■ 21節ブンデスリーガの21節。11勝8敗1分けのハノーファーと、5勝7敗8分けのヴォルフスブルクの対戦。アジアカップの日本代表のMF長谷部もチームに合流し、アジアカップ後は初のベンチ入りとなった。ヴォルフスブルクは冬の移籍市場でキャプテンで10ゴールを挙げていたFWジェコがマンチェスター・シティに移籍し、チームの軸を失ってしまった。
システムは<4-2-3-1>。GKベナーリョ。DFぺカリク、フリードリヒ、シモン、シェファー。MFジョズエ、ポラク、トゥンジャイ、ジエゴ、デヤガ。FWグラフィッチ。ストーク・シティから獲得したトルコ代表のMFトゥンジャイがスタメン出場。なお、アジアカップの得点王で韓国代表のMFク・ジャチョルは、「ヴォルフスブルク入りが決定した」と報道されていたが、スイスのヤングボーイズとも契約に合意に達していたことが発覚し、二重契約の疑いが出てきたので、メンバーに入っていない。
■ ヴォルフスブルクが敗れる試合は前半5分にハノーファーのMFセルジオ・ピントがミドルシュート。GKの正面で防げそうなシュートだったが、スイス代表のGKベナーリョが後ろにそらしてしまってハノーファーが先制する。ヴォルフスブルクはFWジェコが移籍したこともあって2トップから1トップに変更するが、上手く機能しない。前半は1対0のホームのハノーファーのリードで折り返す。
ヴォルフスブルクは後半開始から冬の移籍市場で獲得したFWパトリック・ヘルメスを投入し、2トップに変更する。しかしながら、効果的な交代とはならず。逆にハノーファーのFWディディエ・コナンに何度もドリブルで脅かされる苦しい展開が続く。
劣勢だったヴォルフスブルクだったが、後半30分過ぎにMFジエゴがPKを獲得。同点に追いつく絶好のチャンスを迎えるが、MFジエゴがPKを失敗してしまう。結局、ミスが目立ったヴォルフスブルクが0対1で敗戦。MF長谷部は出番がないままで終わった。
■ バラバラのヴォルフスブルクヴォルフスブルクは前半だけでMFジョズエを下げて、後半開始から1ボランチに変更したが、この交代もよく分からなかった。ダブルボランチだった前半でさえ、ハノーファーにバイタルエリアを突かれてピンチを招いていたのに、1ボランチになったことで、よけいにひどくなってしまった。
マガト監督の指導の下、2008-2009シーズンのブンデスリーガを制したヴォルフスブルクであるが、マガト監督が退団したこともあって競争力を下げており、暫定で12位。降格圏内である16位のケルンとの差はわずかに1ポイントとなって、降格の可能性も出てきた。
ここまで5勝8敗8分け。ブラジル代表経験のあるMFジエゴ、MFグラフィッチを筆頭に、各国の代表クラスの選手が揃っており、タレント力ではリーグでもトップクラスであるが、全くチームとしては機能しておらず、攻守ともにバラバラの状態である。それでも、スイス代表のGKベナーリョやFWジェコの活躍で何とか勝ち点を拾ってきたが、この試合はGKベナーリョにミスが出て、試合を落としてしまった。
イングランド人のマクラーレン監督と、元ジェフ市原で西ドイツ代表のピエール・リトバルスキー氏がコンビを組んでチームを動かしているが、二人の首も危うくなってきている。
■ ジエゴの活かし方苦戦の要因になっているのが、MFジエゴ。<4-2-3-1>のトップ下に入っていて、天性の才能を生かしたプレーでチャンスを演出する一方で、「不必要なキープ」や「危険なエリアでのボールロスト」など、落ち着かないプレーが多く、攻撃にリズムを作れないでいる。PKの失敗は仕方がないが、プラス面よりも、マイナス面の方が大きく、明らかにブレーキになっている。
確かにいい形でボールを持ったときのアイディアと技術は素晴らしく「ファンタジスタ」と呼ぶにふさわしいプレースタイルであるが、気まぐれである。「ファンタジスタ」であってもチームの一員として機能できるようにマネージメントできていれば問題ないが、現状は「無秩序状態」であり、暴走している部分もある。オフに大金をはたいてユベントスから獲得しており、メンバーから外すのも難しいのかもしれないが、MFジエゴと心中するのは危険である。
■ 苦境が続く長谷部誠①アジアカップを終えてチームに戻ったMF長谷部は、結局、この日は出番がなかった。前半戦も不安定な立場で、スタメンだったり、ベンチだったりとはっきりしなかったが、冬の移籍市場でMFポラクを獲得して、またボランチのライバルが入ってきてしまったので、さらに出場機会が減る可能性がある。
日本代表でのMF長谷部のプレーを見ていると、攻守ともにバランスの取れた選手であり、どんなチームでも活躍できるだけの能力を備えているように思えるので、MF長谷部が出場機会に恵まれていないのは不思議な感じもするが、ヴォルフスブルクでは日本代表のときに見せているようなプレーができていないのも事実であり、レギュラーの当落線上であることは仕方がないことでもある。
もちろん、気の毒な部分もある。前半戦は、秩序の無いチームで懸命にバランスを取ろうと奮闘していたが、とにかく、MF長谷部に求められていることもはっきりせず、尻拭いをさせられている部分もあって、攻撃的な良さはほとんど出せないままで試合を終えることも少なくなかった。
■ 苦境が続く長谷部誠②ヴォルフスブルクの選手では、ブラジル人のMFジエゴは扱いにくい選手であるが、それ以外の選手はそれほど扱いにくいという訳ではない。むしろ、経験が豊富で柔軟性のある選手も多くて、余計なことをせずに熟成させていけば、自然といいチームに仕上がっていくように思えるが、現状では、全くチームとして機能していない。
傍から見ていると、「ベンチがアホやから野球がでけへん」といった江本氏のフレーズを当てはめたくなる状況であり、かつてのレアル・マドリーのようにスーパースターを集めすぎてチームが機能しなくなる例は少なくないが、今のヴォルフスブルクのように、ワールドクラスのロールプレーヤーが何人もいながらのこの状況というのは理解しがたい。MF長谷部は苦境が続くが、冬の移籍市場は閉じているので、とりあえずはヴォルフスブルクで頑張るしかない。
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