『スウェーデンの高齢者への医療支援と生活支援、どちらを重視?
医療は子どもと若者が優先される
イメージ
スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。それは、小児医療と高齢者医療への予算配分からも明確です。
医療の優先順位は新型コロナのパンデミックの時も同様で、高度医療は若く体力があり、回復する見込みのある患者に優先的に提供されました。介護施設で暮らす高齢者は、慢性疾患を抱え、回復する見込みが少なく、治療による苦痛も大きいため、国は「施設で緩和ケアを行う」ことに決めました。
そのため、多くの高齢者は病院へ搬送されることなく、施設で看護師から症状緩和の処置を受けて亡くなりました。
Q スエーデンも高齢者が多い国だね?
平均寿命は日本が84.46歳で、スエーデンは82.66歳だ。1.8歳しか違わない。
https://sekai-hub.com/posts/life-expectancy-ranking-2024
そういう国が上記のような国造りをしている。
「スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。」の箇所を今の日本人で共通認識に至るだろうか?
A 今の日本の無宗教の高齢者には人生観の違いもあるだろうし、理解が困難だが、植物人間になっても生きておりさえすれば要よいというものでも無い。
クオリティーの高い生活をする事が重要だ。
スエーデンも平均寿命が長い国だ。
見習うべきところが多々あるだろう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d51a2826894d6d3c6c95fcc0b1d53850021a38c
『高齢者への医療支援と生活支援、どちらを重視? 日本とスウェーデンの異なる価値観
9/30(月) 17:40配信
18
コメント18件
読売新聞(ヨミドクター)
宮本礼子・長谷川佑子「日本とこんなに違うスウェーデンの高齢者医療・介護」
内科医の宮本礼子さんと、認知症専門看護師としてスウェーデンで働いている長谷川佑子さんが、日本とスウェーデンの高齢者医療・介護の現状を比べながら、超高齢社会の日本のあり方を考えます。
【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
スウェーデンのサマーハウス(長谷川佑子撮影)
スウェーデンでは、多くの人が「高齢者が質の高い生活をするためには、医療よりも生活支援が大切」と考えます。スウェーデンの高齢者の生活について、長谷川佑子さんに語ってもらいます。(宮本礼子 内科医)
冬が長く、夏の休暇を待ちわびるスウェーデン人
スウェーデンでは11月に入ると16時前に日が暮れてしまい、暗く長い冬が続きます。そのため、暖かく明るい夏をスウェーデン人は毎年待ちわびます。
6月から8月にかけては、続けて4週間の休暇をとる権利が法律で認められています。人によっては育児休業もつなげて5~6週間の休みをとります。「休暇は家族や友人と過ごすためにとても大切で、この休暇なしに仕事することは考えられない」とスウェーデン人は言います。
森や湖畔のサマーハウスで夏を満喫
多くのスウェーデン人は、何年もかけて造ったサマーハウスを森や湖畔に持っており、修理も楽しみながら、そこで家族や親戚や友人と夏の休暇を楽しみます。
クリスマスが終わると、もう夏休みのことを考え始めるほど、スウェーデン人は夏の休暇を楽しみにしています。旅行すること、庭で野菜を育てることなど、計画や準備も含め、夏を満喫して人生を楽しみます。生涯このような希望や喜びが生活の中にあることこそが人生です。それは介護施設で暮らす高齢者も同じです。
介護施設の高齢者でも夏はサマーハウスや旅行に
スウェーデンの夏の風景(宮本秀一撮影)
例えば、介護施設で暮らす高齢者の中にも、サマーハウスに2週間滞在する人がいます。サマーハウスはトイレなどに段差があり、歩行器を利用する高齢者には危険です。そのため、補助器具を使って安全に過ごせるように、春からリハビリチームと看護師が本人を訓練します。これは通常の生活支援を超えていますが、高齢者が人生を楽しむためには大切な支援と職員は考えます。
また、80代のオスカルさん(仮名)は毎年夏になると、国の「移動支援タクシー」で、介護施設から300キロも離れた孫に一人で会いに行きます。軽度の認知症があり、公共交通機関の利用は困難だからです。
