■ 平均シュート数ランキング 2012年のJ1のリーグ戦で10本以上のシュートを放った選手に限定して、「90分あたりのシュート数の多い選手」を1位から10位まで示すと、表1のようになる。1位になったのはFC東京のMFヴチチェヴィッチで「7.48本」である。シーズン途中にFC東京に入団して、すべて途中出場だったが、13試合で6ゴールと結果を残しており、スーパーサブとして、これ以上ない働きを見せたと言える。
一方、J2は表2のようになる。32ゴールを挙げて得点王に輝いた甲府のFWダヴィを上回ったのは、京都のFW原と東京VのFW中島の2人である。高校3年生のFW中島は、39節の栃木SC戦で史上最年少でハットトリックを記録して注目を集めたが、シュートへの意識が高くて、将来有望なアタッカーである。
表1. 90分あたりのシュート数ランキング (J1)
順位 | 選手名 | チーム名 | 得点 | シュート | 試合数 | 出場時間(分) | 90分平均 |
|
1 | ヴチチェヴィッチ | FC東京 | 6 | 27 | 13 | 325 | 7.48 |
2 | パウリーニョ | G大阪 | 8 | 56 | 21 | 944 | 5.34 |
3 | 中原貴之 | 仙台 | 2 | 11 | 16 | 187 | 5.29 |
4 | ネット・バイアーノ | 柏 | 1 | 19 | 11 | 435 | 3.93 |
5 | レアンドロ・ドミンゲス | 柏 | 10 | 100 | 28 | 2458 | 3.66 |
6 | レアンドロ | G大阪 | 14 | 49 | 15 | 1303 | 3.38 |
7 | レナト | 鹿島 | 2 | 34 | 14 | 907 | 3.37 |
8 | ドゥトラ | 鹿島 | 8 | 73 | 27 | 1980 | 3.32 |
9 | 上原慎也 | 札幌 | 3 | 10 | 11 | 275 | 3.27 |
10 | 渡邉千真 | FC東京 | 6 | 32 | 27 | 907 | 3.18 |
表2. 90分あたりのシュート数ランキング (J2)
順位 | 選手名 | チーム名 | 得点 | シュート | 試合数 | 出場時間(分) | 90分平均 |
|
1 | 原一樹 | 京都 | 6 | 36 | 26 | 671 | 4.83 |
2 | 中島翔哉 | 東京V | 4 | 26 | 8 | 509 | 4.60 |
3 | ダヴィ | 甲府 | 32 | 156 | 38 | 3351 | 4.19 |
4 | 太田徹郎 | 山形 | 1 | 13 | 15 | 281 | 4.16 |
5 | 荒田智之 | 千葉 | 6 | 42 | 20 | 1032 | 3.66 |
6 | 森島康仁 | 大分 | 14 | 115 | 37 | 2925 | 3.54 |
7 | 林祐征 | 北九州 | 2 | 18 | 21 | 458 | 3.54 |
8 | 石津大介 | 福岡 | 3 | 29 | 27 | 780 | 3.35 |
9 | カイオ | 横浜FC | 10 | 65 | 25 | 1764 | 3.32 |
10 | 船山貴之 | 松本 | 12 | 118 | 40 | 3259 | 3.26 |
■ シュートがゼロだった選手 彼らとは対照的に、シュートがゼロだった選手もいる。「270分以上出場したフィールドプレーヤー」という条件を付けると、シュートがゼロだった選手は、J1は8名で、J2は9名だった。(ちなみに、J1とJ2を含めて、今シーズン、GKでシュートを打っているのは、札幌のGK李昊乗だけ。3節の浦和戦で記録している。)
この中では、レギュラーとして活躍したにも関わらず、シュートがなかったC大阪のDF茂庭と清水のDF吉田豊の2人に目が行く。 DF吉田豊は、甲府時代の2009年は13本(J2)、2010年は15本(J2)、2011年は8本(J1)のシュートを放っており、「シュートの少ない選手」というイメージは無いが、今シーズンは、シュートが無かった。
表3. シュート数がゼロだった選手 (J1)・・・270分以上出場したFPに限定
順位 | 選手名 | チーム名 | シュート | 試合数 | 出場時間(分) |
|
1 | 茂庭照幸 | C大阪 | 0 | 33 | 2772 |
2 | 吉田豊 | 清水 | 0 | 25 | 1921 |
3 | 櫛引一紀 | 札幌 | 0 | 11 | 851 |
4 | 山下達也 | C大阪 | 0 | 9 | 420 |
5 | 青山直晃 | 横浜FM | 0 | 7 | 374 |
6 | 小椋祥平 | 横浜FM | 0 | 4 | 289 |
7 | 金沢浄 | 磐田 | 0 | 5 | 287 |
8 | 梅鉢貴秀 | 鹿島 | 0 | 4 | 287 |
表4. シュート数がゼロだった選手 (J2)・・・270分以上出場したFPに限定
順位 | 選手名 | チーム名 | シュート | 試合数 | 出場時間(分) |
|
1 | 一柳夢吾 | 松本 | 0 | 12 | 888 |
2 | ユ・デヒョン | 栃木 | 0 | 8 | 701 |
3 | 代健司 | 水戸 | 0 | 8 | 631 |
4 | 山口貴弘 | 湘南 | 0 | 10 | 463 |
5 | 乾大知 | 草津 | 0 | 7 | 452 |
6 | 渡辺匠 | 松本 | 0 | 12 | 407 |
7 | 山崎正登 | 岐阜 | 0 | 6 | 397 |
8 | 田中雄大 | 栃木 | 0 | 4 | 360 |
9 | 柳川雅樹 | 栃木 | 0 | 4 | 271 |
