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2022年6月10日 (金)

今回は核心を突いたキッシンジャー

マイク・ホィットニー
2022年6月1日
Unz Review

 世界経済フォーラムでのヘンリー・キッシンジャー演説が、なぜこのような騒動をもたらすきっかけになったのか皆様ご存じだろうか?

 キッシンジャーは、ウクライナ現地で、戦争が行われている様子や進展不足を批判したのではない。違う。キッシンジャーが批判したのは、政策そのものだ、火災旋風を引き起こしたものだ。彼は「間違ったことをした」と言って、このばかな政策を仕組んだ連中にバケツ一杯の冷水を浴びせたのだ。

 そして、彼らが現在推進している政策はアメリカの同盟諸国とアメリカの権益に打撃を与えているのだから連中は誤解している。それは我々が特定政策が愚かかどうか判断するために使う評価基準で、不幸にして、これは「愚かさ試験」に見事合格だ。

 私に説明させて頂きたい。アメリカの基本戦略は、ヨーロッパとロシアの経済的結びつきを断ち、ウクライナでの長い高価な泥沼に彼らを追い込んで、ロシアを「弱体化し」「孤立させる」ことだ。それが計画だ。

 今皆様は、それは、かなり合理的だと思うかもしれないが、キッシンジャーによれば、それはまずい計画なのだ。

 なぜだろう?

 アメリカの国家安全保障戦略は、中国をアメリカのナンバー1のライバル(確かにそうだ)と見なしているから、当然、中国を更に強化するどんな政策も、アメリカの戦略的権益に反する

 おわかりだろうか?それで疑問は次のことだ。ウクライナでのアメリカの代理戦争は中国を更に強化するだろうか?

 そして、答えはもちろん、そうするのだ。それがロシアに中国との関係を強化するよう強いるので、中国を大いに強化する。

 それは、現実的に何を意味するだろう?

 それはウクライナにおけるワシントンの反生産的戦争のおかげで、世界第一の製造大国(中国)と、世界で二番目に大きい炭化水素生産国(ロシア)間の関係が、どえらく良くなったことを意味する。それが意味するのは、そういうことだ。二国間関係が改善するにつれ、非ドル圏が膨張し、二国間貿易が、現在のアメリカに支配される世界貿易システムに次第に取って代わるにつれ、アメリカ帝国の凋落速度が加速することを意味する。

 既に、これが起きているのを皆様は見ることができる。ウクライナでの戦争は、世界貿易の大崩壊、重要な供給経路の途絶、食物とエネルギー不足と、ソ連邦崩壊以来、未曾有の世界最大の再分裂で、衝撃的破たんを引き起こした。無意味な地政学冒険で、ワシントンは、その未来と、アメリカ国民の未来で、アメリカ史上最大の戦略上の大惨事だったと判明しかねない賭けをすると決めたのだ

 キッシンジャーが事態の重大さを把握したことが、歓迎されない意見を言うと決めた理由だ。だが彼は政策についてのみ批判的だったのではなく、ほとんど完全にメディアに無視された不吉な警告もした。これが彼が言ったことだ。

 「事態が容易には克服できない大変動や緊張を引き起こす前、今後二ヶ月以内に交渉を始める必要がある。理想的には国境は戦争前の現状への回帰であるべきで、それ以上は、ウクライナの自由の問題というより、ロシアに対する新たな戦争だ」。

 事態の白黒は、はっきりしているが、彼が言っていることをより良く理解するため、これを二つに分けよう。

  1.  方針は間違っている
  2.  政策は即座に変えければならない、さもなくば、アメリカと同盟諸国への打撃は深刻で、恒久的だろう。(「交渉は今後二ヶ月中に始める必要がある」)

 それは一部の人々にとって余りに破滅的に聞こえるかもしれないが、キッシンジャーは、ここで何かに気がついたのだと私は思う。結局、紛争が始まった時から世界が既に経験している大規模な変化をご覧願いたい。供給線の崩壊、食物とエネルギー不足とグローバリゼーション・プロジェクトの後退。かなり大きな変化だと私は思うが、それらはおそらく氷山の一角だろう。本当の痛みはまだ先だ。

 この冬、家庭の暖房費が天井知らずに上がり、ヨーロッパ中の産業がより高いエネルギー費用に屈し、失業率が大恐慌レベルに急上昇し、輪番停電が欧米生活で、当たり前のことになった時、一体どうなるのだろう? それが方針を反転せず、話し合いによる解決が早急に実現されなければ将来ヨーロッパとアメリカを待ち受けているものだ。

 既に、プーチンは、ロシアは自身、経済的に再びヨーロッパに依存する立場に置かないと述べた。そういう日々は終わっている。その代わり、彼は中国やインド、更に先に、重要なエネルギーの流れを向け直している。ヨーロッパは、もはや優先顧客ではなく、実際、彼らはロシアの生存に対する脅威となり、ロシアはその産物を東方の新たな方向に向け続けるだろう。

 これはヨーロッパにどのように影響を与えるだろう?

