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「デカップリング(分離)」:中国経済の足を引っ張るためのワシントンの計画

<記事原文 寺島先生推薦>
"Decoupling": Washington's Plan to Kneecap China's Economy
筆者:マイク・ホイットニー(Mike Whitney)
出典:UNZ     2023年7月26日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>   2023年8月20日


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 アメリカ合衆国は、中国の発展を阻止し、アメリカの国際秩序における主要な地位を維持するために多角的な戦略を採用している。この計画の経済部分は「デカップリング」と呼ばれ、重要な技術(特に先端的な半導体技術)へ中国が手を伸ばすことを選択的に遮断することを指す。この戦略は、中国の急速な技術的発展を制限するために即座に行動を起こす必要があると考えるアメリカの外交政策の指導者層ほぼ全員の支持を集めている。ただし、中国と世界の他の地域との間に「デジタル鉄のカーテン」を実質的に築くこの計画を実行することには、かなりの危険性がある。もし中国がワシントンの攻撃に対して報復するなら、供給導線は深刻に乱れ、別の世界的な景気後退の確率が高まる可能性がある。

 指摘しておきたいのは、「デカップリング」という用語が、その政策でやろうとしていることを曖昧にしている、ということだ。ケンブリッジ辞書によると、この言葉の意味は「2つ以上の活動が分離される状況」とある。残念ながら、ワシントンのデカップリング戦略は、単なる対立を良好に分離する試みではなく、中国の主要な技術的脆弱性を特定し、中国経済に最大限の損害を与えることを意図している。言い換えれば、メディアやシンクタンクの分析で提示されているようなデカップリングは、主にワシントンの中国への経済戦争を隠すためのPR戦略の産物だ。次に引用するのはデカップリングに関する背景を少し紹介した、外交問題評議会のマイケル・スペンスの記事:

過去1年間、中米関係の軌跡は議論の余地がないものになっている:アメリカと中国は、完璧とは言えないにしても、実質的なデカップリングを目指している。この結果に抵抗するどころか、双方ともに、これを大枠として非協力的なやりとりと受け入れているようで、それを政策的枠組みに組み込もうとしている。だが、具体的にデカップリングはどのような内容を含み、その結果はどうなるのだろうか?

アメリカ側は、国家安全保障上の懸念から、中国への技術輸出や投資を制限する長大な(今でも増えている)一覧表を作った。技術が世界中を動き回る他の経路についても同じように制限される。この戦略の影響を高めるために、アメリカは、制裁の脅威も含め、アメリカ以外の国々もその取り組みに確実に参加するようにしている・・・

この「相互不信の方程式」とでも呼べるものについて、米国、中国双方において、デカップリングが明らかに、最善ではなく危険な進路であることを知っている人が多数いる。しかし、米国と中国の両国で、異議を唱える声は政治的に圧力をかけるか、 事実上弾圧し無視するかして、息の根を止められている。

多くの新興および発展途上国は、分断された世界経済・・・は自分たちの利益にはならないことを認識している。しかし、彼らは、現在の状況の中心にいる大国(米国と中国)の誘因を変える力を持っていない。・・・それによって、現在の軌道からの明確な脱出口はまったくない。未来は部分的なデカップリング(分離)と分断だ。 出典:「破壊をもたらす分離」, 外交問題評議会

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中国を取り囲むアメリカの基地

 この筆者の言葉の多くに私は異論を持っているが、彼の運命論には賛成している。実際、現在、この方向に進んでいるだけでなく、今後数ヶ月間でそれはさらに悪化する可能性が高い。共和党と民主党の指導者たちや、舞台裏で動いている外交政策の支配者層も、完全にデカップリングの動きの中にいる。私たちが見ているのは、中国を西側の「法に基づく秩序」に統合しようとする子どもじみた努力が完全に失敗したという広範な認識であり、これが政策の劇的な逆転を引き起こし、着実に猛々しい勢いを得ている。中国は、肥大化するアメリカ帝国の属国にはならないとの態度を明確にしている。中国人は一貫して独立心を持ち続けており、自らの政治的志向に合った改革のみを進めており、党の指導に挑戦する可能性がある変革は拒否している。中国では今もなお、中国共産党が議題を設定し、国家の舵取りを行っており、ワシントンやダボスのエリートたちが出る幕はない。この認識は、米中関係の完全な再評価を促し、避けられないほど中国を孤立させ、包囲し、最終的には封じ込める戦略につながっている。以下はカーネギー基金のマット・シーハンによる背景情報:

