Posted in 03 2003
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ロナルド・A・ノックス『サイロの死体』(国書刊行会)
人気があるんだかないんだか、いまひとつわからないロナルド・A・ノックス。名のみ有名な『陸橋殺人事件』を初めて読んだのは、創元推理文庫での刊行がきっかけだった。だが悲しいかな、当時はそれが本格探偵小説のパロディ(解説の真田氏によればユーモア小説)ということにまったく気がつかず、けっこう真面目に読んだがために、その仕掛けや魅力を堪能できたとはとても言い難かった。
それから長い年月を経て、私もそれなりにミステリの経験値を上げてきた(つもり)。そこへ久々のノックスである。
インディスクライバブル社委託の保険調査員マイルズ・ブリードン。彼はラーストベリに住むハリフォード夫妻のハウスパーティーに招待された。そしてその夜、カーレースを模した「駆け落ちゲーム」が催されるが、その翌朝、ただ1人ゲームに参加しなかった招待客がサイロのなかで死んでいるのが発見される。死亡推定時刻は駆け落ちゲームの真っ最中。自殺、事故、それとも……?
『陸橋殺人事件』の例もあるので、本作ではどういう仕掛けを凝らしてくるのかと思いきや、けっこうガチガチの本格で驚いてしまう。解説によるとこちらの方が主流らしく、やはり『陸橋殺人事件』の方が例外だったようである。
これも解説で指摘しているのでわかったことだが、とにかく伏線や手がかりの張り方がすさまじい。まさに「本格」の名に恥じないプロットを備えた作品で、意外性もある。微に入り細をうがった構成というか、解決もかなり考えられている。
と、一応褒めてはみるものの、それでも退屈してしまうのはなぜか?
それは意外にクセのない登場人物の描き方であったり、中盤の盛り上がり不足のせいもあるだろう。また、本作では「駆け落ちゲーム」という格好のネタを導入部に用いながら、不思議なくらいレースの描写が淡泊なのももったいない。カーあたりがこの題材を料理すれば、かなりハイテンションの物語に仕上げたはずだ。
娯楽としての吸引力がもう少しあれば……、そう思わせずにはいられない作品。そんな気がする。
それから長い年月を経て、私もそれなりにミステリの経験値を上げてきた(つもり)。そこへ久々のノックスである。
インディスクライバブル社委託の保険調査員マイルズ・ブリードン。彼はラーストベリに住むハリフォード夫妻のハウスパーティーに招待された。そしてその夜、カーレースを模した「駆け落ちゲーム」が催されるが、その翌朝、ただ1人ゲームに参加しなかった招待客がサイロのなかで死んでいるのが発見される。死亡推定時刻は駆け落ちゲームの真っ最中。自殺、事故、それとも……?
『陸橋殺人事件』の例もあるので、本作ではどういう仕掛けを凝らしてくるのかと思いきや、けっこうガチガチの本格で驚いてしまう。解説によるとこちらの方が主流らしく、やはり『陸橋殺人事件』の方が例外だったようである。
これも解説で指摘しているのでわかったことだが、とにかく伏線や手がかりの張り方がすさまじい。まさに「本格」の名に恥じないプロットを備えた作品で、意外性もある。微に入り細をうがった構成というか、解決もかなり考えられている。
と、一応褒めてはみるものの、それでも退屈してしまうのはなぜか?
それは意外にクセのない登場人物の描き方であったり、中盤の盛り上がり不足のせいもあるだろう。また、本作では「駆け落ちゲーム」という格好のネタを導入部に用いながら、不思議なくらいレースの描写が淡泊なのももったいない。カーあたりがこの題材を料理すれば、かなりハイテンションの物語に仕上げたはずだ。
娯楽としての吸引力がもう少しあれば……、そう思わせずにはいられない作品。そんな気がする。
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ハワード・ヘイクラフト/編『ミステリの美学』(成甲書房)
わはは、以前からすごく欲しかった城昌幸の『みすてりい』(桃源社)を遂に買ってしまう。決して安くはないが、以前に比べると少しは値が下がってきているようなので、ここんとこ仕事で忙しかった自分へのご褒美である。ああ、ブルー一色の装丁の、なんと美しいことよ。
本日の読了本はハワード・ヘイクラフト編『ミステリの美学』。
これも古典復刊ブームの一環と言えるのだろうか。まさかこんな古い評論集までが出てくるとはびっくりである。ただ残念ながら完訳ではなく、五十ほど載っている評論のうちの半数ほどをセレクトしたもの。しかもよその本で読める評論もちらほら混ざっている。どうせなら初紹介のものに絞ってくれりゃいいのに。
