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マイクル・コナリー『復活の歩み リンカーン弁護士(下)』(講談社文庫)
マイクル・コナリーの『復活の歩み リンカーン弁護士』下巻読了。
上巻ではレギュラー陣の近況報告や過去の事件のおさらいみたいなところが多くなることもあって、なかなか核心に進まない恨みがあるのだが、下巻ではようやくポイントが明確になり、法廷でのシーンがメインとなって一気に読ませてくれる。
▲マイクル・コナリー『復活の歩み リンカーン弁護士(下)』(講談社文庫)【amazon】
終わってみればいつもどおり、事件の様相を一気にひっくり返す技術は巧みだし、エンターテインメントとしては相変わらず達者なものだ。ただ今回の事件では、ハラーの後出しが多いことと、ラストのモヤモヤが気になり、そこがちょっと不満ではある。ハラーはともかく、少なくとも昔のボッシュならこういう決着は許さなかったような気がする(笑)。
結局、最近のコナリーの作品の面白さは、ハラーのシリーズにしてもボッシュのシリーズにしても、ストーリーに頼るところが多い印象である。ただ、そつなくまとまってはいるのだが、シリーズとしての個性がだいぶ減少しているのではないか。本作などを読むと、余計にその感を強くした。
法廷ミステリならではのロジックの闘争だったり、あるいは警察小説やハードボイルドの精神性だったり、これまでのシリーズの特徴だった部分がますます薄味になって、そこが初期作品と比べて物足りなく感じるのである。
その原因が毎回のようにシリーズキャラクタ-を共演させていることにあるのは間違いないだろう。シリーズキャラクタ-の共演は一作二作なら楽しいけれど、ここまで続くとシリーズ間の垣根がかなり低くなり、それぞれのシリーズの特徴がブレンドされすぎて、薄まってしまう。
ハラーにはハラーにあった物語、ボッシュにはボッシュにあった物語があるわけで、事件に決着をつける道筋もそれぞれ異なるわけだ。そこを蔑ろにしているとまでは言わないが、作者はその妥協点を調整しているわけで、どうしても角の立たない展開や結末に落ち着くのではないか。
もはや半分キャラクター小説みたいになっており、それがよいという人もいるのだろうが、シリーズ本来の魅力は消さないでほしいものだ。
上巻ではレギュラー陣の近況報告や過去の事件のおさらいみたいなところが多くなることもあって、なかなか核心に進まない恨みがあるのだが、下巻ではようやくポイントが明確になり、法廷でのシーンがメインとなって一気に読ませてくれる。
▲マイクル・コナリー『復活の歩み リンカーン弁護士(下)』(講談社文庫)【amazon】
終わってみればいつもどおり、事件の様相を一気にひっくり返す技術は巧みだし、エンターテインメントとしては相変わらず達者なものだ。ただ今回の事件では、ハラーの後出しが多いことと、ラストのモヤモヤが気になり、そこがちょっと不満ではある。ハラーはともかく、少なくとも昔のボッシュならこういう決着は許さなかったような気がする(笑)。
結局、最近のコナリーの作品の面白さは、ハラーのシリーズにしてもボッシュのシリーズにしても、ストーリーに頼るところが多い印象である。ただ、そつなくまとまってはいるのだが、シリーズとしての個性がだいぶ減少しているのではないか。本作などを読むと、余計にその感を強くした。
法廷ミステリならではのロジックの闘争だったり、あるいは警察小説やハードボイルドの精神性だったり、これまでのシリーズの特徴だった部分がますます薄味になって、そこが初期作品と比べて物足りなく感じるのである。
その原因が毎回のようにシリーズキャラクタ-を共演させていることにあるのは間違いないだろう。シリーズキャラクタ-の共演は一作二作なら楽しいけれど、ここまで続くとシリーズ間の垣根がかなり低くなり、それぞれのシリーズの特徴がブレンドされすぎて、薄まってしまう。
ハラーにはハラーにあった物語、ボッシュにはボッシュにあった物語があるわけで、事件に決着をつける道筋もそれぞれ異なるわけだ。そこを蔑ろにしているとまでは言わないが、作者はその妥協点を調整しているわけで、どうしても角の立たない展開や結末に落ち着くのではないか。
もはや半分キャラクター小説みたいになっており、それがよいという人もいるのだろうが、シリーズ本来の魅力は消さないでほしいものだ。
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