朝鮮民主主義人民共和国との緊張をトランプが高めている理由
Finian Cunningham
2019年12月25日
Strategic Culture Foundation
18カ月にわたる朝鮮民主主義人民共和国との断続的外交の後、今トランプ政権は「最大の圧力」と敵意という、以前のキャンペーンに逆戻りし、もろい和平交渉を放棄する決意が強いように思える。それは悲惨な戦争の危険を冒す退行的な動きだ。
今週の中国訪問で、韓国の文在寅大統領と中国の習近平主席は、緊張の復活は誰のためにもならないと言って、朝鮮民主主義人民共和国との外交プロセスでのより大きな可能性を強く主張した。二人の指導者は主張を修正する必要があるかもしれない。緊張は、誰か、ワシントン、に大いに役立つのだ。
トランプが平壌と共に再び緊張を高めている理由には、二重の計算があるように思われる。それは、領土への米軍駐留に対し、より多くの金を韓国からゆすり取るため、ワシントンにとって、大きな力になるのだ。第二に、トランプ政権は、この緊張を、中国と対決することを目指す地域の軍隊を増やす口実として使うことができるのだ。
ここ数週間で、ワシントンと平壌間の言い合いは急激に悪化した。朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)は、トランプに対し、もうろくした「老いぼれ」という言い方を再開し、他方アメリカ大統領は、今月早々ロンドン近郊でのNATOサミットで、北朝鮮代表金正恩のことを「ロケット・マン」と呼ぶかつての軽蔑的言い方を久しぶりに使った。
12月7日と15日、朝鮮民主主義人民共和国が、大陸間弾道弾(ICBM)の差し迫った試験発射のための準備と思われるロケット・エンジンを、ソヘ人工衛星発射場で実験した。朝鮮民主主義人民共和国は、合衆国との外交の身振りして、2018年4月、一方的にICBMテスト発射を止めた。最後の発射は、2017年7月4日で、当時、平壌はあざけるように、それをアメリカ独立記念日の「贈り物」と呼んだ。
今月早々、平壌はワシントンに「クリスマス贈り物」を準備していると言った。これはICBMテスト再開に言及するものと解釈された。だが、平壌はどの贈り物をするか決めるのは、アメリカ次第だと言った。
エンジン・テストについて、トランプは、何の朝鮮民主主義人民共和国が次に何をするか「しっかりと見守る」と言い、彼は平壌に対し軍事力を使用する用意を調えており、金正恩は"あらゆるものを失う"と警告した。
外交に背を向けるのは奇妙に思われるかもしれない。トランプは、2018年6月、初めて現職アメリカ大統領が北朝鮮代表と会った画期的サミット、シンガポールで金に会った。2019年2月、ハノイで、2019年6月、韓国国境の非武装地帯で更に二度のサミットがあった。後者では、北朝鮮の土地に足を踏み入れた最初のアメリカの大統領となり、トランプにとって素晴らしい写真撮影の機会だった。
この外交的抱擁の際、トランプは金を褒めちぎり、「美しい手紙」に対し彼に感謝した。2017年9月、両国が敵対的言説をやりとりした際、もし北朝鮮がアメリカを脅迫したら、朝鮮民主主義人民共和国を「完全に破壊する」とトランプは国連議会で語った。トランプのやり方は、何と気まぐれなことか。
起きたのは、交渉するという当初の約束の完全な行き詰まりで、トランプ外交の浅簿さを示している。朝鮮民主主義人民共和国の核開発活動を制御しているとアメリカ国民に自慢する広報活動のからくりにしか、アメリカ大統領は興味がなかったのは今や明らかに思われる。
2019年6月、トランプが三度目に金と会った際、彼らは朝鮮半島の非核化交渉を再開すると誓ったと報じられている。最近まで、朝鮮民主主義人民共和国はICBM実験を止めるという誓約に忠実に取り組んでいた。だが、それに対し、平壌は制裁緩和問題、少なくとも部分的制裁解除に関し、アメリカ側の返礼を期待した。金は制裁で何らかの譲歩をさせるべく、トランプに今年の終わりまで期限を課した。
先週、ロシアと中国は、朝鮮民主主義人民共和国に対する国連制裁の緩和を提案した。だがワシントンは、それは「早過ぎる」動きで、朝鮮民主主義人民共和国は、まず核兵器備蓄の完全廃止に向かって、逆転不可能な措置をとらなければならないと断固主張して、提案を拒絶した。高圧的態度は、進歩には、ほとんど貢献しない。
これまで6カ月にわたるワシントンによる外交的返礼の欠如が、平壌を怒らせ、それ以上の会談を拒否するよう仕向けたのだ。平壌は、金に対する品位をいやしめるトランプの中傷再開を激しく非難した。トランプ選挙運動の小道具に使われたことに対する、朝鮮民主主義人民共和国の明らかないらだちもある。
