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ヘレン・マクロイ『死の舞踏』(論創海外ミステリ)
論創海外ミステリからヘレン・マクロイの『死の舞踏』を読む。
除雪作業が進む雪のマンハッタン。路肩の雪をトラックに積み込む作業中、雪のなかから女性の死体が発見された。だが不思議なことに、その死体は雪の中に埋もれていたにもかかわらず、おびただしい熱をもっていたのだ。やがて警察から協力を要請された精神分析医ベイジル・ウィリングは被害者の顔に見覚えがあることに気づく……。
本作はマクロイのデビュー作。やがてファンを驚かせるようになる切れのいい変化球はまだ影を潜め、ストレートで押している頃の作品である。構成的にもかなり本格然とした組み方だが、冒頭から中盤までの一気の展開は悪くない。
そして何といっても特徴的なのは、心理分析を多用した推理。これは先例がいくつかあるにせよ、注目しておいていいだろう。ただ加減を知らないマクロイが難しく書きすぎているので、もうひとつその面白さが伝わりにくいのが残念。とはいえ伏線の数々を心理分析によって解説する謎解き部分は、さすがにひきこまれた。
結論としては、絶賛、とまではいかないものの、見るべきところは多い作品といえるだろう。ファンならもちろん買い。
除雪作業が進む雪のマンハッタン。路肩の雪をトラックに積み込む作業中、雪のなかから女性の死体が発見された。だが不思議なことに、その死体は雪の中に埋もれていたにもかかわらず、おびただしい熱をもっていたのだ。やがて警察から協力を要請された精神分析医ベイジル・ウィリングは被害者の顔に見覚えがあることに気づく……。
本作はマクロイのデビュー作。やがてファンを驚かせるようになる切れのいい変化球はまだ影を潜め、ストレートで押している頃の作品である。構成的にもかなり本格然とした組み方だが、冒頭から中盤までの一気の展開は悪くない。
そして何といっても特徴的なのは、心理分析を多用した推理。これは先例がいくつかあるにせよ、注目しておいていいだろう。ただ加減を知らないマクロイが難しく書きすぎているので、もうひとつその面白さが伝わりにくいのが残念。とはいえ伏線の数々を心理分析によって解説する謎解き部分は、さすがにひきこまれた。
結論としては、絶賛、とまではいかないものの、見るべきところは多い作品といえるだろう。ファンならもちろん買い。
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Comments
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読みました。
(作品の内容に触れています)
いやぁ、想像以上に面白かったです。オープニングの入れ替わりからしてリーダビリティが高く、様々なミスリードを用意しながら、最後は意外なターゲットを持ってきてサスペンスを高める等、処女作とは思えない出来ですね。
ただ、異様な死体の状態がある種の薬品によるもので解決されてしまうのはいいとして、心理上の指紋だったか、探偵に言わせているところの「うっかりミス」が真犯人による部分だけ浮き上がっている感じで、そこの意外性がなかったのは残念です。
管理人様が最近読まれた『月明かりの男』も楽しみです。
Posted at 05:03 on 11 27, 2017 by くさのま
くさのまさん
さすがにマクロイ全般の中では上位にくるのは難しいでしょうが、それでも処女作でこの出来はなかなかのものです。続く二作目の『月明かりの男』も全体的には同じ方向性の作品ですが、さらによくなっていて楽しめました。
Posted at 21:28 on 11 27, 2017 by sugata