香港はもはやイギリスではない。そんな事実もなかった。イギリスが抱えていた無意味で偽善的な植民地主義的懐古趣味はそろそろ全部手放した方がいい
<記事原文 寺島先生推薦>
Hong Kong is no longer British, never really was, and it’s time to let go of all our hypocritical, nostalgic colonial nonsense
RT Op-ed
2020年6月5日
Damian Wilson
is a UK journalist, ex-Fleet Street editor, financial industry consultant and political communications special advisor in the UK and EU.
<記事翻訳 寺島翻訳グループ>
2020年7月3日
イギリスが300万人の「香港人」に居住権を提供したことは、もはやイギリスのものではないものへの罪悪感に駆られたお節介である。不思議なことに、こんな外交的な二枚舌を使っていることに対して国際的な反発は何もない。
99年の租借期間が満了となった後、中国に譲った植民地香港を一度は放置していたが、英国は300万人の香港市民に完璧な市民権とも言えないような在住権を提供することで事態を悪化させようとしている。
この人たちは、イギリスの(海外在住)国民として「ブービー賞」が与えられた香港の中国人だ。「ブービー賞」と言っても...まあ、実際に景品は何もない。この在住権には具体的な利益がない。
しかし、イギリスのボリス・ジョンソン首相は、これ見よがしな気前よさで、今が母国を去るには良い時期であるという選択をするかもしれない香港市民に、12ヶ月間ビザなしでイギリスに住む機会を提供した。その後は完全な市民権の付与へと話は続くのだろうが、そんな約束はまったくしていないことに注意したほうがいい。
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UK would 'have no choice' but to offer path to citizenship to almost 3mn Hong Kongers, PM Johnson said
これは、新聞の日曜版の裏ページによくある「ウエストゴムのズボン、3組で29.99ポンド!」の広告と同じくらいにしか魅力的に見えない。
また、「香港人」(我々宗主国の国民は、大英帝国から遠く離れたその地域の住民をこう呼んでいた)ということばが持つ何か得体の知れない郷愁に誘われて、さらに突っ込んで彼らに即座に完全な市民権を与えたい、と思う者もいる。
冷静になって考えてみよう。我々がやっていることは勤勉で、起業家精神に富んだ香港の人たちに生涯かけて作り上げた故郷を脱け出し、パンデミック後の英国で新しいスタートを切ったらどうか、と言っていることになるのだ。その英国は、経済は現在ぼろぼろ、失業率はとてつもなく高い。(英国人が好きな)お天気のことは、最悪なのでどうか聞かないでください。
まあ、1997年、ユニオンジャックがクリス・パッテン総督によって折り畳まれ、香港島が中国に返還された時に今回のような措置をとればよかったのだ。
しかし、そんなことは一切しなかった。やったことはと言えば、協定を尊重し、香港市の住民を家畜のように引き渡し、立ち去ったことだ。チャールズ皇太子とパッテン総督は、引き渡し式典に参加して、自分たちは正しいことをしたと確信した後、ロイヤルヨットのブリタニア号で香港を後にした。それで終わりだった。
イギリスが適切な措置と信じていた「一国二制度」の取り決めを中国が軽視することは、最初から明らかだった。そして、本当に、それは適切な措置なのだろうか?この種の協定が一体全体世界のどこで通用すると言うのか?
中国は当初、香港が金融センターや起業家の温床として機能することを喜んでいたが、事態が手に負えなくなり、改革に手をつけざるを得なくなった。そうなれば、当然、当局は取り締まることになる。それも厳しく。結局のところ、香港のことは自国のことであり、自国民のことなのだから。
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今、北京がより権威主義的なシステムを導入(つまり、13億人の国民と700万人の国民を同じシステムの下に置く)しようとしているため、英国は香港を放置することに新たな罪悪感を感じ、ビザの提供で償いをすることにしたが、同時に中国政府には「一国二制度」モデルから離れることは受け入れられないというメッセージを送ることになる。
中国の困惑は100%理解できる。彼らは1997年7月1日以来、「香港人」が彼らのものであり、一点の曇りもなく!中国の支配下にあることを明確にしてきた。それでも何も言われなかったのだから。今回のイギリスの措置こそ「一国二制度」ならぬ「一つの支配国に二つのシステム」と呼ぶにふさわしい。
そして、他国の地域問題に干渉しようとしているイギリスに、世界の他のどの国が非難の嵐を起こしているのだろうか?これはそもそも外交官を激怒させ、高尚な意見を述べたり、遠回しに脅しをかけるべき問題ではないのか?