まあ、それでも初めて読む記事もそれなりに多く、ヴァン・ダインのパロディ形式をとったものとかは、けっこうアホくさくて笑える。また、今となっては歴史的価値しかないような評論もあるが、現代でも十分な説得力を持つ内容のものもあり、ミステリと一生つき合いたいと考える人は(そういう人がいるかどうかはともかく)、やはり一度は目を通しておくべきだという気がする。
本日の読了本はハワード・ヘイクラフト編『ミステリの美学』。
これも古典復刊ブームの一環と言えるのだろうか。まさかこんな古い評論集までが出てくるとはびっくりである。ただ残念ながら完訳ではなく、五十ほど載っている評論のうちの半数ほどをセレクトしたもの。しかもよその本で読める評論もちらほら混ざっている。どうせなら初紹介のものに絞ってくれりゃいいのに。
まあ、それでも初めて読む記事もそれなりに多く、ヴァン・ダインのパロディ形式をとったものとかは、けっこうアホくさくて笑える。また、今となっては歴史的価値しかないような評論もあるが、現代でも十分な説得力を持つ内容のものもあり、ミステリと一生つき合いたいと考える人は(そういう人がいるかどうかはともかく)、やはり一度は目を通しておくべきだという気がする。
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エリック・ガルシア『さらば、愛しき鉤爪』(ヴィレッジブックス)
昨年の話題作の筆頭に挙げてもよいのが、本日の読了本『さらば、愛しき鉤爪』ではなかろうか。
恐竜を主人公にしたハードボイルドを真面目にやっているというのだから、確かにこれは注目に値する。もともとこういうのは嫌いじゃないし、しかもけっこう評判も良さそうなので、ようやく読む気になった次第。
ヴィンセント・ルビオは、ロスを根城にするけちな私立探偵だ。しかしそんじゃそこらのけちな私立探偵ではない。けちな恐竜の私立探偵なのだ。普段は人間にばれないよう人の皮をかぶって窮屈な毎日を送る恐竜たちだが、いったん皮を脱ぎ捨てれば、たちまち原始の血が騒ぐ。だが、現代の恐竜はあくまで少数派。人間に勘づかれたらたちまち絶滅の危機が待っている。恐竜たちは「評議会」を中心にして規範を定め、あくまで人間のフリをして生きることを選んだのだ。
ところでルビオ。相棒のアーニーがある事件の調査中に死亡したことをきっかけに、ツキは離れる一方だ。アーニーの死の謎を探るため、つい「評議会」の金を横領して資格を剥奪されることを初めに、仕事も途絶え、借金はかさみ、おまけにバジル漬けの毎日。そんなときある大手の探偵会社から下請けの仕事が舞い込んだ。とりあえず出かけたところ、どうもアーニーの死と関連がありそうだ。ルビオは卑しい街に再び乗り込んでゆく。
いや、これは面白い。評判になるのもわかる。
設定の妙で読ませる部分はもちろん大きいが、ミステリとしてもしっかりしてるし、ハードボイルドのパロディとしても上手く機能している。しかもミステリの謎解きの部分では、この恐竜世界の設定が効果的に生かされているのも○。あとがきでは「別に恐竜でなくても……」みたいなことがちらと書いてあったが、いやいや、これはやはり恐竜世界ならではのミステリといえるでしょう。
これを読んですぐに連想したのがアイザック・アシモフの『鋼鉄都市』。ロボット三原則というルールを生かしたSFミステリの傑作である。
どちらも作者が世界観やルールをしっかり作り上げたうえで、しかもその設定を存分に活かした謎解きに挑戦しているところが、実に似ていると思うわけだ。
ただし、本書がまぎれもない傑作かと言えば、弱いところもちらほらある。まずは説明的な部分が多すぎること。恐竜と人の共存する特殊な世界を表現しなければならないので、ある程度は仕方ないだろう。だが、それでもまどろっこしいところが目につく。本来なら主人公の行動や会話を通して、自然に読者に伝えて欲しいところではあるのだが、まだそこまでの技術はないのだろうか。
また、説明以外の部分でも、間延びする描写が気になるところも多い。書き込んであるなぁ、というよりは、やはりダラダラした印象である。
まあ、それでも本書は面白い。どうやらシリーズになるそうだが(っていうかもう出てますけど>『鉤爪プレイバック』)けっこう一発目で肝になるようなネタを使っているので、ちょっと心配。とにかく次作で作者の力量が試されると見たがいかに?
