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2017年4月 9日 (日)

シリア: アルカイダ用の要求有り次第のアメリカ新航空支援体制

Moon of Alabama
2017年4月7日

百年前の今日、アメリカが第一次世界大戦に参戦した。昨夜アメリカは、あからさまに敵対的で意図的なやり方で、シリア政府空港を攻撃した。攻撃は、シリア政府標的に対し、アルカイダがアメリカ空爆を"要請"できる仕組みを確立した。攻撃は東シリアでの「イスラム国」に対するシリアの戦いの主要基地を酷く破壊した。この出来事は、より大規模な戦争をもたらす可能性がある。

4月4日、シリア戦闘機がイドリブ県ハーン・シャイフーンのアルカイダ司令部を攻撃した。イドリブ県はアルカイダ支配下にある。空爆後、何らかの化学物質が放出された。現地救護所のビデオに映っている症状は、神経ガスを示唆している。放出で、おそらく50人から90人が亡くなった。どのように放出が起きたかは不明だ。

シリア政府がこれを行った可能性は低い

  • 2013年、シリア政府は全化学兵器を放棄した。国連査察官がこれを検証している
  • 標的は、軍事的にも、戦略的にもとるにたらないものだ。
  • シリア軍に対する差し迫った圧力はなかった。
  • 国際的な政治環境は、最近シリアにとって追い風になっている。

たとえシリアが最後の手段の兵器を多少隠し持っていたにせよ、今は実にタイミングがまずく、それを使用する標的も全くまずい。過去六年間の戦争で、シリア政府軍は、政治的にも軍事的にも論理的に行動してきた。行動は首尾一貫している。理不尽な行動をしたことはない。シリア政府軍が今そのような理不尽な行動をする可能性は極めて低い。

使用されたサリンかソマンの化学物質は純粋なものではなかった。複数の証人が"腐敗臭" と緑がかった色を報告している。色は塩素との混合物を示唆し、すぐわかる塩素の強烈な匂いは、大半の他の匂いを隠し、証人たちにもわかっただろう。サリンもソマンも純粋なものは無色、無味、無臭だ。シリア政府は、かつて神経ガスを専門的に大規模に製造していた。素人っぽく製造された神経ガスは純粋ではなく匂いがする(例: 1995年の東京地下鉄サリン事件)。シリア政府専門家が、"腐敗臭の"汚い品質の低い代物を、しろうとらしい危険な方法で製造する可能性は低い。

ハーン・シャイフーンの神経ガスは、もし確認されていれば、シリア政府に攻撃された場所に隠されていた弾薬によるものか、攻撃後、それをシリア政府のせいにするため、現地を支配しているテロ集団 -アルカイダやアハラール・アル・シャームによって故意に放出されたかのいずれかだ。大半が民間人の比較的少ない死傷者数が後者を示唆している。

長年の間のいくつかの報道で、サリンや他の化学物質を製造し使用するシリアのアルカイダの前例や能力が確認されている。連中がそのような兵器を使用するのは、これが最初ではなかろう。アルカイダは差し迫った圧力を受けていた。戦争で負けつつあったのだ。それゆえ、これは、シリア政府に広い圧力をかけるためのアルカイダによる意図的放出である可能性が極めて高い。

強力な化学兵器放出事件にしては、死傷者数は少なく、最近のシリアイラクでの通常のアメリカ空爆にる死傷者数より少ない。そういう事実にもかかわらず、事前に準備されていたと思われる大規模な対シリア政府国際的マスコミ攻撃の波が起きた。出来事はシリア政府が引き起こしたものだという証拠は何も提示されなかった。アルカイダとISISに埋め込まれて(ビデオ)連中のプロパガンダ部隊として活動していることが知られているホワイト・ヘルメットの類からの、あるいは経由した写真と現地証人報告だけだ。

昨夜、トシリアのアルシャイラート軍事空港に対する(ビデオ)59発の巡航ミサイル発射を命じて、ランプ大統領は化学兵器事件に"反撃"した。巡航ミサイルは、防空システムを圧倒すべく、戦艦から一斉に発射された。シリアとロシアの軍によれば、23発の巡航ミサイルしか空港に届かなかった。他のものは撃ち落とされたか失敗した。六人のシリア兵士が死亡し、近くの村の九人の民間人が死亡、負傷し、シリア戦闘機六機が破壊された。空港インフラは酷く損なわれた。シリアとロシア政府は攻撃前に警告され、大半の要員と重要機器を避難させていた。(警告は取り引きの一部だろうか?) 空爆は「イスラム国」による空港東部への地上攻撃と同期していた

サリンは空港に備蓄されており、そこから化学兵器攻撃が行われたと、ペンタゴンは、いかなる証拠もなしに主張している。いずれも、きわめてありそうにない。空港は国連査察官の立ち入りが可能だった。他のシリア空港、例えばラタキア県内のような防空システムで守られていなかった。着陸誘導管制は完全には守られていなかった。最近、アルシャイラート近くの中距離用防空システムが、パルミラ近くでISISと戦っているシリア軍部隊を攻撃したイスラエル戦闘機に対して使われた

