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中国を標的にする米国:ウクライナ紛争前と同じ事がいま台湾で起きている

<記事原文 寺島先生推薦>
Target China
米国は、台湾分離主義勢力に武器と訓練と支援を提供し、米国代理戦争の先鋒にさせようとしている
筆者:マイク・ホイットニー(Mike Whitney)
出典:グローバル・リサーチ   2023年8月4日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>  2023年8月17日





 バイデン政権は、台湾を中華人民共和国との直接の軍事対立に引きずり込む計画を立てている。この計画は、ウクライナで取られた戦略と多くの点で類似している。ウクライナでロシアがウクライナ侵攻に踏み切らされたのは、ロシアの国家安全保障が危機的な状況に置かれたことに対する対応を迫られたからだった。 台湾の場合、中国政府は、米国の代理勢力や米国の同盟諸国が台湾で仕掛ける行為により、中国の領土保全上の問題が積み重なることへの対応を取ると考えられる。これらの挑発行為により、裏で(および報道機関も使って)こっそりと動いている米国からの物資面の支援がより増すことは避けられなくなるだろう。これらの陰謀の最終目的は、台湾の分離主義者らに軍備させ、訓練を施し、兵站の支援を供給することで、中国に対する米国政府の代理戦争の先鋒を担わせることだ。多くの独立系報道機関の記事によると、台湾軍と米軍の間の協力関係は既にできあがりつつある、という。今後戦闘行為が発生し、台湾が戦争に巻き込まれることになれば、両国間の協力関係が深まることは疑いないだろう。


 中国軍と対決しようという計画の輪郭が描かれたのは、2022年の国家安全保障戦略(NSS)においてだった。その中で、中華人民共和国は「米国の地政学上の最重要課題」であり、中国は「国際秩序を再形成する意思を明らかにしている」とされた。 NSSによるこの分析を受けて、「インド・太平洋」地域を支配しようとする戦いに勝つための体制が明確に取られることになった。この地域は、「世界の経済発展の源の大部分を占めており、21世紀の地政学上の震源地である」とされた。 (「米国民の日常にとって、インド・太平洋地域ほど重要な地域は他には存在しない。」)バイデン政権下のNSSは、差し迫る中国との戦争において、軍が果たす決定的な役割を強調した。「我が国は、我が軍の近代化と強化をはかり、複数の強国との戦略的な競争の時代に備えるべきだ」。「米国は我が国の利益を守るために躊躇なく軍事力を行使する」と。

 中国を台湾という沼地に引き摺りこむことが、世界秩序のなかでの米国の覇権を維持する目的のためのより広い封じ込め作戦の最初の一手だ。 同時に、中国がインド太平洋地域で支配的な経済大国になることを防ぐ意味もある。さらにこの計画には、経済的、電脳敵兵、情報的要素も含まれており、これらの要素を軍事面と絡めながら進めていこうという計画だ。全体として、この戦略が表しているのは、米国政府が最大限の努力を払って、時計の針を戻し、単極的世界秩序の全盛期に時代を復元することだ。その当時、米国は世界戦略を巡らし、米国は無敵だった。


台湾での問題



 台湾は国ではない。台湾は中国沖にある島だ。それはサンタ・カタリーナ島がカリフォルニア州の沖にあるのと同じことだ。サンタ・カタリーナ島が米国の一部であることに疑念を挟む人はいないだろう。それと同じで、台湾が中国の一部であることに疑念を挟む人もいないだろう。この問題は随分前に解決済みであり、米国はその合意の結果に同意している。全ての実用的目的から、この問題はとうに解決済みだ。

 国連は台湾の独立を承認していないし、中国と国交を結んでいる181ヶ国もそうだ。実際、1971年の国連 総会決議で採択されたのは、「中華人民共和国のみが、中国全土を代表する唯一の法的に認められた政府だ」というものだった。