高齢者や障害のある人の移送に慣れている運転手が送迎し、本人負担は約6000円(100kmまで)、8000円(1000kmまで)と低料金です。実は、スウェーデンはタクシー料金が高いので、元気な人はほとんどタクシーを利用しません。そのため、国は公共交通機関の利用が困難な人にタクシー代を補助して、タクシー業界を助けています。
夏季休暇中は医療体制も縮小
夏季休暇の取得は、医療機関の職員も例外ではありません。外来や外科病棟は診療を計画的に減らし、緊急の手術に対応する程度にします。内科病棟は医学生や看護学生がケアワーカー(准看護師と介護スタッフを兼ねたような職種)として働き、職員は交代で休暇を取ります。学生にとっても、医療現場で学べるよい機会です。
救急室も夏季休暇期間は規模が縮小され、命に直接関わる状態でなければ、長時間待たされることが多いです。体調不良の高齢者にとっては、長時間一人で待たされるうえ、トイレや食事のケアよりも救急医療が優先され、とてもつらい場所になります。
このような背景から、今年は介護施設に対し、「極力、救急室受診を控えるように」という通達(救急車による搬送を含む)が、ウプサラ市内で唯一の救急室がある大学病院から来ました。その通達には、できるだけ各施設で看護師や家庭医が対応すること、あるいは老年疾患専門当直医へ電話で相談して解決すること、とあります。
夏に働いてもよいという人をさらに雇用すれば、患者は医療機関を受診しやすくなりますが、医療への税金の投入が大きくなるため、それは不可能です。夏季休暇制度は、容易に受診できないことへの社会の納得の上に成り立っています。
医療は子どもと若者が優先される
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スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。それは、小児医療と高齢者医療への予算配分からも明確です。
医療の優先順位は新型コロナのパンデミックの時も同様で、高度医療は若く体力があり、回復する見込みのある患者に優先的に提供されました。介護施設で暮らす高齢者は、慢性疾患を抱え、回復する見込みが少なく、治療による苦痛も大きいため、国は「施設で緩和ケアを行う」ことに決めました。
そのため、多くの高齢者は病院へ搬送されることなく、施設で看護師から症状緩和の処置を受けて亡くなりました。看護師やケアスタッフは短期間に多くの高齢者を 看取(みと)り、肉体的にも精神的にも疲弊しましたが、高齢者はなじみの場所でなじみの職員に囲まれ、穏やかな最期を迎えることができました。終末期には面会もでき、多くの家族が「高度医療よりも緩和ケアを行う」ことに納得しました。
介護施設の医療は看護師が中心
介護施設では、看護師は規定内の投薬と処置を行うことが認められており、日中の医療は看護師と訪問医師(週1回)が行います。看護師は、ケアワーカーから転倒や体調不良などの報告を受けて患者に対応し、医師には必要時のみ連絡します。夜間の医療は、複数の施設を巡回する当直看護師が行い、対応に困る時は当直医師へ電話し、指示を受けます。一人の医師が担当する患者の数が膨大なため、医師が患者を診察することはめったにありません。看護師は医師の診察が必要と判断すると、救急車で患者を搬送します。
しかし、この夏は先ほどの大学病院からの通達により、施設で高齢者の医療を行うことが求められていました。患者を重症化させないためには、ケアワーカーが高齢者の小さな変化に気づき、看護師がそれを正しく評価して対応しなくてはなりません。看護師の責任は大きいです。
税金の配分を市民レベルで議論
スウェーデンでは、自分たちの税金で賄われている医療や福祉や教育は、どの分野にどれだけ税金を配分するのが良いか、市民レベルでよく議論されます。
「救急室で待たされるのは困るけど、皆が望むだけ医療を受ければ医療費が増えて生活支援のお金が足りなくなり、よい生活が送れなくなってしまうわね」と話す高齢者もいます。
多くの人が「高齢者が質の高い生活をするためには、医療よりも生活支援が大切」という価値観を持っています。そのため、医療機関にかかることは難しくても、人生を楽しむための支援が手厚い社会です。(長谷川佑子 認知症専門看護師)
日本の高齢者医療 優れている反面、過剰に
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次に、日本の高齢者の医療・生活支援(介護)について、宮本がお伝えします。