アルシャイラートは、イドリブ県ハーン・シャイフーンの南150 kmのホムス県にある。今や、またしても一層深刻な困難を抱えることになったデリゾールの包囲されたシリア政府の飛び地にとっての主要支援・供給空港だ。東ホムスで、シリア政府軍部隊と戦っている「イスラム国」に対する攻撃を行うのにも使用されていた。

アルカイダと相棒アハラール・アル・シャームは、アメリカ攻撃と、味方のアブ・イヴァンカ・アル・アメリキ(アメリカのイヴァンカの父さん)を歓迎した。サウジアラビア神権独裁政権は、サウジの創造主イギリス同様、全面支持を表明した

アメリカ空爆はアルカイダへのメッセージだった。軍事的圧力を受けた場合はいつでも、アルカイダがエセ"化学兵器攻撃"を仕組めば、アメリカが敵シリア政府破壊に動いてくれるのだ。昨夜のような仕業はアルカイダの要求によるアメリカの直接軍事支援だ。

似たような構造が既にゴラン高原で確立されている。シリア政府陣地に対して戦っているアルカイダがイスラエルが支配する地域内に着弾する迫撃砲砲撃を行う。"地域でおきることはシリア政府に責任がある"ので、そこでイスラエルがシリア政府陣地に対し、砲火攻撃をしかけることになる。するとアルカイダが、イスラエル攻撃によって産み出された戦場での優勢につけこむのだ。この構図とイスラエル軍の"論拠"は、イスラエル・マスコミに何度か掲載された。

過去数年にわたり戦闘の波及効果の結果、多数の迫撃砲弾がイスラエル領に着弾し、国境付近の住民の懸念を高めている。

イスラエル国防軍はイスラエルに着弾する砲火にシリア軍駐屯地攻撃で反撃することが良くある。

イスラエルは、シリアからイスラエルへのあらゆる砲火に対し、発砲源と無関係に、ダマスカスの責任だとする政策を維持している。

今やアメリカ政権は、シリア内のアルカイダと「イスラム国」のため、より大規模なアメリカの直接軍事支援用に同様の仕組みを確立したわけだ。

トランプ候補支援で、アメリカ選挙に"ロシアが干渉"したという根拠の無い主張の人質にトランプ大統領は捕らわれていた。シリア空爆は、人質解放のために要求された身の代金だった可能性がある。彼の敵が今や彼を褒めちぎっている。トランプ-ロシアの何らかのつながりという主張は静まるだろう。

昨日、主な民主党幹部議員がシリア攻撃を支持した。空爆を巡って、彼らがトランプを攻撃する可能性があったにもかかわらず。攻撃は "力の強い男"のギャンブルなのだ。オバマが攻撃を命じた際、そういうものは自暴自棄の行動だと、トランプは言った。国務省と国家安全保障会議の大半は攻撃について相談を受けていなかった。こうしたことが政治的にも戦略的にも"ブローバック"する可能性は高い。

トランプは、選挙運動中は喧嘩腰は控えると公約しておいて、選挙後に一層喧嘩腰になる立て続け三人目のアメリカ大統領だ。巨大な力を持ったひと握りの集団によるアメリカ支配の"民主的な"ベールは、かくして更にズタズタになった。

シリアでのオープンなアメリカ-ロシア協力は、これでおしまいだ。シリア領空のアメリカ戦闘機は、今後常に切迫した危険にさらされることとなる。昨晩の攻撃に対し、何らかの大規模報復が行われるだろう。シリアではなく、イラクかアフガニスタンか、あるいは海の可能性が高い。ある"メッセージ"が送られよう。この"メッセージ"に対するアメリカの対応が、遥かに大規模な戦争を巡る決断となろう。

記事原文のurl:http://www.moonofalabama.org/2017/04/syria-us-creates-new-air-support-request-scheme-for-al-qaeda.html

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「米軍のシリア攻撃、首相評価…日米首脳電話会談」
属国傀儡が宗主国侵略戦争に文句をいうはずがない。究極の「忖度」
反対すれば確実に傀儡の首は飛ぶ。隷属服従思想を吹き込むため土地便宜を計っても首は飛ばないが。

「中国文化は日本人に合わぬ。漢文の授業廃止を」カエルの楽園氏。
「アメリカ文化は日本人に合わぬ。英語の授業廃止を」なら、多少わかるが。ベトナム戦争のニュースを見ながらの英語学習はつらかった。

