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2010年1月 8日 (金)

もう一つの愚劣な戦争の遂行に関するグラベル元議員の悲嘆 - Chris Hedgesのコラム

Chris Hedges

2009年12月14日 "Truthdig"

私はアメリカ軍内部で長いこと過ごしたので、一般に知られていない残虐さ、よくある不適格や、人命と納税者のドルを無駄にする浪費能力を十分味わっている。将軍たちの腹黒さや愚かさ、大半の戦争計画の馬鹿らしさ、アメリカ国軍を指揮する大半の連中が理解できる唯一の言語である、暴力への病理的な依存が、アメリカが経済的崩壊に向かう中、アメリカ軍はアメリカの沈滞したデモクラシーにとって最大の脅威となっている。

マスコミ、二大政党と、アメリカのエンタテインメント産業が、アメリカ帝国の絶望的な諸事業を止めようともせず、アメリカという国を内側から空洞化させている1兆ドルの国防関係支出を否定しようともしない中、バラク・オバマは、アメリカの巨大な殺人装置の周囲に巡らされた赤、白と青の旗布に魅了されたままでいる。第二次世界大戦の終結以来、歯止めの利かない軍国主義という疫病が、ペンタゴンの外に滲み出し、今やアメリカを骨の髄までしゃぶりつくしている。これは絶大な帝国にはおなじみの病だ。我々は末期状態にある。アメリカは、明白な脅威などに直面してはいないのに、地球上の他国全てをあわせたより多額の金を、自由に使えるあらゆる支出の半分を、軍に費やしている。

土曜日、元アラスカ選出上院議員を二期つとめ、2008年の大統領候補だった、マイク・グラベルは、ホワイト・ハウスに面するラファイエット公園のベンチに座っていた。グラベルと私は、デニス・クシニッチ下院議員、ラルフ・ネーダー、シンシア・マッキニーや他の反戦活動家達と一緒に、イラクとアフガニスタンでの戦争を糾弾するために、参加者もまばらな集会に参加していた。(http://www.enduswars.org/) アメリカ政治において、彼の意見ほど、首尾一貫し、筋が通り、高潔なものはまれだが、それこそがグラベルが、寒い12月の朝、ホワイト・ハウスの中でなく、正面に、いる理由だ。

「最初から、彼は軍隊に関して、劣等感を持っていたのではないかと思います」陸軍中尉だったグラベルは、大統領についてそう言った。「兵役につかなかった[ビル]クリントンが抱えていたのと同じ問題で、実体験がないためのものです。戦闘に加わる必要はなく、ただ軍に入隊し、兵卒レベルで、軍隊がどれほど機能不全になれるかを、肌で感じるだけで良いのです。だから、そういう経験がなく、当然、魅力的である術を心得ている将軍たちとだけ付き合っていると、苦悩を負わされるのは、軍曹達なのですが、この軍隊に対するオーラを彼は持っているのです。アメリカは、国民を軍国主義文化に適応させてしまったのです。それが軍産複合体を維持しているのですから不幸なことです。」

「そこにオバマが登場したのです」彼は言い足した。「選挙活動の過程で、彼は19人程の将軍や総督に支持されました。こうした連中は[ジョージ・W・]ブッシュを信頼していなかったのです。彼らは、ブッシュの単独覇権主義や、拷問に関する横柄なやり方は、アメリカ軍にとって不利だと認識しています。彼らは自然オバマに引きつけられました。それが彼の考えを変えたのです。彼は自分なら全軍最高司令官になれると思ったのですが、彼には知性がありますから、なれました。しかし彼には不屈の精神はありません。彼には勇気が欠けています。」

