"カラー革命"手法の完成-幼児期に退行する欧米指導部
Thierry Meyssan
2012年8月7日
"Information Clearing House"
1985年、社会科学者、ジーン・シャープは、NATOから委託された研究『ヨーロッパを征服できなくする』を刊行した。究極的に、ひたすら国民がそれに従うことに合意しているがゆえに、政府が存在できるのだということを彼は指摘した。もし人々が共産党政府に服従するのを拒否すれば、ソ連は決して西ヨーロッパを支配することはできない。
数年後の1989年、シャープはCIAから、彼の理論的研究を中国で実践するよう依頼された。アメリカ合州国は、趙紫陽を支持して、鄧小平を打倒したかったのだ。狙いは、モハンマド・モサデクを打倒するのに、CIAがテヘランで抗議行動参加者を雇い、大衆的外観を装わせたのと同様(1953年のアイアス作戦)、街頭抗議行動を組織し、正統性を装って、クーデターを起こすことだった。ここでの違いは、クーデターを革命らしく見せるため、ジーン・シャープは趙支持派と親米派の若者の組み合わせに依存せざるをえなかったことだ。しかし鄧は、シャープを天安門広場で逮捕させ、中国から追放した。クーデターは失敗したが、それまでにCIAは青年集団を、その後に起こる弾圧で、鄧の信用を傷つけるための虚しい蜂起に駆り立てていた。作戦の失敗は、若い活動家達を、望ましい方向に動員することの困難さのせいにされた。
19世紀末のフランス人社会学者ギュスターヴ・ル・ボンの著書以降、群衆心理の真っ只中にあると、大人も子供のようにふるまうことを我々は知っている。群衆は、たとえ極めて重要な瞬間だけであれ、自分たちにとって父親像の化身である、指導者の示唆を受けやすくなる。1990年、シャープは、当時イスラエル軍の首席心理学者だったルベン・ガル大佐、(彼は後にアリエル・シャロンの国家安全保障次席顧問となり、現在は若い非ユダヤ・イスラエル人を操る作戦を行っている)と親しくなった。ル・ボンとジークムント・フロイトの発見を結びつけて、ガルは、若者の"エディプス・コンプレックス"を利用し、若者の群衆を、象徴的な父親像たる国家元首に反対するよう誘導することも可能であるという結論に達した。
これを元に、シャープとガルは、クーデターを組織することを目的とする若い活動家向け訓練プログラムを立ち上げた。ロシアとバルト諸国で何度か成功した後、1998年、セルビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチを打倒して、ジーン・シャープは"カラー革命"手法を完成させた。
ジーン・シャープの役割と手法を暴露した私の調査の一つに基づいて、ウゴ・チャベス大統領は、ベネズエラのクーデターを挫いた後、隠れ蓑として機能し、新たな組織を造り続けている(ベオグラードのCANVAS、ロンドン、ウィーンとドーハのアカデミー・オブ・チェンジ)アルバート・アインシュタイ研究所の活動を停止させた。世界中、特にレバノン(シーダー革命)、イラン(緑の革命)、チュニジア(ジャスミン革命)やエジプト(ロータス革命)で連中が働くのを我々は目にしてきた。原理は単純だ。内在するあらゆる欲求不満を増幅させ、あらゆる問題を政治組織のせいにして、フロイトの"父殺し"シナリオに従って、若者を操ってクーデターを組織し、政府は“街頭運動”によって打倒されたと宣伝するのだ。
国際世論は、こうした舞台設定を易々と受け入れた。一つには、群衆と国民を取り違えているためだ。こうして"ロータス革命" は、実際は、エジプト国民ほぼ全員が出来事に参加するのを控えていた、何万人もの群衆を動員したカイロ・タハリール広場での見世物に要約される。二つ目は、"革命"という言葉に関して明瞭さが欠如していることだ。本当の革命は、数年間を経て起こる社会構造の激変を引き起こすが、"カラー革命"は数週間の間に起きる政権転覆だ。社会変革無しの指導部の強制的交替を表す別の言葉は"クーデター"だ。エジプトでは、例えば、ホスニ・ムバラクを辞職させたのは、国民ではなく、彼に命令したアメリカ大使フランク・ウィズナーであるのは明白だ。
