トランプによる北朝鮮との問題解決の最大障害は国内の政敵
Finian Cunningham
2018年6月14日
RT
今週、ドナルド・トランプ大統領は、北朝鮮に対する平和的意図のしるしとして、朝鮮半島での“軍事演習”を中止すると発表し、全員に不意討ちをくらわせたように見える。
もしトランプが、この約束を守れば、それは、北朝鮮が核兵器廃棄の誓約を果たすという具体的な結果で、何十年にもわたる対立解決に成功するための鍵になるだろう。
北朝鮮指導者金正恩との会談後、トランプがアメリカと韓国軍による年次合同軍事演習は平和的交流という新たな文脈には“挑発的”で“不適切”だと言及したのは意義深い。
最近まで、トランプ政権は - それ以前のアメリカ政権同様 - 北朝鮮の核軍縮と引き換えの、朝鮮半島での軍事演習中止という互恵的な動きを検討することを拒否していた。
今週、二人の指導者が、シンガポールのセントーサ島で歴史的な直接会談を行った際、トランプが、金委員長に対する個人的で自発的な友好のしるしとして、政策を放棄したように見える。
ペンタゴンさえ、アメリカ同盟国の日本や韓国同様、寝耳に水だったように見える。
マイク・ポンペオ国務長官は、その後、韓国と日本の外務大臣を訪問し、両者にアメリカの防衛協定“絶対的だ”と“保証”した。
しかしながら、年内に行う予定の共同軍事演習を中止するというトランプの声明から、ポンペオが、しり込みしなかったのは注目に値する。
続く北京訪問では、朝鮮半島の非核化過程をやり遂げる上で、北朝鮮の“安全保障”が不可欠だという中国の王毅外務大臣が表明した立場を、ポンペオは受け入れた。
これは要するに、トランプ政権が、事実上、中国とロシアが考え出した“お互いが凍結する”交換条件という処方箋を採用したことを意味している。
この一年、北京とモスクワは、北朝鮮による核兵器廃棄の約束に、アメリカが軍隊を削減して応える、アメリカと北朝鮮との間の外交交渉の段階的手順を一貫して呼びかけていた。
特に、年次合同軍事演習の問題は、長年北朝鮮要求の重要な核心だった。実際、北朝鮮にとってのみならず、隣国たる中国とロシアにとっても。
朝鮮戦争(1950年-53年)終結以来、毎年、アメリカは“防衛演習”と称するもので、何万人もの兵士や戦艦や戦闘機を動員してきた。軍事演習は、年二回、 韓国軍と日本とともに行われてきた。
朝鮮戦争が、平和条約によって、決して正式に終わったわけではなく、停戦協定しかないことを考えれば、北朝鮮側がこうした大規模作戦に不安を感じるのはもっともなのだ。演習では、爆撃演習出撃に、核兵器搭載可能な戦闘機が配備される。更に挑発的なのは、アメリカ率いる軍隊が、北朝鮮指導部を絶滅させることを狙った対北朝鮮“斬首攻撃”リハーサルを行っていることだ。
北朝鮮の視点で見れば、この執拗な威嚇と脅迫という背景が、自衛と生き残りの問題として、北朝鮮が秘密の核兵器計画に乗り出す主なきっかけだったのだ。
もしアメリカが、実存的脅威として受け取られている、アメリカの巨大軍事駐留を北朝鮮国境から取り除けば、北朝鮮にとって、核軍縮を本気で検討する機会になる。
特に非核化過程での北朝鮮との信頼構築という現在の文脈で、こうした軍事演習がどれだけかく乱的か、トランプ大統領が遅ればせながらも気がついたのは立派なことだ。
以前、1990年代、クリントン政権が、北朝鮮に核兵器開発やめさせようとして、アメリカ軍事演習が中止された。元国務省幹部ローレンス・ウィルカーソンによれば、次のGWブッシュ政権中に、アメリカが、平壌に対する財政的、技術的支援に関するある種の約束を撤回した。それが、北朝鮮が現在の指導者金正恩の下で核爆弾を製造する結果になった核開発計画を再開した大きな要因だった。
公言した軍事演習中止を、トランプがやり通すかどうかはまだわからない。
韓国駐留のあるアメリカ軍広報官が“演習中止指示を何も受けておらず、秋に計画されている共同演習は、違う指示が無い限り進める”と述べた言葉が引用されている。
