アメリカは冷戦を必要としているが、本当の敵は国内にいる
Finian Cunningham
2022年2月17日
Strategic Culture Foundation
自身の固有の欠点で、まさに本当の内部の敵である安全保障国家と対決しているのだから、アメリカの命運は限られている。
機知に富んだソ連外交官ゲオルギー・アルバートフは冷戦終結時、アメリカ聴衆にこう言った。「我々はあなた方にひどいことをするつもりだ。我々はあなた方の敵を奪うのだ。」当時、彼の発言は矛盾する表現に思われた。
アルバートフは2010年に87歳で亡くなった。だが、ソ連の崩壊と冷戦終結とアメリカの歴史的勝利と思われたことから、ほぼ30年後、彼の言葉は実に本当であることが証明されている。結果として、勝利者はいなかったのだ。
この経験豊かな外交官はソ連指導者5人のアメリカ関係顧問を勤めた。彼はしばしばアメリカに旅行し、アメリカ・メディアにとって頼りになるソ連報道官だった。アルバートフは、アメリカ社会、政治、経済と軍事組織にとっての組織原則として、冷戦がどのように機能しているかを良く知っていた。
彼は、ソ連がいかに、なぜアメリカによって「悪の帝国」として描かれるか知っていた。客観的に致命的な脅威とされるこの描写は、ソ連とはほとんど無関係だった。だが冷戦を行い、「アメリカ風の生活様式」に対するソ連という宿敵とされものを作り出すのは、アメリカ・グローバルパワーの経営上、必要欠くべからざるものだった。
軍国主義は、アメリカ資本主義と、毎年納税者により資金供給される膨大な国防総省予算の機能に不可欠だった。
ソ連という敵を持つことは「自由世界を守り」、ヨーロッパとNATO同盟諸国の後援者役を務める外見上明白な目的をアメリカに与えてくれた。露骨に言えば、この関係は、覇権とワシントンの支配と見なされた。
対ソ連冷戦の3番目の重要な理由は、それが世界中におけるアメリカの軍事的冒険への隠れ蓑だった。世界を「神を認めない共産主義」から守るという見せかけの下、アメリカは、さもなければ犯罪的侵略、大量虐殺と見なされる帝国主義戦争を遂行していたのだ。
4番目の重要な恩恵は、ひきょうな外国の敵とされるものがいることで、アメリカ支配者は国の結束が得られた。国民が国旗と「アメリカ例外主義」神話を支持すべく結集するのだ。
1991年にソ連が世界地図から姿を消したとき、ゲオルギー・アルバートフのような鋭いアナリストは、それがアメリカ崩壊の先触れにもなるのを察知した。
短期間、「冷戦に勝利」した陶酔感があった。ブッシュ父親大統領はアメリカの指導下の「新世界秩序」を宣言した。国務省の学者が「歴史の終わり」が「自由民主主義」と市場資本主義のかたちで到来したと称賛した。今や、これら祝典がどれほどはかないものに思われるだろう。
ソ連という敵の消失は、まさに本当の形で、アメリカの終焉を告げていた。第二次世界大戦以来、現代アメリカ国家のそれほど多くが冷戦軍国主義に形づくられている。ソ連の悪霊という隠れ簔がなくなり、アメリカは実態の帝国主義怪物として明らかになった。皇帝は裸だった。
ソ連が崩壊するとすぐ、アメリカは世界中でひっきりなしの戦争で暴れまくり始めた。容赦ない戦争挑発は、主に「大量虐殺兵器を防ぐこと」から「対テロ戦争」まで、「人権擁護」から「麻薬撲滅運動」まで、無数の口実の下で、アメリカの武力を行使する目的を見いだすのが狙だった。
この堕落した行為の1つの有害な結果は、国際法、国連憲章と、皮肉にも、アメリカの道徳的権威とされるものに対する腐食効果だった。世界が一方的な横柄と暴君的な病的な気まぐれをひどく嫌うようになるにつれて、アメリカの国際的地位は急落した。軍事介入のための公然の口実は、それら口実を大衆に売りこむため(うぬぼれて「出版・報道の自由」と呼ばれる)グローバル・メディア機構を持っているにもかかわらず、決して十分まことしやかではなかった。
悪のソ連帝国と戦うという、一見上信用できる国際的任務なしで、アメリカは自国をまとめる能力を失った。オズの魔法使いは無力なペテン師だ。冷戦終結とされるものの、わずか30年後、アメリカが内部の政治的混乱と煮えくりかえる敵意の大釜なのは偶然の一致ではない。一方の党が他方を反逆罪と裏切りのかどで非難し、共和党と民主党はお互いの軽蔑で分裂している。
年に7000億ドル以上のアメリカ軍事出費はグロテスクで、恥ずかしい不愉快極まりないものとなっている。無視されたアメリカ人の社会的必要性やインフラ崩壊を前に、それはますます激化する。
それがアメリカ政治支配層が絶対の必要として冷戦を復活させる必要があった理由だ。冷戦がなければ、アメリカは超軍隊化した安全保障国家として自身の内部失敗から崩壊する致命的な危険があるのだ。
これが、ヨーロッパでロシアとの危険な緊張をかき立てるための、ここ数週間にわたる向こう見ずなメディア・プロパガンダ攻勢の説明だ。これは、アメリカが絶えず中国を世界的な敵として酷評する理由の説明でもある。そして国防総省がモスクワと北京間の強化する自然な提携を「欧米民主主義を脅かす」警鐘的な有害な進展として描写しようと努めている理由だ。
だが、冷戦を復活させるのは無駄な努力だ。アメリカと同盟諸国はどんな客観的な方法でもロシアや中国によって脅かされてはいない。だから、対決の危険を冒すほどまで理由がない地政学的緊張を起こしながら、ロシアと中国を悪魔化するのは、アメリカにとっての短期的隠れ蓑役にこそなれ、結局口実として十分ではあるまい。自身の固有の欠点で、まさに本当の内部の敵である安全保障国家と対決しているのだから、アメリカの命運は限られている。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategicCultureFoundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2022/02/17/the-us-needs-cold-war-but-real-enemy-is-within/
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今朝の孫崎享氏メルマガ題名
ウクライナ問題に関する米国の反応、10-14日世論調査、もしロシアが侵入した時、軍を送るべし32%、送るべきでない57%、トランプ氏 プーチン大統領「天才的」と称賛 WP「ウクライナで和党はバイデンを批判することで一致、だがどう対応するかには見解割れ」
「トランプ氏が、プーチン氏の独立承認を『なんて賢いんだ』と絶賛! バイデン氏の弱い制裁のおかげで『ロシアは金持ちになっている』と毒舌」2022.2.24号~No.3451号
米シンクタンクCSISの職員が「ロシアがウクライナに傀儡政権を樹立することが最悪のシナリオ」と話す! 朝日新聞は、この発言を批判的検討抜きで報じ、日本の大手メディアの劣化を露呈させる!
ケイトリン・ジョンストン説通り、「マスコミは直接CIAに運営された方が良い」見本の記事。東部の二国にしか興味はあり得ない。
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