EU各国政府は、今回のエネルギー危機でも、自らの失政を棚に上げ、市民たちに無意味な対策を要求。
<記事原文 寺島先生推薦>
Will French officials’ turtlenecks save the country from crisis?
EU officials are lecturing their people on how to be ‘responsible’ amid a crisis of their own making
(フランス政府の役人たちが、タートルネックを着用することで、この国を危機から救えるのだろうか?
EU当局の役人たちは市民たちに、危機に対して「責任」を持て、と説教を垂れるが、その危機を作ったのはEU当局だ。)
筆者:レィチェル・マルスデン(Rachel Marsden)
レィチェル・マルスデン(Rachel Marsden)はコラム執筆者で、政治戦略家で、独立系メディアで、フランス語や英語でのトークショーの司会もつとめている。
出典:RT
2022年10月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月18日

エマニュエル・マクロン仏大統領© Ludovic MARIN / POOL / AFP
私以外でお気付きの方はおられるだろうか?それは、西側諸国政府の多数の役人たちが、最近力を込めて、有権者たちに向かって手本を示す(あるいは、お説教を垂れることもあるが)姿をよく見かけるようになったことだ。その内容は、どうすれば、今直面している様々な危機的状況の中で、自分勝手で、無責任な人間と思われないようにできるか、についてだ。しかし実はその危機的状況を促進し、悪化させているのは、他でもない、その各国当局なのだ。
ここフランスでは、パリファッションウィークが盛大に開かれていた先週、フランス政府高官たちが、2022年秋冬新作「善意見せつけ」コレクションで、モデルをつとめていた。ブリュノ・ル・メール経済・財務・産業及びデジタル主権大臣は、摂氏20℃の屋内で、タートルネックを身につけて現れた。「私のネクタイ姿を見ることはもうないでしょう。これからはタートルネックを着用しますので」とル・メール大臣は語った。「こうするのはとてもいいことだ、と思います。エネルギー節約にもなりますし、自分が意識高めだ、ということを示していることにもなりますので」。夏の気候時に、「僕は、エネルギー問題など、社会問題に意識高めですから」などと言いながら、スキーをするような格好で仕事場に来た人がいたら、「頭、おかしくないか?」と突っ込まれるのがオチだろう。
しかし負けじと、エマニュエル・マクロン仏大統領も、公共の場にタートルネックに身をまとって現れたのだ。エリザベット・ボルヌ仏首相も、アニエス・パニエ=リュナシェ仏エネルギー移行大臣も、別の屋内での行事に、ダウンジャケットを着て現れた。
西側諸国政府の指導者たちは、自国市民たちに禁欲生活を送るよう、強制したり、なだめたりすることに、より重点を置き、自分たちが壊してしまったものを直そうとすることは後回しにしているようだ。直そうとするには、勇気が要求されるからだ。従って、ブリュッセル当局の代名詞である、自分を傷つけてでも「団結」を手に入れる、という方針は、破棄されている。

関連記事:Germany may cut energy exports to neighbors — FT
政府高官たちがこんな振る舞いを見せるのは、何もこのエネルギー危機において初めて、という訳ではない。これは着古された、よくある手口だ。
気候問題関連で色々と非難されることには、もうずっと前から皆、慣れっこになっている。ここパリでは、社会党のアンヌ・イダルゴ市長は、一年を通じた熱の入った取り組みにより、パリ市内のすべての、そして如何なる車両の運転者たちにも圧力をかけているので、運転者たちは様々な交通規制や制限にイライラさせられている。その規制の中には、運転時速を30キロ以内に抑えることも含まれている。しかし実は、このような措置は、多くの運転者たちをイラつかせるだけではなくて、効果もなく、逆効果でさえある。
特にドイツは、二酸化炭素ゼロ作戦を極端にまで追求していて、産業・経済界全体をグリーン・エネルギーで回そう、と計画している。そのドイツの方針を、フランスは致命的なくらい真似している。ただし、フランスが環境という要素を加味した上で、原子炉全廃に舵を切ろうとしなかったという事実からわかることは、ドイツとは違い、フランスは自国が持つ唯一の生命線を手放さなかった、ということだ。EUが、ロシアからの天然ガスの供給を断つという措置を、自分たちにかけてしまっているという状況の中でのことだ。
