ドナルド・トランプ: 一つの評価
Paul Craig Roberts
2015年12月21日
2015年12月21日時点の世論調査で判断すれば、ドナルド・トランプが、アメリカ次期大統領の最有力候補だ。
トランプは色々な問題に対する彼の姿勢というより、彼がありきたりのワシントン政治家ではないという事実で人気があり、そして、歯に衣着せぬ発言をして、批判された際、撤回して謝罪しないことで評価されている。人々は、トランプに力強さと統率力を見ている。これは大統領候補者としては稀なことで、この力強さに有権者が反応しているのだ。
堕落したアメリカの既成政治勢力が、売女マスコミに“トランプをやれ”命令を発したのだ。売名のためなら何でもする、命令に忠実なジョージ・ステファノプロスが、全国放送のテレビで、トランプを追求した。だがトランプは、この男娼を徹底的にやっつけた。https://www.youtube.com/watch?v=TlRTCxMAqC4
世界で人気のある指導者、ロシアのプーチン大統領がトランプをほめ、トランプも彼をほめたので、ステファノプロスは、トランプを追い込もうとした。
ステファノプロスによれば、“プーチンはジャーナリストを殺害しており”トランプは、ジャーナリスト殺人犯を称賛したことを恥じるべきなのだ。トランプは、ステファノプロスに証拠を要求したが、ステファノプロスには何も証拠がなかった。言い換えれば、ステファノプロスは、アメリカの政治家は、ものごとをでっちあげ、でっちあげた“事実”を、売女マスコミが、あたかも真実であるかのように支持してくれるのに頼っているというトランプの発言を裏付けたのだ。トランプは、ワシントンによる多くの殺害に触れた。
ステファノプロスは、一体どのジャーナリストを、ワシントンが殺害したのか知りたいと言った。トランプは、ワシントンが人を殺し、ワシントンの戦争から、難民として、現在ヨーロッパに殺到している何百万人もの人々を退去させたと反論した。しかし、トランプの顧問は、ワシントンによるアル・ジャジーラ記者殺害の話題で彼を武装させるほど有能ではなかった。
アメリカの印刷媒体やテレビよりずっと信頼できる報道機関、アル・ジャジーラの報道はこうだ。
“2003年4月8日、アメリカが率いたイラク侵略時、アメリカ戦闘機がアル・ジャジーラのバグダッド本部を爆撃した際に、アル・ジャジーラ記者タリク・アユブが殺害された。
“侵略と、その後の9年間のイラク占領で、史上最多のジャーナリストが命を失った。ジャーナリストにとって、議論の余地がない有史以来最悪の戦争だった。
“憂慮すべきは、「ジャーナリスト保護委員会」によれば、イラクでの標的殺害で、戦闘にからむ状況で亡くなったより多くのジャーナリストが殺害されていることだ。
“CPJの調査で“アメリカが率いる2003年3月の侵略から、2011年12月の終戦宣言までの間にイラクでは少なくとも150人のジャーナリストと、54人のマスコミ労働者が殺害された”ことがわかっている。
“’マスコミはアメリカ軍には歓迎されませんでした’”と国境なき記者団の中東・北アフリカ支局長ソアジグ・ドレはアル・ジャジーラに語った。‘これは実に明白です。’”
http://www.aljazeera.com/humanrights/2013/04/2013481202781452.html
有能なスタッフがいる候補者であれば、ワシントンによるジャーナリスト殺害の事実で、ステファノプロスに、すぐさま反駁し、こうした事実を、プーチンに対する、実際全く根拠のない、露骨な非難プロパガンダと比べていただろう。
トランプの問題は、国民が彼を、それで慎重に判断していない話題にある。私は国民を咎めるつもりはない。民主党と共和党、全ての大統領候補者の空虚さを暴露してくれる買収されない億万長者がいるのは爽快だ。取るに足りない連中の集団。
ワシントンとは違って、プーチンは国々の主権を支持している。アメリカや他の国が政権を打倒し、傀儡なり、臣下なりを据える権利があるとは彼は思っていない。
最近、プーチンはこう述べた。“あえて核兵器を使おうとするほど狂った人間が地球にいないよう願っている。” http://sjlendman.blogspot.com
プーチンや、トランプにとって不幸なことに、もしマスコミ報道が信頼に足るとすれば、トランプは最近、ISISに対して核兵器を使おうと発言している。候補者として不適格になる発言だ。ISISのような小規模な軍勢を打ち負かすのに、核を必要とする理由など皆無だ。より重要なことは、アメリカは核兵器を他国の国民に使用した唯一の国なのだから、アメリカが再び同じことをすれば、ロシアや中国の政府は、アメリカ政府は狂っていて、信頼をおけないので、ロシアと中国が攻撃される前に絶滅する必要があると決意を固めるだろう。核兵器を使用すれば、必ず重大な結果がもたらされるのだ。
多くのインタビューで私が言ってきた通り、トランプの問題は、彼を支持する運動がないこと、信頼できる顧問団がないこと、そして彼は様々な問題を理解していないことだ。歯に衣着せぬ発言を有権者が喜ぶことをトランプは学んだのだ。だから彼は、歯に衣着せぬ知的な発言と、常軌を逸した発言を区別していない。彼の発言が歯に衣をきせないものである限り、効果があると、トランプは考えているのだ。
最近“トランプ顧問”とされる女性が、ネオコン・ナチス、ウィリアム・クリストルの発言を繰り返すビデオを見た。“使えないのなら、核兵器に何の意味があるだろう?”
ウィリアム・クリストルのネオコン・ナチスは一体どのようにして、トランプのスタッフに加わったのだろう? たとえトランプが選ばれたとしても、トランプの意に反して、支配体制が圧倒してしまうことに、これ以上、どのような証拠が必要だろう。
トランプは、体制に異議を唱えるスタッフがいなければ、体制に異議を唱える政治家にはなれない。彼には体制に異議を唱えるスタッフになってくれるような人はいない。トランプは取り引きのやり方は知っているから、支配体制は取り引きをして、トランプ大統領府に人員を送り込むだろう。トランプが大統領になるやいなや、彼はとらわれの身になるだろう。
フランスでは、マリーヌ・ルペンの国民戦線党が政治的変革をもたらす可能性がある。イギリスでは、ナイジェル・ファラージのイギリス独立党や、ジェレミー・コービンの労働党が政治的変革をもたらす可能性がある。ところが、アメリカでは、選挙による変革の見通しは皆無だ。変革は崩壊か、残忍な革命からしか生まれる可能性はない。アメリカの支配体制は変革を受け入れないのだ。
そして、一番可能性が高いのは、アメリカの支配体制が、フランスやイギリスでの変革を受け入れる前に、ペンやファラージやコービンを暗殺することだ。
これが現実だ。ロシアと中国が一体どう対処するか、今のところは、わからない。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/12/21/donald-trump-an-evaluation-paul-craig-roberts/
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アメリカによる沖縄統治を希望した「天皇メッセージ」の話題を報道ステーションが報じたのにビックリ。
Paul Craig Roberts氏、先に下記記事を書いておられる。
トランプを大統領に 2015年6月22日
またしてもトルコで爆発事件。サビハ・ギョクチェン国際空港。作業員一名死亡、一名負傷。RTも報じている。
Tight security at Istanbul Sabiha Gokcen Airport after night blast leaves 1 dead, 1 injured
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