もし相手がロシアだったらと想像してみてほしい!ハ、それは面白いことになるだろう!2019年にウクライナ東部の人々にロシア市民権を提供することを巡って、アメリカがロシアに対して非難の嵐を起こした経緯をしっかり見てほしい。
「ロシアは、この非常に挑発的な行動を通じて、ウクライナの主権と領土の保全に対する攻撃を強化している」というのが、当時の米国務省の声明の見方だった。
ワシントンが、2020年、香港に関して同じようなことを言うとだれが想像できるだろうか?「英国は、この非常に挑発的な行動を通じて、中国の主権と領土の保全に対する攻撃を強化している」などと国務省が声明で言うことはまずない。
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香港は長年にわたり、活気溢れる人々に牽引された新しいビジネスや起業家のための場所としての評判を維持してきた。市場は広大で活気にあふれ、人々の動きは素早く、刺激的な場所となっている。
そして、英国はどうだろう。まあ、英国にはそういった特性は何もない。
率直に言って、もし新たなスタートを切ろうとしているのであれば、「香港人」はすでに大きなコミュニティとなって存在する「香港ディアスポラ(海外移住地)」のあるオーストラリアやカナダに向かった方が、イギリスの提案を受け入れるよりはるかにいいだろう。イギリスの提案というのはここイギリスで自分たちの自由にできる規制の少ない「都市」を持てるかもしれない、というものだ。その都市は、ある自由思想家の提案だと、イギリスの相当北部にあるどこかの場所、別の自由思想家の提案だと、どこか南部の海岸地帯になりそうだ。
これは、一種気が狂った人間の思考法だ。イギリス政府は、遠く離れた場所で発生している状況に対して、何が起こっているのかを正確に把握もせず、後先も考えない反応をしているだけだ。
しかし、今回のことはサウンドバイト(印象操作)が目的だ。そういう意味では、大きく腕を振り回し、仲間意識と永遠の友情を約束する演技をしてくれれば完璧。実際、これぞショ-マンと言える男のための演技だ。その男の名はボリス・ジョンソン。
英国の多くの人はすでにこの茶番劇に気づいているだろうが、今のところはまだ英国議会議員選出の手段を持たない香港在住の人たちも、すぐに見抜くだろう。英語にはこの状況やボリス・ジョンソンの様子にぴったり当てはまる言い回しがある。特に好事家のボリスにぴったりくる言い回しが。「あの人、しゃべるばっかりで、何もしてくれないの」
Hong Kong is no longer British, never really was, and it’s time to let go of all our hypocritical, nostalgic colonial nonsense
RT Op-ed
2020年6月5日
Damian Wilson
is a UK journalist, ex-Fleet Street editor, financial industry consultant and political communications special advisor in the UK and EU.
<記事翻訳 寺島翻訳グループ>
2020年7月3日
イギリスが300万人の「香港人」に居住権を提供したことは、もはやイギリスのものではないものへの罪悪感に駆られたお節介である。不思議なことに、こんな外交的な二枚舌を使っていることに対して国際的な反発は何もない。
99年の租借期間が満了となった後、中国に譲った植民地香港を一度は放置していたが、英国は300万人の香港市民に完璧な市民権とも言えないような在住権を提供することで事態を悪化させようとしている。
この人たちは、イギリスの(海外在住)国民として「ブービー賞」が与えられた香港の中国人だ。「ブービー賞」と言っても...まあ、実際に景品は何もない。この在住権には具体的な利益がない。
しかし、イギリスのボリス・ジョンソン首相は、これ見よがしな気前よさで、今が母国を去るには良い時期であるという選択をするかもしれない香港市民に、12ヶ月間ビザなしでイギリスに住む機会を提供した。その後は完全な市民権の付与へと話は続くのだろうが、そんな約束はまったくしていないことに注意したほうがいい。
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UK would 'have no choice' but to offer path to citizenship to almost 3mn Hong Kongers, PM Johnson said
これは、新聞の日曜版の裏ページによくある「ウエストゴムのズボン、3組で29.99ポンド!」の広告と同じくらいにしか魅力的に見えない。
また、「香港人」(我々宗主国の国民は、大英帝国から遠く離れたその地域の住民をこう呼んでいた)ということばが持つ何か得体の知れない郷愁に誘われて、さらに突っ込んで彼らに即座に完全な市民権を与えたい、と思う者もいる。
冷静になって考えてみよう。我々がやっていることは勤勉で、起業家精神に富んだ香港の人たちに生涯かけて作り上げた故郷を脱け出し、パンデミック後の英国で新しいスタートを切ったらどうか、と言っていることになるのだ。その英国は、経済は現在ぼろぼろ、失業率はとてつもなく高い。(英国人が好きな)お天気のことは、最悪なのでどうか聞かないでください。
まあ、1997年、ユニオンジャックがクリス・パッテン総督によって折り畳まれ、香港島が中国に返還された時に今回のような措置をとればよかったのだ。
しかし、そんなことは一切しなかった。やったことはと言えば、協定を尊重し、香港市の住民を家畜のように引き渡し、立ち去ったことだ。チャールズ皇太子とパッテン総督は、引き渡し式典に参加して、自分たちは正しいことをしたと確信した後、ロイヤルヨットのブリタニア号で香港を後にした。それで終わりだった。
イギリスが適切な措置と信じていた「一国二制度」の取り決めを中国が軽視することは、最初から明らかだった。そして、本当に、それは適切な措置なのだろうか?この種の協定が一体全体世界のどこで通用すると言うのか?