善意の見せつけ的なグリーン政策という政策は、全く意味のないものなので、EUは今年初旬に、グリーン政策を撤回する方向を打ち出し、天然ガスや原子力は、グリーンなエネルギーである、と再評価するようになった。昨日までの汚染エネルギーが、急に今日、環境にやさしい最良エネルギーに変わってしまった。それは、そのエネルギーの何かが変わったからという訳ではない。EUが指を鳴らして、これまでは汚れたエネルギーとされてきたものが、グリーンなエネルギーに変えられてしまっただけのことだ。同じようにEUは、これまでのエネルギー供給源をいとも容易く止めてしまうこともできる、ということだ。イデオロギーがつねに優先されている。そしてそんな時にはいつも、「見せつけの善意」の公演が繰り広げられる。
同じようなことが、コロナ禍の時も見られた。突然政府高官たちが、至る所で顔にマスクを付け始めた。屋外にいる時や、自分一人しかいない時にも、役所でマスクをしている姿を動画で流し始めたのだ。次に流れてきたのは、その西側諸国の政府高官たちが、列をなすかのように、ワクチン接種を行っている姿の画像だ。これらの全ての画像のおかげで、コロナ対策措置の是非についての意味のある討論の機会は効果的に奪われ、世論を牛耳っている勢力はそのまま、コロナ対策言説の頂点の座に君臨し続けた。目を丸くして、このような状況を批判的に見る人々は、即座に敬遠される対象と目されて、「もっと社会的な責任を持ちなさい」と批判された。そして今、我々西側諸国の支配者層、ウクライナでの紛争に関わって選択した政策のせいで引き起こされた、このエネルギー危機の最中に、「節約せよ」という「見せつけの善意」の上演が興行中なのだ。

関連記事: Le Pen issues grim winter prediction
「私に何ができるだろう?と、みんなが聞いています」。マルグレーテ・ベステアー欧州議会副議長は、欧州諸国のロシアへのエネルギー依存を減らすために、欧州市民にどう手助けが出来るかについて問われて、こう述べている。「自分や自分の家族の10代の人たちのシャワーの時間を減らすことです。そして蛇口を閉めるときにこういうのです。“これでも喰らえ、プーチン“と」。しかしそれは4月の話だ。欧州のあちこちで、配給や、工業の停止や、企業の倒産や、家計のエネルギー代金の爆発的な値上がり、といった深刻な話は起きていなかった頃の話だ。今は、インフレを止めることに必死だ。そして、このインフレが起こった原因は、西側諸国の政府の危機対応が間違っていたからだ。コロナ禍の時もそうだったし、今のエネルギー危機でも同じだ。西側諸国の政府は、国連の貿易の専門家たちや、国際通貨基金など、皆から警告されている。それは西側諸国が、米国の連邦準備制度の指揮のもと、貸付利率を高くしているが、その政策により世界を、大恐慌とは言わないまでも、不景気に引きずり込もうとしている、という警告だ。そうして、超富裕層以外は皆が、借金の利率の支払いでにっちもさっちもいかなくなり、生活必需品も含めて、買えるものがどんどんなくなっていく状況になることが懸念されている。
ドイツの各種発電所が閉鎖されて苦しんでいる状況の中でさえ、ロバート・ハーベック独経済・気候保護大臣は、自分がシャワーに掛ける時間を減らしたことを自慢していた。しかも二度も。
様々なEU加盟諸国ースペインや、フランスや、ギリシャや、イタリアーは、屋内の冷暖房使用に上限をかけているが、その目的は、ほんの数モルの天然ガスの使用を節約するためだ。 エネルギー危機関連の象徴的な全ての措置と同様に、これらの措置の一番の狙いは、市民たちをなだめすかして、ロシア/新型コロナ/炭素に対する何らかの生産的な対策を取らせることだ。いっぽう当局は、密かに市民たちをもっと深い奈落の底に突き落とすような動きを促進している。そうなっているのは、当局の行政運営が間違っていて、当局が無能で、考え方が狭くなってしまっていることに原因であるのに、今は全ての責任を、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に押し付けているのだ。言うまでもないことだが。
Will French officials’ turtlenecks save the country from crisis?