わが国は、いつでも、誰でも、早く、少ない費用負担で、質の高い医療を受けることができます。欧米にはスウェーデンのように、まず初めにかかりつけ医を受診しなければならない国がありますが、わが国はフリーアクセスと言って、どこの医療機関でも、どの医師にも自由にかかることができます。
医療機関を選ばなければ、当日の診療も可能です。救急車も全国平均約10.3分で現場に到着します(消防庁「令和5年版 救急救助の現況」より)。しかも、国民皆保険制度、高額療養費制度、公費の投入、医療サービスの低コスト化等により、医療費の負担は少ないです。
総じて、わが国の医療制度はとても優れていると言ってよいでしょう。しかしその反面、過剰な検査・治療に苦しむ高齢者、管だらけの寝たきり高齢者が多いのも事実です。また、そのような医療に投入する医療費は莫大です。
高齢化の進展や医療技術の進歩により、日本の医療保険制度は財政的に厳しい状況にあります。わが国の優れた医療制度を存続させ、高齢者に質の高い生活をもたらすためには、高齢者にはどのような医療が良いのかを、医療の優先順位の問題も含め、考える必要があると思います。
日本の高齢者介護は楽しみより安全重視
介護保険制度により、わが国の要介護高齢者は、少ない費用で質の高い介護が受けられます。しかし、自分の意思で自由に人生を楽しむことはできません。スウェーデンのように、介護施設入所者が一人で旅行することはなく、せいぜい、家族や職員に付き添われて短時間の外出を楽しむ程度です。その違いは、わが国は高齢者の安全を重視していること、また、旅行など人生を楽しむことには公的支援しないことからきています。
医療と介護の費用配分が両極端なスウェーデンと日本
スウェーデンは、高齢者の生活支援(介護)には驚くほどお金をかけますが、医療には驚くほどお金をかけません。一方、わが国はその反対です。スウェーデンと日本は、医療と介護の費用配分が両極端と言えるほど違います。
日本人の感覚からすると、スウェーデンの高齢者医療は過小医療に思え、もう少し高齢者に医療を提供すべきではないかと思います。しかし、医療にお金をかけない分、高齢者は人生を楽しんでいます。
一方、わが国の高齢者医療は過剰医療に思えます。スウェーデンの病院はほとんどが公的病院ですが、わが国は約7割が民間病院で収益を重視するからです。しかし、高齢者には質の高い生活が大切で、そのためには過剰でない適正な医療が行われる必要があります。余ったお金は介護に回すべきです。
高齢者が良い暮らしをするためには、医療と介護の両方が必要です。しかし、超高齢社会において医療と介護のどちらも十分にというのは、財政的に難しいです。どちらを重視するのか、医療と介護の費用配分について国民的議論が必要ではないでしょうか。(宮本礼子 内科医)
宮本礼子(みやもと・れいこ)
宮本礼子
(公財)日本尊厳死協会理事・北海道支部長。前江別すずらん病院・認知症疾患医療センター長。1979年、旭川医科大学卒。内科医。専門は認知症医療と高齢者終末期医療。2012年に「高齢者の終末期医療を考える会」を設立し、代表となる。著書「欧米に寝たきり老人はいない(夫、顕二と共著)」(中央公論新社)、「認知症を堂々と生きる(共著)」(同)。
長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ)
長谷川佑子
スウェーデン在住。スウェーデン国シルヴィア王妃認定の認知症専門看護師。ウプサラ市・認知症ケアホーム認知症専門看護師。ウプサラ大学アカデミスカ病院老年急性期内科看護師。兵庫県立看護大学卒。
ママ&キッズのための情報サイト「グローリア」でスウェーデンの子育てについて連載。
https://www.glolea.com/ambassador/eri-swe
スウェーデンの仕事や日常生活など「note」で紹介。
https://note.com/silviassk/
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スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。それは、小児医療と高齢者医療への予算配分からも明確です。
医療の優先順位は新型コロナのパンデミックの時も同様で、高度医療は若く体力があり、回復する見込みのある患者に優先的に提供されました。介護施設で暮らす高齢者は、慢性疾患を抱え、回復する見込みが少なく、治療による苦痛も大きいため、国は「施設で緩和ケアを行う」ことに決めました。
そのため、多くの高齢者は病院へ搬送されることなく、施設で看護師から症状緩和の処置を受けて亡くなりました。
Q スエーデンも高齢者が多い国だね?