"カラー革命"のスローガンは、子供じみた物の見方を思い起こさせる。大事なことは、後の結果など一切考えずに国家元首を打倒することだ。“先のことなど心配には及ばない、ワシントンが全て面倒を見てくれる。”国民が覚醒する頃にはもう遅い。政府は民衆が選んだわけではない連中に奪われてしまっている。発端は"シュワルナゼ打倒!" あるいは"ベン・アリ、出て行け!”という叫び声だった。最新版は"シリアの友人達(7月6日パリ)第三次会談の"バシャール出て行け!"だ。
シリアに関しては、奇妙な異常さが見てとれる。CIAは、ダマスカスやアレッポの街路で、このスローガンを進んで唱える若いシリア人の団体を見つけ出すことが出来なかった。そこで、各外務省のコーラスで、このスローガンを繰り返すのは、バラク・オバマ、フランソワ・オランド、デービッド・キャメロンやアンゲラ・メルケル自身ということになった。ワシントンとその仲間連中は、ジーン・シャープの手法を"国際社会"で試しているのだ。外務省を若者集団と同じ位容易に操れると考えるのは危険な賭けだ! 今のところ、結果はひたすら馬鹿げている。主要宗主国の指導者達は、"バシャール出て行け!"と絶え間なく叫びながら、ロシアと中国という大人が、連中にくれようとはしない欲しいモノを巡って、腹を立て、苛立った子供のように足をドタドタ踏みならしているのだ。
Thierry Meyssanはヴォルテール・ネットワークとアクシス・フォー・ピース・コンファレンスの創始者で会長。ダマスカスにある戦略研究所の国際関係教授。彼の国際関係コラム記事は、アラビア語、スペイン語やロシア語の日刊新聞や週刊誌に掲載されている。最新刊二冊、9/11 デマ宣伝とペンタゲートは英語で刊行されている。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article32110.htm
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ギュスターヴ・ル・ボンの著書『群衆心理』を指すだろう。
生活第一や、大本営広報部が称賛する異神の怪やらに、なだれのように支持が向かう実情を描いた名著。今の日本のことを書いたのではと思えるほど。ジーン・シャープの新刊『独裁体制から民主主義へ』より、まず広くよまれるべきは、これだ。
ジーン・シャープ氏「天安門広場で逮捕され、中国から追放された」のかどうか知らないが、実に驚くほどタイミング良く、まさに事件の時期に、非暴力反体制運動の実情を研究すべく現地にいあわせ、ことの次第をご自身でつぶさに観察、報告しておられる。報告pdfはロバート・アインシュタイン研究所のwebで読める。
Nonviolent Sanctions vol. 1, no. 2 Fall 1989
文中にあるベネズエラとジーン・シャープ先生の研究所との関係、例えば、US projects for Venezuela, by Eva Golingerにも明記されている。
世界中の非暴力反体制運動家にバイブルのように読まれているジーン・シャープ氏の著書『独裁体制から民主主義へ』、先頃ちくま学芸文庫から翻訳が刊行された。
彼の著書、実は日本では、1972年に『武器なき民衆の抵抗』(Exploring Nonviolent Alternatives)が翻訳刊行されている。出版社から考えて「いわゆる左翼学生」に読まれたのだろう。
NHK BS世界のドキュメンタリーで紹介されたと帯にあるが、そのドキュメンタリー『非暴力革命のすすめ』How to start a revolution,実にもう薄気味悪いプロパガンダ。
書き起こしpdfもある。(英語)
このドキュメンタリー『非暴力革命のすすめ』についてのブログ記事、好意的なものが圧倒的に多いが、へそ曲がりには到底同意しがたい。シャープの教義で実現したとされるカラー革命で、庶民生活、よくなったためしがあるだろうか。自分の首を絞めるだけの、宗主国傀儡「異神の怪」に、庶民が快哉を叫ぶ心理とつながって見える。Frontlines of Revolutionary StruggleのHow to Start a Revolution: Or the Delusions of Gene Sharpなら納得できる。
宗主国のポチ頭狂土地爺が「アメリカの中心で領土問題を叫ぶ」椿事、男子サッカー、隣のポチ・レームダック大統領の発言に続いて、「分割して統治せよ」東アジア版全面展開中。そもそも国際スポーツ・イベントで盛り上がる偏狭な国家主義ほど愚劣なものはない。