ワシントンが制裁に関して譲歩しない姿勢をとった事実は、ワシントンが平壌との有意義な外交追求に決して真剣ではなかったことを意味するだろう。
韓国との大規模アメリカ軍事演習を、戦争のための挑発的演習と見なす朝鮮民主主義人民共和国に対する意思表示として、トランプは確かに中止した。これは軍事演習の中止をアメリカの経費削減の機会と見るトランプにとっては、確実に容易な譲歩だった。
今月、アメリカ特殊部隊が、韓国特殊部隊と、外国人標的を捕獲する奇襲攻撃をシミュレーションする「斬首」訓練を行ったことは重要だ。しかも、この作戦には、マスコミが異様なほど注目した。
聯合ニュースはこう報じている。「Defense Flash Newsによるユーチューブ動画が作戦の詳細を見せているが、兵士が発煙弾を投げ、建物内の事務所を急襲し、その過程で、敵兵に発砲し、戦闘機が建物上空を飛行する。当局者によれば、米軍が、このような内容を公開するのは異例だ。」
トランプ政権は、朝鮮民主主義人民共和国との外交の、更なる用途のタネが切れたように思われる。PR価値がとことん利用された。政策は転換し、今や敵意へと戻っている。それがもたらす不安定は、ワシントンにとって二つの意味で有益だ。
現在トランプは、韓国への米軍駐留に対し、韓国の財政貢献を増やさせようとしている。「アメリカによる防衛に対し」涙が出そうな5倍増、年間50億ドルものツケを、ソウルが支払うのをトランプは期待している。もっともなことだが、韓国は、予算から、これほど膨大な負担を支払うのは気が進まない。この問題に関する会談は、こう着状態にあるが一月に再開が予定されている。
もし朝鮮民主主義人民共和国とアメリカの関係が、外交により改善し、半島での緊張が下がっていれば、韓国への、より多くの「みかじめ料」というワシントン要求に、明らかに役に立たない。だから、対立を高めて、戦争の危険を増すのは、ソウルの金庫を空にする上で、ワシントンにとって引き合うのだ。
朝鮮民主主義人民共和国に対するアメリカの狙いを形成する、もう一つのより大きな戦略上の問題は、もちろん中国とワシントンの長期的な衝突コースだ。アメリカ当局者も防衛計画文書も、繰り返し、中国を地政学上の主要対立国として標的にしている。韓国駐留米軍は、28,500人の兵と核兵器搭載可能爆撃機と戦艦とで構成されており、対ミサイル終末段階高高度地域防衛システム(THAAD)は韓国を朝鮮民主主義人民共和国から守るのが狙いではない。実は中国(とロシア)包囲が狙いだ。実際ワシントンは朝鮮半島軍事駐留縮小を望んでいない。駐留を拡大するという戦略上の願望に突き動かされているのだ。
今月早々、メディアへのコメントで、マーク・エスパー国防長官は、アフガニスタンからアメリカ兵を撤退させることに言及した際、奇妙にも、うっかり本音をもらした。中国と対決するため、兵士をアジアに配置転換すると言ったのだ。
エスパーはこう述べた。「私は[アフガニスタンでの]兵員削減に触れたいが、それは、私がこの部隊を帰国させ、他の任務に向け、再装備したり、再訓練したりするか、我々の最大の課題、覇権国としての競合で、中国と対決するため、インド-太平洋に配置転換したいと望んでいるからだ。」
戦争の利益や、中国との戦略上摩擦の論理は、トランプとワシントン支配体制が朝鮮民主主義人民共和国と平和的解決を見いだすのを望んでいないことを意味している。それ故の、敵対的緊張強化への回帰なのだ。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/12/25/why-trump-winding-up-tensions-with-north-korea/
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昨日、New Eastern Outlookで下記記事を読みかけたところだった。
そして、今朝の日刊IWJガイドの見出し
日刊IWJガイド・土曜版「政府が自衛隊中東派遣を閣議決定! 事実上の『参戦』の始まりを国会審議も経ずに!! 」2019.12.28日号~No.2662号
メイン号、ルシタニア号、トンキン湾事件、リバティー号、最近は、日本タンカー攻撃を思い出す。
同じ筆者による記事 「偽旗合州国」もお読み願いたい。
そして、ポール・クレイグ・ロバーツ氏の記事翻訳も アメリカ艦船リバティー号に対するイスラエルによる攻撃
「アメリカ艦船リバティー号に対するイスラエルによる攻撃」、検索エンジン、いや隠蔽エンジンではトップに出ない不思議。逆に、お読みいただく価値がある、と証明(隠蔽)されたようなものではあるまいか。
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