平均寿命は日本が84.46歳で、スエーデンは82.66歳だ。1.8歳しか違わない。
https://sekai-hub.com/posts/life-expectancy-ranking-2024
そういう国が上記のような国造りをしている。
「スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。」の箇所を今の日本人で共通認識に至るだろうか?
A 今の日本の無宗教の高齢者には人生観の違いもあるだろうし、理解が困難だが、植物人間になっても生きておりさえすれば要よいというものでも無い。
クオリティーの高い生活をする事が重要だ。
スエーデンも平均寿命が長い国だ。
見習うべきところが多々あるだろう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8d51a2826894d6d3c6c95fcc0b1d53850021a38c
『高齢者への医療支援と生活支援、どちらを重視? 日本とスウェーデンの異なる価値観
9/30(月) 17:40配信
18
コメント18件
読売新聞(ヨミドクター)
宮本礼子・長谷川佑子「日本とこんなに違うスウェーデンの高齢者医療・介護」
内科医の宮本礼子さんと、認知症専門看護師としてスウェーデンで働いている長谷川佑子さんが、日本とスウェーデンの高齢者医療・介護の現状を比べながら、超高齢社会の日本のあり方を考えます。
【図解】ペットボトルのふたはどう開けている? 開け方でわかるフレイルのサイン
スウェーデンのサマーハウス(長谷川佑子撮影)
スウェーデンでは、多くの人が「高齢者が質の高い生活をするためには、医療よりも生活支援が大切」と考えます。スウェーデンの高齢者の生活について、長谷川佑子さんに語ってもらいます。(宮本礼子 内科医)
冬が長く、夏の休暇を待ちわびるスウェーデン人
スウェーデンでは11月に入ると16時前に日が暮れてしまい、暗く長い冬が続きます。そのため、暖かく明るい夏をスウェーデン人は毎年待ちわびます。
6月から8月にかけては、続けて4週間の休暇をとる権利が法律で認められています。人によっては育児休業もつなげて5~6週間の休みをとります。「休暇は家族や友人と過ごすためにとても大切で、この休暇なしに仕事することは考えられない」とスウェーデン人は言います。
森や湖畔のサマーハウスで夏を満喫
多くのスウェーデン人は、何年もかけて造ったサマーハウスを森や湖畔に持っており、修理も楽しみながら、そこで家族や親戚や友人と夏の休暇を楽しみます。
クリスマスが終わると、もう夏休みのことを考え始めるほど、スウェーデン人は夏の休暇を楽しみにしています。旅行すること、庭で野菜を育てることなど、計画や準備も含め、夏を満喫して人生を楽しみます。生涯このような希望や喜びが生活の中にあることこそが人生です。それは介護施設で暮らす高齢者も同じです。
介護施設の高齢者でも夏はサマーハウスや旅行に
スウェーデンの夏の風景(宮本秀一撮影)
例えば、介護施設で暮らす高齢者の中にも、サマーハウスに2週間滞在する人がいます。サマーハウスはトイレなどに段差があり、歩行器を利用する高齢者には危険です。そのため、補助器具を使って安全に過ごせるように、春からリハビリチームと看護師が本人を訓練します。これは通常の生活支援を超えていますが、高齢者が人生を楽しむためには大切な支援と職員は考えます。
また、80代のオスカルさん(仮名)は毎年夏になると、国の「移動支援タクシー」で、介護施設から300キロも離れた孫に一人で会いに行きます。軽度の認知症があり、公共交通機関の利用は困難だからです。
高齢者や障害のある人の移送に慣れている運転手が送迎し、本人負担は約6000円(100kmまで)、8000円(1000kmまで)と低料金です。実は、スウェーデンはタクシー料金が高いので、元気な人はほとんどタクシーを利用しません。そのため、国は公共交通機関の利用が困難な人にタクシー代を補助して、タクシー業界を助けています。