■ 茂庭の成績 DF茂庭に関して、さらに調べていくと、2011年もシュートゼロで、2010年は1本だけ。したがって、C大阪に移籍してからは、3年間で1本しかシュートを打っていない。そして、その1本というのも、2010年5月1日のベガルタ仙台戦なので、かなり前である。
さらにさらに、2005年以降の成績を出してみると、シュートが少ないのはもちろんのこと、ドリブルも、クロスも、ゼロに近い。よって、DF茂庭のドリブルやクロスやシュートを観ることができたら、相当に幸運だと言える。(※ 「---」の箇所は未確認。)
Jリーグ通算では、324試合で1ゴールという成績で、2004年6月19日の名古屋戦で挙げたプロ初ゴールが、現在のところ、最後のゴールにもなっている。セットプレーでも、ほとんどゴール前に上がることはないので、この記録というのは、まだまだ伸びそうな雰囲気であるが、ここまで来ると、「不名誉な記録」というよりも、「守備のスペシャリストの勲章」のような感じになってくる。
表5. 茂庭の成績(年度別:2005年以降)
順位 | 所属 | シュート | 得点 | ドリブル | クロス | 試合数 | 出場時間(分) |
|
2005 | FC東京 | 3 | 0 | --- | 2 | 32 | 2854 |
2006 | FC東京 | 2 | 0 | --- | 1 | 24 | 2055 |
2007 | FC東京 | 0 | 0 | 1 | 0 | 17 | 1243 |
2008 | FC東京 | 1 | 0 | 4 | 1 | 22 | 1897 |
2009 | FC東京 | 0 | 0 | 0 | 2 | 9 | 726 |
2010 | C大阪 | 1 | 0 | 0 | 0 | 34 | 3037 |
2011 | C大阪 | 0 | 0 | 1 | 0 | 33 | 2780 |
2012 | C大阪 | 0 | 0 | --- | --- | 33 | 2772 |
■ 坪井の成績DF茂庭と似た境遇の選手を挙げようとすると、浦和のDF坪井の名前が真っ先に浮かんでくる。同じように、スピードがあって、守備能力が高いので、セットプレーのときは攻撃に参加せず、ハーフウェーライン付近で相手のカウンターに備えていることが多い。そのDF坪井の成績は、表6のとおりである。
DF坪井は、通算では284試合で1ゴールを挙げているが、2003年5月17日のG大阪戦のゴールがプロ初ゴールであり、最後のゴールでもある。DF茂庭と比べると、若干、ドリブルやクロスやシュート数は多くなっているが、こちらもなかなかゴールチャンスは巡ってこない。
この2人というのは、言うまでもなく、ドイツW杯のメンバーの1人で、初戦のオーストラリア戦は、DF坪井が先発したが、後半途中に足が攣ってプレー続行不可となったので、代わりにDF茂庭が投入された。(今のザッケローニ監督と比べると、当時のジーコ監督は、CBに攻撃力を求めていなかったことが分かる。)
あれから6年が経過して、DF坪井は33歳となって、DF茂庭も31歳となった。スピード系のCBというのは、「身体能力が衰えるとガクッと落ちてくる。」というイメージがあって、実際に、DF坪井も、DF茂庭も、レギュラーを外されるなど、苦労した時期もあったが、2012年は、2人ともレギュラーとしてチームに大きく貢献した。
CBというと、高さと強さが要求されるポジションなので、日本人でスピード系のCBというのは、なかなか出てこないが、スピード系のCBが、スピード勝負に来た相手フォワードをあっさりと封じてしまうプレーというのは、エキサイティングであり、好きなシーンの1つである。
ノーゴールの記録に関しては、彼らのキャラクターが出たものだと思うので、このまま、継続してほしい気もするし、また、久しぶりにゴールを決めて、喜んでいるところを観てみたい気もする。ちょっと複雑な心境である。(※ 数字は全てリーグ戦(J1、J2)に限定したもので、日本代表の試合は含まれていない。)
表6. 坪井の成績(年度別:2005年以降)
順位 | 所属 | シュート | 得点 | ドリブル | クロス | 試合数 | 出場時間(分) |
|
2005 | 浦和 | 4 | 0 | --- | 3 | 33 | 2929 |
2006 | 浦和 | 0 | 0 | --- | 3 | 27 | 2299 |
2007 | 浦和 | 0 | 0 | 12 | 8 | 31 | 2701 |
2008 | 浦和 | 0 | 0 | 1 | 2 | 20 | 1780 |
2009 | 浦和 | 1 | 0 | 4 | 3 | 29 | 2587 |
2010 | 浦和 | 0 | 0 | 2 | 2 | 31 | 2635 |
2011 | 浦和 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 305 |
2012 | 浦和 | 3 | 0 | --- | --- | 33 | 2834 |
関連エントリー 2008/02/09
ゴール前に中澤佑二がいる幸せ 2008/02/10
坪井慶介が鳴らす代表チームへの警告 2008/03/20
J1の舞台で台頭する若手ディフェンダーたち 2008/04/08
現役の日本人CBでもっともフィード力に優れた選手は誰かを考える。 2012/05/18
ザックジャパンのベストイレブンを考える。 (GK編、右SB編) 2012/05/19
ザックジャパンのベストイレブンを考える。 (CB編、左SB編) 2012/07/31
吉田麻也に期待したいこと 2012/08/03
ボランチの山村和也の可能性 2012/10/08
柿谷曜一朗(C大阪)の波瀾万丈なサッカー人生
- 関連記事
-