残り時間は急速に減りつつある。膨大な緊急救済、緊急経済対策、出血サービスやら短期債務、更に、もはや我々には負担しきれない帝国戦争のおかげで、アメリカは、約5兆ドルの債務を、2010年までに工面すべく、苦闘することになるだろう。するとアメリカ合州国は、週に約960億ドルの借金を競売にかけざるをえなくなるだろう。それは不可避なことなのだが、中国や産油諸国がわが国の債務から逃げ去ってしまえば、連邦準備金制度理事会が、最後の買手になるだろう。おそらく連邦準備金制度理事会は、2兆もの新ドル札を、過去二年間に印刷しており、これだけの新債務を購入するには、更に何兆ドルも印刷することになろう。この時には、インフレーションが、最もありそうなのは、ハイパーインフレーションなのだが、ドルを屑にしてしまうだろう。知的にも、心理的にも経済破たんに無防備の一般大衆が、裏切られ、激怒し、反発し、社会構造をバラバラにし、混沌と暴力が解き放たれ、アメリカの治安機関や軍隊による、より厳しい対策を求める声が強まるだろう。

ブッシュの汚れた政策を推進するのに、オバマはうわべだけの知性偏重を利用している。イラクとアフガニスタンの戦争が、トマス・アキナスや、伝統的なカトリックの「正義の戦争原則」が築いた基準に合致しないにもかかわらず、オスロで、ノーベル賞を受賞した際、大統領は“正しい戦争”理論を語った。彼は、先制攻撃戦争や、継続している軍事占領や、帝国主義の悪を検証することなしに、人間社会の現実を、ブッシュがしたように、黒と白の二極に分類し、悪との戦いについて語った。彼は、変幻自在なテロリスト集団と、隣国を通常兵力で制圧する能力をもった国民国家との違いを無視して、アル・カイダを、ヒトラーになぞらえた。「戦争の手段というのは、平和を保つうえで役割を持っている」とオバマはオスロで主張した。彼は言った。アメリカは「もし必要があれば、一方的に行動し」、その目的が「自衛や、侵略を受けた国の防衛の範囲を超える」戦争をしかける権利があるのだ。オバマの政策は、意気盛んな美辞麗句にもかかわらず、彼の前任者の政策同様、道徳的に破綻している。

「彼と初めて会った時、多少冷笑的な感のある傲岸さを感じました」グラベルは大統領のことをそういった。「今では、冷笑と傲慢が、彼の知性を呑み込んでしまいました。クリントン同様、彼は権力にとりこまれたのです。」

1971年に、軍事アナリストのダニエル・エルズバーグが、秘密のペンタゴン・ペーパーを、ニューヨーク・タイムズに手渡した際に、グラベルが政治家として最も輝いた瞬間がやってきた。同紙は文書の一部を報道したが、それは公式発表とは異なり、困難に陥っている戦争の実態を描き出していた。司法省は素早く、それ以降の報道を禁止し、その内容を暴露した新聞発行者を罰しようとした。グラベルは、ペンタゴン・ペーパーのかなりの部分を読み上げ、連邦議会議事録に残すことで反撃した。彼が勇敢にも、ペーパーをこうして公開したことで、ペーパーの報道再開が可能になったのだった。グラベルはまた、1971年、平時の徴兵を終わらせるため、5カ月間もの議事進行妨害を孤軍奮闘してやってのけ、1973年に徴兵を終了させるよう、ニクソン政権に取引を強いたのだ。彼は、民主党と、その主要候補者達を、大企業、特に兵器産業に仕えているといって厳しく非難した、攻撃的で遠慮ない、2008年大統領選候補者だった。余りずけずけと物言いをするため、民主党指導部によって、予備選挙討論への参加を禁じられてしまった。

「オバマは偉大な大統領になれる好機を逸しました」グラベルは残念がった。「アメリカ人の50パーセント以上が、この戦争には反対なのです。彼は立ち上がって「我々は撤退する」と言えたはずなのです。議会など無視するのです。共和党など無視するのです。タカ派など無視するのです。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストのような、タカ派の大手マスコミなど無視するのです。アメリカ国民が彼の側についたでしょうから、彼はそうした嵐も乗り切ることができたはずなのです。ところが彼は何をしたでしょう? 彼は[デビッド・]ペトレイアスと、[スタンリー・A・]マクリスタルのリーダーシップに屈して、完全な敗北者のシナリオを採用してしまいました。」

