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2019年9月23日 (月)

アメリカの農業危機は次期大統領を決定するのだろうか

2019年9月16日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

 アメリカの農業部門は、1980年代以来、最悪の危機を経験している。この春と夏の中西部農業ベルトでの極端な雪と、それに続く異常に多い雨量で、植えつけが遅れるか、減っている。これが数年続く農業収入下落の後に起きているのだ。石油産業に対するアメリカ環境保護局による一連の免責が、トウモロコシ由来エタノールの市場を急激に削減した。さらに悪いことに、トランプ政権の中国商品に対する関税への報復として、中国が全アメリカ農産物の輸入を止めた。アメリカ農民に破産が広がり、最高記録の債務で苦闘する中で、この全てが起きている。状況を農業における大恐慌の危機に例えるむきもある。農業生産は長らく、アメリカ経済と輸出の大黒柱だった。このほとんど知られていない農業農危機はドナルド・トランプが2020年に再選で勝つか負けるかを決定する要因になり得るのだろうか?

エタノール大失敗

 これまで数年にわたり農家収入が劇的に下がっている時に、トランプの環境保護局は、E10燃料用エタノール生産に使われるトウモロコシの市場に更なる大打撃を与えた。8月9日、環境保護局は、トウモロコシ・エタノール精油業者にガソリンへの義務的混合を避けることを認め、審議中の小規模精油所38社の31社に適用除外を認めたと発表した。認可は、バイオ燃料法に反して、2018年にそ及し、精油業者に10億ガロン以上のトウモロコ由来エタノールの義務的混合を避けることを認めたのは、アメリカ・トウモロコシ裁培者に対する大打撃だ。

 さらに悪いことに、石油産業寄りのトランプ環境保護局は、最初は石油産業の強力な後援者スコット・プルーイット、今は彼の後継者の元石炭産業ロビイストのアンドリュー・ウィーラー下で、苦しんでいる小規模精製業者だけを助けるはずだった法律に違反して、シェブロンやエクソンモービルのような企業を含め、記録的な数の精油業者を免除した。免除は、これまでオバマ政権下で免除されたものの約四倍で、トウモロコシ由来エタノール消費量の上で大きな損失を招いた。

 環境保護局は、さかのぼって行動して、2016年から2018年までの期間、40億ガロン以上のエタノールに等しい14億ブッシェルのトウモロコシ収穫、主要トウモロコシ生産州ミネソタの一年丸ごとの収穫を失うのに等しい免除を与えた。アメリカのエタノール・ロビー組織は、法律で必要とされている通りに、失われたエタノールの量を、トランプ政権が復活させるよう要求している。エタノール連合、グロウス・エナジーCEO、エミリー・スコールが述べた。「毎週益々多くの生物燃料プラントが閉鎖し、農家家族は選択肢が無くなっています。環境保護局は、2020年の生物燃料目標の下で失われた損害を修復し、エクソンやシェブロンのような石油業界大手に認められ、悪用された精製所免除による損害を修復するための行動を即刻とらなくてはなりません。」

 ブッシュ政権が2005年のエネルギー政策法令を提案して、空気清浄法を改正して、環境保護局に、石油やジェット燃料を暖めて、ガソリン燃料で、生物燃料、主としてトウモロコシ・エタノールの年間量を義務づけ、混合するよう要求して以来、燃料添加物としてガソリン燃料、暖房用油やジェット燃料のガソリン混合用のエタノールを作るためのトウモロコシ栽培が、アメリカ農業の原動力となった。今日、アメリカのエタノール生産の増加は極めて大きく、アメリカのエタノール生産のほぼ40%が、エタノール用だ。現在、アメリカのガソリンの10%は、エタノール入りのE10だ。現在、アメリカは世界最大のトウモロコシ生産者で、第二位の中国のほぼ二倍だ。

 環境保護局の石油産業に対する免除は、中西部州、特にアイオワ、ミネソタ、イリノイ、ネブラスカとインディアナのアメリカ・トウモロコシ農民に大打撃を与えた。今までトランプ政権は、トウモロコシ農民のエタノール市場に対する損失に対処するいくつかのジェスチャーをした。だが、農民とエタノール連合は、それがあまりにわずかだと主張している。注目すべきことに、特にアイオワでの2016年キャンペーン中に、トランプはある量の生物燃料を毎年燃料供給に加えることを義務づける2005年の再生可能燃料基準を守ると誓った。多くの農民は、環境保護局に裏切られたように感じている。

 ホワイトハウスは、主要な選挙資金寄贈者の石油産業に対する大きな支援と、2016年の大衆支持で、2020年再選に重要な切り札である「アメリカを再び偉大にする」農業地帯の中心部への支援との間の板ばさみになっている。

 環境保護局のエタノール裁定は、決してホワイトハウスから来ている否定的なものとして農民が見ている唯一の行動ではない。中国との貿易戦争も、アメリカ農産物輸出に巨大な打撃を与えた。

中国貿易

 トランプの中国貿易紛争前に、中国が大気汚染に対処する取り組みを強化するにつれ、アメリカのエタノール生産者は,中国市場は主要な成長分野になり得ると楽観的だった。2018年早々、トランプ政権が関税をあげて戦争をエスカレートし、中国がエタノール輸入関税を2018年7月に70%引き上げて、アメリカ農業部門に標的を定めて対応するまで、アメリカからの中国エタノール輸入は着実に増加していた。それは本質的にアメリカのトウモロコシ農家とエタノール生産者にとっての中国エタノール市場を殺した。アメリカの輸出はブラジルのサトウキビ由来エタノール主要生産者たち取って代わられている。