恐竜を主人公にしたハードボイルドを真面目にやっているというのだから、確かにこれは注目に値する。もともとこういうのは嫌いじゃないし、しかもけっこう評判も良さそうなので、ようやく読む気になった次第。
ヴィンセント・ルビオは、ロスを根城にするけちな私立探偵だ。しかしそんじゃそこらのけちな私立探偵ではない。けちな恐竜の私立探偵なのだ。普段は人間にばれないよう人の皮をかぶって窮屈な毎日を送る恐竜たちだが、いったん皮を脱ぎ捨てれば、たちまち原始の血が騒ぐ。だが、現代の恐竜はあくまで少数派。人間に勘づかれたらたちまち絶滅の危機が待っている。恐竜たちは「評議会」を中心にして規範を定め、あくまで人間のフリをして生きることを選んだのだ。
ところでルビオ。相棒のアーニーがある事件の調査中に死亡したことをきっかけに、ツキは離れる一方だ。アーニーの死の謎を探るため、つい「評議会」の金を横領して資格を剥奪されることを初めに、仕事も途絶え、借金はかさみ、おまけにバジル漬けの毎日。そんなときある大手の探偵会社から下請けの仕事が舞い込んだ。とりあえず出かけたところ、どうもアーニーの死と関連がありそうだ。ルビオは卑しい街に再び乗り込んでゆく。
いや、これは面白い。評判になるのもわかる。
設定の妙で読ませる部分はもちろん大きいが、ミステリとしてもしっかりしてるし、ハードボイルドのパロディとしても上手く機能している。しかもミステリの謎解きの部分では、この恐竜世界の設定が効果的に生かされているのも○。あとがきでは「別に恐竜でなくても……」みたいなことがちらと書いてあったが、いやいや、これはやはり恐竜世界ならではのミステリといえるでしょう。
これを読んですぐに連想したのがアイザック・アシモフの『鋼鉄都市』。ロボット三原則というルールを生かしたSFミステリの傑作である。
どちらも作者が世界観やルールをしっかり作り上げたうえで、しかもその設定を存分に活かした謎解きに挑戦しているところが、実に似ていると思うわけだ。
ただし、本書がまぎれもない傑作かと言えば、弱いところもちらほらある。まずは説明的な部分が多すぎること。恐竜と人の共存する特殊な世界を表現しなければならないので、ある程度は仕方ないだろう。だが、それでもまどろっこしいところが目につく。本来なら主人公の行動や会話を通して、自然に読者に伝えて欲しいところではあるのだが、まだそこまでの技術はないのだろうか。
また、説明以外の部分でも、間延びする描写が気になるところも多い。書き込んであるなぁ、というよりは、やはりダラダラした印象である。
まあ、それでも本書は面白い。どうやらシリーズになるそうだが(っていうかもう出てますけど>『鉤爪プレイバック』)けっこう一発目で肝になるようなネタを使っているので、ちょっと心配。とにかく次作で作者の力量が試されると見たがいかに?
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城昌幸『随筆えぴきゅりあん』(牧神社)
城昌幸の随筆集『随筆えぴきゅりあん』を読む。
元々は詩人として文芸活動を始めた作者だが、探偵作家としても幻想的で美しい短編をものにし、しかも「若さま侍」という人気捕物帖シリーズを生みだしたことでも知られている。加えて戦後を代表した探偵小説雑誌「宝石」の主幹として乱歩らに協力を惜しまなかった、探偵小説の偉大なる功労者のエッセイ集である。
個人的にはとっておきの一冊で、宝石主幹時代の裏話などに期待して読み始めたが、意外や意外、そちら方面についてはあまりページを割かれていない。京都の想い出、四季折々の自然や食についての話が多く、これぞまさに随筆集という感じ。文章は淡々とした筆致で実に読みやすく、これが城昌幸の地の文章なのかどうかはわからないが、かなり意外な印象を受けた。
探偵小説についての話が少なかったのは残念だが、もちろん面白くないわけではない。それどころか管理人は京都に住んでいたこともあるので、その周辺の話が特に興味深かった。とりわけ結婚を約束した舞妓さんの病死の件は、呆気なさ過ぎるくらいの描写に、かえって心を打たれる。また、探偵小説絡みが少ないとはいえ、乱歩とお酒にまつわる話なども城昌幸の酒好きと相まって、けっこうユーモラスに描かれていて楽しい。
読んで良かったと思える一冊だが、惜しむらくはページ数が少なくて物足りない。まだ雑誌等に眠ったままのエッセイなどはないのだろうか?
元々は詩人として文芸活動を始めた作者だが、探偵作家としても幻想的で美しい短編をものにし、しかも「若さま侍」という人気捕物帖シリーズを生みだしたことでも知られている。加えて戦後を代表した探偵小説雑誌「宝石」の主幹として乱歩らに協力を惜しまなかった、探偵小説の偉大なる功労者のエッセイ集である。
個人的にはとっておきの一冊で、宝石主幹時代の裏話などに期待して読み始めたが、意外や意外、そちら方面についてはあまりページを割かれていない。京都の想い出、四季折々の自然や食についての話が多く、これぞまさに随筆集という感じ。文章は淡々とした筆致で実に読みやすく、これが城昌幸の地の文章なのかどうかはわからないが、かなり意外な印象を受けた。
探偵小説についての話が少なかったのは残念だが、もちろん面白くないわけではない。それどころか管理人は京都に住んでいたこともあるので、その周辺の話が特に興味深かった。とりわけ結婚を約束した舞妓さんの病死の件は、呆気なさ過ぎるくらいの描写に、かえって心を打たれる。また、探偵小説絡みが少ないとはいえ、乱歩とお酒にまつわる話なども城昌幸の酒好きと相まって、けっこうユーモラスに描かれていて楽しい。
読んで良かったと思える一冊だが、惜しむらくはページ数が少なくて物足りない。まだ雑誌等に眠ったままのエッセイなどはないのだろうか?
