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2021年6月 3日 (木)

ベラルーシの未来

Brian Cloughley
2021年6月1日
Strategic Culture Foundation

 ルカシェンコは、NATOをモスクワと争うよう仕向けて、両方からうまい汁を吸おうという方針を持っているように思われるとBrian Cloughleyが書いている。

 反体制派の人物が、奇異としか言いようのない状況で拘留されたため、最近世界の注目はベラルーシに集中している。ギリシャからリトアニアの首都ビリニュスへの飛行途中だったライアン航空4978便のミンスクへの目的地外着陸は、不要で、合法性が疑わしいだけでなく、ベラルーシにとって、広報や、国内反応や、外交政策上、惨たんたるものだった。(ほぼユーゴスラビアやアメリカのカンザス州と同じ大きさの)ベラルーシは、小さく、ささやかな経済で、陸封だが、その位置と国際的つながりは重要だ。

 ライアン航空の最高経営責任者マイケル・オレーリーは、即座に行動を開始し、アテネで、この航空機に搭乗した5人がビリニュスに到着しなかったとリトアニア警察が述べたとニューヨーク・タイムズが報じた後「オレーリー氏は、一部の乗客は、依然ソ連時代のイニシャルで知られているベラルーシ諜報機関の工作員だったかもしれないと述べた」。彼は「あの空港で降りたKGB工作員も何人かいたと思う。」と語った。これは大いに報道された好都合な面白い主張だったが、全く正しくないことが明白になり、熱が冷めた。BBCが報じているように、航空機がリトアニアに到着した際、実際、乗客は五人少なかったが、拘留されたジャーナリストのロマン・プロタセヴィッチとガールフレンドの他はミンスクで降りる正当な理由がある他の一般人三人だった。

 だが何らかの形で、モスクワを事件と結び付けようとするメディアによる、あらゆる努力のおかげで、欧米の首都で憤慨が増した。これは、イギリスの果てしない、悲しくも馬鹿馬鹿しい議会パントマイムを休んで、この便の目的地外着陸と、プロタセヴィッチ拘留が「少なくとも、モスクワ当局の黙認なしで」行われたとは"到底信じがたい"と発言したドミニク・ラーブ外務大臣にも支援された。彼は正確に何が起きているかは「まだ不明だ」と付け加えたが、なぜ目的地外着陸が、ロシアが知らずに起きたはずがないのかと記者に問われると、この考えは「全ての状況から判断したが、我々にはわからない。もっぱら、ミンスクとモスクワの関係の近さゆえだ。」と彼は答えた

 これが現在行われているイギリス外交政策の様相だが、この馬鹿馬鹿しさが軽薄とはいえ、このような発言の、大衆に対する影響が減るわけではなく、モスクワを非難する、この見せ物が、他の何人かの政治家にとって黙殺するには余りにおおごとだったのが証明されたのは理解できる。最初にリングに上がった一人は、ラーブ同様、表面的だが、彼の反ロシア政策を待ち受ける支持者がいるアメリカ上院議員ベン・ザッセが「もしバイデン大統領が「関与した連中に、責任を取らせる適切な選択肢」を望むなら、彼の政権は、ウラジーミル・プーチンへの圧力を強化する必要がある。あらゆる傀儡指導者同様、ルカシェンコは、モスクワの許可無しには、トイレを使わない。彼がモスクワの祝福なしでNATO同盟国間の便をハイジャックすると想像するのは空想だ。彼の大切なノルドストリーム2パイプラインに対する制裁をアメリカが中止したため、プーチン政権が、つけあがったのだ。我々は今晩、制裁を課すべきだ。」と発言した

 この上院議員は、非難で「空想」という言葉を使ったが、ルカシェンコによる4978便の違法な目的地外着陸が、何らかの形で、ノルトストリーム2パイプラインと関係しているという彼の主張と、この飛行機が「NATO同盟国間を」飛んでいたという事実以上突飛な声明は、まずありえない。もし4978便が「NATO同盟国」ではない二国間を飛行していたら、それでも彼は悪質だと考えただろうか?この議員の発想の愚劣さは気掛かりだが、NATOに対する彼の言及は、無意識ながらも啓発的だ。

