ロシアと中国とのアメリカ二正面作戦
2022年9月10日
ワレリー・クリコフ
New Eastern Outlook
進行中の「世界的王座」からのアメリカの転落を背景にした(大統領の顔からさえ目に見える)一極世界を確保しようと努めるアメリカ当局の全くの無力さは、精神的に疲れ切ったアメリカ戦略家に、益々失敗しつつある冒険に飛びつくよう強いている。
ロシア嫌悪の制裁政策をしかけ、ワシントンが長年準備した「ニュー・ウェーブ」ヨーロッパの親米軍事・政治エリート連合を通してそれを押し付け、アメリカは自身に更なる敗北を運命づけただけではない。アメリカが引き起こした現在の金融、経済、エネルギー危機の責任を負わせて、ヨーロッパとその支配体制を犠牲にした。その結果、余りにワシントン志向の支配者の政策に対し、ヨーロッパ人の間で不満が増大しており、今後数日中にも大規模抗議行動に転換しかねない。これらは多くのヨーロッパ諸国の政府を押し流すのみならず、アメリカ自身にも同様な政治的「適応」に更に弾みをつけかねない。
そして、この「変更」過程は既にショルツ首相、アンナレーナ・ベアボック外務大臣や、露骨な「反民衆」政策と国益を損なってまでのワシントンから指示の極端な遵守に反対して、ライプチヒやケルンや他のドイツ都市でのデモで始まっている。
9月3日、チェコ共和国で、政府政策に不満な約70,000人の人々が街頭に繰り出し、ドイツの新聞「ディ・ヴェルト」によれば、ドイツの抗議集会を更に揺り動かしかねない大規模抗議行動が押し寄せている。
インディペンデントによれば、リズ・トラス任命直後、イギリスでも首相住宅の外で反政府デモが始まった。
海にこぼれ出したこの抗議行動の波が避けられないことと、アメリカ人による現アメリカ政権弾劾の脅威を理解して、不幸にも、ホワイトハウスは、内外政策の調整ではなく、当局のあらゆる大失敗を正当化するのに役立つだつという期待で、大戦争を始めることによって、現在の政治エリート集団の存在を延長する可能性を見ている。
一方、8月のウォール・ストリート・ジャーナル・インタビューで、バイデン政権の姿勢は、二つの超大国、ロシアと中国とのアメリカ関係を悪化させたとヘンリー・キッシンジャー元国務長官が強調した。古い保守派メンバーとして、キッシンジャーは、ロシアと中国を敵と見ているにもかかわらず、彼が不安定で多義性と呼ぶ、終わり方も不明確な直接の戦争ではなく、敵をお互い「戦わせる」長期の政治的、外交的ゲームで彼らを打倒する作業を促進する「賢明な」手法をとる。「我々は、これがどのように終わるか、それが何をもたらすかに関する、どんな概念もなしに、我々自らその一部を作り出した問題に対するロシアと中国との戦争の瀬戸際にある」とキッシンジャーは指摘した。
この二年間、アメリカ支配体制はロシアと中国を「封じ込める」計画に関して非常にあからさまだ。具体的に、計画は、まずウクライナでアメリカ代理人の手によりロシアと紛争を始め、ロシアが早々敗北し、恥を忍んでワシントンに屈服すると期待して、制裁でモスクワを片付けることだった。モスクワと北京との対決の次段階で、ホワイトハウスの「賢者」は敵中国も負かすのを期待し、台湾で代理を中国と戦わせるつもりだった。
だが、これらの計画は、ジョー・バイデンの政治的、精神的長寿に対する期待と同様突然阻止された。そしてバイデンの医師の「精神賦活剤」が彼を救っていないのと全く同様、ヨーロッパをエネルギー崩壊に導いた対ロシア制裁も、ワシントンによってウクライナに移転されたNATO武器のほとんど全ても、モスクワに対する勝利をもたらさなかった。だが彼らはEUを自身の安全を保証する兵器とガスがない状態にして、ヨーロッパ人は自身の当局のみならずワシントンにも説明責任があると考えている。
選んだ戦略の明確な敗北も気にせず、それでもワシントンは近い将来、太平洋戦域でモスクワと北京との武力紛争を始めることに注力するつもりだ。特に台湾海峡の状況を悪化させ、ウクライナ・モデルに習って、台湾に益々多くの武器を送り、極東でロシアとの紛争に切り替えることで。これら計画の具体的確認は、香港に本拠があるオンライン・アジアタイムズに投稿された軍事評論家Cropseyによる大論文だ。何かがそれから生じることを期待して、極東でロシア海軍との対立を強化することで、ウクライナでのワシントンの失敗を是正するよう提案している。
このような挑発的で無分別な政策で、アメリカは第三次世界大戦を目指して進んでおり、それを理解さえしていないとThe Hillが報じている。
だがホワイトハウスのもうろくした「賢者連中」はロシアと中国は、これまでで最良の関係にある事実に全く気付いていない。貿易、政治的対話の領域のみならず、日本海のような潜在的紛争地域を含め、頻繁な共同訓練を行っている軍事分野でも。核兵器を含め、中華人民共和国とロシアの統合された軍事力は言うまでもない。特に、ロシアの資源と技術と中国の工業生産を考えると、ほとんど無期限に軍事力補充が可能だが、それはNATOには当てはまらない。
恐怖症と、いかなる犠牲を払っても生き残るという願望の中、ワシントンは二正面作戦を行う不適切さに対する、政治家、特にヘンリー・キッシンジャーや、独立したアメリカ・メディア(つまりホワイトハウスからの独立)からの警告に耳を傾けるのを望んでいない。特にNational Interestは、実に客観的に、正当に、当座予算赤字でアメリカの軍事力が不十分なので、アメリカは中国とロシアと同時対決はできず、この状況で、アメリカ「戦略家たち」は、このような軍事衝突の場合、アメリカ敗北の現実を受け入れる必要性を示した。従って、この出版物は、国境と沿岸に沿って、ロシアと中国に挑戦し、封じこめる代わりに、アメリカは、限定されてはいるが、なんらかの外交を通して重大権益の要求を満たすべきだと勧めている。
ワレリー・クリコフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/09/10/us-and-the-two-front-war-with-russia-and-china/
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