 だが、中国エタノール輸出の損失は、アメリカ農業にとって、中国損害の比較的小さな部分だった。トランプ貿易行動に対して、北京は政治的に重要なアメリカ農場部門に、彼らの対抗策の対象を、寸分の狂いもない正確さで定めた。重要なのは、習近平が、若い頃、交換留学制度で、アイオワで数カ月過ごし、多くの外国の国家指導者より良くアメリカの農業地帯を知っていることだ。

 8月初旬、報道によれば、中国政府は、国家の買い付け企業に、トランプ・アメリカ大統領が、9月1日時点で中国輸入でさらに3000億ドルに関して追加の10%の関税を命じると発表した後、全てのアメリカ農業産品の輸入を止めるよう命じた。それ以前に、中国は、既にアメリカ大豆輸入を10年来の最低に削減していた。

 2017年、貿易戦争が本格的に始まる前、中国は、アメリカ大豆生産高全体の約60%の1900万トン、約120億ドルの価値のアメリカ大豆を輸入していた。中国は、アメリカ農業の主要部門であるアメリカ大豆農民にとっての最大輸出市場だった。中国への大豆輸出はアイオワ農業にとって主要輸出先だった。貿易戦争前の中国へのアメリカ農業輸出、全体でほぼ200億ドルと見積もられている。2012年以来、中国はアメリカ農業輸出にとって最大市場だった。それが今ほとんどなくなって、彼らが対処する余裕がほとんどない時期の、アメリカ農民に対する驚異的打撃だ。

複合する諸問題

中国農業輸出市場の最近の損失と相まった、トランプ環境保護局に帰せられるトウモロコシのエタノール市場損失は、アメリカ農民が不安定な状態にある時に起きた事実以外は、深刻だが、対処可能だろう。アメリカ中西部全体の農業地帯の記録的降雨が、この季節以前に植えられた地域と、特にトウモロコシと大豆両方の収穫高の大きな減少を意味する。現在のアメリカ農務省のアメリカ・トウモロコシ収穫見積もりは、大豆同様「良いから、かなり良い」状態で、2013年以来最も低い。

 様々な理由で、農場の純所得は劇的に下がった。アメリカ小麦価格は、2012年から約50%下がった。トウモロコシ価格は2013年から50%以上安値だ。正味の農業収入は、これまでのところ、2013年のピークから、2019年には35%に下がっている。これは現在の穀物不足や、洪水や、中国からの衝撃や、エタノール効果を考慮する前のものだ。

多額の債務

不幸にも、この全てが、ほとんど記録的な債務のアメリカの農業家族を見舞っている。正味の農場収入が、これまでの10年間の多くにわたり、低かった中、農業債務は際立って上昇した。平均の農業債務は、2018年始めの時点で、長期的に、農場毎に130万ドルにも上昇している。現在の農業危機は、破産の増加を引き起こしている。連邦準備銀行がこれまで二年利率を引き上げる状態で、農民がより良い時期を期待して、債務を借り換えることは益々困難だ。結果は破産の増加だ。2018年、農業純収入は、既に12年で最低だ。今年2019年は、遥かに悪くなるはずだ

 一部の農民は、トランプ大統領の任期に対する彼らのこれまでの支持を再考し始めているのは驚くべきことではない。全米農民組合委員長のロジャー・ジョンソンは、8月のラジオインタビューの終わりに、トランプの農業と貿易政策にひき起こされた損害を修復するには「数十年」かかると指摘した。中国はトランプの貿易戦争のおかげで、今アメリカ農民にとっては「失われた市場」だと彼は付け加えた。ジョンソンは補足した。「農民は現在の多くの財政的圧迫を受けている。農業純収入は6年前の半分だ。これは本当に厳しい。我々は今、実に困難な立場にある。」

 ただ彼が中国を引き受けることをサポートしたということが一部の理由で、エタノール生産者、アイオワ州アトランティックのエリート・オクタン社CEOニック・ボウデッシュは、2016年には、トランプを支持した。最近彼は「彼が農業政策問題に関与して以来、ここ中枢地域では、我々の誰にとっても完全な期待はずれでした。」と言った。彼はニューズウィーク・インタビューで「大統領が道を誤り、重大な過失をしたのは、彼がこれら精製所への免責で、地元の農産物の市場破壊を始める決断をした時だった。」と付け加えた。彼らが中国との貿易戦争によって大打撃を受けた正にそのとき、それが農民に打撃を与えたが「それは受容できない」。

 最初の大統領予備選挙まで約四カ月の現時点での結果は、明確からはほど遠い。最近の中国貿易とエタノールでの挫折後、弱まってはいるが、大半の農民は、まだトランプを支持している兆候がある。今中国は、トランプによる貿易上の譲歩のお返しに、進んで大豆の取り引きをしようとしている兆しがある。もしそうなれば、それはトランプに対する農場の支持に必要な後押しかもしれない。2020年の最初の大統領予備選挙は二月だ。それはアイオワだ。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師。プリンストン大学の政治学位を持つ石油と地政学のベストセラー作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/09/16/will-the-us-farming-crisis-determine-the-next-president/

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 自民・公明政権、もう悪夢そのもの。農業が主力の県では、さすがに非与党の知事が当選するが。

日刊IWJガイド「与党は衆院災害対策特別委員会の開催を先送り!? 本日23日、台風17号が日本海を通過!千葉県を始め、 台風15号で大きな被害を受けた地区にお住いの方は急な風雨の強まりにご注意ください!」2019.9.23日号~No.2566号~(2019.9.23 8時00分)

 自分たちを売り飛ばす屠殺業者に投票する家畜のような行動をとる方がなぜ多いのか考えたいので、孫崎享氏の今日のメルマガにある新刊『日本国の正体 「異国の眼」で見た真実の歴史』をこれから買いにでかけよう。

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