夏季休暇中は医療体制も縮小
夏季休暇の取得は、医療機関の職員も例外ではありません。外来や外科病棟は診療を計画的に減らし、緊急の手術に対応する程度にします。内科病棟は医学生や看護学生がケアワーカー(准看護師と介護スタッフを兼ねたような職種)として働き、職員は交代で休暇を取ります。学生にとっても、医療現場で学べるよい機会です。
救急室も夏季休暇期間は規模が縮小され、命に直接関わる状態でなければ、長時間待たされることが多いです。体調不良の高齢者にとっては、長時間一人で待たされるうえ、トイレや食事のケアよりも救急医療が優先され、とてもつらい場所になります。
このような背景から、今年は介護施設に対し、「極力、救急室受診を控えるように」という通達(救急車による搬送を含む)が、ウプサラ市内で唯一の救急室がある大学病院から来ました。その通達には、できるだけ各施設で看護師や家庭医が対応すること、あるいは老年疾患専門当直医へ電話で相談して解決すること、とあります。
夏に働いてもよいという人をさらに雇用すれば、患者は医療機関を受診しやすくなりますが、医療への税金の投入が大きくなるため、それは不可能です。夏季休暇制度は、容易に受診できないことへの社会の納得の上に成り立っています。
医療は子どもと若者が優先される
イメージ
スウェーデンでは、子どもと若者に医療が優先されることに社会のコンセンサスが得られています。それは、小児医療と高齢者医療への予算配分からも明確です。
医療の優先順位は新型コロナのパンデミックの時も同様で、高度医療は若く体力があり、回復する見込みのある患者に優先的に提供されました。介護施設で暮らす高齢者は、慢性疾患を抱え、回復する見込みが少なく、治療による苦痛も大きいため、国は「施設で緩和ケアを行う」ことに決めました。
そのため、多くの高齢者は病院へ搬送されることなく、施設で看護師から症状緩和の処置を受けて亡くなりました。看護師やケアスタッフは短期間に多くの高齢者を 看取(みと)り、肉体的にも精神的にも疲弊しましたが、高齢者はなじみの場所でなじみの職員に囲まれ、穏やかな最期を迎えることができました。終末期には面会もでき、多くの家族が「高度医療よりも緩和ケアを行う」ことに納得しました。
介護施設の医療は看護師が中心
介護施設では、看護師は規定内の投薬と処置を行うことが認められており、日中の医療は看護師と訪問医師(週1回)が行います。看護師は、ケアワーカーから転倒や体調不良などの報告を受けて患者に対応し、医師には必要時のみ連絡します。夜間の医療は、複数の施設を巡回する当直看護師が行い、対応に困る時は当直医師へ電話し、指示を受けます。一人の医師が担当する患者の数が膨大なため、医師が患者を診察することはめったにありません。看護師は医師の診察が必要と判断すると、救急車で患者を搬送します。
しかし、この夏は先ほどの大学病院からの通達により、施設で高齢者の医療を行うことが求められていました。患者を重症化させないためには、ケアワーカーが高齢者の小さな変化に気づき、看護師がそれを正しく評価して対応しなくてはなりません。看護師の責任は大きいです。
税金の配分を市民レベルで議論
スウェーデンでは、自分たちの税金で賄われている医療や福祉や教育は、どの分野にどれだけ税金を配分するのが良いか、市民レベルでよく議論されます。
「救急室で待たされるのは困るけど、皆が望むだけ医療を受ければ医療費が増えて生活支援のお金が足りなくなり、よい生活が送れなくなってしまうわね」と話す高齢者もいます。
多くの人が「高齢者が質の高い生活をするためには、医療よりも生活支援が大切」という価値観を持っています。そのため、医療機関にかかることは難しくても、人生を楽しむための支援が手厚い社会です。(長谷川佑子 認知症専門看護師)
日本の高齢者医療 優れている反面、過剰に
イメージ
次に、日本の高齢者の医療・生活支援(介護)について、宮本がお伝えします。