シンガポールにおけるトランプの突然の声明後、ペンタゴンは演習を中止する提案の相談を受けていなかったように見える。トランプに、ワシントンの軍事計画者連中に対し、彼の北朝鮮への提案を実行するだけの十分、実質的権限があるかどうかはまだわからない。
ワシントンに圧力をかける地域のアメリカ同盟国という問題もある。シンガポール・サミット直後に、日本の小野寺五典防衛大臣は、アメリカ共同演習は“東アジアの安全保障に極めて重要だ”と述べて懸念を表明した。
韓国は、より実際的な取り組み方をした。ペンタゴンと日本同様、ソウルもトランプの計画中止で不意打ちを食らったように見えた。だが文在寅大統領は、以来、韓国が“対話を推進する”ために、軍事演習の一時中止に賛同する用意があることを示唆している。
トランプによる北朝鮮との取り組みで、最大の障害は、おそらく国内の政敵たちだ。彼と金との会談に対する、民主党と、反トランプ・マスコミの大部分の反応は否定的だった。大統領は、金に譲歩しすぎ、北朝鮮に“プロパガンダの勝利”を可能にしたかどで厳しい批判を浴びた。
今後数カ月“北朝鮮の攻勢”に直面して“わが国の同盟諸国への支持”を実証する方法として、トランプに朝鮮半島での軍事演習を再開させるよう、マスコミ・キャンペーンが煽り立てられることが予想される。
これは皮肉にも、互恵的和平協定を実現するために、トランプと金が一体なぜ密接に協力する必要があるのかを明確に示している。もし北朝鮮が、測定可能な軍備縮小過程を開始するという約束を果たし、トランプが安全保障で報いれば、過程全体は成功裏に前進が可能だ。
韓国の文在寅大統領にも、演じるべき重要な役割がある。文大統領は、二つの分裂した朝鮮間の包括的和平合意と、半島の最終的な非核化に専心している。韓国大統領は、北朝鮮が安全保障を必要としており、それに値することを重々承知している。
だから、韓国指導部が、軍事演習を中止するというトランプの分別ある呼びかけを支持することが予想できる。
持続可能な和平合意に至る唯一の方法は、全当事者が敵意なくすことだというのは客観的な観察者なら誰でも容易に理解可能だ。
その武力が、どういうわけか“防衛的”で“無害”だというのは、アメリカのうぬぼれた考えに過ぎない。もし平和のための建設的関与をしたいのであれば、アメリカは北朝鮮の不満が一体何なのかに耳を傾けねばならない。最大の不満のたねは、国境沿いで壮大な規模で活動するアメリカ軍による威嚇だ。
トランプは本質を見抜いたようだ。大統領は北朝鮮側の一方的譲歩を要求する高圧的で横柄な姿勢を控えた。そういうやり方は役に立たず、爆発寸前の緊張に満ちている。
北朝鮮に関しては二人いないとタンゴが踊れないのをトランプはとうとう理解したのだ。
Finian Cunninghamは、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。彼は農芸化学修士で、新聞ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。彼は音楽家で、作詞作曲家でもある。彼はほぼ20年以上、ミラー、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデントなどの大手マスコミで、編集者、著者として働いた。
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記事原文のurl:https://www.rt.com/op-ed/429776-trump-north-korea-deal/
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属国の証明をまた見せられた。宗主国大統領最大スポンサーのためのカジノ法案成立。
連中の政治に国民のためのものは何一つない。全て連中のスポンサーのため。
北朝鮮は信頼できないと、軍需産業しか見ない戦争大臣。
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