尖閣・竹島で、普通の庶民にとって、はるかに深刻な影響をもたらすACTAやTPPの話題がすっかり消え失せる、巧妙な宗主国の分割して統治する作戦発動中。
物心ついて以来、マスコミが揃って同じことばかり報道する時には、必ずや、決して報道されない深刻な変化が起きている。昨日の「ポワロ」でも「(真犯人への目をくらます)ニシンがたくさんあります」(録画していたわけではなく、いい加減な記憶)というセリフがあった。ニシン、red herringを辞書でご確認願いたい。
北方・尖閣・竹島と全方向から叩かれている属国の敗戦宣言記念日にぶつけて、ジャパン・ハンドラー様が素晴らしい万能対応策「年次改革命令書」最新版をご提示下さった。シリアといい、東アジアといい、万能の神様はお忙しいのだ。
MSN産経ニュースもしっかり報道しているので、引用させて頂こう。
「第3次アーミテージ報告」 日米同盟、新たな役割と任務拡大求める
2012.8.16 00:10
中国の台頭などをふまえ、日本は一流国家であり続けたいのか、二流国家で満足するのか、「重大な転機」にあると評した。また、自衛隊による将来の集団的自衛権行使容認を念頭に、米軍との共同対処を含めた日本の新たな役割の検討と任務の見直しを求めている。
日韓の緊張緩和のために米国として外交努力をすべきだとした上で、日本に対しても韓国との歴史問題に向き合うよう求めるなど、日米韓の関係強化が不可欠だとしている。
「新たな同盟戦略」という項目では、日本列島と台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を越え、米空母打撃群の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を進める中国海軍に対し、米軍の「統合エアシーバトル(空海戦闘、ASB)」と自衛隊の「動的防衛力」構想で対抗すべきとした。
東日本大震災後の“トモダチ作戦”では共同作戦が奏功したが、日本は依然として有事に集団的自衛権を行使できず、共同対処の大きな障害となっているとした。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題では、時間と政治エネルギーを浪費したと指摘。過去にとらわれず、将来の安全保障を考えることで打開策を見つけるべきだとした。
原文は下記。
The U.S.-Japan Alliance Anchoring Stability in Asia Report
By Richard L. Armitage, Joseph S. Nye Jr.
拳拳服膺すべき有り難いお言葉。CSIS webでダウンロードできる。
順次原発を再稼働せよ、TPP加盟ぐずぐずするなとおっしゃる。オスプレイ基地準備を急げ。集団的専制攻撃の仲間になれ!とも?隣国とのおつきあいの仕方まで指示して下さっている。
原爆投下以来、宗主国のご指示を真に受けた結果、こずかれ続けてきたのだから、指示書の真逆をいかなければ、属国庶民浮かばれないだろう。
中学校レベルどころでなく、国家レベルのいじめ、68年継続中。
『ハラスメントは連鎖する』(安冨歩他著、絶版か)。
宗主国支配層が、属国支配層をこずき、属国支配層が、属国国民をこずきつづける。
どじょう氏を始めとする政治家、官僚諸氏、属国臣民20万人が代々木公園に集まろうが、金曜官邸前に集まろうが気にしない。宗主国いじめっこ様のご指示さえ仰いでいれば良いのだ。
外交上の恫喝から侵略まで、国家間の「いじめ」、力関係上声にだせず泣き寝入りして68年。孫崎享氏の『戦後史の正体』にある通り。
万年いじめられっ子の属国政治家、官僚、司法、大企業幹部、組合幹部、学界、マスコミ等、全ての組織がこの指示書の筋書きに沿って、下手な猿芝居をしている。最後にいじめられるのは庶民。
あおられて幼児期に退行する日韓指導部。エセ仲介役の宗主国。
集会、官邸前より、オトモダチ大使館前が良いように思えてきた。
ジーン・シャープの非暴力体制変革を切実に必要としているのは他ならぬ宗主国だろう。
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