EU officials are lecturing their people on how to be ‘responsible’ amid a crisis of their own making
(フランス政府の役人たちが、タートルネックを着用することで、この国を危機から救えるのだろうか?
EU当局の役人たちは市民たちに、危機に対して「責任」を持て、と説教を垂れるが、その危機を作ったのはEU当局だ。)
筆者:レィチェル・マルスデン(Rachel Marsden)
レィチェル・マルスデン(Rachel Marsden)はコラム執筆者で、政治戦略家で、独立系メディアで、フランス語や英語でのトークショーの司会もつとめている。
出典:RT
2022年10月5日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2022年10月18日

エマニュエル・マクロン仏大統領© Ludovic MARIN / POOL / AFP
私以外でお気付きの方はおられるだろうか?それは、西側諸国政府の多数の役人たちが、最近力を込めて、有権者たちに向かって手本を示す(あるいは、お説教を垂れることもあるが)姿をよく見かけるようになったことだ。その内容は、どうすれば、今直面している様々な危機的状況の中で、自分勝手で、無責任な人間と思われないようにできるか、についてだ。しかし実はその危機的状況を促進し、悪化させているのは、他でもない、その各国当局なのだ。
ここフランスでは、パリファッションウィークが盛大に開かれていた先週、フランス政府高官たちが、2022年秋冬新作「善意見せつけ」コレクションで、モデルをつとめていた。ブリュノ・ル・メール経済・財務・産業及びデジタル主権大臣は、摂氏20℃の屋内で、タートルネックを身につけて現れた。「私のネクタイ姿を見ることはもうないでしょう。これからはタートルネックを着用しますので」とル・メール大臣は語った。「こうするのはとてもいいことだ、と思います。エネルギー節約にもなりますし、自分が意識高めだ、ということを示していることにもなりますので」。夏の気候時に、「僕は、エネルギー問題など、社会問題に意識高めですから」などと言いながら、スキーをするような格好で仕事場に来た人がいたら、「頭、おかしくないか?」と突っ込まれるのがオチだろう。
しかし負けじと、エマニュエル・マクロン仏大統領も、公共の場にタートルネックに身をまとって現れたのだ。エリザベット・ボルヌ仏首相も、アニエス・パニエ=リュナシェ仏エネルギー移行大臣も、別の屋内での行事に、ダウンジャケットを着て現れた。
西側諸国政府の指導者たちは、自国市民たちに禁欲生活を送るよう、強制したり、なだめたりすることに、より重点を置き、自分たちが壊してしまったものを直そうとすることは後回しにしているようだ。直そうとするには、勇気が要求されるからだ。従って、ブリュッセル当局の代名詞である、自分を傷つけてでも「団結」を手に入れる、という方針は、破棄されている。

関連記事:Germany may cut energy exports to neighbors — FT
政府高官たちがこんな振る舞いを見せるのは、何もこのエネルギー危機において初めて、という訳ではない。これは着古された、よくある手口だ。
気候問題関連で色々と非難されることには、もうずっと前から皆、慣れっこになっている。ここパリでは、社会党のアンヌ・イダルゴ市長は、一年を通じた熱の入った取り組みにより、パリ市内のすべての、そして如何なる車両の運転者たちにも圧力をかけているので、運転者たちは様々な交通規制や制限にイライラさせられている。その規制の中には、運転時速を30キロ以内に抑えることも含まれている。しかし実は、このような措置は、多くの運転者たちをイラつかせるだけではなくて、効果もなく、逆効果でさえある。
特にドイツは、二酸化炭素ゼロ作戦を極端にまで追求していて、産業・経済界全体をグリーン・エネルギーで回そう、と計画している。そのドイツの方針を、フランスは致命的なくらい真似している。ただし、フランスが環境という要素を加味した上で、原子炉全廃に舵を切ろうとしなかったという事実からわかることは、ドイツとは違い、フランスは自国が持つ唯一の生命線を手放さなかった、ということだ。EUが、ロシアからの天然ガスの供給を断つという措置を、自分たちにかけてしまっているという状況の中でのことだ。
