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① 秦 郁彦 「 昭和史の謎を追う」
レビュー紹介


 秦氏は、若いころ、大蔵省のキャリアとして、昭和財政史の編纂に取り組んでいたが、小役人的な上司の検閲にいやけがさして、役所をやめた、「脱藩官僚」のはしりの歴史学者だ。
 タイトルからして、財務省陰謀論の分析かとおもったら、そうではなく、満州事変、第二次世界大戦に関して、日本で流行する、歴史学者からみて、レベルが低すぎる陰謀史観について、それを詳細に検討し、「トンデモ」論であることを明らかにしてくれる。
 最近、右派に人気のある田母神氏のトンデモ理論や、それを称揚する、藤原正彦、そして歴史学者のはずの、中西輝政氏の論を、歴史的な検証を踏まえて、コテンパンにやっつける。
 通常のアカデミックな歴史学者が避けて通る、一般的な論壇に、あえて出て行って、学問の厳しさを示してくれる。
 また、本書では、江藤淳氏の「閉ざされた言語空間」で有名となった「ワー・ギルト・インフォメーション・プログラム」が日本人を洗脳したという、広く右派を中心にもてはされている言辞についても、想像が拡大しすぎた「陰謀史観」の一種として、バッサリ切って捨てる。
 こきみのよい文章と、あぶない話にもあえて参入して、歴史学の碩学としての見識を示すのが、痛快だ。
 このようなまともな見識が、なかなか世に広まらないのは残念なことだ。共産党、コミンテルン、フリーメーソン、アメリカCIAなどが世を操ったという「陰謀史観」を信じてよいか迷っている人に一読をお勧めする。
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Author:正木明人
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21世紀初頭のこの混乱は、人類の生存を危ぶませるに十分なものです。
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なすこともなく、危機を迎えることはできない。私たちは、後続世代にどのようにつなげていけるのか?

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