ウクライナと長いゲーム
パトリック・アームストロング
2021年8月4日
Strategic Culture Foundation
モスクワが辛抱強いほうが良いと知ったのには、実にもっともな理由があるとパトリック・アームストロングが書いている。
我々が武力を使わなければならないとすれば、それは我々がアメリカだからだ。我々は不可欠な国だ。我々は堂々と立っており、他の国々より、未来が良く見える。
いや、あなた方は不可欠ではない。あなた方は見えていない。
プーチン大統領か習主席、日時と出典は不明
マイダン・ウクライナ神話では、2014年、腐敗した親ロシア大統領が、主として穏やかな反乱で、嫌悪の念を抱く一般市民に打倒されたことになっている。彼の保安部隊による穏やかな抗議行動参加者の大虐殺後、彼は亡命した。民主主義が復活した。新政府が選出された。「改革」が「進行し」始めた。だがモスクワはウクライナをそっとしておくまい。ロシアはクリミア半島を占領し、偽りの国民投票による征服を祝福し、次に東で戦争を始めた。等々。この物語は欧米で広く行き渡っている。
それはほぼ完全にウソだ。例えばマイダン後のウクライナ建国神話「天国の百人の英雄」を例にとろう。カナダ人学者イワン・カチャノフスキは、証拠を細心に検証した後、極めて説得力がある方法で「抗議行動参加者たちは、マイダンが支配する場所から、隠れた狙撃手に撃たれた」ことを示した。cui bono(誰の利益になるのか)が動機の指標だと考える人々にとって、この虐殺は、まとまったばかりのEUが仲介した合意をお釈迦にしたのだ。ビクトリア・ヌーランドの不朽の言葉がある。「EUなどクソくらえ」おお!ヤッツは六日後に首班になった。ヌーランドは、ワシントンの50億ドルが「ヨーロッパの未来」「正義」「人間としての尊厳」と「健全な経済への復帰」を作り出したと言った。彼女はセバストポリ#5学校改修にアメリカ海軍が入札したことに言及しなかった。もう一つのcui bono(誰の利益になるのか)の例だ。
七年後、ウクライナはひどい状態だ。私はウクライナ・ビジネス・ニュースの事実以上に良い実例を思いつけない。
ウクライナ人移住労働者による送金が、今年133億ドルに達すると予想される。2019年と2020年の記録的な実績120億ドルより11%多い。今年は、労働が食糧に続き、金属より上で、ウクライナで二番目に大きい輸出になると予想されている。
要するに「改革実行でのウクライナの進歩」に関する全てのたわごとは、ウクライナが黒土地帯にある事実と、外国で、金持ちの隣人のために働いている国民のおかげなのだ。産業空洞化は、ほぼ完了した。アントノフ社は去り、ユジマシ社は苦闘し、ドンバスは去り、黒海造船所は倒産した。ここに要約がある:
見てお分かりの通り、最も強力な産業の可能性を持っており、ほとんど全ての産業生産物を、自身にも、他の共和国にも提供可能なソビエト社会主義共和国連邦の共和国から、ウクライナは、農業原料加工や林業企業だけが活動する領土に変わった。ウクライナの完全な産業空洞化は、実際、完了した。
世論調査は、圧倒的多数のウクライナ人が、現状を良くないと見なし、3分の1が、更に悪くなるとを予想していることを示している。あらゆる点で状況が更に悪化する。食品、送金、ロシアのガス通過料、IMF融資。ウクライナには、ほとんど経済はない。
ヌーランドの「正義」「人間としての尊厳」や「健全な経済への復帰」は言葉に過ぎなかった。学校入札はワシントンの本当の関心を明らかにしている。ヤヌコーヴィッチ打倒は、彼の最初の打倒、今や忘れられたオレンジ革命と、更に一層忘れられたユシチェンコの再演だ。狙いは、ウクライナをロシアから離し、ナチの輝かしい栄光の日々に、常に郷愁的なガリシア人に権限を与え、強い反ロシア感情を吹き込むことだった。ロシアにより近い陣地を獲得せよ。十分なプロパガンダ資金。理想的には、ロシアが侵入するよう誘いこむのだ。更なる敵意、更なる制裁が、果てしない戦争に、ロシアをはまりこませるかもしれない。しかし常にロシアにとっての問題だ。
それはどのようにうまくいったか?