「夜、自分の子供たちを抱きしめる時、ベッドに寝かしつける時、同じような幼い少女が、アフガニスタンにもいて、殺害されたり、手足を失ったりしているのだ、ということを彼は考えなければいけません」グラベルは私に言った。「もしも、彼がそういう考え方が出来ないのであれば、彼の傲慢さには限りがないでしょう。ベトナム戦争の時、私はそれを上院で見ました。人は犯罪の直接性から自分を切り離してしまうのです。彼らは金のために投票します。彼らは政策に投票します。死につつある人々の写真は現実的ではないのです。もしも、あなたが私のとなりに座っていて、爆弾が破裂して、あなたの腕がもぎ取られたなら、現実的でないわけがありません。身の回りの出来事なのです。ロバート・グリーンウォルドの映画“アフガニスタン再考”を見ました。胸が引き裂かれます。ところが、オバマのリーダーシップ下のアメリカは、この犯罪の当事者です。目を閉じてみてください。マスコミの声を聞いみててください。評論家の発言を聞いてみてください。美辞麗句を聞いみててください。またもやベトナムの繰り返しです。アメリカの死活的利益と、ドミノ理論との違いは、一体何でしょう? 我々がアフガニスタンから撤退したとて、我々がベトナムから撤退した時と同じ程度の重みしかないでしょうに。」

「オバマがドーバー[空軍基地]にでかけて柩を見守ったり、アーリントンにでかけて、きびきびした敬礼で、墓にお参りしたりするのにだまされてはいけません。」グラベルは言う。「アドルフ・ヒトラーは、亡くなった兵士たちを名士扱いしました。死ぬことは立派なことだというのは昔からの考え方です。犬死にするのは、立派なことではありません。人々はベトナムで犬死にしたのです。彼らはイラクとアフガニスタンで犬死にしています。そして、バラク・オバマのリーダーシップのおかげで、更に多くの人々が犬死にするでしょう。」

「彼らが我々を憎むのは、我々が自由だからではありません。」イラクとアフガニスタンの武装反抗勢力に触れてグラベルは言った。「彼らが我々を憎むのは、我々が彼らを殺害しているからなのです。」

Chris Hedgesのコラム記事は、Truthdigに毎月曜日に掲載されるが、彼は20年間、海外特派員として、中南米、アフリカ、ヨーロッパと中東での戦争を報道してきた。彼は以下の本を含む9冊の本を書いている。新刊“Empire of Illusion: The End of Literacy and the Triumph of Spectacle”(2009年刊)および“戦争の甘い誘惑”(2003年刊、日本語訳は河出書房新社だが、絶版?)

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/print/gravels_lament_fighting_another_dumb_war_20091213/

読みやすさの為『アフガニスタン再考』と勝手に訳した映画、原題Rethink Afganistan。

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翻訳の公開が遅くなったが、時間差に他意はなく、単に、能力の問題。

『アフガニスタン再考』とした映画、原題Rethink Afganistanの公式ウェブはこちら

25ドルでDVDが二枚購入できるという。早速申し込もうと思っている。

著者、神学を学んでから、ジャーナリストとなった人物。

日本でも、神学を学んだ評論家が不思議なほどもてはやされているが、この記事の筆者と違って、イスラエル絶賛派なので、読む気になれない。右から一見左翼風雑誌まで、ひっぱりだこ。彼の記事が掲載された雑誌、購入することもあるが、彼の記事ほとんど読めずにいる。

寄席で良くある芸で、右半身・左半身、別の衣装・メーキャップをした芸人がする、一人二役を見る様な感じで頭が混乱する。もちろん寄席芸なら笑って済ませるだろう。

ハワイで、犯罪の当事者、テロ枢軸国家(正しくは宗主国・属国)外相会談が行われる。結果は...。

武装反抗勢力が我々を憎むのは、我々が彼らを殺害しているからなのだ。

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