 ロシアを、この航空機事件と結び付ける試みで、ラーブとザッセ上院議員にイェンス・ストルテンベルグNATO事務局長も加わった。ロシア国境付近での軍事訓練を含むNATO演習中、イギリス航空母艦クイーン・エリザベス甲板で、ストルテンベルグは「我々はロシアとベラルーシ間の非常に親密な関係を知っており、それゆえ、ミンスク政権がロシアとのいかなる調整もなしに、このようなことができたと信じるのは困難だ」と語ったと報じられた。ロシアが何らかの形で関係していたと断言する連中の誰も、その「考え」を証明する一片の証拠も提示していないが、彼らの発言は欧米主流のメディアで広範に報道され、その結果、ロシアとの対決で、もう一つの強化のために用意させられている膨大な数の人々に信じられることになる。NATOが全てなのだ。

 1999年に始まったアメリカ-NATO軍の拡大は、おおむね成功しているロシア国境周囲での兵力派遣拡大という目標を維持している。「NATOの前方プレゼンス」と公式に呼ばれるものを、ラトビアと黒海の地域で、ロシア国境で実現するためには、ジョージアやウクライナやベラルーシを北大西洋条約に署名させる必要があるのだ。

 ジョージアは、既に「同盟の最も緊密なパートナーの一つで、ジョージアは同盟加入を熱望している。ジョージアは、NATOに率いられる作戦に積極的に貢献し、同盟諸国や多くの他地域のパートナー諸国に協力している」とNATOによって記述されているが、(6月14日のNATOサミット出席は招待されなかったが)ウクライナも親密な軍事同盟者だ。5月27日、ラジオ・フリー・ヨーロッパは、ウクライナのゼレンスキー大統領が「黒海地域におけるプレゼンス強化をNATOに要求し、NATO加盟行動計画というキエフの試みを、サミットで支持するようワシントンに求め」たと報じたが、いずれにせよ、NATOは、黒海内や、その周辺で活動を拡大する過程にあり、ロシアとの対決の上で、キエフのより深い関与をアメリカが実際要求する可能性は高い。

 だがベラルーシはNATOにとって問題で、ルカシェンコは、NATOをモスクワと争うよう仕向けて、両方からうまい汁を吸おうという方針を持っているように思われる。公式のNATOの立場は、この関係は「共通の利益の追求に基づいており、対話の窓口を維持している。協力の重要な分野には、民間防衛と防衛改革がある。NATOは民主改革の速度を加速するよう求め続け、これら分野で改革を実行するためベラルーシと協力する。」だが定期航空便の愚行は、ベラルーシをNATOに引き入れることが可能な将来の動きの道を開いたのだ。

 欧米がミンスクに課した経済封鎖は(欧米政府とメディアが精力的に支持する)国内の不満の増大を促進し、ベラルーシで、クーデターをもたらしかねない。公正で客観的なカナダ放送協会が述べている通り「ライアン事件前には、ルカシェンコを権力の座から追いだす勢いは停滞したように思われた」が、この便の目的地外着陸への惨たんたる対処で、彼を退陣させる国内反対者の活動を刺激したことが明白になった。これはモスクワに対する活動の勝利と見られるだろうから、(アメリカが支援するウクライナ・クーデターがそうだったように)欧米に歓迎されるだろう。

 ミンスクで権力の座につく人物は誰であれ、NATOかモスクワいずれかとの同盟という厳しい選択に直面するだろう。ベラルーシの未来は難題に満ちており、次期政権が、NATOの「前方プレゼンス」を奉じる罠に落ちないよう期待したいものだ。

 Brian Cloughleyは、イギリス軍とオーストラリア軍の退役軍人、元カシミール国連軍事使節副団長、元在パキスタンのオーストラリア国防担当大使館員。

 個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/06/01/the-future-for-belarus/

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