10月初旬、アメリカ政府は中国が先進半導体や、それらを製造するための装置へ接近することの制限を大幅に強化した。これらの制限により、中国内の機関への先進半導体の販売には入手困難な許可証が必要とされ、国内は主に人工知能(AI)を大規模に展開するために必要な演算能力が事実上奪われることとなった。また、これらの規則は半導体供給網を支える産業に対しても、さらにチップ製造用の手段に対する制約を拡大し、チップを製造するための手段を構成する部品やアメリカの有能人材への接近を断ち切る影響をもたらす。これらの制約は、今日のアメリカ政府が中国の技術力を弱体化させるための追求の中で、これまでで最も実を伴う一手となる。

新たな制限は、アメリカの技術政策内で長らく続いていた論争の解決も目指している。この論争の眼目は、競合する二つの目標(①今日の中国の技術能力を低下させること、②アメリカの影響力を将来にわたっても維持すること)の着地点を見えるようにすることにあった。最新の規則により、アメリカ政府は、中国の半導体製造能力を根底から低下させることができるし、中国が自国の半導体産業を作り上げるための動機や資源がどれほどあるにせよ、中国は追いつけないという賭けに出ている。

アメリカ政府がその賭けに勝つかどうか(分かるまでに)は、世界の経済力と技術力の将来の均衡を決定する方向に向かって長い道のりを歩むことになるだろう。 出典:「バイデン政権、半導体について前例のない賭けへ」、カーネギー国際平和研究所

 これは、この新しい政策の内容に関する優れた「全体像」だ。シーハンは、アメリカの意図を明確にし、同時に潜在的な危険を説明している。彼はまた、商務省の新しい制限を次の主要な見出しにして説明している:

1. (商務省)は個々の中国企業を対象とするのをやめ、代わりに国全体を対象とするようになった。現在、中国のどの企業にも高度なチップを販売するには許可証が必要であり、議会はそれらのほとんどの要求を却下すると述べている。

2. 商務省は、米国市民、米国に居住する者、または米国企業は、高度なチップを製造している中国企業との取引を行うことを禁止する。

3. この政策は、さらに半導体供給網に深く入り込み、半導体製造装置に使用される部品を制限した。以前は、半導体チップとチップを製造するための手段だけが制限されていた。しかし、今では半導体チップ、チップを製造するための手段、およびその手段に使用される部品も制限されている。当面、これは中国の技術産業にとって壊滅的な影響を与えており、AI企業やスーパーコンピューティングセンターが窮地に追い込まれ、チップを必要とする状況に立たされている」。マット・シーハン(動画4分37秒)



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 ワシントンの「デカップリング」政策は、トランプ政権の荒っぽい関税政策やバイデン政権の中国企業への一方的な制裁をはるかに超えている。これは、重要な技術への接近を遮断することで中国経済を妨害する露骨な試みだ。これは、非常に明らかに、戦争行為であり、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)における政権の同盟者でさえ大っぴらに認めている。World Socialist Web Site のニック・ビームズがNYTの記事を引用した次の文章を確認してほしい:

 先週末、ニューヨーク・タイムズ紙でジャーナリストのアレックス・W・パーマーによって発表された長編の記事は、アメリカが中国に対しておこなっているハイテク戦争の広がりを明らかにした・・・この戦争は、今後さらに激化する見通しであり、アメリカは近々、米国の資金が中国のハイテク分野に投資される額を削減するための投資審査のあり方を発表する予定であり、また10月の発表以降に浮上した抜け道を封じるために輸出規制を更新することが予想されている。

(主要な段落は以下:)

