タリバンか地方軍閥と暮らす覚悟を
Brian Cloughley
2021年7月13日
Strategic Culture Foundation
アメリカと世界の他の国々は、勝者と暮らす覚悟をしなければならない。どのように、そうするかを計画し始めた方が良い。
7月4日はアメリカ独立記念日だが、この週末、祭日の初日、7月2日に、アメリカ兵が、20年間占領していたアフガニスタンの巨大なバグラム空軍基地から、ひっそり抜け出したのは皮肉だった。同時期に、バイデン大統領は記者会見をしていて、こう質問された。「あなたはアフガニスタン政府が崩壊しかねないのを懸念していますか?我々はタリバンが、益々多くの地域を獲得していると聞いています。」大統領の答えは整然とはほど遠く、アフガニスタンの将来がどうなるか彼は全く分かっていないだけでなく、いくつかの点で大いに気がかりだ。
彼の散漫な答えはこうだ。「我々は、20年間、この戦争をしていた。20年。ここホワイトハウスの大統領執務室で、私はアフガニスタン政権幹部と会った。私は彼らには政府を維持する能力があると思う。今後、より多くの交渉が必要だと疑う。だが私は、彼らが全国的に、政権を維持するのに必要な種類の支持を作り出すことが可能でなければならない内政問題の対処を懸念している。」彼は更にもう一つアフガニスタンに関する質問をされたが、「私は楽しいことを話したいと思う」と言って記者を遮った。
楽しいこと?この人物はおとぎの国に住んでいるのだ。彼の国はコロナウイルスで世界最多の死者数を経験しただけでなく、ワシントン・ポストの分析が「2021年最初の5カ月に、アメリカでは、銃撃で、8,100人以上の人々が亡くなり、一日に約54人の命が失われている」ことを示したが、それはニューヨーク・タイムズが2077人(1461人の兵士と警官、616人の一般市民)と計算し、同期間のアフガニスタンでより遥かに多い死者だ。バイデンは彼の最良の、最も賢明な補佐官連中と座って、アフガニスタンに関する将来のアメリカ政策など、重大問題に関して話をするべきだ。
7月5日、スターズ・アンド・ストライプスは、アメリカ軍が「ほぼ20年後、電気を止め、[7月2日]夜、基地の新アフガニスタン人司令官に通知せずに、アフガニスタンのバグラム空軍基地を去り、この司令官は、その二時間以上後にアメリカ人の出発に気がついた」と報じた。どんな国であれ、このような行動をとるとは信じ難いが、バグラム基地指揮官に任命されているミル・アサドゥッラー・コヒスタニ大将は「我々はアメリカ人がバグラムを去ったという、うわさを聞いた。最終的に午前7時までに、彼らが既に去ったことが確認されたと理解した」と述べた。
この奇異な行動は、カーブル政権に対するアメリカ背信の例証であり、ここ数週間、益々激しい攻撃を受けて、揺らいでいる保安部隊の士気をそこなうのに役立った。7月5日、隣接するタジキスタンに、1,000人以上のアフガニスタン軍兵士が逃亡したのは、近づく大惨事に世界の注目を集めた屈辱だった。
7月4日、ABCニュースで放送されたインタビューで、アフガニスタンの米軍司令官スコット・ミラー大将は、タリバン戦士は「力を増して」おり、「我々は懸念すべきだ。領土の損失は懸念すべきだ。」と言った。ミラーは「私は困窮している友人の元を去るのは好きではないが、治安情勢を見ると、良くない。タリバンは活気づいている。」と認める礼儀をわきまえてはいたが、これは危機の一週間に対する、おそらく究極の控えめ表現だ。彼や全てのアメリカ-NATO軍連合が、それに対して、できることは何もない。彼らは大混乱状態にある国を去り、困窮している友人を見捨てているのだ。
「アフガニスタン反政府派は、外国軍が去るのがいつであろうと、いつまでも続けるだろう。しばらくして、カーブル政権は崩壊するだろう、残忍な、無情な、麻薬で裕福な地方軍閥が権力を掌握するまで、無政府状態になるだろう。彼は、常にアフガニスタン人が支配してきた通りに、彼は国を支配するだろう。報復を恐れずに実行可能な恫喝、宗教的凶暴性、虚偽、贈収賄と、むき出しの残忍さによって。最近の外国軍による占領は、もう一つの記憶になるだけのことだ。」と2005年10月に私は書いていた。
