ギリシャ・トルコ間武力衝突の脅威増大
2022年9月14日
ウラジーミル・オディンツォフ
New Eastern Outlook
9月5日、ギリシャのニコス・デンディアス外務大臣は欧州連合外務・安全保障政策上級代表ジョセップ・ボレルとイェンス・ストルテンベルグNATO事務局長への手紙で、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による「最近の一連の扇動的声明」に言及しトルコとの重大な紛争が迫りつつあると述べた。彼はアナドル通信の報道と、トルコが即刻の打撃を与えると、特に、アテネが両国間の領土問題が拡大するのを可能にすれば、ギリシャは大きな代償を払うことになると述べた述べたトルコ大統領声明に依拠している。
ここ数ヶ月、東地中海における紛争は非常に予想しがたい形で進展し始め、NATOがこれら二つの加盟国トルコとギリシャ間の矛盾を隠し、管理するのは益々困難になっている。何十年も続いている領土問題に、2020年に、この地域の石油とガス田の開発を巡る対立が加わった。アンカラ、アテネとキプロスが、地中海の地域を自国の排他的経済水域だと宣言した後の海での対決も同様だ。
ギリシャとトルコ間の武力ライバル関係は、トルコとの関係を悪化させる、ジョー・バイデン大統領のアテネとのアメリカ和睦示威行動を背景に、益々激化した。これら二つの加盟国の関係で、時宜を得た緊張和解におけるEUとNATOの役割に関して、対応はワシントンの指導に従うことを明らかにしていた。彼らはウクライナとアジア太平洋地域においてワシントンの軍事的野心を支持し、世界中で新たな武力衝突を扇動することで、これはアメリカに、またその延長で、ヨーロッパの軍事産業にも更なる利益を保証する。
その結果、東地中海で海上国境と領空に関する論争を含め、両国がお互いに新たな主張をして、不幸にも、この紛争は勢いを増している。それで、明らかにその行動をホワイトハウスに支持されていると感じたギリシャは、既に9月初旬、NATO作戦の一環として任務を行っていたトルコ哨戒機を迎撃しようとしたと、トルコ国防省情報筋を引用してアナドル通信が報じた。同時に、トルコ側はギリシャが「エーゲ海と東地中海で劇的に攻撃的な行動を増やして」いると強調した。トルコ領空領海への侵害数は(昨年の1,123件から、今年8カ月だけで1,616件まで)際立って増大した。8月15日以来、偵察飛行のトルコ航空機をギリシャ・パイロット追跡することが14件あった。最新の例は、この通信社によれば、9月1日に、このような事件がロードス島上空で起きた。
8月下旬、CNNトルコ語テレビは、トルコ国防省情報筋を引用して、エーゲ海と地中海の国際空域でトルコ空軍のF-16戦闘機を追跡するためギリシャがS-300防空システムを起動したと報じた。同時にトルコ・メディアが「事件は同盟の精神と両立しない」と強調した。この「敵対行為」にもかかわらずトルコ軍用飛行機は計画された任務を完了し無事基地に戻った。
9月10日、アンカラはギリシャを新たな武装事件のかどで告発した。トルコのボズジャ島南西11海里の公海で、コモロ諸島の国旗を掲げるアナトリアRO-RO船への砲撃だ。結果的に、トルコ沿岸警備隊の介入が必要だったと外交筋が述べた。
最近トルコ・ギリシャ間のあからさまな武力紛争の可能性が益々高まっていると考えているアメリカの軍事・政治刊行物19FortyFiveが、全般的なギリシャとトルコ間関係の悪化と、この事件についてコメントした。だが、その評価で、この出版物は、最近この対立でアテネのみを支持するホワイトハウスを完全に支持している。それが、東地中海における最近の出来事を、おそらく「トルコを襲った経済危機に対する大衆の怒りを避けようとして」いるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の唯一の過失として、この出版物が描写した理由だ。「ギリシャとの戦争は可能性は高く、既に差し迫っている。アテネが何か悪いことをしたためではない。だが、エルドアンは彼が失敗し、破綻している事実から何としても目をそらす必要がある。そしてバイデン政権は、トルコ侵略を防ぐため何ができるか、ギリシャがトルコ無人飛行機、飛行機やミサイルと戦うのをアメリカは、どのように支援できるか、確固としたNATO同盟国が、もう一つの連合加盟国に攻撃された時に、アメリカが座視していることが可能かどうかに関し、今後12カ月以内に疑問に答えなければならないだろう」と19FortyFiveが結論を出している。
この場合、NATOで二番目に強いとみなされているのは、もはやトルコではなく、ホワイトハウス志向の19FortyFiveに、ギリシャが「NATOの確固たる同盟国」と呼ばれていることは指摘する価値がある。トルコのR.T.エルドアン大統領の政党が権力の座に着く前は、ワシントンは明確にアンカラを支援していた。だが、この説明はうわべだけだ。16のギリシャの島が完全に国有化され、アメリカ基地がそこにあり、アンカラでいくつか疑問を提起した。この理由で、トルコは最近、これらの島の国有化に関するアメリカとNATOパートナーの説明要求で特に強硬だった。結果的に、ロシアとの和睦同様、ワシントンから自立したアンカラ政策と、モスクワから現在最も先進的なロシアのS-400地対空ミサイル・システム購入が、この地域のもう一つの「戦略的に重要なNATO同盟国」へとアメリカが方向を変えた主な理由だ。
これら条件下で、サウジアラビア、アラブ首長国連邦とイスラエルとの関係正常化を背景に、もっともなことだがトルコは最近ギリシャとの対決に焦点を合わせている。これは9月5日のエルドアン演説の一部でも確認できる。
「この機会に、最近我が国に対して圧迫と横柄さを増したギリシャを皆様に再度想起願いたい。」
東地中海でお紛争状況激化は、EUと多くの加盟諸国がギリシャを支持している事実も主な理由だ。特にフランスのカトリーヌ・コロナ外務大臣は、9月6日アテネでのギリシャのニコス・デンディアス外務大臣との会談後、彼らの国家主権が脅かされた場合、フランスはギリシャとキプロスを支持するとはっきり述べた。
だからエルドアンが欧米の政策に益々批判的なのは驚くべきことではない。これは特に最近の反ロシア政策がEUの経済とエネルギー危機の深化を招いたことを含め、ヨーロッパは自業自得だというの9月6日の彼の発言でも確認できる。
だが、このすべてにもかかわらず、アンカラが今後数カ月内に、ギリシャとの紛争を武力で解決すると予想すべきではない。そしてこれは、戦争を始めた政治家の支持率を下げかねない重大な死傷者のリスクがあるから、このような行事の前には、戦争を始めるのは一般的に普通ではなく、2023年6月に大統領と議会選挙があるのが主な理由だ。そのために、アンカラは力を得て、経済状態の改善に焦点をあてなければならず、それは平和と中東諸国とロシアとの関係正常化を更に促進する。同時に、もちろんアンカラはアメリカとEUがロシアと経済関係を完全に断絶したことで損害を感じ、モスクワに対してのみならずトルコに対しても彼らの方針を本格的に調整するよう強いられる時期を待つだろう。
ウラジーミル・オディンツォフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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