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『江戸川乱歩 誰もが憧れた少年探偵団』(河出書房新社)
代休で久々にのんびり。一日中ウトウトしていたが、夕方より『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』を観にいく。前作にも増して丁寧な作りで、正統なファンタジーをここまで再現できていることに感動。こういう言い方はなんだが、これは子供に観せるにはもったいない、っていうか観てもその良さはわからないだろう。疲れ切った大人のための物語。それでいいんではないか。でも三時間弱はちょっと辛い。疲れ切った大人には、ちょっと腰にきます(苦笑)。
とにかく乱歩本が出ること出ること。本日の読了本、『江戸川乱歩 誰もが憧れた少年探偵団』は、タイトルどおり少年探偵団にポイントを絞った一冊である。
目玉となるのは新発見という触れ込みの草稿「悪魔が岩」。これを中心に、乱歩縁の著名人やマニア等のエッセイ、談話を散りばめたバラエティ豊かなコンテンツを構成している。
実は版元の河出書房新社は、確か昨年も『江戸川乱歩と少年探偵団』という同趣旨の本を出したばかりである。ネタを小出しにしているようで、ハッキリ言ってちょっと読者をなめている感じもするが、あちらはビジュアル重視、こちらはテキスト重視らしいので、まあ今回は許してやることにする(笑)。
とりあえずサクッと読んだだけだが、内容については納得できるもので、十分に楽しめる一冊です。
とにかく乱歩本が出ること出ること。本日の読了本、『江戸川乱歩 誰もが憧れた少年探偵団』は、タイトルどおり少年探偵団にポイントを絞った一冊である。
目玉となるのは新発見という触れ込みの草稿「悪魔が岩」。これを中心に、乱歩縁の著名人やマニア等のエッセイ、談話を散りばめたバラエティ豊かなコンテンツを構成している。
実は版元の河出書房新社は、確か昨年も『江戸川乱歩と少年探偵団』という同趣旨の本を出したばかりである。ネタを小出しにしているようで、ハッキリ言ってちょっと読者をなめている感じもするが、あちらはビジュアル重視、こちらはテキスト重視らしいので、まあ今回は許してやることにする(笑)。
とりあえずサクッと読んだだけだが、内容については納得できるもので、十分に楽しめる一冊です。
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鮎川哲也『青い密室』(出版芸術社)
ローリングストーンズが来日公演中。
ああ、前回も前々回も東京ドームまで足を運んだのに、今回はとてもじゃないが見にいく余裕はない。
おまけに三谷幸喜演出の『オケピ』もチケットを買ってあったのに、キャンセルする始末。仕事が忙しいのはけっこうなことではあるけれど、今回ばかりは少々異常事態だ。しかも本日も徹夜だし。
そんな修羅場が続く中、何とか鮎川哲也の『青い密室』を読了。先日読んだ『赤い密室』と対になる、星影龍三が活躍する本格もの短編集である。収録作は以下のとおり。
「白い密室」
「薔薇荘殺人事件」
「悪魔はここに」
「青い密室」
「砂とくらげと」
「茜荘事件」
「悪魔の灰」
「朱の絶筆」
インパクトは『赤い密室』の方が上だが、トータルではこちらの方が上質と見た。習作っぽいものもあった『赤い密室』に比べ、こちらは平均してレベルが高く(ただしラジオドラマの台本になったという2作品はちょっと弱い)、作者の本格を愛する心がいたるところに感じられる。特に「薔薇荘殺人事件」はミステリとしての完成度もさることながら「読者への挑戦」にむちゃくちゃしびれる。遊び心満点の逸品である。表題作の「青い密室」ほか「白い密室」もよい。
ただ、無粋を承知で書くと、とってつけたような動機が多く、なんとかならなかったのか、と思う。それを描くことが主題でないのはわかるが、古今東西のミステリ作家名やタイトル名が頻繁に文中に出てくることも併せると、どうにもゲーム臭が強くなりすぎて好ましくない(もちろんその楽しさは承知のうえである)。トリックの素晴らしさだけでも人は感動できるのだから、あとは普通に流してくれるだけでも十分なのである。そこに作者がお遊び要素を強く出すことによって逆に感動が薄れてしまい、私的にはもったいないなと思う。
