今出現しつつある世界秩序
Eric ZUESSE
2018年11月19日
Strategic Culture Foundation
第二次世界大戦後の世界秩序は、戦争で、国民のわずか0.32%(最も低い比率)しか死亡しなかった第二次世界大戦主要戦闘国の一国により独占された。アメリカだ。これに対し、戦争で死亡したソ連人の数は最も多く、アメリカの4.28倍、13.7%だった。アメリカは日本を破った主力で、アジアで第二次世界大戦も勝ち取った。一方、ソビエト社会主義共和国連邦はドイツを破った主力で、ヨーロッパで第二次世界大戦も勝ち取った。ソビエト社会主義共和国連邦は、勝利の実現に、アメリカより遥かに多くの損害を受けた。アメリカの4.28倍の率で戦死者を出したのに加え、ヤン・ルドヴィクが計算しように、戦争に投入されたソビエト社会主義共和国連邦の財政支出は、アメリカの戦争用財政支出より4.8倍も多かった。
それで、戦争の終わりには、ソ連は疲れ切り、戦争前よりずっと弱い状態にあった。対照的に、アメリカは領土内で起きた戦争は皆無で、(比較すれば)戦争に引っかかれてさえおらず、戦争後に出現した、明らかに圧倒的に新しい最有力の世界強国だった。
それが1945年の実状だった。
アメリカ政府はその巨大な戦後の優位に手をこまねくことはなく、それを拡大すべく賢明に投資した。戦後アメリカ投資の最初の一つは、今やアメリカ支配階級の属国となった欧州諸国を再建するためのマーシャル・プランだった。大損害を被ったソビエト社会主義共和国連邦は、その属国(再構築)に投資する余分な現金はなかった。さらに、ソビエト社会主義共和国連邦の共産主義政権は、需要に関する有用な情報や、計画者のための建設的情報を含まない価格を作り出すカール・マルクスの労働価値説によって両脚を縛られていた。(企業が私有か公営かにかかわらず、いずれにしても計画は不可欠だ。)だから、ソビエト社会主義共和国連邦は欧米との経済競争で負ける定めにあり、冷戦は、まさに戦後時代の初めから、彼らにとって、実際勝ち目のない課題だった。第二次世界大戦後のアメリカ支配と、法外なマルクス経済理論とが相まって、東ヨーロッパの人々の欧米大移動を引き起こした。
アメリカの支配階級はそれで、一層、国際的に頂点へと上昇した。あらゆる支配階級と同様、アメリカ支配階級の主な関心は外国貿易で、アメリカ多国籍企業が、今や属国の支配階級が所有する競合企業を犠牲にして、アメリカ支配階級の企業とブランドが、益々拡張し、あらゆる資本主義世界を支配するようになった。成長という虫は、もし中毒になれば、それ自身病気だ。制御不能の、生体を破滅させ得るガンだ。これがアメリカで起きたのだ。共産主義世界も征服することが、究極的にすべての国、世界全体を支配するためアメリカ支配階級の長期目標だった。1980年までに、アメリカ支配階級の第一の目標(世界支配)は、アメリカ政府の第一の目標にもなった。ガンは文化の脳にまで転移した。成長は「貪欲は善」という経済学に後押しされ、ほとんど(十分酷く、益々帝国主義的攻撃性で、2003年にイラク、2011年にリビア、2012年にシリア、2014年にウクライナ、2016年にイエメン、そして多分、今はイランのようだ)愛国的な、国の単なる経済モデルではないと見なされるアメリカ宗教となった。
挑戦の余地のないアメリカ支配は以来、現在まで続いているが、明らかにその終わりが近づいている。アメリカ政権は、ソ連に対する秘密戦争を、1990年2月24日に開始し、ソ連後の(1991年後の)世界的優位を復活させようとしている。今や必死にもがいているアメリカ支配階級に、平和な覇権の終わり、最近まで挑戦の余地のなかった世界支配終焉の受け入れを強いるため、アメリカ同盟国によって、何かが行われなければ、間もなく、第三次世界大戦という頂点に達するだろう。ソ連と共産主義とアメリカNATO軍事同盟の鏡像ワルシャワ条約が1991年に消滅しているのに、平和の配当は皆無で、戦争兵器売り上げと征服から利益を得るごく少数の億万長者に対する富の集中が増すばかりで、そろそろアメリカは、成長中毒を放棄しないと第三次世界大戦に至る今の道を進むことになる。それが現在の道筋だ。
11月14日「ワシントン・ポスト」のジョシュ・ロギンによれば、マイク・ペンス副大統領は、ロギンの表現では「アメリカは、太平洋地域に対する影響力や支配を北京に譲る意志はなく」もしアメリカが要求する全てを中国が実行しないなら、アメリカは中国に完全に言うことを聞くよう強いる用意があると言ったばかりだ。同紙は以前「アメリカは重要な事実に直面しなければならないと言って、10月9日、「アメリカは重要な事実に直面しなければならない。西太平洋は、第二次世界大戦後、何十年もの間そうだったような、一極アメリカ海軍の湖では、もはやないのだ。中国が大国の地位に復帰したことで、確実に一層複雑な多極状態になる。アメリカは、インド太平洋地域で、中国空軍と海軍力用に、少なくとも若干の空間を作らなければならない。」というロバート・D・カプランの記事を掲載していた。。だがアメリカ政権は、今そうするつもりがないことを明らかにしつつある。
アメリカ政権は、ロシア・中国両国に、アメリカの全ての要求に従うよう断固強いるつもりのようだ。両国に対し、イランと同様、アメリカ政権は今熱い戦争で恫喝している。トランプは「交渉人」として一切譲歩せず、ひたすら従うべきで、さもないと、という要求しかしていない。アメリカは第三次世界大戦を恫喝している。だが今回、一体どの国がアメリカ同盟国なのだろう? もし多くのヨーロッパ諸国がアメリカを放棄したら、どうなるのだろう?