わが国は、いつでも、誰でも、早く、少ない費用負担で、質の高い医療を受けることができます。欧米にはスウェーデンのように、まず初めにかかりつけ医を受診しなければならない国がありますが、わが国はフリーアクセスと言って、どこの医療機関でも、どの医師にも自由にかかることができます。
医療機関を選ばなければ、当日の診療も可能です。救急車も全国平均約10.3分で現場に到着します(消防庁「令和5年版 救急救助の現況」より)。しかも、国民皆保険制度、高額療養費制度、公費の投入、医療サービスの低コスト化等により、医療費の負担は少ないです。
総じて、わが国の医療制度はとても優れていると言ってよいでしょう。しかしその反面、過剰な検査・治療に苦しむ高齢者、管だらけの寝たきり高齢者が多いのも事実です。また、そのような医療に投入する医療費は莫大です。
高齢化の進展や医療技術の進歩により、日本の医療保険制度は財政的に厳しい状況にあります。わが国の優れた医療制度を存続させ、高齢者に質の高い生活をもたらすためには、高齢者にはどのような医療が良いのかを、医療の優先順位の問題も含め、考える必要があると思います。
日本の高齢者介護は楽しみより安全重視
介護保険制度により、わが国の要介護高齢者は、少ない費用で質の高い介護が受けられます。しかし、自分の意思で自由に人生を楽しむことはできません。スウェーデンのように、介護施設入所者が一人で旅行することはなく、せいぜい、家族や職員に付き添われて短時間の外出を楽しむ程度です。その違いは、わが国は高齢者の安全を重視していること、また、旅行など人生を楽しむことには公的支援しないことからきています。
医療と介護の費用配分が両極端なスウェーデンと日本
スウェーデンは、高齢者の生活支援(介護)には驚くほどお金をかけますが、医療には驚くほどお金をかけません。一方、わが国はその反対です。スウェーデンと日本は、医療と介護の費用配分が両極端と言えるほど違います。
日本人の感覚からすると、スウェーデンの高齢者医療は過小医療に思え、もう少し高齢者に医療を提供すべきではないかと思います。しかし、医療にお金をかけない分、高齢者は人生を楽しんでいます。
一方、わが国の高齢者医療は過剰医療に思えます。スウェーデンの病院はほとんどが公的病院ですが、わが国は約7割が民間病院で収益を重視するからです。しかし、高齢者には質の高い生活が大切で、そのためには過剰でない適正な医療が行われる必要があります。余ったお金は介護に回すべきです。
高齢者が良い暮らしをするためには、医療と介護の両方が必要です。しかし、超高齢社会において医療と介護のどちらも十分にというのは、財政的に難しいです。どちらを重視するのか、医療と介護の費用配分について国民的議論が必要ではないでしょうか。(宮本礼子 内科医)
宮本礼子(みやもと・れいこ)
宮本礼子
(公財)日本尊厳死協会理事・北海道支部長。前江別すずらん病院・認知症疾患医療センター長。1979年、旭川医科大学卒。内科医。専門は認知症医療と高齢者終末期医療。2012年に「高齢者の終末期医療を考える会」を設立し、代表となる。著書「欧米に寝たきり老人はいない(夫、顕二と共著)」(中央公論新社)、「認知症を堂々と生きる(共著)」(同)。
長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ)
長谷川佑子
スウェーデン在住。スウェーデン国シルヴィア王妃認定の認知症専門看護師。ウプサラ市・認知症ケアホーム認知症専門看護師。ウプサラ大学アカデミスカ病院老年急性期内科看護師。兵庫県立看護大学卒。
ママ&キッズのための情報サイト「グローリア」でスウェーデンの子育てについて連載。
https://www.glolea.com/ambassador/eri-swe
スウェーデンの仕事や日常生活など「note」で紹介。
https://note.com/silviassk/