだろう。人気ナンバーワンの解説者と言える。
名波浩 (テレビ朝日系列) ・・・ 夢の中まで左足。
→ 1998年のフランスW杯の日本代表メンバーの1人で背番号「10」を背負った。解説者という立場になっても、現役時代と同様にクレバーさを発揮する。現役時代は味方選手を使うプレーが抜群に上手かったが、放送席あるいはピッチサイドでも他の解説者の良さを引き出すことができる。近い将来、Jリーグのクラブで監督を務めるのは確実で、ピッチ上でMF中田英を操ることができた数少ない日本人選手の1人と言える。日本サッカー史に残るレフティである。
中山雅史 (テレビ朝日系列) ・・・ ニックネームはゴン。
→ 黄金時代のジュビロ磐田の中心選手で、1998年と2002年のW杯メンバー。2012年限りで現役を引退。解説者になって2年目となるが、テレビ朝日系列の代表戦で解説者として登場する機会が多くなっている。日本サッカー界のご意見番と言われるセルジオ越後氏と激しいポジション争いを繰り広げており、解説席を巡る争いも要注目である。現役時代は熱い選手だったが、解説者としては冷静さも持ち合わせている。サッカー選手としては稀代のエンターテイナーである。
セルジオ越後 (テレビ朝日系列) ・・・ 母国でのワールドカップ。
→ ブラジル出身の日系二世で、ブラジル屈指の名門クラブであるコリンチャンスに所属した経験がある。1972年に来日して藤和不動産サッカー部(湘南ベルマーレの前身)でプレーした。元ブラジル代表のFWロナウジーニョの必殺技として知られる「エラシコ」を考案した人物としても知られている。日本代表がW杯出場することは考えられなかった時代に来日しているので、母国のブラジルで開催されるW杯に日本代表が出場することを誰よりも喜んでいると思われる。
都並聡史 (日本テレビ系列) ・・・ 日テレ系のエース格。
→ 黄金時代のヴェルディ川崎の中心選手の1人。歴代で10位タイとなる国際Aマッチ78試合に出場している日本サッカー史上屈指の左SBである。闘争心があって、クレバーで、経験も豊富で、「監督としても成功するのは間違いない。」と思われたが、監督(仙台とC大阪と横浜FC)としてはいずれも成功できなくて、1年あるいは1年未満でチームを去っている。指導者として大成できなかったことは不思議であるが、解説者としてはトップクラス。分かりやすい解説に定評がある。
北沢豪 (日本テレビ系列) ・・・ 元祖ダイナモ。
→ 「ダイナモ」の代名詞的な存在で、黄金時代のヴェルディ川崎と日本代表で活躍した。長髪がトレードマークで、エネルギッシュなプレーで人気を集めた。年末に行われるクラブW杯でお茶の間に登場する機会が多いが、クラブW杯のときはリアクションが大きくなる。1つ1つのプレーに対して大袈裟に反応する傾向はあるが、解説者としてはまずまず評価されている。風貌も相まって現役時代は「チャラい選手だ。」と思われることが多かったが、解説席では普通である。
武田修宏 (日本テレビ系列) ・・・ 解説者としては悪くない。
→ 黄金時代のヴェルディ川崎の中心選手で、天性の嗅覚を持ったストライカー。スピードもあって、ポストプレーもこなした。バラエティー番組がきっかけで『おバカキャラ』が浸透しているが、「解説者としては悪くない。」と評価する人は多い。ただ、試合中に言葉を発する回数は少なくて、解説をしているときは非常に静かである。また、解説者のときは笑いを取ろうとすることはほとんどなくて非常に真面目である。南米のパラグアイのリーグでプレーした経験がある。
城彰二 (日本テレビ系列) ・・・ エースのジョー。
→ 1998年のW杯メンバーの1人。アトランタ五輪代表チームでもエースストライカーだった。スペインでプレーした経験があって、J1リーグでは通算95ゴールを記録している。これは歴代12位となる。市原や横浜Mでは頼りになるストライカーだったが、日本代表では頼りになるストライカーではなかった。なので、攻撃的なポジションの選手を批判すると、「現役時代のお前はどうだったのか?」と言われてしまうのは辛いところである。若い頃から明るい性格で人気を集めた。
金田喜稔 (TBS系列) ・・・ TBSの絶対的なエース。
→ 日本代表の最年少ゴール記録を保持している名ドリブラーで、現役時代は日産でプレーした。TBSのサッカー中継はいくつかの理由からJリーグファンにはあまり評判は良くないが、CSのTBSチャンネルで毎節Jリーグの試合を中継しており、7割程度は解説者として金田氏が登場する。「Jリーグの試合で解説を務めた回数」というのは全ての解説者の中でトップクラスと言えるだろう。C大阪の右SBのDF酒本がお気に入りでその能力を高く評価している。
小倉隆史 (TBS系列) ・・・ 高校サッカー界のヒーロー。
→ レフティーモンスターと呼ばれた未完の大器。強さとしなやかさと創造性を持った万能型のストライカーだった。TBS系列の日本代表戦ではピッチサイドで解説を務めることがほとんどである。「怪我がなかったら・・・。」と永遠に語られる選手で、抜群の知名度を生かして、現役を引退した直後にスーパーサッカーのキャスターに抜擢された。現役時代からユニークなキャラクターで知られていたが、「解説者としてはなかなか上達しない。」というのが正直なところである。
清水秀彦 (フジテレビ系列) ・・・ フジテレビ系列のエース。
→ 1993年のJリーグ開幕戦。V川崎の監督は松木氏で、横浜Mの監督は清水氏だった。あれから20年以上が経過したが、松木氏がテレビ朝日系列のエースとなって、清水氏はフジテレビ系列のエースとなった。もともとフジテレビは現川崎F監督の風間氏、現横浜FC監督の山口氏、元横浜M監督の清水氏の3人体制で回っていたが、2012年の途中に風間氏と山口氏が監督に就任したので、突如として1人エースとなった。愚痴っぽいところがあって、人気はイマイチと言える。
前園真聖 (テレビ東京系列) ・・・ テレ東のエース。
→ アトランタ五輪代表チームのエースで、日本サッカー史に残るドリブラーである。昨年10月に起こした不祥事の影響で活動を自粛していた時期もあったが、最近になってメディアに登場する機会が増えている。長らく、テレビ東京系列のサッカー中継のエース格として活躍してきたので、前園氏を起用できないとなるとテレビ東京的には痛手である。どちらかというと思ったことを素直に口に出すタイプで、選手に対して厳しい表現になることもある。
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