 「ひとつの中国」政策が、明確に台湾の立ち位置を規定している。台湾は中国の一部であり、それこそが「ひとつの中国」政策が表す意味だ。中国と関係を持ちたい国々は台湾の立ち位置に同意しなければならない。それが、中国との全ての関係の基礎となる根本的な考え方だ。この問題で論議することはできない。「台湾は中国領土の切り離せない一部だ」ということを認めれば、どこでも事業ができるということだ。それ以外の選択肢はない。

 米国は「ひとつの中国」政策を受け入れていると主張している。先日の北京訪問においても、 バイデン政権の3人の高官(アンソニー・ブリンケン、ジャネット・イェレン、ジョン・ケリー)は公的にひとつの中国政策を揺るぎなく支持する、と表明した。以下はフォーブス誌の記事からの引用だ:

アントニー・ブリンケン国務大臣は、中国の習近平国家主席と月曜日(7月31日)に面会した際、ひとつの中国政策に対する米国の立場を繰り返し、米国は台湾の独立を支持せず、中国経済を封じ込めることは米国の目的ではない、と語った。….ブリンケン国務大臣は、米国は「ひとつの中国」政策を支持し、台湾の独立は支持しないが、台湾海峡での中国による「挑発行為」には懸念している、と述べた。(フォーブス誌の記事「ブリンケン国務大臣は、緊張関係を緩和するための面会後、習近平国家主席に台湾の独立は支持しないと表明」からの引用はここまで)

ジョー・バイデン大統領もひとつの中国政策への支持を、ことあるごとに表明していることから、この立場が米国政府の正式見解であると考えてよいだろう。以下は、この問題に関する中国外務省の短い要約だ:米国は3度の中米共同コミュニケ(公式声明)において、ひとつの中国政策について、以下のように表明している。

1972年発表の上海共同コミュニケでは、米国は明確にこう表明した。「米国は台湾海峡の両側にある中国全土に関してひとつの中国政策しか存在しないこと、台湾は中国の一部であるという中国の立場を認識している。米国政府はその立場に疑問を挟まない」と。

1978年発表の中米国交正常化の共同コミュニケにおいては、米国ははっきりとこう表明した。「アメリカ合衆国政府は、ひとつの中国しか存在せず、台湾は中国の一部であるという中国の立場を認識している」と。

1982年発表の8月17日コミュニケにおいて、米国は間違いなく以下のように表明した。「1979年1月1日の中米国交正常化に関する、アメリカ合衆国政府と中華人民共和国政府が発表した共同コミュニケにおいて、アメリカ合衆国政府は中華人民共和国政府を唯一の法的に認められた中国政府と認識し、さらに米国は、中国はひとつであり、台湾は中国の一部であるという中国の立場を理解して」おり、「米国は、中国の国家主権と領土保全に介入する意図を持っておらず、中国の内政に干渉する意図も、『ふたつの中国』や『ひとつの中国とひとつの台湾』という政策を追求する意思もない」とした。(中国外務省による要約はここまで)


 西側報道機関は読者にこの件に関して「灰色の部分」があり、中国の領域主権は確定していない、と思ってもらいたがっている。しかし、前述の通り、領域主権は確定している。台湾は中国だ。そうなれば十分考えられることは、報道機関が意図的に世論を間違った方向に導き、「独立」運動への支持を広げようとしている、ということだ。 そしてその目的はひとつしかない。米国にとって役立つ人材と反乱軍を軍備させ、訓練を施し、この先の中国との血みどろの戦争で働いてもらうことだ。確かに米国は、中国での代理戦争の下地を準備中であり、台湾はその戦争の前線に据えられようとしてきた。独立運動は、米国政府の真の目論見を覆うまやかしにすぎない。