アメリカ政権にとっての鍵はアメリカ・ドルを世界準備通貨として維持することだ。
ロックフェラー・キャピタル・マネジメントのグローバル・フォーサイトは、2018年第三四半期号の「ドルをしのぐものは、まだ何もない」という見出しで、チーフ・インベストメント・ストラテジストのジミー・チャンがこう書いている。「準備通貨という地位は、その財政処理上、アメリカに重要な利点を与えている。アメリカ人エコノミスト、バリー・アイケングリーンは、アメリカが百ドル札を印刷するには、わずか数セントしか費用がかからないが、他の国々がその百ドル札を入手するには、100ドルの実際の商品、あるいはサービスを産み出す必要があると述べている。世界がドル紙幣を必要としていることが、アメリカが自身の通貨で、非常に低い金利で国債を発行するのを可能にしているのだ。後に大統領になったフランスのバレリー・ジスカール・デスタン財務大臣は、アメリカの優位を表現するため[1965年に]他のあらゆる国の通貨に対する米ドルの「途方もない特権」という用語を造り出した。」この「途方もない特権」は決して消滅しなかった。チャンはこう結論づけている。「王者のドルについては、短期展望は強固に見える」。だが今その意見に同意する観察者はごくわずかだ。益々多くの国が、商品を自国通貨建てにしており、中国元とEUユーロは、ドル支配を終わらせ、アメリカを本拠とする国際企業がドル優位により享受している利点を終わらせる、特に重要な競争相手なのだ。
ドル支配以外の、世界平和への重要な障壁は、北部侵略諸国の軍事同盟NATOだ。EUが、当初はNATO(つまり、アメリカ政権)と同盟するだろう自身の軍を持つという提案が出された。11月17日、ロシアのテレビが「EU軍: ヨーロッパにとって、アメリカの政治的な絶対命令から逃れるのは容易なのだろうか?」という番組で、特にNATOに留まる可能性が高いアメリカ属国を指摘した。イギリス、ポーランド、オランダ、ラトビア、リトアニアとエストニアだ。多分他のEU諸国とロシアは、正式に、それらアメリカ属国の独立に献身する、彼ら自身の軍事同盟を構成することができ、個別の平和条約を歓迎し、侵略は、アメリカ政権だけの手法で、戦争ではなく、平和の基礎を敷くべく前進するだろう。明らかに、アメリカを支配する連中は、各国の主権や、あらゆる場所の人々の自決権を尊重する代わりに、侵略とクーデター(政権転覆)中毒になっている。アメリカの征服中毒は、実際、すべての他の国を脅かしている。
多分、刷新された、本当に独立したEUこそが、新しい準備通貨と、諸国間の世界平和のための違う方法の基盤を提供できるだろう。これにはNATOは無条件で反対だろうが、それは起こり得る。もしそれが、いつか実現すれば、アメリカ戦争国家を操る支配階級という獣を飼いならせるかもしれない、だがこれが近いうちに起きる可能性は低い。11月15日、アメリカのニュース論評サイト、Unz.comでの「Saker」による勇敢な記事「退役軍人の「軍務」に、なぜ感謝するのだろう?(日本語翻訳はこちら)」は、それに向かう前進だ。彼は第二次世界大戦後、全てのアメリカ侵略が犯罪であったこと、それが延々と続く著しい悪であることを大胆に指摘している。これは同様にいくつもの国を破壊した多くのクーデターさえ含んでいない。
民族主義は、ヒトラーのドイツ時代に悪であったと同様、今日のアメリカでも悪だ。民族主義は他のいかなる国においても、人々に敵対的だ。それは征服を要求する。民族主義が支配するどこにおいても、愛国心は死に、民族主義に取って代わられる。
愛国心を復活させ、民族主義を排除することによってのみ、第三次世界大戦を避けることができる。ドル支配の終焉は、支配階級の渇望を満たすのでなく、大衆の必要のために尽くすことに焦点をあてる、国際的に平和な世界に向かう道筋の一環だ。 けれども、NATOを終わらせることも同様に必要だ。
こうしたことが実行されるか、あるいは第三次世界大戦になるか、いずれかだ。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/11/19/world-order-that-now-emerging.html
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所用を終えて帰宅すると、高安と貴景勝の取り組み。その後、『さくらと民子、そして…~山田洋次が描いた家族のかたち~』を見た。
考えて見ると、あのドキュメンタリーの内容、今朝の孫崎享氏のメルマガとつながっている。地方の生活共同体の暮らしと、都会の孤独。
重要論文紹介:米国社会、約半数が時々ないし常に孤独ないしのけ者にされて(“left out.”)いると感じている。世代ごとにこの感覚が増強。左右の極端なグループに「共同体」を見出し、「他」への軽蔑で「我々」意識増強。これを煽る「産業」。
今朝の日刊IWJガイドで下記記事を拝読。それが、ゆ党の役目。
緊急事態条項創設の危機を目前にして「これからの対応を決めていきたい」などと公党の代表が言っている場合か!? 11.21 国民民主党・玉木雄一郎代表の定例会見で明確になった玉木代表の危機感のなさ! 2018.11.21
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