数々の傑作を残した鮎川哲也だが、結局は一般読者層にまで人気が浸透しなかったことと、あながち無関係ではあるまい。
ああ、前回も前々回も東京ドームまで足を運んだのに、今回はとてもじゃないが見にいく余裕はない。
おまけに三谷幸喜演出の『オケピ』もチケットを買ってあったのに、キャンセルする始末。仕事が忙しいのはけっこうなことではあるけれど、今回ばかりは少々異常事態だ。しかも本日も徹夜だし。
そんな修羅場が続く中、何とか鮎川哲也の『青い密室』を読了。先日読んだ『赤い密室』と対になる、星影龍三が活躍する本格もの短編集である。収録作は以下のとおり。
「白い密室」
「薔薇荘殺人事件」
「悪魔はここに」
「青い密室」
「砂とくらげと」
「茜荘事件」
「悪魔の灰」
「朱の絶筆」
インパクトは『赤い密室』の方が上だが、トータルではこちらの方が上質と見た。習作っぽいものもあった『赤い密室』に比べ、こちらは平均してレベルが高く(ただしラジオドラマの台本になったという2作品はちょっと弱い)、作者の本格を愛する心がいたるところに感じられる。特に「薔薇荘殺人事件」はミステリとしての完成度もさることながら「読者への挑戦」にむちゃくちゃしびれる。遊び心満点の逸品である。表題作の「青い密室」ほか「白い密室」もよい。
ただ、無粋を承知で書くと、とってつけたような動機が多く、なんとかならなかったのか、と思う。それを描くことが主題でないのはわかるが、古今東西のミステリ作家名やタイトル名が頻繁に文中に出てくることも併せると、どうにもゲーム臭が強くなりすぎて好ましくない(もちろんその楽しさは承知のうえである)。トリックの素晴らしさだけでも人は感動できるのだから、あとは普通に流してくれるだけでも十分なのである。そこに作者がお遊び要素を強く出すことによって逆に感動が薄れてしまい、私的にはもったいないなと思う。
数々の傑作を残した鮎川哲也だが、結局は一般読者層にまで人気が浸透しなかったことと、あながち無関係ではあるまい。
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香山滋『悪魔の星』(ソノラマ文庫)
ようやく読書ペースが戻りつつある。本日はジュヴナイルでお茶を濁そうと香山滋の『悪魔の星』を持って家を出る。香山滋の子供向け作品は初めて読むので、どんなものか興味津々であった。
東シナ海を我が物顔で暴れ回る海賊「悪魔の星」。幼い頃彼らに誘拐された山住譲治は、同じく誘拐された少女エミとともに脱出を決意する。追跡の手をようやく振り切り、ある孤島にたどりついた二人は、島でエミとそっくりの少女とその祖父と称する謎の老人に出会うが……。
ううむ、子供向けだから多少のことには目をつむりたいが、これだけご都合主義の連発でこられるとさすがに辛い、っていうか、これならどんなストーリー展開もありでしょ。一応秘境冒険ものだが、それらしい小道具も海賊とか孤島ぐらいで、凝ったものは一切なし。しかも肝心の悪役があまりにパワー不足で、少年たちの前に立ちはだかるにはちょっと弱々しすぎ。あの大人もので見せるハッタリやケレン味はいずこ? どうした香山滋?
いかに江戸川乱歩の書く少年探偵団シリーズがよくできているか、それを再確認できた作品ではある。
東シナ海を我が物顔で暴れ回る海賊「悪魔の星」。幼い頃彼らに誘拐された山住譲治は、同じく誘拐された少女エミとともに脱出を決意する。追跡の手をようやく振り切り、ある孤島にたどりついた二人は、島でエミとそっくりの少女とその祖父と称する謎の老人に出会うが……。
ううむ、子供向けだから多少のことには目をつむりたいが、これだけご都合主義の連発でこられるとさすがに辛い、っていうか、これならどんなストーリー展開もありでしょ。一応秘境冒険ものだが、それらしい小道具も海賊とか孤島ぐらいで、凝ったものは一切なし。しかも肝心の悪役があまりにパワー不足で、少年たちの前に立ちはだかるにはちょっと弱々しすぎ。あの大人もので見せるハッタリやケレン味はいずこ? どうした香山滋?
