依然トルコのF-16戦闘機の近代化だけを計画しているアメリカ
2023年4月23日
アレクサンドル・スヴァランツ
New Eastern Outlook
国家の独立度は、経済、教育、科学、効果的外交、天然資源、技術的・知的基盤、人口統計、文化の発展レベルなど、さまざまな要因によって決まる。しかし、あらゆる状況において、国家の独立は、武装した軍隊、兵器および専門指揮官の状態と戦闘能力レベルと密接に関連している。
国に戦闘準備が整った軍隊が欠けている場合、独立の経費は大幅に下がるが、悲惨な状況でそのすべての成果が見過ごされ、軽視されるリスクも高まる。例えば第二次世界大戦とその(日本にとっては残念な)結果、真珠湾のアメリカ海軍基地に対する日本海軍航空攻撃に応えて、広島と長崎の日本の民間都市に対するアメリカ核攻撃の結果、ワシントンは日本に制限を課した。その結果、日本は近代的で、技術的に熟練し、科学的に進歩し、経済的に発展した国でありながら、十分な軍事力が不足している。
選挙前のキャンペーンで、トルコ当局は、トルコ軍産複合体の能力でトルコ軍と海軍の兵器の80%を製造できると強調している。実際レジェップ・エルドアン大統領の任期中、トルコの軍産複合体は経済的シェアを拡大し、軍事企業と企業の数が増加し最新兵器と軍事装備(特に空と海のドローン、APC、小型武器、防空資産、電子機器)が生産された。トルコは現代兵器の主要輸出国の2つであり、これら兵器(主にバイラクタルTB<> UAV)を戦闘に使用し、リビア、シリア、ナゴルノカラバフ、ウクライナで成功を収めている。
自律的外交政策に対するエルドアンの関心は国内軍産複合体の建設を必要とする。国内製造業の拡大に焦点を当てた2007 - 2011年の防衛産業省の戦略計画が実施された。その結果、2011年の計画終了までに防衛は近代化された。トルコ兵器は、トルコが自国の軍隊用武器と装備の54%を生産し始めた後、国際的武器輸出に足場を築いた。
エルドアン大統領任期中、トルコ軍産複合体トップ企業アセルサンとトルコ航空宇宙産業(TAI)が世界防衛企業トップ100にリストされた。これに加えトルコには、ハベルサン、ロケッサン、オトカル、バイカルマキナなど他にも評判の良い防衛メーカーが多数ある。
米国、アゼルバイジャン、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン、マレーシア、カタール、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、ウクライナおよびいくつかのアフリカ諸国がトルコ兵器の最大輸入国だった。同時にトルコは装甲兵員輸送車(パース、アルマ、キルピ)、バイラクタルUAV(最新攻撃ドローンKyzyl Almaが進行中)、およびT129ATAK攻撃ヘリコプターを積極的に輸出している。トルコには独自の砲システム、ロケットランチャー、ALTAY主力戦車生産プログラム、TAYFUN(台風)、弾道ミサイル、およびヒサール長距離地対空ミサイルシステムがある。
トルコ軍産複合体商品の画期的成果は、この点トルコをNATOブロックの供給から完全に独立させ、場合によって武器販売市場のライバルにするつもりのレジェップ・エルドアン大統領の任期中に現実のものとなった。もちろんトルコ軍産複合体はエルドアン大統領以前から存在し、アメリカとNATOのイニシアチブの枠組み内で成長した。トルコ兵器(無人航空機など)の多くの技術開発はアンカラとNATO加盟国、特にイスラエルとの協力の結果現実のものとなった。その後軍産複合体の成長はトルコの独立に大いに貢献した。
とは言え、トルコは、アメリカやNATOなどの外部提携者や相対的依存なしに全ての重要兵器と軍事装備をまだ提供できないことを認める必要がある。これは戦闘機、防空システム、潜水艦および水上艦にあてはまる。したがって当分の間、アンカラは武器市場の重要な参加者との外部協力を維持しなければならず、NATO加盟国を考えると、アメリカ要因を無視することはできない。アメリカ、イギリス、カナダ、スペイン、ドイツ、フランス、イスラエル、ロシア、中国は、トルコの最重要な対外軍事技術相手であり続けている。軍産複合体の成長にもかかわらず、トルコは近い将来、世界の武器輸出国のトップ3である米国、ロシア、中国を追い抜く可能性は低い。
