アフガニスタンでの事実に直面すべき時期
エリック・S・マーゴリス
トロント 2008年10月06日
歴史上の皮肉を味わう向きへの話だが、ソビエト連邦帝国は、アメリカ合州国との破壊的な軍拡競争と、アフガニスタン占領の莫大なコストによってもたらされた経済の内部崩壊のため、1989から1991年の間に瓦解した。
それから17年後、世界におけるもう一つの大帝国、アメリカ合州国の曲がり角がやってきた。とめどもない負債で、致命的なまでに膨れ上がり、世界の軍事支出の50%という重荷を背負わされ、アメリカ経済という名の不安定な仕組みは、とうとう崩壊した。
ニューヨークやワシントン発、世界の終わりのニュースのおかげで、他の大半の国際問題がぼやけてしまった。これは不幸なことだ。なぜなら、初めて、点滅する明かりがみえかけたところなのだから。これはつまり、アフガニスタン・トンネルの出口で光が点滅していることを言っているに過ぎない。それもまあ、前方から近づいてくる自爆トラックなのかも知れないが。
アメリカが据えつけたアフガニスタン大統領ハミド・カルザイは、先週、彼が、ひとまとめにして、タリバンとして知られている、西側占領に抵抗している部族と政治的集団の連合との和平交渉を仲介してくれるよう、サウジアラビアに依頼したことを明らかにした。サウジアラビアは、タリバン政府を承認していた数少ない諸国の一つであり、アフガニスタンに対してかなりの影響力を維持しており、パキスタンの忠実な友人であり続けている。
タリバン指導者オマール師は、カルザイの申し出をすぐさま拒否し、アメリカは、ソ連がアフガニスタンで味わったと同じような壊滅的敗北に向かっていると主張した。進行中の北米における金融パニックが、彼の言葉を裏付けている。
アメリカ経済は、重大な危機状態にあり、三大自動車メーカーは間もなく破産に直面する可能性がある。ウォール街とアメリカの金融制度が崩壊に直面する中、のんきなペンタゴンは、イラクで、親アメリカ宣伝を広めるため、アメリカの業者に3億ドル支払う予定だと発表したのは、異常なオマケだ。この驚くべき暗愚さにもかかわらず、ワシントンは、イラクにおける作戦をまかない続け、アフガニスタン国境に沿った反抗的なパシュトゥーン族パキスタン国民に対する戦争を行うため、パキスタンに月に2.5億-3億ドルの賄賂を渡すのに必要な資金が、今にも足りなくなりかねない。
有能で、歯に衣着せない在アフガニスタン・アメリカ軍指揮官である、デビッド・マキャナン司令官は、緊急に、少なくとも更に10,000人の兵士の増派を求めた。アフガニスタンのアメリカとNATOの軍隊は、益々守勢に回りつつあり、大量の火力と、完全な制空権にもかかわらず、脆弱な補給線を守るのに四苦八苦だ。
アメリカとNATOの輸送車列への攻撃は、なんとカラチ港から始まっている。アメリカがアフガニスタンで勝てない戦争を、パキスタンにまで拡大するという展望など、軍事的、経済的な狂気だ。
驚くべきことに、マキャナン司令官は、タリバンとの政治的対話を提案し、戦争は外交によって終わらせなければならないことを認めることで、ブッシュ政権の政策と決別するかのように見える。軍人たちは、この戦争は戦場で勝利することができないことを知っているのだ。マキャナン司令官の前任者は、議会で、アフガニスタンを平定するには400,000人のアメリカ兵士が必要だろうと述べた。アフガニスタンには、現在80,000人の西側の兵士がおり、彼らの多くは戦闘するのをいやがっている。
これとは極めて対照的に、私は最近ブッシュ大統領の元上級顧問だったカール・ローブに、どうすれば、アメリカがアフガニスタンでの戦争に勝つよう期待するようにできるか尋ねてみた。彼の目を帝国の傲慢さで輝かせながら、ローブは明るく答えた。「より多くのプレデター無人偵察機(ミサイルを搭載した無人飛行機)とヘリコプターだ! そこで、我々はパキスタンに向かうのだ。」
これは、19世紀のイギリス帝国主義にまつわる、詩人ヒレア・ベロックの詩「アメリカの支配」の素晴らしい一節で、私が新刊書で使ったものを思いださせる。「何が起きようとも/俺たちには/マキシム銃があり* /連中にはない。」
*マキシム銃-初期の機関銃
