■ 準決勝の第1試合夢の国立競技場で行われた高校サッカーの準決勝の第1試合。プリンスリーグの覇者で千葉県代表の流通経済大学付属柏高校と三重県の津工業の対戦。ともに、はじめてのベスト4進出である。
試合は、立ち上がりは津工業の正確なつなぎに苦しんだ流経大柏だったが、前半26分にFW大前が左サイドからコントロールシュートを決めると、後半6分にもFW大前が左サイドからのクロスをフリーであわせて追加点を挙げる。
その後もFW大前の2ゴールなどで、流経大柏が後半だけ5点を奪う猛攻。結局、6対0という圧勝で、流経大柏が初めての決勝進出を決めた。
■ 中盤を制した流経大柏試合は、攻撃力のある津工業に対して激しいプレッシャーをかけ続けた流経大柏が攻守ともに主導権を握った。試合当初は、津工業がダブルボランチからの展開力で上回って、サイドからチャンスをつかんだが、徐々に封じられていった。結局6つのゴールが生まれたが、その多くが津工業の中盤でのミスを奪ったあとの得点であり、低い位置から正確につなごうとした津工業のプランを流経大柏が防いだ形となった。
結果的には、流経大柏の中盤のプレッシャーに対して津工業は対応できなかったが、ロングボールを使うなどして臨機応変に対応することはできなかった。やはり、高校生に対してそこまで求めるのは酷であろうか。
FW飯田やMF松葉ら、津工業も個人技術では負けていなかったが、その個人技を披露する場面は少なく、津工業に負けないだけの個人技術がありながらもシンプルな展開に徹した流経大柏の大人のサッカーが光った。
■ エース大前①流経大柏のFW大前は4ゴールと爆発。左サイドからのミドルシュート、ヘディングシュート、クロスからのダイレクトシュート、ロングシュートと、いずれもが異なるパターンで4つのゴールを生み出した。ここまでの3試合でPKの1ゴールのみと不発だった大前が、ようやく本領を発揮した。
166cmと小柄ではあるが、ドリブルのキレと得点感覚の鋭さを併せ持つスタイルは、「メッシ」というよりは、「大久保嘉人」のようである。国見高校時代の大久保ほど身体的なパワーはないかもしれないが、自らゴールを奪うだけでなく、パスで周り生かすこともできるし、前線で動いて守備にも貢献できる。
■ エース大前②FW大前は、卒業後、清水エスパルスへの入団が決まっている。清水はFW宰溱が退団し、FW矢島、FW岡崎、FW西沢が控えるが、層は決して厚くはない。今後、新外国人ストライカーの獲得の可能性は高いだろうが、1年目からチャンスが無いわけではないだろう。
もちろん、出場機会を得るのは簡単ではないだろうが、清水は、MF枝村、FW矢島、FW岡崎、MF藤本、MF兵働ら若手育成には定評のあるチームであり、いいチームに入ったといえるだろう。
1989年生まれということで、2012年のロンドン五輪の中心となる世代であり、2008年には2009年のU-20W杯のアジア予選も控えている。世代を代表するシンボル的な選手に成長する可能性も持つ。
■ 三重のマラドーナ 敗れた津工業では、やはりMF松葉のドリブルが光った。足に吸い付くようなドリブルは、流経大柏のDFも、簡単には対応することは出来なかった。前半は右MFでプレーし、後半はフォワードでプレー。後半開始早々の決定的なシュートをキックミスしてしまったのは悔やまれるが、インパクトのあるプレーは見せた。
しかしながら、彼は卒業後、一般企業に就職するという。現代サッカーのおいては、「ストライカー」の育成も難しいが、「ドリブラー」の育成はもっと難しい。せっかくの才能を潰さないような道が開けるといいが・・・。
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