ソルジェニーツィンは40年前アメリカの退廃的破たんを正確に予測していた - (ロシアTVニュース)
マイケル・クウィン
2019年1月6日日曜日
本記事はRussian Insider初出。
このTV映像は11月中旬のものだが、ソルジェニーツィンに関するニュースとして、我々は現在放映している。アメリカ中間選挙と、その調子が、どれほど無作法であるかの議論で始まり、次にソルジェニーツィンの非常に良い議論となっている。
彼の有名な先見の明ある1978年のハーバード大学講演「引き裂かれた世界」は非常に正確に、現在の欧米での文化的衝突を予測していた。
彼は未来の凋落と退廃を引き起こすものとして、過度に個人主義的な欧米イデオロギーをあげている。
「個人の権利の擁護が行き過ぎて、社会全体を無防備にしています。社会は人間の究極の退廃から自らを守る術をほとんど持っていないように思われます。」
この退廃はアメリカ中間選挙での卑劣な戦いの種々な動画で見られる。国の二大政党間で、協力ではなく、このような極端な憎悪が当たり前になっている時に、どのような民主政治が持続可能だろう?
書き起こしは以下の通り。
書き起こし:
火曜日、アメリカで中間選挙が行なわれた。肝心な点はトランプ大統領がアメリカの議会上院における彼の立場を強くしたということだ。彼は上院の過半数を得た。それは弾劾されないことを意味する。トランプは大統領職を継けるだろう。
だが議会下院では、トランプは足場を失った。今彼は下院で少数派になっている。下院は国の外交政策を決定する議会なので、重要問題についてトランプと合意することは明らかに不可能なことを意味する。トランプにとって、諮問機関に過ぎない。
知事も選出された。興味深い事実は、アメリカの全ての知事に、この選挙後、一人も黒人知事がいないのだ。どう思われようと。 一人もいないのだ。
下院の女性議員の数は増大した - フェミニストの動きのうねりで。インディアン部族初の公然レスビアンさえおり、アメリカ民主政治の偉大な実績だと思われる。同様、初のイスラム教議員もおり、並外れたこととして広く論じられている。
アメリカ選挙運動の特徴は異常などう猛さと抑制のない無礼さだ。例をあげよう。CNNの政治評論家アンナ・ナヴァロは、放送で、トランプ大統領のことを気安く「人種差別主義の豚」と呼ぶが、これは普通のこととして、穏やかに受け取られている。
とは言え、このスタイルは、アメリカの二大陣営、共和党と民主党の、お互い相容れない考えと深い憎悪さえ反映している。
アメリカ・エリートの分裂の残虐さは選挙後も消えず、このような上流社会の態度からは、アメリカ人は何も良い結果には出会うまい。アメリカ人は内戦で胸をつかれるような経験をしたことがないのだ。
抑制する動機は皆無だ。だが不快さは増大しつつある。皆が憎しみを抱き、皆が憎まれるというエリート状況がある。同時に政治闘争の文化はばらばらに壊れつつある。
ここに重要な点がある - ニコライ・ベルジャーエフが社会の持続可能性のための文化の優位性について書いている。
「社会生活で、精神的な優位は文化にある。社会の目標が達成されるのは政治や経済ではなく、文化によってだ。大衆の価値と質は、高品質の文化水準によって測られる。」
つまり、文化の質が大衆の質を決定するのだ。これはハーバード大学での有名なソルジェニーツィンの講演を思い出させる。アレクサンドル・ソルジェニーツィン生誕百年祝賀も間近だ。
記念日が近づく中、彼がよく知っていた欧米の象徴、彼が追放されていた期間、暮らしていたアメリカに関する彼の考えを語りたい。適切で、新鮮で、知性面で大胆に聞こえる40年前の言葉は予言だった。
アレクサンドル・イサーエヴィッチは「優位性が見えないこと」と「勇気の衰え」は「終わりの兆し」だと語った。法的規制だけでは決して社会に十分ではなく、道義的基準が必要だと語った。当時、知的なアメリカ人は、彼の言葉に拍手喝采した。