「2022年10月7日の輸出規制により、アメリカ政府は中国の最高水準のチップの製造能力、さらには購入能力までを妨害する意向を発表した。この措置の論理は単純明快だった:高度なチップとそれらが駆動するスーパーコンピュータやAIは、新たな兵器や監視装置の製造を可能にするから、というもの。しかし、その影響と意味において、これらの措置の意図ははるかに徹底したものだった。その目標とするのは中国の安全状態をはるかに上回る広範な対象を標的としている。ワシントンの戦略国際研究センターにあるワドワニ・AIと先端技術センターの所長であるグレゴリー・C・アレンは、『ここで重要なのは、アメリカが中国のAI産業に衝撃を与えたかったということです。半導体関連の事はその手段に過ぎません』と述べている」。・・・

パーマーは10月の規制は、「事実上、中国の先進技術のすべての生態系を抹消し、根絶やしにし、枝分けしようとするものだ」と書いている・・・

今回の米国の措置がどの程度のものかは、エバーコアISOのシニア半導体分析家であるC・J・ミューズの発言でもわかる。「もし5年前にこれらの規則を耳にすれば、それは戦争行為だと私は言っていたでしょう — どう考えても戦争状態です」


ニューヨーク・タイムズ紙が公開する米国の中国とのハイテク戦争の詳細なグラフ、ニック・ビームズ、 World Socialist Web Site

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 何が進行しているかお分かりだろうか? バイデン政権は、人工知能とスーパーコンピュータを開発するために必要な先進的な半導体を、中国が入手することを不可能にしようとしているのだ。このような封鎖は、明らかに現行のWTO規則に違反している。が、繰り返しになるが、米国が無作為に1,300以上の中国企業に課した一方的な制裁も許されているわけではない。要するに、米国は自身の地政学的利益に最も適した行動を追求する際に、規則だからということで二の足を踏むことはない。Foreign Policy誌の記事で筆者ジョン・ベイトマンが要約したとおり:

「産業安全保障局(BIS)は、中国への先進半導体、チップ製造装置、およびスーパーコンピューター部品の輸出に関する新たな制限を発表した。これらの規制は・・・広範で基本的な段階で中国の能力を阻止しようとすることにひたすら焦点が当てられていることを示している・・・中国への主な影響は、ワシントンが指摘している軍事および情報に関する懸念よりもはるかに大きな経済的なものになるだろう・・・この移行は、先進演算だけでなく、他の部門(生物工学、製造業、そして金融)でも、今後より厳格な米国の措置の前触れとなるだろう。その速度や詳細は不確定だが、戦略的目標と政治的な取り組みは今まで以上に明確となっている。どんな犠牲を払おうとも、中国の技術的台頭の速度は落とされるだろう。」(ジョン・ベイトマン、『Foreign Policy 』誌「バイデンは今や中国排除に全力を挙げている」より)

重要なのは、この主に「レーダーに察知されない」形での技術戦争が進行中であることを認識することだ。同時に、米国は台湾に政治的代表団を派遣し続けている(「一つの中国」政策に挑戦するため)、アジア太平洋地域で反中国連合を強化し続け、台湾海峡や南シナ海で北京を挑発し続け、台湾に殺傷力のある兵器を売り続け、地域内での軍事存在感を増強し続け、NATOの「東方拡大」をアジア太平洋地域に拡大し続け、西オーストラリアで史上最大の「タリスマン・サーベル(Talisman Sabre)」と呼ばれる「実弾射撃」軍事演習を行い続けている。

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中国の「一帯一路」構想:主権国家の世界的な経済統合

 それはつまり、「デカップリング」は中国に対して行われている大きな戦争の一部にすぎないのであり、その目的は中国の防衛力を弱体化させ、同盟国から孤立させ、中国の敵国を強化し、ワシントンの絶対命令に従わせることだ。アメリカ合衆国は、急速に力伸ばしている競合相手(中国)に中央アジア大陸での支配拡大を阻止するため、核武装した中国との直接対決を冒す覚悟があるという信号を送っている。おそらく、非常に近い将来、敵対行動が勃発するということだろう。
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