ウクライナがモスクワが対応しなくてはならない突然の危機を作り出したのは疑いがない。だが、これは二つの方法で機能する。ウクライナのゼレンスキー大統領がクリミア半島を「解放する」頃合いだと宣言し、一部の軍隊を東へ動かした時に、非常に良い例がこの春生じた。二週間以内に、モスクワは二つの軍団と、空挺団を動員した。特に、印象的だったのは、部門と軍団レベルの砲兵隊、2S4重迫撃砲、2S7長距離砲、イスカンデール戦域弾道ミサイルとカスピ海艦隊の艦船船だ。NATOとワシントンは文句を言ったが、ゲームは終わり、危機はおさまった。確かに、モスクワにとっては、うんざりで、他に、やりたいことから気を散らすもので、危険な可能性もあったが、恩恵もあった。動員体制は本物の演習ができ、思慮ある人々は、ロシアが、二週間で、NATOがどんな時間枠で集められるより多くの致命的な軍隊を動員できることを知った。(中国に対するアメリカ軍事演習の「惨めな失敗」直後に。)クリミア半島「侵略」後、ロシアに課された制裁は、1990年代言われていたように、食糧の半分を輸入しなければならないどころか、今や食糧輸出国となるようロシアの食糧生産を構築するため、巧みに使われた。他の制裁も、ロシアの国内生産に役立った。一方では、経費で、いらだたせるものだが、他方恩恵でもある。
だから、全体として、ワシントンの「ウクライナ策略」は、その意図で失敗したということができる。ロシアは傷ついたが、立案者連中が望んでいたほどではなかった。だが、アメリカが、ロシアは、何も生産できず、経済は核兵器と石油だけだと言う連中に運営されている時、他に何が期待できよう?(ちなみに、まさしくその週、ロシア製モジュールがISSに接続した。)彼らが再び間違っていたのに驚きはない。同じ連中が戻ってきたのだから、連中は間違えるだろう。
ロシアの戦略は、辛抱強さの長いゲームだ。つまり、クリミア半島の人々に、彼らが1954年以来欲していたことを決めるのを可能にする最初の迅速な動きの後は。それはワシントンを驚かせ、セバストポリがアメリカ海軍基地になるというどんな考えも阻止した。だが、その時以来、戦略は辛抱強かった。ドンバスの反政府派の敗北を避けるため、時折こっそり自分に有利になるようにしながら、誘惑は避けて。ロシア軍は手っ取り早くウクライナを侵略することができたはずだが、それには中心部の西部でのゲリラ戦という代償が必要だった。プーチン・チームは、それにだまされるには、余りに賢明だ。
ガリシア人があやつる悪夢から、ウクライナ人が自らを解放し、ロシアとの合理的な関係へ回帰する未来のために、時折、モスクワは、その意思を示す。捜査当局がウクライナで犯された多数の犯罪を記録し、七月、欧州人権裁判所、それら事件を提出した。事件は今調査されるという大きな期待はない。「人権」は現在一方向だが、将来は調査されるようになるかもしれない。
ロシアとウクライナに関するプーチンのエッセイと、それに続く彼の発言は、フロイトがウクライナ人で、古代の神々はウクライナで生まれ、言語は金星からだという、ばかげたことに没頭していないウクライナ人に向けられている。そうした人々は一体何人いるのだろう? ワシントンが考えているより遥かに多い。最近のウクライナ世論調査が、ウクライナ人の41%が、ウクライナ人とロシア人は一つの民族だというプーチンに同意していることを示した。55%は反対だ。(すべての問題に関してと同様)東と南の大多数多がプーチンと意見が一致する状態で、ウクライナの分裂は、ここで見られる。だが現在のウクライナの公式説明は、モスクワが「キエフ・ルーシの歴史を乗っ取り」、関係はないというものだ。「モクセルの土地のフィンランド民族集団とキエフ・ルーシとは、どんな関係を示すものはない」。だがプーチンは、いつの日か、これが放棄され、ウクライナとロシアは協力の未来を作れると期待することができる。(必ずしも団結ではなく、ドイツとオーストリアや、カナダとアメリカなど、異なる政治組織で暮らしている極めて良く似した人々について彼は話している。)
だからクリミア半島での迅速な動き以来、それがモスクワの戦略だった。多くの人々が突然の粉砕を好むだろうが、私がここで主張しているように、モスクワがなぜ、辛抱強いほうが良いことを知ったかについては、実にもっともな理由がある。