2005年-2006年、タリバンは、更に多くの新兵を引き付け、国じゅうで常に増大する暴力行為を実行して、回復し始めた。同時に地方軍閥連中も各自の地域における立場を強化し、民兵を拡大し続けた。外国軍と航空機が押し寄せ、アフガニスタン軍は治安任務を引き継ぐべく訓練された。だが戦争は続き、アメリカ-NATO軍連合は「それにより、アフガニスタン政府が国全体で権限を行使できる条件を作り出すことを目指し、アフガニスタン治安軍の能力を構築する」ため、いわゆる国際治安支援部隊を率いた。NATOによれば、これは「2014年12月、アフガニスタン人が彼らの国の治安に対する全責任を負った時に完了していた」。
だが、アフガニスタンの治安状況は低下し続け、今全ての外国人は、アフガニスタンを、このアメリカ人司令官によれば、タリバンが「力を増し」「地域の損失は懸念だ」状態にしたまま、国外へ慌ただしく去っている。
7月8日、イランに隣接するアフガニスタン西部のヘラート県で、タリバンは二つの主要国境検問所を占拠したころ、バイデン大統領は、アフガニスタンについてもう一つの発言をしていた。彼の(再び痛々しいほど支離滅裂な)発言後、彼は「タリバンを信頼しない理由」を問われて、こう答えた。「それは愚かな質問だ。私がタリバンを信頼するか?いや。だが私は、より良く訓練され、より良い装備のアフガニスタン軍は、戦争を行う上で、より有能だと信頼している。」これは、「あなたの諜報機関が、アフガニスタン政府は崩壊する可能性が高いという評価への彼の答えと同様、全くのでたらめだ。彼は言った「それは本当ではない。彼らはそうしなかった。彼らはそうしなかった。その結論に達しなかった」。これは「新しいアメリカ諜報評価は、アメリカ軍撤退から六カ月内に、アフガニスタン政府が崩壊しかねないと言う」というウォールストリート・ジャーナル報道と真っ向から矛盾する.
アフガニスタン政府が、まもなく崩壊し、この国が、より大きな混乱に陥ると予測するのにアメリカの巨大な諜報能力は不要だ。バイデンは「究極的にアフガニスタンでの平和と安全への唯一の方法は、(今や諜報機関でなく、ジョー・バイデンが言っているのだが)タリバンとの共生をなんとかまとめて、どのように和平できるかについて、彼らが判断をすることだ。」と考えていると発言した。
7月7日、イランで、数人のカーブル政権代表との会談には希望の兆しがあったが、タリバンと、うまくやっていくのは容易ではない。彼らは「戦争はアフガニスタン問題に対する解決ではない」と共同声明で述べたが、バイデンに、彼らを信頼しないと言われているのでは、彼が仲介したいと望むような和解には、熱心に関与しようとはするまい。現政府が崩壊した後、タリバンと地方軍閥の間で、内戦が続くだろうが、誰が頂点に立つかは誰にも分からない。
何が起きるにせよ、アメリカと世界の他の国々は、勝者と暮らす覚悟をしておかねばなるまい。彼らは彼らがどのようにそれをしようとしているかを計画し始める方が良い。
Brian Cloughleyは、イギリス軍とオーストラリア軍の退役軍人、元カシミール国連軍事使節副団長、元在パキスタンのオーストラリア国防担当大使館員。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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バッハ氏 首相に有観客検討要望 というニュース。腹立たしい発言専門。なめているとしか思えない。
何がなんでもPCR検査は強化せず、ワクチン一本槍打法急減速。という、まっとうな現状分析の後、オリンピック翼賛内容に切り替わる大本営広報部番組。見ていられずに消した。
デモクラシータイムス 山岡淳一郎のニッポンの崖っぷち
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