いかに江戸川乱歩の書く少年探偵団シリーズがよくできているか、それを再確認できた作品ではある。
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鮎川哲也『赤い密室』(出版芸術社)
本日の読了本は鮎川哲也の『赤い密室』(出版芸術社)。鮎川哲也が創り出した名探偵といえば鬼貫警部が有名だが、天才肌の星影龍三を推す人も少なくないはず。本書はその星影龍三ものの全中短編を二冊にまとめたうちの一冊である。収録作は以下のとおり。
「呪縛再現」
「赤い密室」
「黄色い悪魔」
「消えた奇術師」
「妖塔記」
「道化師の檻」
わりとバランスの悪い短編集といえるだろう。しかし、これは貶してるわけではない。本格ファンなら手にとっておくだけの価値はあるし、「赤い密室」のインパクトは何度読んでも素晴らしい。少なくとも「赤い密室」だけは、ミステリファンをやっているのならとりあえず読んどくべきである。管理人は本格至上主義ではないが、やはりこれは外せない。
ただ、本書で一番の注目は何といっても「呪縛再現」である。これは『りら荘事件』の原型となった中編だ。だが『りら荘事件』だけではなく、『憎悪の化石』や『朱の絶筆』といった作品のトリックや要素を含み、しかも鬼貫警部と星影龍三が競演するという、実に贅沢な作品なのだ。短編や中編を長篇化するケースは決して少なくないと思うが、改訂前の作品の方が明らかに豪華なのだという滅多にない例である。
両雄並び立たず、なんて言葉もあるが、作者がこの二人やさまざまなトリックをどう扱ったのか、なかなか興味深いではないか。
だが結論から言うと、残念ながらそれらが作品の成功につながったとは言い難かった。トリックなどはなかなかのものだが、文章のタッチが前・後半で大きく変わるなど(もちろん作者の意図ではなく)、小説としてのアラがあちらこちらにうかがえるのは正直、読んでいて辛い。後年、『りら荘事件』として甦らせた理由がよくわかる作品である。それでもアユテツファンなら一度は読んでおくべきだろうけど。
「呪縛再現」
「赤い密室」
「黄色い悪魔」
「消えた奇術師」
「妖塔記」
「道化師の檻」
わりとバランスの悪い短編集といえるだろう。しかし、これは貶してるわけではない。本格ファンなら手にとっておくだけの価値はあるし、「赤い密室」のインパクトは何度読んでも素晴らしい。少なくとも「赤い密室」だけは、ミステリファンをやっているのならとりあえず読んどくべきである。管理人は本格至上主義ではないが、やはりこれは外せない。
ただ、本書で一番の注目は何といっても「呪縛再現」である。これは『りら荘事件』の原型となった中編だ。だが『りら荘事件』だけではなく、『憎悪の化石』や『朱の絶筆』といった作品のトリックや要素を含み、しかも鬼貫警部と星影龍三が競演するという、実に贅沢な作品なのだ。短編や中編を長篇化するケースは決して少なくないと思うが、改訂前の作品の方が明らかに豪華なのだという滅多にない例である。
両雄並び立たず、なんて言葉もあるが、作者がこの二人やさまざまなトリックをどう扱ったのか、なかなか興味深いではないか。
だが結論から言うと、残念ながらそれらが作品の成功につながったとは言い難かった。トリックなどはなかなかのものだが、文章のタッチが前・後半で大きく変わるなど(もちろん作者の意図ではなく)、小説としてのアラがあちらこちらにうかがえるのは正直、読んでいて辛い。後年、『りら荘事件』として甦らせた理由がよくわかる作品である。それでもアユテツファンなら一度は読んでおくべきだろうけど。
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ジョン・ディクスン・カー『死者はよみがえる』(創元推理文庫)
やっとの思いで『死者はよみがえる』を読む。これまた1週間ぐらいかかってしまったが、早く仕事楽にならんものかね。
この間に生島治郎が亡くなるというビッグニュースもある。生島治郎は一般の人にとってはやはり『片翼だけの天使』(だっけ?)が知られているのだろうか? 私にとっては『追いつめる』を書いたという一点のみで忘れられない作家である。というか、他はほとんど読んでない(笑)。
それはともかくとして、『死者はよみがえる』。
ううむ、はっきり言って辛い。久々に相性の悪いカー作品に出会ってしまった。出だしはそれほど悪くなかったのだが。
南アフリカにあるビール会社社長の息子であり、作家のクリストファー・ケント。彼は自分の恵まれた境遇を揶揄する友人に反発し、ある賭をすることになった。一文無しでヨハネスブルグを出発し、10週間後にロンドンのホテルで落ち合うというものだ。