アレクサンドル・ソルジェニーツィン:「私は共産主義政権の下で私の全人生を生きてきたので、客観的な法的基準の一切ない社会がどんなに酷いものかお話できます。しかし法法的基準以外の基準が一切ない社会も、同様に人間の暮らしはふさわしくありません。」
更に社会の利益と個人の利益の相互関係に触れ、人間中心主義に反対意見を述べている。
アレクサンドル・ソルジェニーツィン:「個人の権利の擁護は社会全体を無防備にするほど極端になっています。破壊的な、責任を負わない自由に無限の空間が与えられています。社会は人間の究極の退廃から自らを守る術をほとんど持っていないように思われます。」
ハーバードは息を殺して聞いたが、結局ソルジェニーツィンは、欧米民主政治という考えのまさしく核心について語っていたのだ。
アレクサンドル・ソルジェニーツィン:「そういう考え方では、地球上のすべてを判断し評価する基準は人間です。利己心、ねたみ、虚栄心、その他多くの欠陥から決して自由ではない不完全な人間。我々は旅の初めに気付いていなかった過ちの結果を、今経験しているのです。
ルネッサンスから今日に至るまで、我々の経験は豊かになりましたが、我々の熱情や我々の無責任さを抑制していた至高の全き存在という概念を失ってしまったのでず。政治的、社会的な改革にあまりに多くの希望を置きすぎ、結局は、我々の最も貴重な財産を失ったことに気がつくのです。我々の精神的生活です。」
自制に光を当て、人生を始めた時より良い人間になって人生を終えられるよう向上するようにという呼びかけだった。ソルジェニーツィンは物質主義のアメリカと、実際人間に、次の段階に、彼の言葉で言えば「人類学上のレベル」に向上するよう呼びかけていたのだ。
アレクサンドル・ソルジェニーツィン:「人間生活と人間社会の基本的な定義を修正するのを避けることはできません。人間が万物の長だというのは本当でしょうか? 人より至高の霊はないのでしょうか? 人間の生活と社会活動が、物質的な拡大だけを尺度に決定されることは正しいのでしょうか? 我々の精神的完全さを犠牲にして、このような拡大を促進することは許されるのでしょうか?」
そう、このようなソルジェニーツィンの深い荘厳な考えに思いをいたし、我々自身を考えることは今日極めて有益だ。我々自身と、ソルジェニーツィンが40年前それほど力があるように聞こえたアメリカを、考えるために。
本記事はRussian Insider初出。
訳注:複写、頒布の自由等を明記したクリエイティブ・コモンズ・ライセンス英語文が最後にあるが、翻訳は省略させていただく。法律文書、数式など、意味がわからないものを訳す能力がないという単純な悲しい理由。
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ハーバード大学でのソルジェニーツィン講演日本語訳は『世界を動かした21の演説』クリス・アボット著 清川幸美訳 英治出版刊、125ページから146ページに掲載されている。
https://www.americanrhetoric.com/speeches/alexandersolzhenitsynharvard.htm
本人ロシア語発言の原文書き起こしは、例えば下記で読める。
https://rg.ru/2018/06/08/garvardskaia-rech-solzhenicyna-v-chem-izian-zapadnoj-demokratii.html
講演の中で、「日本も西欧の一員になったのかもしれないが、自分では判断しかねる。」といった趣旨の発言がある。日本のことには、残念ながら詳しくなかったのだろう。
今朝の日刊IWJガイドにびっくり。宗主国が押しつける理不尽な憲法破壊・侵略戦争での傭兵化や、地位協定には一言も文句を言えないくせに、韓国のことになると、狂ったように吠えたてるポチ精神。属国傀儡政治家は、属国国民の象徴。
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