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コメント

         まともな保安官がいなくなったアメリカ合衆国

  拳銃所持への規制が厳しくなったとは言え,まだ堂々と許されているアメリカ。連邦保安官や町の保安官が存命であった頃,悪漢,無法者に懸賞金をかけていた時代があった。そして彼らが死体であろうと,生きたままであろうと,しょっ引いてくれば,懸賞金がもらえた。そういう西部劇の時代が去って久しいが,証拠もナシに空爆するのは悪漢を越えて,無法者のすることである。
  ISISを空爆すると断言していたトランプ氏は,心変わりをしたようだ。核爆弾によるISIS全滅からISISトマホ-ク支援へ。これでアメリカがテロ支援国家であることが世界中に定着した。それにしても,ミサイル59発というのは,区切りの悪い数字である。100とか150にならなかったのか。
  そうはいっても,23発しか命中しなかったのか,撃ち落とされたのかのどちらであるとアラバマのお月様は仰る。スプ-トニク日本語版でシリア空軍基地の写真を拝見したが,何とも貧弱な破壊力であった。
  小生が若いとき週刊誌でみたトマホ-クは,地上1mを障害物を乗り越えて目標に当たるというモノで優れものであった。ブッシュのイラク侵略の時発射されたトマホ-クや,フォ-クランド紛争で使われたフランス製エグゾセが記憶に新しい。大事なことは忘れても,なぜかこの2つのミサイルは印象に残っている。
  最近では,カスピ海のフリゲ-ト艦からISISめがけて,ロシア製のミサイル・ガブリエルが発射されその性能の高さが西側に知れ渡ったばかりである。そんなことを考えているうちに,レ-ガン大統領が提唱したMXミサイル網を思い出した。うろ覚えだが,何でもちょっきり100発を装備する予定だった。
  このときは,防衛なのに何でキッチリ100発なのか,不思議に思った専門家もいた。旧ソ連がもっと沢山の弾道弾を撃ち込んできたら,100発で足りるのか,足りないのか。

  ところでミサイルの数59発が妙に気になる。これは米軍が発表した「まこと」の数字なのか知らないが,すでに述べたように,大した破壊を伴わなかった。つまり,小生は一種のヤラセを感じ取った。するとサリン爆撃は米国政府の自作自演という記事が現れた。世間広しと言えど,同じ感覚の持ち主がいらっしゃるようだ。
 西側や売女マスゴミがシリア政府を悪く書くのは毎度のことなので,無視してもいいとしても,59発中23発しか当たらなかった上に大して目標を破壊しなかったようだ。本気で米海軍が戦争をしようという気持ちはないようだ。しかし命中すれば,サリン・ガス関連のタンクとか資材とかがたくさん破壊されていて良さそうなモノなのに,空軍基地付近はガスにやられた様子もない。

  滞貨一掃内閣というのが,日本にはあった。滞兵器一掃軍隊があってもいいかもしれない。今やウソを吐いても,天下りを見逃しても,睡眠障害でトンズラしてもお咎めナシという内閣が延々と続いているが,偉大な国アメリカでは大統領と意見を異にするフリン元中将やバ-ノン首席補佐官が国家安全保障会議から解任されている。そのアメリカの海軍が滞兵器一掃のためにミサイルを59発もシリアに向けて放ったと考えると,数字のキッチリさや中途半端さの意味が分かる。
 
  ところでギリシア国防省は「シリアへのいかなる軍事攻撃にも反対」という声明をいち早く出した。国連ではパラグアイの国連大使がイラク侵攻時のコリン・パウェル国防長官の写真を提示し,「アメリカ軍のミサイル攻撃の非合法性」を訴えた。国際法違反。トランプ大統領の証拠なき攻撃命令。どうやらアメリカ合衆国には「まともな保安官がいなくなった」と,言えるだろう。
 
追記:ここからは憶測でしかないが,トマホ-ク攻撃をロシアや英仏独などは知らされていたとすれば,ロシアがあのシリアへの米軍事顧問団-50人から出発し,現在800人ぐらいに膨れ上がった-へ大規模なミサイル攻撃を加えていた可能性がある。
  西側マスコミ,売女マスゴミは一気にトランプ判断を歓迎し大々的に59発を賞賛したが,軍事顧問団の被害を報じたモノは皆無であった。朝日新聞などは,プ-チン大統領が雲隠れしたなどと騒いでいるが,騒ぎ方がズレている。
  習近平国家主席と会談していたトランプ大統領が軍事顧問団へのミサイル攻撃に対して涙を流して耐えている姿が小生の水晶玉(中国産)に映っている。「シリア空軍基地へのさらなる攻撃もある」とはったりを掛けているが,心で泣いている。
  国連安全保障会議の議長国が4月から米国になり,あのヘイリ-米国連大使が議長となり,バーノン氏をNSCから外し,習近平主席との会談を利用してシリアへ攻撃を仕掛けるという構想はうまくいったが,ISIS支援の米軍事顧問団が壊滅的状況にあるようだ。地中海から発射されたミサイルが,トルコ上空でロシア空軍機撃墜を計画した米英,イスラエル,ヨルダン,トルコなどの軍事顧問団40名程度を襲った事例(櫻井ジャ-ナル参照)に似る。西側マスゴミは沈黙している。

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