■ J3で首位を走る藤枝MYFC移籍市場(あるいはストーブリーグ)では「資金力やブランド力のあるチーム」が大物選手の獲得に成功するケースは多い。「一定以上の日数、出場選手登録された選手にいずれの球団とも選手契約を締結できる権利が与えられるFA制度」を導入しているプロ野球を例に出すと、読売ジャイアンツは、FA導入後、毎年のように大物選手を獲得しているが「巨人は補強が上手い。」と考える人は日本中を探してもいないだろう。
むしろ、「巨人は補強が下手」という一般的な見方になる。「そのチームは補強が上手いのか?下手なのか?」を考える場合、優秀な選手を獲得した回数だけで補強の上手・下手を判断してはいけないことを示す好例になるが、J3で首位を走る藤枝MYFCは「補強の上手なクラブ」と言えるだろう。巨人とは対照的に資金力とブランド力を持っていないクラブになるがいい選手を獲得して戦力アップに成功するケースが多い。
昨オフもFW森島康の獲得に成功した。19試合に出場して12ゴールを挙げているFW森島康はJ3の得点ランキングで首位を走っているが中断期間に投入したJ3でMVP級の活躍を見せている。首位を走る藤枝MYFCを牽引しているが、2017年と2018年は地域リーグでプレーしていた選手である。FW森島康の獲得に成功したのは藤枝MYFCの大躍進につながったが埋もれていた選手を再発掘するのが上手なクラブである。
藤枝MYFCのクラブ規模はJ3の中でも下位レベルになる。藤枝市は「サッカーの街」として知られているが藤枝MYFCにブランド力があるとは到底言えない。昨オフは他にもMF谷澤やMF松岡亮やMF成岡やDF秋本といったJリーグで実績のあるベテランの獲得に成功しているが資金力もブランド力もないクラブがJリーグで存在感を発揮するには交渉力に優れた人物や目利きに優れた人物が必要になってくる。
■ 2連覇中の川崎フロンターレ藤枝MYFCの補強が成功するのは昨オフに限った話ではなくて、ほぼ毎オフ、藤枝MYFCは補強に成功している。もちろん、補強に成功したとしてもシーズン中の躍進が保証されるわけではないのでブービーの16位に沈んだ2018年のような事態に陥ることもあるがJリーグに昇格してから「藤枝MYFCの補強が上手くいかなかった。」という記憶はほぼない。今夏もMF清本(江原FC)やMF那須川(松本山雅)の獲得に成功した。
J1のクラブの中で「補強が上手いクラブ」というと、やはり、2連覇中の川崎Fになるだろう。当然、選手層の厚いクラブなので「ほとんど出場機会を得られずに退団することになった選手」も少なくないが、チームのスタイルがはっきりしており、どういう選手が川崎Fに合うのか?合わないのか?も明確である。MF中村憲やMF大島僚など味方の良さを引き出せる選手がたくさんいるのも川崎Fの強みになっている。
広島は地方のクラブというハンディを抱えている。GK西川やMF柏木やDF森脇など主力が流出するケースは少なくないが、その都度、良い選手を獲得して穴を埋めて来た。2012年・2013年・2015年にJ1を制覇しているが、FWドウグラス(現・清水)などそれまであまり活躍出来ていなかった選手を獲得して大きな戦力にするケースが非常に多いクラブである。MF柏やDF野上やMF稲垣なども広島で評価を大きく高めた。
広島も戦い方ははっきりしているチームである。特にペトロヴィッチ監督と森保監督が率いた2006年の途中~2017年の途中までの約10年間は「ミシャ式のサッカー」と呼ばれるサッカーを展開した。やはり、監督が交代するたびにスタイルがコロコロ変わるチームは補強も難しくなる。成績を安定させるためには補強が大事になってくるが、補強の成功率をアップさせるためには戦い方をはっきりさせる必要がある。
■ 有望株を引き抜く側に回りつつあるコンサドーレ札幌Jリーグでは屈指の名門クラブである鹿島は今夏は主力の流出に苦しんでいる。これからの鹿島を支えるはずだったFW鈴木優、DF安西、MF安部裕、MF平戸の4人が流出する非常事態に陥った。今夏は移籍市場で大苦戦したが、「ここまでJリーグの移籍市場で鹿島が苦しんだのは記憶にない。」と言えるほど、これまでは夏も冬も的確な補強を行ってきた。鹿島も「戦い方がはっきりしているチームの1つ」である。
一方、浦和や名古屋や神戸はJリーグのクラブの中では屈指の資金力を持っている。日本人や外国人の大物を獲得するケースは少なくないが、この3チームはどちらかというと最初に例に挙げた巨人とイメージが重なる部分が多い。「お金があるのでもっと有効に使えたら劇的にチーム力するのに・・・。」と思うが、お金がある人やお金のある組織は知恵が働きにくくなるのが普通。ある意味では自然な話である。
札幌はここに来て変化が感じられる。J2生活が長くてJ2時代は「ユース出身の期待の若手が他クラブに流出するケース」が目立ったが、2017年と2018年は2年連続でJ1残留を達成。2018年はJ1で4位と大躍進した。これによってクラブのブランド力が劇的にアップした。昨オフはFW鈴木武蔵やMF岩崎の獲得に成功するなど「有望株を引き抜かれる側」から「有望株を引き抜く側」に立ち位置を変えることに成功した。
藤枝MYFCのように「資金力もブランド力もないと思われるチーム」が補強上手と言われることも稀にあるが、やはり、なかなか難しい。資金力やブランド力を高めることが出来ると良い選手を獲得できる確率はアップして、いい補強ができる確率もアップする。札幌の場合はここ数年で資金力も相当にアップしていると思うが、良いサッカーを披露して結果が出るようになると様々な面でプラスの効果が生まれることになる。
→ 2019/08/21 【Jリーグ】 「55クラブの中で補強が上手なクラブ」というと・・・。 (前編)
→ 2019/08/22 【Jリーグ】 「55クラブの中で補強が上手なクラブ」というと・・・。 (後編)
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