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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ヘレン・マクロイ『割れたひづめ』(国書刊行会)

 ヘレン・マクロイの『割れたひづめ』を読む。こんな話。
 吹雪のため道に迷ってしまったベイジル・ウィリング夫妻。彼らがたどりついたのは翔鴉館(クロウズ・フライト)と呼ばれる古い一軒家だった。その屋敷には、泊まった者が死体となって発見されるという開かずの部屋があり、子供たちのあるいたずらがきっかけで、男たちの一人がその部屋で一晩を過ごすことになる。そして翌朝、皆の不安を裏付けるかのように、死体が発見された……。

 物語の背景にあるのはオカルト趣味ではあるが、子供たちが事件をかき回すかのように行動するため、ファースの風味も強い。死者の出る開かずの部屋という設定も含めて、何やらディクスン・カーを彷彿とさせるお話ではある。
 しかし、開かずの部屋の密室殺人、オカルト現象、犯人なども含めて、全般的にややネタが読まれやすいというか、あまり謎のレベルは高くないのが欠点か。本来マクロイは本格の人ではないので、これも致し方ないところなのだろう。とはいうものの、さすがに雰囲気作りはお手の物で、とりわけ子供たちの活躍する部分は達者なものである。
 『ひとりで歩く女』や『家蠅とカナリア』といった傑作を期待するとあれだが、普通に楽しむ分には十分な出来映え。個人的にはまずまず楽しめた。

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Comments

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ポール・ブリッツさん

どういたしまして。
もう少し出るかなと思ったんですが、意外に思いつかなかったですね。ジョゼ・ジョバンニとかはけっこうありそうな気もするんですが……。

Posted at 23:58 on 10 19, 2010  by sugata

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ありがとうございました。ハンセンとランズデールは未読だったので、おすすめいただいて助かりました。

高村薫先生はなんといっても非常に重苦しく、その中ではいちばん「初心者向け」だと思った「わが手に拳銃を」を奨めようと思ったのですが、最近は「李歐」バージョンでしか売っておらず、とりあえずそちらを読んでから、と思って分厚い文庫に突撃したはいいものの、重苦しさに負けてしまいまして……挙げられた四作はどれも好きなんですけれど。「リヴィエラを撃て」なんか、日本のスパイ物としては空前絶後の傑作ですもんねえ……。

Posted at 06:42 on 10 19, 2010  by ポール・ブリッツ

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ポール・ブリッツさん

男の友情以上、という類の小説ですね。翻訳ミステリでは意外に少ないかもしれません。
とりあえず私の知っているところをいくつか。

●ジョセフ・ハンセンのデイブ・ブランドステッター・シリーズ(ポケミス)
正に直球ど真ん中。著者が同性愛に対する偏見を無くそうと書き始めた、主人公がゲイの探偵(保険調査員)というシリーズです。とはいえ、あまり友情方面の描写は多くなく、中身は実にまっとうなハードボイルド。地味な作風ですが、質は安定して高いです。全冊ポケミスですが、おそらくすべて品切れかも(古本では入手容易)。

●ジョー・R・ランズデールのハップとレナード・シリーズ(角川文庫)
コンビ探偵ものですが、片方が同性愛者。そのうえで二人の友情(恋愛ではないですw)が描かれるという、なかなか凝った設定です。
かなり下品でハチャメチャなストーリーですので好き嫌いは出そうですが、滅法面白いです。ただ、期待される方向性とは、少し違ってそうです。

と、ここまで書いたところで早くもネタ切れ。単純に友情をテーマにしたものだと、それこそ『長いお別れ』とかがオススメなんですけど、さすがにベタ過ぎますかw

最後に、国産でよければ、この人はイチ押しです。

●高村薫の初期作品
例えば『黄金を抱いて翔べ』『リヴィエラを撃て』『わが手に拳銃を』『マークスの山』あたりです。
テリー・ホワイトの路線に最も近いのは、ハンセンでもランズデールでもなく、おそらくこのような世界観なんではないかと。

Posted at 01:09 on 10 19, 2010  by sugata

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ナーヴァ面白いですか。これは楽しみです。

ところでわたしより遥かに読書量があるかたと見込んでご質問がありますが、「真夜中の相棒」「ウィンブルドン」「このささやかな眠り」(に始まるヘンリー・リオスシリーズ全部)と読んで、海外ミステリに興味をもたれたかたがいらっしゃるのですが、この路線(おわかりになられると思います(爆))でなにか面白い作品を思い出されたら教えていただけないでしょうか? そのかたに海外ミステリの楽しさをもっとわかっていただきたく思ったので。

とりあえず、パーカーの「初秋」と、日本軍ですが天藤真の「遠きに目ありて」を推薦しておきましたが……。(さすがに「孤島の鬼」はためらわれた(爆))

ちなみにそのかた、花村萬月先生の「ブルース」はあまりお気に召さなかったようであります。

Posted at 19:28 on 10 18, 2010  by ポール・ブリッツ

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ポール・ブリッツさん

マクロイの他の作品に比べると『割れたひづめ』はちょっと落ちますね。さすがに全部が全部傑作というわけにはいかないでしょう。

ところでマイケル・ナーヴァとは珍しいところを。私も隠し球的おすすめ作家として使う人ですw
なんせ扱うネタがネタですから、ある程度は人を選んじゃいますが、基本的には安定感もあるし、非常に質の高いハードボイルドを書く人ですね。翻訳が『秘められた掟』でストップしているのは残念なかぎりです。

Posted at 17:30 on 10 16, 2010  by sugata

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読みました。それなりに面白かったです。

とはいえ、本格としては、その前日に読んだ、梶龍雄先生の傑作「リア王密室に死す」の神業的伏線回収に幻惑されて……やっぱり本格を連チャンで読むと比較しちまうなあ。マクロイというブランド(笑)にしちゃあ、とか思ってしまって、うーん、最近気に入っている定食屋の新メニューを食ったら、腹はいっぱいになったものの、味はそれほどでもなかった、といった感じでしょうか? うむむ。

マクロイの長編総解説、ともいうべき渾身の解説も、ネタバレがあるのではと思うとちらちらとしか読めなかったし。

うむむ。

とりあえず「死の舞踏」も借りてきたのでそっちを読みます。洋泉社のハーレクインロマンス解説本はいつ来るかさっぱりわからんし、それが終わったらネット友人が最近ハマっているとかいうマイケル・ナーヴァの「このささやかな眠り」を読んでみるつもりだし。いつになったら「ころすものところされるもの」が読めるんだわたし(←買えっ)

Posted at 16:13 on 10 16, 2010  by ポール・ブリッツ

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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