だから、モスクワは、ある程度、ワナにはまった。実に賢明な策謀者はどうだろう?まあ、最初は金だ。ウクライナは極めてわずかな利益のために多くを消費した。期待が高かった2014年、IMFは180億ドルを語っていた。2021年、IMFは「条件が満たされなかったから」、次回分を保留した。「条件」が満たされたことは、あったのだろうか?これは欧米が益々興味を失っているという発表のように聞こえる。だが借金は残っており、抵抗はしているものの、ウクライナには略奪する最後のものがある。農地だ。だが、エコノミック・ヒットマンの告白をご覧願いたいが、それが、そもそも負債の核心だ。トランプの最初の弾劾は、ウクライナについて、彼がしたり、あるいはしなかったりしたこと、についてだった。誰ももう思い出したり、気にかけたりしないが、それは当時、非常に重要だと言われていた。ウクライナ・スキャンダルの報いが来たのだ。御用メディアは無視しているが、にもかかわらず知られている、ハンター・バイデンのラップトップも報いが来たのだ。更に、ウクライナには、ナチ問題がある。欧米は彼らの存在を軽視しているが、ウクライナには、簡単に言うと、間違った連中が第二次世界大戦で勝ったと信じる、良く似た連中を引き付ける完全武装した集団がいるというのが事実だ。彼らは次世代を産み出すため最善を尽くしている。ウクライナが完全に朽ち果て、略奪された後、彼らは、どのような長期的影響を持つだろう? 2014年、デア・シュピーゲル紙は、ウクライナを巡って、EUがどのようにロシアを失ったか説明した。今振り返って、価値ある交換に見えるだろうか? ウクライナには多くの原子力発電所がある:我々は、それらがよく管理され維持されると我々は確信しているだろうか? ワシントンは、おそらく前のパイプラインに反対したのと同様に、ノルドストリーム2に反対したのだろうが、ウクライナの関係が、それにもう一つのきっかけを与えた。アメリカは最終的に現実を認め、ノルドストリーム2を阻止するのをやめたが、それでドイツとの関係で何を代償にしたのだろう? ネオコンの失敗に加えるべきものには、アフガニスタン、イラク、リビアや他のものがある。
だが、これは細部に過ぎない。最も重要なもつれは、事態そのものだ。様々な約束、支援、計画、関与と干渉、NATO、EU加盟や他の干からびたニンジンの後、キエフは席を占めている。なだめられなければならない、もう一つの反ロシアの声。危機を、戦争さえも、始めることができるもう一人の当事者。制裁者を傷つける更なる制裁。会議の全議題の未解決項目。属国に、ワシントンに屈服するように強制する別の問題。立場を逆転して采配を振るうもう一つのしっぽ。そして最終的に国内の政治的脆弱さ。ノルドストリーム2で、バイデンがメルケルに降伏し、プーチンへのバイデンの贈り物は、実戦経験がない素人戦士を叫ばせる。
もちろんワシントンやその属国は、ウクライナ(ソマリア、リビア、アフガニスタンや、その他を見よ)から歩き去ることができる。彼らの信頼性に対する評判は傷つくが、それも、さほど残っていない。他方、ロシアは歩き去ることができない;だが欧米の永遠の大親友連中Bに破壊され、捨てられたウクライナは違うウクライナだ。またしても長いゲームだ。
人の頭の上でれんがを振り回す悪漢にまつわるロシア小話がある。お前は、このれんがを買いたいか?いや、けっこう。お前は、これを買って、運試しはしない方が良い。誰がウクライナのれんがを買うだろう?
パトリック・アームストロングは、1984年から、カナダ国防省でソビエト社会主義共和国連邦/ロシアを専門とするアナリストで、1993年-1996年、在モスクワ・カナダ大使館カウンセラー。2008年に引退し、以来ネット上でロシアと関連話題について書いている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/08/04/ukraine-and-the-long-game/
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殺人入管、インチキ最終結果。
東京新聞朝刊一面左には、この件について、望月衣塑子記者の署名解説記事がある。更に複数ページで詳細を書いている。
大本営広報部洗脳番組、五輪の後、見る時間が減った。youtube番組をより長時間見て(聞いて)いる。
UIチャンネル ウィシュマさん事件についても触れておられる。
対談 望月衣塑子(東京新聞社会部記者) × 鳩山友紀夫 1時間25分
とことん共産党 既に映画を見た方にも、これから見る方にも、おすすめの番組。
映画『パンケーキを毒見する』監督と語り合う”菅政権”論/とことん共産党 2021.8.10 1時間18分
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