真実の基盤として、感情が、証拠に取って代わりつつある
2018年9月22日
Paul Craig Roberts
真実が下り坂にある一つの理由は、真実が証拠に基づくのでなく、感情に基づくようになりつつあるためだ。感情が全てなのだ。これはフェミニストから始まったように見えるが、女性に自分の感情を信じろ、感情は真実だという教えは、女性更衣室だけに留めておけない。それは男性更衣室にも広がり、今や一部の若い男性の病にもなっている。
私はこれを読者の電子メールで知った。一部の方々は、私がプーチン支持派から、プーチン反対派に衣替えしたように彼らに見えることで当惑しておられる。彼らは、私がなぜプーチン支持をやめたのかを知りたがっている。言い換えれば、プーチンの政策に対する私の懸念が強まっているのを、私がもう彼を好きではないと彼らは解釈しているのだ。
私はプーチンに対する私の感情についてではなく、プーチンの政策について書いている。挑発を無視する彼の政策は、しばらくの間は十分意味があった。ヨーロッパ人に、プーチンは、ワシントンと違い、分別があり、対決姿勢ではないことを実証したのだ。プーチンの寛容さと責任ある振る舞いは、ワシントンがヨーロッパ人の頭に吹き込む“ロシアの脅威”というイメージとは対照的だ。ワシントンによる攻撃を可能にする存在から、それに対する障害へと、ヨーロッパが変わるというのが希望だった。
もう一つの頬を差し出す政策の問題は、それが更なる挑発を誘発し、しかも挑発の度合いが強くなりかねないことだ。私が提起した疑問は政策に関するもので、プーチンに関するものではない。意図した目的を実現するのではなく、更なる挑発を誘発する政策に一体いつまでしがみついているのだろう?
ロシアに対し、より責任ある態度へと変わる一部ヨーロッパ政治家の動きもあるが、これも単にトランプにうんざりしたことの反映かもしれず、あるいは彼らを再度抱き込むため、ワシントンから、より大規模な助成を引き出す策略かも知れない。ワシントンとイギリスの政府による更なる挑発と、ロシアに対する更なる侮辱的な振る舞いを相殺するのに十分な動きなのだろうか?
これが私が提起した疑問だ。それはプーチンに対する私の感情とは全く無関係だ。挑発の強化が核戦争という結果になるという私の懸念の表明だ。プーチンの、穏やかな反応、あるいは反応皆無の政策は、ヨーロッパがロシアに対するワシントンの攻撃的態度へのブレーキとなる結果をもたらしてはいない。逆に、プーチンの政策は一層強烈な挑発を招いている。今、ワシントンは、もし、シリアがイドリブ県を解放しようとしたら、シリア攻撃すると言っている。ワシントンは、ロシア・エリートに対する更なる経済制裁を課しており、それにより、彼らはプーチンに対し一層敵対的になるだろう。ロシア民族主義者は、ロシアの名誉を守り損ねていることで、プーチンに怒り出している。プーチンの政策は、成功のための処方箋には見えない。
だから、問題はプーチンがこの政策を継続すべきか否かなのだ。
プーチンはこの政策を十分長い間続けているが、彼は何段階か前に断固とした措置をとって、挑発をやめさせるべきだったと思うのだ。そうすれば世界に、愚かなアメリカ人とヨーロッパ人が世界を核戦争に押しやっていることが伝わっていたはずなのだ。これでヨーロッパ人やアメリカ議会の一部の目をさまさせ、他の国々が、落ち着くようワシントンに圧力をかけることになるはずだと思うのだ。ワシントンが殺戮して、ただで済んでいる唯一の理由は世界がそれを受け入れているからで、世界がそれを受け入れているのは、強力な国がワシントンに立ち向かうのを世界が目の当たりにしていないからだ。
私は間違っているかも知れない。それでも私の疑問は妥当だ。政策が望みどおりの結果を招くのか、それとも望みどおりの結果の逆を招くのかを評価する必要があるのは、私ではなく、ロシア政府だ。
感情ではなく、The Sakerが第五列と呼んでいる、大西洋中心統合主義者やロシア・ユダヤ人ロビーの物質的利益ではなく、証拠と理性的思考を常に働かせる必要がある。
プーチン大統領とロシア国民に対する疑問は、戦争をすることなしに、ロシアがワシントンの支配から自立した主権国家であり得るかだ。ロシアが素早く断固とした態度に出ない限りか、ロシアの降伏か核戦争が唯一の選択肢になってしまうのではというのが私の懸念なのだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/09/22/emotion-is-supplanting-evidence-as-the-basis-for-truth/
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筆者は、記事に対する「コメント」を受け付けていないが、この文章だけでは、意味が通じないかも知れないので、筆者が言及している「読者の勘違い」を招いたと思われる記事の一つをあげておこう。
Putin’s Hesitation Has Lost Syria’s Idlib Province
宗主国トップのウソ八百演説でも聴衆は多いが、むくんだ腹話術人形が空虚な原稿を代読するのにつきあう物好きはまばら。いっこく堂公演とは格が違う。
大本営広報部の愚劣呆導バラエティー、時折見るたびに、見ている自分の愚かさが悲しくなる。解毒効果を期待し、IWJインタビューを拝見している。昨日は岩上氏による明治大学・山田朗教授インタビュー第3弾。明治150年の虚妄に対するこうした言説、大本営広報部は決して扱わない。
新潮社の雑誌が休刊、というので思い出した。岩波書店の月刊誌『世界』10月号で、まさに逆の記事「右派論壇の流通構造とメディアの責任」を拝読したばかり。こちらは、「売り上げ倍増」してほしい記事だが、大本営広報部は新潮社記事に触れても、決して触れない。
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