中国は当初、香港が金融センターや起業家の温床として機能することを喜んでいたが、事態が手に負えなくなり、改革に手をつけざるを得なくなった。そうなれば、当然、当局は取り締まることになる。それも厳しく。結局のところ、香港のことは自国のことであり、自国民のことなのだから。
ALSO ON RT.COM
Threat to Hong Kong’s stability ‘comes from foreign forces,’ Beijing says
今、北京がより権威主義的なシステムを導入(つまり、13億人の国民と700万人の国民を同じシステムの下に置く)しようとしているため、英国は香港を放置することに新たな罪悪感を感じ、ビザの提供で償いをすることにしたが、同時に中国政府には「一国二制度」モデルから離れることは受け入れられないというメッセージを送ることになる。
中国の困惑は100%理解できる。彼らは1997年7月1日以来、「香港人」が彼らのものであり、一点の曇りもなく!中国の支配下にあることを明確にしてきた。それでも何も言われなかったのだから。今回のイギリスの措置こそ「一国二制度」ならぬ「一つの支配国に二つのシステム」と呼ぶにふさわしい。
そして、他国の地域問題に干渉しようとしているイギリスに、世界の他のどの国が非難の嵐を起こしているのだろうか?これはそもそも外交官を激怒させ、高尚な意見を述べたり、遠回しに脅しをかけるべき問題ではないのか?
もし相手がロシアだったらと想像してみてほしい!ハ、それは面白いことになるだろう!2019年にウクライナ東部の人々にロシア市民権を提供することを巡って、アメリカがロシアに対して非難の嵐を起こした経緯をしっかり見てほしい。
「ロシアは、この非常に挑発的な行動を通じて、ウクライナの主権と領土の保全に対する攻撃を強化している」というのが、当時の米国務省の声明の見方だった。
ワシントンが、2020年、香港に関して同じようなことを言うとだれが想像できるだろうか?「英国は、この非常に挑発的な行動を通じて、中国の主権と領土の保全に対する攻撃を強化している」などと国務省が声明で言うことはまずない。
ALSO ON RT.COM
Irony is dead’: Pompeo accuses China of trying to ‘deny Hong Kongers a voice’ as cops in US plow into protesters
香港は長年にわたり、活気溢れる人々に牽引された新しいビジネスや起業家のための場所としての評判を維持してきた。市場は広大で活気にあふれ、人々の動きは素早く、刺激的な場所となっている。
そして、英国はどうだろう。まあ、英国にはそういった特性は何もない。
率直に言って、もし新たなスタートを切ろうとしているのであれば、「香港人」はすでに大きなコミュニティとなって存在する「香港ディアスポラ(海外移住地)」のあるオーストラリアやカナダに向かった方が、イギリスの提案を受け入れるよりはるかにいいだろう。イギリスの提案というのはここイギリスで自分たちの自由にできる規制の少ない「都市」を持てるかもしれない、というものだ。その都市は、ある自由思想家の提案だと、イギリスの相当北部にあるどこかの場所、別の自由思想家の提案だと、どこか南部の海岸地帯になりそうだ。
これは、一種気が狂った人間の思考法だ。イギリス政府は、遠く離れた場所で発生している状況に対して、何が起こっているのかを正確に把握もせず、後先も考えない反応をしているだけだ。
しかし、今回のことはサウンドバイト(印象操作)が目的だ。そういう意味では、大きく腕を振り回し、仲間意識と永遠の友情を約束する演技をしてくれれば完璧。実際、これぞショ-マンと言える男のための演技だ。その男の名はボリス・ジョンソン。
英国の多くの人はすでにこの茶番劇に気づいているだろうが、今のところはまだ英国議会議員選出の手段を持たない香港在住の人たちも、すぐに見抜くだろう。英語にはこの状況やボリス・ジョンソンの様子にぴったり当てはまる言い回しがある。特に好事家のボリスにぴったりくる言い回しが。「あの人、しゃべるばっかりで、何もしてくれないの」
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