運用中の戦闘機、特にF-16戦闘機と航空隊補充強化に関する問題にトルコが依然対処していることはよく知られている。周知の通り、アメリカは表面上、トルコとロシアの軍事的および技術的協力、特にアンカラがモスクワからS-400防空システムを2億ドルで購入したため、トルコを現在の第5世代戦闘機F-35開発納入計画から除外し、トルコへの新しいF-16の販売を拒否した。同時にアメリカはギリシャとトルコ間の勢力均衡を維持するため、とりわけトルコ空軍の戦闘力を制限することを選んだ。ワシントンは特に同じ更新されたF-16戦闘機(およびF-35戦闘機送付の可能性あり)とフランスのラファール戦闘機でギリシャ空軍の航空艦隊を強化している。
トルコ選挙に対するアメリカの圧力の一部は現在武器協力の問題を中心に展開している。言い換えれば、トルコ当局がロシアとの積極的関係のレベルを下げ、反ロシア制裁参加を増すようアントニー・ブリンケン国務長官は示唆しているのだ。キーウ政権への支援を強化し、アメリカとの完全な軍事的、技術的、政治的関係の回復と引き換えに、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するのを妨げる障害を取り除くのだ。
今年三月末、レジェップ・エルドアン大統領はフィンランドのNATO加盟に正式同意し、トルコへの軍事物資(特に近代化されたF-16戦闘機とその保守部品)再開の便宜についてブリンケンが米国議会で宣言した。ロシアとイランによってもたらされたとされる危険を考慮して、ブリンケンはトルコとの軍事技術関係回復はアメリカとNATO両方の利益になると信じている。ユダヤ人という彼の出自とイランに対する連合軍の軍事作戦への献身を考えて一部の専門家は、現在の国務長官をイスラエル(より具体的にはベンヤミン・ネタニヤフ政府)の利益の主要擁護者と見なしている。
しかしアメリカは大統領選挙の結果が判明するまでトルコへの武器出荷を急いでいない。今年の4月18日ワシントンで米国政府(具体的には国務省と国防総省の一部門で、武器と資金の輸出を担当する関連政府部門)がトルコのF-16戦闘機を259万ドルの費用で近代化するつもりだと発表した。この変更は、トルコの現在のF-16戦闘機隊のアビオニクス・ソフトウェアを更新する際の懸念に関連している。
この合意は米国議会委員会の委員長から非公式の承認を得たと言われている。ところがアメリカ・マスコミ報道によれば、議会の反トルコ・ロビー(例えば、フランク・パローン、アダム・シフ、ジャッキー・スパイアー、デビッド・バラダオ、ガス・ビリラキスなど)は、現在トルコへの新しいF-16戦闘機の数十億ドルでの売却に反対している。トルコの時代遅れのF-16戦闘機を改良する合意はフィンランドのNATO加盟をアンカラが承認し、トルコの五月選挙前夜トルコとギリシャ関係の緊張緩和をほのめかした直後行われた。
言い換えれば、フィンランドの北大西洋軍事同盟への加盟に同意するトルコの実際の決定に応え、アメリカは戦闘機ソフトウェア機器の形でトルコに259億ドルの技術支援を提供すると口頭で申し出た。ロシアには「結婚の約束は実際結婚するのと同じではない」ということわざがある。しかし実務的で投機的な西側、アメリカはおそらく次の場合約束を守るだろう。
(a)5月選挙の結果、親米指導者(ケマル・クルチダルオールか、独立から依存へと方向転換したレジェップ・エルドアンのいずれか)がトルコで権力を握った場合。
(b)トルコが次のステップを踏み出し、スウェーデンのNATO加盟を批准する。
(c)トルコがロシアとの関係に対する独立した実務的方針を放棄する。
現在のエルドアン大統領、彼の党、政府、国会議員の公式言説は、トルコが着実な独立への進路を変えないことを示しており、トルコ内政に過度に介入しているとアメリカ(欧米)を非難している。我々の見解では、エルドアン大統領は正直で、実際彼が表明した政策(言説)を守るだろう。政治の誠実さに常に頼ることはできないのは事実で、現在のトルコ当局が選挙目的のためだけに彼らの支持者投票の懸念からこれら宣言をした可能性を誰も(我々を含め)無視していない。
言い換えれば「東は微妙な問題だ」。1923年のローザンヌ会議でアタチュルクがトルコはロシアから得られるものは全て得ており、現在は主に西側とイギリス側に立っていると主張したように、様々な主観的、客観的要因の影響下でトルコが進路を変更する可能性があるのは誰も排除できない。
アレクサンドル・スヴァランツは政治学博士、教授、オンラインマガジン「New Eastern Outlook」独占記事。
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