善意の見せつけ的なグリーン政策という政策は、全く意味のないものなので、EUは今年初旬に、グリーン政策を撤回する方向を打ち出し、天然ガスや原子力は、グリーンなエネルギーである、と再評価するようになった。昨日までの汚染エネルギーが、急に今日、環境にやさしい最良エネルギーに変わってしまった。それは、そのエネルギーの何かが変わったからという訳ではない。EUが指を鳴らして、これまでは汚れたエネルギーとされてきたものが、グリーンなエネルギーに変えられてしまっただけのことだ。同じようにEUは、これまでのエネルギー供給源をいとも容易く止めてしまうこともできる、ということだ。イデオロギーがつねに優先されている。そしてそんな時にはいつも、「見せつけの善意」の公演が繰り広げられる。
同じようなことが、コロナ禍の時も見られた。突然政府高官たちが、至る所で顔にマスクを付け始めた。屋外にいる時や、自分一人しかいない時にも、役所でマスクをしている姿を動画で流し始めたのだ。次に流れてきたのは、その西側諸国の政府高官たちが、列をなすかのように、ワクチン接種を行っている姿の画像だ。これらの全ての画像のおかげで、コロナ対策措置の是非についての意味のある討論の機会は効果的に奪われ、世論を牛耳っている勢力はそのまま、コロナ対策言説の頂点の座に君臨し続けた。目を丸くして、このような状況を批判的に見る人々は、即座に敬遠される対象と目されて、「もっと社会的な責任を持ちなさい」と批判された。そして今、我々西側諸国の支配者層、ウクライナでの紛争に関わって選択した政策のせいで引き起こされた、このエネルギー危機の最中に、「節約せよ」という「見せつけの善意」の上演が興行中なのだ。

関連記事: Le Pen issues grim winter prediction
「私に何ができるだろう?と、みんなが聞いています」。マルグレーテ・ベステアー欧州議会副議長は、欧州諸国のロシアへのエネルギー依存を減らすために、欧州市民にどう手助けが出来るかについて問われて、こう述べている。「自分や自分の家族の10代の人たちのシャワーの時間を減らすことです。そして蛇口を閉めるときにこういうのです。“これでも喰らえ、プーチン“と」。しかしそれは4月の話だ。欧州のあちこちで、配給や、工業の停止や、企業の倒産や、家計のエネルギー代金の爆発的な値上がり、といった深刻な話は起きていなかった頃の話だ。今は、インフレを止めることに必死だ。そして、このインフレが起こった原因は、西側諸国の政府の危機対応が間違っていたからだ。コロナ禍の時もそうだったし、今のエネルギー危機でも同じだ。西側諸国の政府は、国連の貿易の専門家たちや、国際通貨基金など、皆から警告されている。それは西側諸国が、米国の連邦準備制度の指揮のもと、貸付利率を高くしているが、その政策により世界を、大恐慌とは言わないまでも、不景気に引きずり込もうとしている、という警告だ。そうして、超富裕層以外は皆が、借金の利率の支払いでにっちもさっちもいかなくなり、生活必需品も含めて、買えるものがどんどんなくなっていく状況になることが懸念されている。
ドイツの各種発電所が閉鎖されて苦しんでいる状況の中でさえ、ロバート・ハーベック独経済・気候保護大臣は、自分がシャワーに掛ける時間を減らしたことを自慢していた。しかも二度も。
様々なEU加盟諸国ースペインや、フランスや、ギリシャや、イタリアーは、屋内の冷暖房使用に上限をかけているが、その目的は、ほんの数モルの天然ガスの使用を節約するためだ。 エネルギー危機関連の象徴的な全ての措置と同様に、これらの措置の一番の狙いは、市民たちをなだめすかして、ロシア/新型コロナ/炭素に対する何らかの生産的な対策を取らせることだ。いっぽう当局は、密かに市民たちをもっと深い奈落の底に突き落とすような動きを促進している。そうなっているのは、当局の行政運営が間違っていて、当局が無能で、考え方が狭くなってしまっていることに原因であるのに、今は全ての責任を、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に押し付けているのだ。言うまでもないことだが。
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