その約束の日の前日、ケントは無事にロンドンに着いていたがあいにく金を使い果たしてしまい、落ち合う予定のホテルで宿泊客を装って食い逃げを図る。ところが運の悪いことに、係りに伝えたでたらめな部屋の番号の前客が、部屋に腕輪を忘れたという伝言が入り、ケントはポーターと部屋へ入るはめになる。そしてそこでケントが見たものは、女性の惨殺死体であった。ケントはホテルから逃走し、フェル博士に助けを求めた。
ここまではなかなか興味深い展開だ。ただ、このあとがよくない。
ケントがあっさりと容疑者から外れるのはまだいいとして、以後延々と関係者への事情聴衆が繰り返される。ここがすこぶる退屈。会話だけ、議論だけで展開してもかまわないが、そこに読者を退屈させないだけの何らかの魅力や工夫があればいいのだが、残念ながら本書にはそれがないのだ。個性的な人物も少ないうえ、フェル博士もいまひとつ遠慮がちで、ハッタリを効かすふうでもない。なんだか推理クイズを読んでいる感が強い。
よく言えば本格のエッセンスに満ちた作品、悪く言えば構成の甘さが目立つ作品、もしくは小説の面白さが欠落した作品といえるだろう。個人的にはカーのワースト5に入れたいぐらいのれなかった。なお、トリックもあれれ、という感じで、本格ファンが読んでも不満が残るとは思うが。
この間に生島治郎が亡くなるというビッグニュースもある。生島治郎は一般の人にとってはやはり『片翼だけの天使』(だっけ?)が知られているのだろうか? 私にとっては『追いつめる』を書いたという一点のみで忘れられない作家である。というか、他はほとんど読んでない(笑)。
それはともかくとして、『死者はよみがえる』。
ううむ、はっきり言って辛い。久々に相性の悪いカー作品に出会ってしまった。出だしはそれほど悪くなかったのだが。
南アフリカにあるビール会社社長の息子であり、作家のクリストファー・ケント。彼は自分の恵まれた境遇を揶揄する友人に反発し、ある賭をすることになった。一文無しでヨハネスブルグを出発し、10週間後にロンドンのホテルで落ち合うというものだ。
その約束の日の前日、ケントは無事にロンドンに着いていたがあいにく金を使い果たしてしまい、落ち合う予定のホテルで宿泊客を装って食い逃げを図る。ところが運の悪いことに、係りに伝えたでたらめな部屋の番号の前客が、部屋に腕輪を忘れたという伝言が入り、ケントはポーターと部屋へ入るはめになる。そしてそこでケントが見たものは、女性の惨殺死体であった。ケントはホテルから逃走し、フェル博士に助けを求めた。
ここまではなかなか興味深い展開だ。ただ、このあとがよくない。
ケントがあっさりと容疑者から外れるのはまだいいとして、以後延々と関係者への事情聴衆が繰り返される。ここがすこぶる退屈。会話だけ、議論だけで展開してもかまわないが、そこに読者を退屈させないだけの何らかの魅力や工夫があればいいのだが、残念ながら本書にはそれがないのだ。個性的な人物も少ないうえ、フェル博士もいまひとつ遠慮がちで、ハッタリを効かすふうでもない。なんだか推理クイズを読んでいる感が強い。
よく言えば本格のエッセンスに満ちた作品、悪く言えば構成の甘さが目立つ作品、もしくは小説の面白さが欠落した作品といえるだろう。個人的にはカーのワースト5に入れたいぐらいのれなかった。なお、トリックもあれれ、という感じで、本格ファンが読んでも不満が残るとは思うが。
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ネルソン・デミル『王者のゲーム(下)』(講談社文庫)
ネルソン・デミル『王者のゲーム(下)』(講談社文庫)を読了。
リビアのテロリスト、アサドを護送するジャンボジェットがアメリカに護送されてくる。だが、その飛行機からは再三の呼びかけにかかわらず何の応答もない。空港側であらゆる状況を想定するなか、飛行機は無事着陸したが、中の乗員乗客はすべて死亡していた……。
アサドはアメリカのリビア空爆に対する復讐者として送り込まれたテロリストである。連邦テロリスト対策チームの面々の裏をかき、合衆国に潜り込んだ彼は、1人、また1人と犠牲者を増やしてゆく。元ニューヨーク市警の刑事にして連邦テロリスト対策チームのメンバー、ジョン・コーリーはテロリストの追跡を開始した!
うう、下巻だけで八日間もかかっちまった。まあ、とにかく分厚い本だがやはりデミルのリーダビリティは高い。もっとヒマだったら一気に読んでいたことでしょう。ただ、面白いことは面白いが、それほどのものか、という気もするのはどうしたことか?