 それは単純だ。ヨーロッパは、世界中の、どの国より、エネルギーに対し更に多くを支払うのだ。それは彼らが、ロシアの妥当な安全保障要求を無視してした選択であり、彼らが甘んじて受け入れなければならない結果だ。

 皆様が知る必要があるのは、こういうことだ。

 2021年、ロシアはEUで消費される全ての天然ガスの40%を供給した。

 2021年、ロシアはEUで消費される燃料の25%以上を供給した。

 もし皆様が、ナイジェリアや、イラン、サウジアラビアあるいは何か他の様々な場所の炭化水素生産国によって置き換えられると思うなら、皆様は悲しいながら間違っている。ヨーロッパは真っ逆さまに史上最大のエネルギー危機に飛び込んでいるが、責める相手は自分しかない。このRT記事には更に色々ある。

 火曜「現在のエネルギー危機は最悪のものの一つで、史上最長であり得、特に欧州諸国が激しく打撃を受けかねないと国際エネルギー機関IEAのファティ・ビロル事務局長が述べた。ドイツ雑誌デア・シュピーゲルのインタビューで、ビロルはウクライナでの出来事の結果、今のエネルギー危機は1970年代の危機より酷くなる可能性が高いと述べた。

 「当時は、もっぱら石油が問題だった。今や我々は、石油危機、ガス危機と電気危機を同時に抱えている」とビロルは、このメデイアに、ウクライナの進行中の出来事を前にして、ロシアは「世界エネルギー・システムの要。世界最大の石油輸出国、世界最大のガス輸出国、石炭の主要供給国。」だと言った。

 ウクライナ関連制裁の一環として、EUはロシア化石燃料に対する規制を導入し、次第に、それらを段階的に排除すると誓った。ビロルは、ドイツを含め、ロシア・ガスに大いに依存しているヨーロッパ諸国が「ガスを配給制にしなければならない」ので「困難な冬」に直面していると警告した。ロシア国営ガス企業のガスプロムが、新しい要件に従って燃料に対しルーブルで支払うことを彼らが受け入れそこねた後、ドイツ、デンマーク、オランダや他の国々で、一部エネルギー企業への供給を切断した時に彼は発言した。」(「ヨーロッパは燃料配給制になるかも知れないとIEA」、RT)

 だから、暗やみで凍死するのが、ウクライナが中立になり、東部でロシア人を殺すのをやめるよう主張するより好ましいのだろうか、それがヨーロッパが守るべき「原則」だろうかと私は思う。

 もしそうなら、それは悪い選択だ。

 じっくり考えるべきことがある。皆様は全ての「ブレンド石油」が同じではないのをご存じだろうか?

 それが、なぜ重要なのだろう?

 なぜなら、ドイツは現在ロシアから燃料の34%を輸入している。そしてロシア石油はドルージバ・パイプライン経由し、膨大な量で特定処理要件を満たすべく設計されたドイツ精製所に送られる完全に実証済みの高品質ウラル山脈ブレンドなのだ。違う供給元の、違う石油は、精製所プロセス全体を、ぶち壊す。それは、新原料ラインやインフラや、大気圧蒸留装置や、減圧蒸留装置、接触分解装置、ビスコーシティ・ブレーキング装置、アルキル化装置、接触改質触媒装置、異性化装置やエチル・ターシャリー・ブチルエーテル装置(ETBE)の大規模改修を必要とする。それに加えて、24x7x365の円滑なドルージバ・パイプラインを置き換えるロストク石油の新たな貯蔵装置と処理装置。」(「ドイツの精製所問題」Saker)

 すると全ての石油ブレンドは同じではないのだろうか?

 いや似てすらいない。その上、産業専門家は、精製所改修完了には約六年要するだろうと推定している。その間、エネルギー消費と密接に関連しているドイツの経済成長は劇的に低下し、事業は閉鎖され、失業率は急上昇し、EUの最強力で裕福な国は屈服させられるだろう

 ロシア石油購入を拒否すると決める前に、ドイツ政府の誰かが、これらのことを考えるべきだったのだろうか?

 我々が言いたい要旨は単純だ。キッシンジャーは正しく、失敗したウクライナ戦略を仕組んだネオコン・ピエロは間違い、完全に間違いなのだ。そして、もし我々が、キッシンジャーの助言通り「今後二ヶ月以内に交渉」を開催しなければロシアとの決別は、その時点で最終的で逆転不能で、ロシアの膨大なエネルギー鉱物資源と農産物は永久に東の、より友好的な国に送られるだろう。結局、アメリカとヨーロッパの同盟諸国に酷い苦しみを与えるだろう。

 唯一合理的な行動方針は、早急に即時停戦のための和平会談始める要求だ。

記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/kissinger-nails-it-for-once/

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 Stephen F. CohenのThe War with Russia?が広く読まれないのは不思議に思うが、彼の講演が有名でないのも実に不思議。

 ゼレンスキーを支持する方々、せめて下記動画を見て頂きたいもの。The War with Russia?内容の講演だ。

 アメリカの政治家、マスコミ、特に諜報機関の過激なロシア憎悪キャンペーンを彼は批判していた。ウクライナの過度な挑発は、ロシア攻撃を招きかねないとも。 プーチンが信じているのは、キッシンジャーとメルケルだという発言もあった。一時間と長いが、字幕もある。

Stephen F. Cohen: The Ukrainian Crisis - It's not All Putin's Fault (Recorded in 2015)

War with Russia? Stephen F. Cohen and Dan Rather in Conversation with Katrina Vanden Heuvel

 今朝の孫崎享氏のメルマガ題名

米州首脳会議が8日、ロサンゼルスで開幕。社会主義国キューバや反米左派政権のベネズエラとニカラグアの首脳を招待しなかったことにメキシコやボリビア等首脳出席せず閣僚レベルの出席にとどめた。→「米国の裏庭」での米国の求心力低下を露呈した形となった

 やがて不沈空母日本の沈没後、2022年選挙こそ「日本のウクライナ化」が決定した出来事だったと歴史本に書かれるだろう。

 日刊IWJガイド

「参院選直前、維新が自民党改憲案とそっくりな『戦時独裁』緊急事態条項を発表! 立憲、共産、社民、候補者1本化は進まず!!」

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