■ リーグ再開ドイツW杯の決勝が行われてから、1週間も経過していないが、なでしこリーグが再開。なでしこジャパンに7人の代表を送り込んだINAC神戸と、FW丸山が所属するジェフLがホームズスタジアムで対戦した。INAC神戸はここまで5戦全勝。5試合で24得点0失点と圧倒的な成績を残している。対するジェフLは3勝1敗1分け。5試合で7得点4失点という数字で3位に付けている。
ホームのINAC神戸は「4-2-3-1」。GK海堀。DF近賀、甲斐、田中、高良。MFチ・ソヨン、澤、中島、大野、川澄。FW南山。日本代表のFW高瀬はベンチスタートで、なでしこジャパンのメンバー6人がスタメンに名を連ねた。MFチ・ソヨンは韓国代表の10番。MF大野とMF川澄が6ゴールを挙げて得点ランキングでトップに並んでいる。
対するアウェーのジェフLは「4-2-2-2」。GK船田。DF高橋、櫻本、河村、細川。MF千野、山田、井上、筏井。FW清水、深澤。日本代表のFW丸山はベンチスタート。ジェフLの監督はセレッソ大阪などでプレーした長身フォワードの上村崇士氏。
■ INAC神戸が快勝試合は大方の予想通りにホームのINAC神戸が優勢。トップ下に入ったMF大野を中心にチャンスを作ると、前半35分にジェフLのDF細川のGKへのバックパスをカットしたMF大野がドリブルでGKもかわしてからゴール。INAC神戸が先制し、1対0とリードして前半を折り返す。
INAC神戸は後半12分にも、左サイドを突破したMF川澄のクロスに飛び込んできたMF大野がワンタッチで相手DFをかわしてから鮮やかに右足で巻いたシュートを決めて2対0とリードを広げる。MF大野は得点ランキングで単独トップに立つ8ゴール目となった。
2点ビハインドのジェフLは、後半16分にFW丸山を投入。前線の枚数を増やすが、なかなかシュートまで持ち込めない。結局、2対0でINAC神戸が勝利し、開幕6連勝を達成した。一方のジェフLは今シーズン2敗目で4位に転落となった。
■ 日本代表が活躍再開の初戦で力を発揮したのは「なでしこジャパン」でもレギュラーだったMF大野で、前半35分と後半12分にゴールを決めて2ゴールを決めて、チームの全得点をマークした。日本代表では右サイドハーフのポジションだったので、プレーが制限されてしまうところもあるが、INAC神戸はトップ下に入っているので自由にプレーすることができて、持ち味を十分に発揮できている。
左サイドハーフでプレーしたMF川澄も好プレーを披露。「スピード」を生かした突破でサイドから何度もチャンスを作った。日本代表では2トップの一角でプレーすることが多かったが、サイドアタッカーとしても、能力の高さを見せた。
また、右サイドバックのDF近賀のプレーも光った。ゴールに絡むことはなかったが、積極的にサイドを駆け上がってチャンスを作った。日本代表では押し込まれることが多かったため、オーバーラップは控えめだったが、INAC神戸では攻める時間も長くて、攻撃力をいかんなく発揮した。
■ ジェフLはシュート1本対するジェフLは、公式記録ではシュートは1本だけ。後半16分にFW丸山を投入し、少しリズムが良くなったが、GK海堀のゴールを脅かすシーンはほとんどなくて、決定機も作れなかった。INAC神戸のシュート数は20本だったので、数字上では、一方的な展開になった。
ただ、ジェフLにも優れた選手は多い。DF丸山以外では、GK船田と左SBのDF細川のプレーが目についた。特に、GK船田のファインセーブがなかったらもっと一方的な点差になっていたはずで、チームへの貢献度は高かった。
■ 異色の経歴日本代表選手を除くと「なでしこリーグ」でプレーする選手が取り上げられることは非常に少ないので、知らないことはたくさんあるが、ジェフLのFW清水由香という選手は「面白い経歴」で、こういうケースもあるのかと驚いた。
この試合は、2トップの一角で先発出場したが、もともとは陸上の選手で、市立船橋高校時代に、全国高校総体の800メートルで2位、国体の3000メートルで2位と素晴らしい成績を残しており、三井住友海上火災保険でも、陸上部で活躍という。陸上選手としてもかなり期待されていたらしいが、小さい頃からサッカーが好きだったこともあって、サッカー選手に転向し、2003年からジェフLでプレーしているという。
今は30歳なので、20代の中盤の頃に転身したことになるが、例歴を見ると、「サッカー版の速水譲次」のような選手である。「スピード」と「運動量」が図抜けているのも、十分に理解できる。
■ 露出度のアップこの試合は、スカパーで無料生中継されたが、スカパーが女子の国内リーグ戦を中継するというのは「史上初」ということで、メモリアルな試合となった。7月31日にはINAC神戸と岡山湯郷の試合、8月13日には浦和LとジェフLの試合が生中継される予定になっているが、露出が増えるのは素晴らしいことである。
また、W杯後に「なでしこジャパン」の選手がたくさんテレビに出演して、なでしこリーグのPRをしたこともあって、17812人の観衆が集まった。この数字は、昨シーズンのJ1の平均観客動員数と同じくらいで、マスコミでも、この数字は大きく取り上げられていて、「なでしこブーム」が続いている。この状態が、いつまでも続くはずはないので、ブームが去るのは仕方がないが、ブームの間に出来るだけ多くのサポーターを集めたいところで、一人でも多くの人がリピーターになってくれることを望みたい。
■ 女子サッカーの魅力は?①リピーターを増やすには、女子サッカーをアピールすることが必要となるが、女子サッカーには、男子サッカーとは違った魅力があるので、うまくアピールしたいところである。
「サッカーのレベル」では男子サッカーに対抗するのは不可能であるが、必ずしも、レベルの高いサッカーが面白いとは限らないことも、この競技の面白いところで、女子サッカーは、男子サッカーほどプレッシャーがきつくないことが多くてパスが回りやすいので、「パスサッカー」というのが、1つのアピールポイントになる。
試合を見ていると、1980年代の男子サッカーに似た雰囲気である。現代の男子サッカーと比べると「時間」も「スペース」もあるので、個性も発揮しやすく、スター選手が期待通りに活躍することも多い。特に、INAC神戸は洗練されたパスサッカーをしていて、中心メンバーが大きく変わらないこともあって、なでしこジャパンと同じか。それ以上の見事なコンビネーションプレーを見せることもある。
■ 女子サッカーの魅力は?②また、「女性らしさ」という部分でアピールすることも必要かもしれない。「アスリートのアイドル化」というのは、あまり好ましいとは言えないが、それでも「実力」が伴っているのであれば、大きく取り上げられても違和感は少なくなる。FW川澄、FW丸山といった選手が、テレビでも大きく扱われているが「アイドル的な存在」を作って、動員を増やすという手法も悪くはない。
また、男子サッカーと比べて「さわやか」な部分もアピールポイントになる。男子サッカーでは、「ズルいプレー」や「ラフプレー」が多くみられるが、女子サッカーは、それに比べるとクリーンで、レフェリーに過度にアピールすることもない。
日本の場合、(表向きは)高校野球が「クリーンさ」を前面に押し出していて、プロ野球とは違った部分でアピールして成功しているが、似たような感じで、女子サッカーも、「クリーンさ」をアピール出来ると、そこに魅力を感じる人も出てくるだろう。とにかく、今が女子サッカーにとっては大事な時期である。選手たちは、練習があって、試合があって、テレビ出演があって、休む暇がないのかもしれないが、頑張ってもらいたいところである。
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