思うに本書はプロットに気を遣いすぎて、ややキャラクター造詣に失敗した嫌いがある。本書は基本的に、主人公の捜査官ジョン・コーリーの一人称と、テロリストであるアサドを描写する三人称の交互で描かれる。これがもうひとつ中途半端。
どちらかというとコーリーのパートは、その性格も相まって軽ハードボイルド的なノリである。これが本書のスケールとどうにもマッチしていない。軽口が多いこともあって緊迫感に欠け、目立つのは相棒の女性捜査官とのロマンスや仲間との軋轢ばかりで、これがいかにも安いハードボイルド風なのだ。世界でもトップレベルのテロリストが送り込まれているうえに、300人という犠牲者が最初に出るのだから、捜査する側にもある程度の重さやキレみたいなものが欲しい。
前作の『プラムアイランド』ではコーリーにももう少し深みがあったと思うのだが……。ここは三人称で、できるだけノンフィクション的に進めた方が緊迫感も重さも増した気がする。
対するテロリストのアサド。こちらも最初は強烈だが、徐々に失速していく。恐ろしいくらいの冷徹さをもって、機械的に殺人を繰り広げるはずが、だんだん人間くささが出はじめるのである。こういうのがまずいんだよなぁ。アサドの生い立ちやテロリストとしての教育に関する描写はけっこう面白く読めるが、終盤でコーリーと電話で話すあたりになると、全然アマチュアっぽくて悲しくなってくる。だいたい電話で刑事と話してちゃダメでしょ。暗殺者が。
ここまで書いててふと思ったが、これ、もしかして『ダイ・ハード』みたいなのがデミルの頭の中にあったのかもしれない。つまりより一般的に受け入れやすそうな作りというか要は映画化狙いというか。そうするとこの軽さは理解できる。確かにエンターテインメントとしては十分な出来だ。
ただ、ただ、言わせてもらえれば、ネルソン・デミルはもうそんなの書く必要ないでしょ。重くても暗くてもいいから、あの『誓約』の感動をもう一度与えてほしい。スチュアート・ウッズは二人もいらんのだ。
リビアのテロリスト、アサドを護送するジャンボジェットがアメリカに護送されてくる。だが、その飛行機からは再三の呼びかけにかかわらず何の応答もない。空港側であらゆる状況を想定するなか、飛行機は無事着陸したが、中の乗員乗客はすべて死亡していた……。
アサドはアメリカのリビア空爆に対する復讐者として送り込まれたテロリストである。連邦テロリスト対策チームの面々の裏をかき、合衆国に潜り込んだ彼は、1人、また1人と犠牲者を増やしてゆく。元ニューヨーク市警の刑事にして連邦テロリスト対策チームのメンバー、ジョン・コーリーはテロリストの追跡を開始した!
うう、下巻だけで八日間もかかっちまった。まあ、とにかく分厚い本だがやはりデミルのリーダビリティは高い。もっとヒマだったら一気に読んでいたことでしょう。ただ、面白いことは面白いが、それほどのものか、という気もするのはどうしたことか?
思うに本書はプロットに気を遣いすぎて、ややキャラクター造詣に失敗した嫌いがある。本書は基本的に、主人公の捜査官ジョン・コーリーの一人称と、テロリストであるアサドを描写する三人称の交互で描かれる。これがもうひとつ中途半端。
どちらかというとコーリーのパートは、その性格も相まって軽ハードボイルド的なノリである。これが本書のスケールとどうにもマッチしていない。軽口が多いこともあって緊迫感に欠け、目立つのは相棒の女性捜査官とのロマンスや仲間との軋轢ばかりで、これがいかにも安いハードボイルド風なのだ。世界でもトップレベルのテロリストが送り込まれているうえに、300人という犠牲者が最初に出るのだから、捜査する側にもある程度の重さやキレみたいなものが欲しい。
前作の『プラムアイランド』ではコーリーにももう少し深みがあったと思うのだが……。ここは三人称で、できるだけノンフィクション的に進めた方が緊迫感も重さも増した気がする。
対するテロリストのアサド。こちらも最初は強烈だが、徐々に失速していく。恐ろしいくらいの冷徹さをもって、機械的に殺人を繰り広げるはずが、だんだん人間くささが出はじめるのである。こういうのがまずいんだよなぁ。アサドの生い立ちやテロリストとしての教育に関する描写はけっこう面白く読めるが、終盤でコーリーと電話で話すあたりになると、全然アマチュアっぽくて悲しくなってくる。だいたい電話で刑事と話してちゃダメでしょ。暗殺者が。
ここまで書いててふと思ったが、これ、もしかして『ダイ・ハード』みたいなのがデミルの頭の中にあったのかもしれない。つまりより一般的に受け入れやすそうな作りというか要は映画化狙いというか。そうするとこの軽さは理解できる。確かにエンターテインメントとしては十分な出来だ。
ただ、ただ、言わせてもらえれば、ネルソン・デミルはもうそんなの書く必要ないでしょ。重くても暗くてもいいから、あの『誓約』の感動をもう一度与えてほしい。スチュアート・ウッズは二人もいらんのだ。
ここ2週間ぐらいは2日に1回という驚異的割合で徹夜しながら仕事をガシガシ進める。もちろん休日なんて最近とった記憶すらない。本も1週間に1冊読むのがせいぜい。という生活をしてきたら、衝動的に本を買いたくなる。日影丈吉やら山田風太郎やら鮎川哲也やらスティーヴン・キングやら最近出た新刊を片っ端から購入。気がついたらレジで3万円あまり支払っている。ハアハア、今日はこれぐらいで勘弁してやる。