カルザイのオリーブの枝は拒否されたとは言え、彼がそれを公にしたという事実は非常に重要だ。そうすることによって、彼とマキャナン司令官は、タリバンとその同盟陣営との交渉に対するに西側の愚かなタブーを破ったのだ。
タリバンは、西側の戦争プロパガンダが主張するような「テロリストの活動」等ではなく、共産主義と麻薬取引と戦うべく立ち上げられたイスラム教の宗教運動だという事実を想起しよう。
タリバンは、2001年5月まで、アメリカの資金援助を受けていた。実際、CIAはタリバンと緊密な関係を維持しており、そのメンバーの多くは、1980年代の対ソ連戦争の間に、中央アジアの共産党政権と中国に対して将来も使えるようにと、アメリカが支援したイスラム聖戦士だ。9/11攻撃の後、CIAは即座にタリバンとの関係を絶ち、関連ファイルを焼却した。
近年、西側の戦争プロパガンダが、タリバンを極めて悪辣な悪魔であるかのように描き出してきたため、当然かつ必然的な提案をする勇気を持った政治家はほとんどいない。つまり、この無意味な七年間にわたる戦争の交渉による解決だ。今年四月、ヤープ・デホープスヘッフェルNATO事務総長が、軍事的な手段ではなく、交渉によってのみ、終わらせることができると認めたことは、注目に値する例外だ。
カルザイ政府は、そうすれば、まさに自らが権力基盤としている、ウズベクやタジクの麻薬売買をしている軍閥の長や共産主義者の幹部を追放することになるため、カーブル外部には権威を及ばせることができない。本当のアフガニスタン国軍などというものは存在せず、戦うふりをしている不熱心な傭兵の集団に過ぎない。
アフガニスタンにおける現在の戦争は、本当のところは、アル-カイダやテロリズムに対するものなどではなく、中央アジア・カスピ海盆地の石油と天然ガス資源を、パシュトゥーン部族地域を経由して、西側に輸出する、安全な回路を切り開くためのものなのだ。アフガニスタンに駐留するアメリカとNATOの軍隊は、本質的に、敵対的な先住民を撃退しようとしている、パイプライン防衛部隊だ。
バラク・オバマ、ジョン・ マケインの二人ともアフガニスタンについては、間違っている。それは、「テロ」に対する「良い」戦いではなくして、西側の地政学的な力を、資源の豊富な中央アジアに拡張しようという、古典的な19世紀の植民地戦争なのだ。そこに暮らすパシュトゥーン系アフガニスタン人は、更に100年間戦い続ける覚悟がある。西側諸国がそういう訳でないことは確かだ。
あの偉大なアメリカ建国の始祖ベンジャミン・フランクリンが言ったように、「良い戦争も、悪い平和も存在しない。」西側にとって、アフガニスタンにおける現実に直面すべき時期だ。
記事原文のurl:www.ericmargolis.com/political_commentaries/time-to-face-facts-in-afghanistan_7.aspx
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えせ「二大政党の政権交代選挙」という、大本営マスコミ宣伝のなか、早くも民主党は、その正体をあらわにした。下記のニュースだ。本気で反対する意図など始めからなかったのだろう。結局は、アメリカの圧力に迎合するのと同じこと。
Yahoo news 10月8日12時46分配信 毎日新聞
民主党は8日午前、衆院議院運営委員会の理事会で、インド洋での給油活動継続のための新テロ対策特別措置法改正案について、週内の衆院通過を容認する姿
勢を示した。9日の衆院本会議を省略し、衆院テロ防止・イラク支援特別委員会で趣旨説明と質疑を行うことを要求した。民主党の要求には、速やかに反対の意思表示を行うことで、与党に早期解散を促す狙いがあるとみられる。与党は9日の衆院本会議で趣旨説明を行い審議入りすることを提案したため、折り合いがつかなかった。【高本耕太】
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この件については、例えば下記のblog記事を、お読みいただきたい。
進む自公民談合・協力体制~インド洋給油活動延長を黙認する民主党 世界の片隅でニュースを読む
補正予算案は賛成できるシロモノか。 花・髪切と思考の浮游空間
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