 だからこそ台湾が中米関係炎上の引火点になっているのだ。だからこそ米国が主導する各国の代表団が台湾入りし、 台湾の独立に暗黙の支持を表明しているのだ。だからこそ米国議会が台湾軍に殺傷兵器を提供するための何百万ドルもの予算案を承認しているのだ。だからこそ米海軍は、台湾海峡経由で戦艦を派遣し、 中国周辺で大規模な軍事演習をおこなっているのだ。だからこそ米国政府は、最も微妙な問題に関して中国政府を挑発し続けているのだ。これら全ての挑発行為は、ただ一つの目論見に集約されている。それが、中国との戦争だ。以下はポリティコ通信社の記事から: バイデン政権は金曜日(7月28日)、3億4500万ドル(約495億円)相当の武器を台湾に供給すると発表した。これは今年国防総省の在庫武器から直接台湾に送られる予定の総額10億ドル相当分の第1陣だ。

 この動きが中国を怒らせることになるのは確実だ。というのも、米国政府は中国政府との関係改善をはかってきたからだ。アントニー・ブリンケン国務長官やジャネット・イエレン財務大臣などの政府高官が先日中国を訪問したが、成果はほとんどなく、米国による台湾支援や中国政府による諜報気球問題などの幅広い問題に関する緊張関係の緩和には至らなかった。

 「我が国には台湾に対する責任があり、台湾の自衛力を高めることを真剣に、本当に真剣に考えています」と国家安全保障委員会のジョン・カービー報道官が、金曜日(7月28日)の発表に先立ち、記者団に述べた。(「米国は、台湾への3億4500万ドルの武器予算案を発表」ポリティコ通信社の記事からの引用はここまで)

 繰り返す:「この動きが中国を怒らせることになるのは確実だ。」

 実際、この動きは中国を怒らせるために仕掛けられたのだ。その点はハッキリしていた。しかし、なぜ?なぜ、米国政府は事実上、世界的に認められた同意事項に関わる問題で中国を挑発するようなことをしているのだろうか?

 思い浮かぶ理由はふたつ:

  ① 中国の過剰反応を誘発し、同盟諸国や周辺の貿易相手諸国から疎外させること。

  ② 中国を近隣諸国に脅威を与えるような暴力的侵略者のように描くことで、中国に対する世論を変えること。

 以下は、「世界社会主義ウェブサイト(WSWS)」の記事だ:

先週の金曜日(7月28日)の米国からの発表によると、米国は台湾に3億4500万ドル相当の武器を送る、という。これは台湾の軍備増強に充てる年間10億ドル予算の第1弾だ、という。この動きは、台湾を完全武装させる第一歩であり、米国政府が中国との挑発的対立をさらに煽るつもりである、といえる...

バイデン政権は同じような方針のもと、ウクライナに何十億ドル相当もの米軍武器を供給し、ロシアとの戦争を深化させようとしている。ロシアをウクライナとの戦争に引き摺り込んだのと全く同じように、米国は意図的に中国の対台湾戦争をおこさせようとしている。

....ワシントン在留の中国の刘鹏宇(りゅう・ほうう)大使館報道官は以下のように述べた:「中国は米軍が台湾と繋がり、武器売買をおこなうことには強く反対します」と。同報道官は米国に対し、「台湾に武器を売るのをやめ、台湾海峡の緊張を高めるような新たな要因を作り出すことをやめ、台湾海峡の平和と安定に危機をもたらすような行為をやめる」よう、警告した

米国は意図的に「ひとつの中国」政策を軽視している。この政策は北京の中国政府を事実上中国全土の正当な政権と認識するものだ。 台湾も含めて、だ。さらに1979年の中米国交正常化の際の基本方針となったものだ。 米国政府が心底から認識しているのは、中国が長年台湾政府による独立宣言に対しては軍事力をもって対応すると警告してきたことだ。 (「対中戦の準備として、米国は台湾に3億4500万ドルの軍事費を支給」世界社会主義ウェブサイトからの引用はここまで)




 中国が何百万ドルもする殺傷兵器をテキサス州での進歩的分離主義勢力に送ったとしたらどうだろう?中国がそのテキサスの分離主義勢力に、反乱を鎮圧しよとする戦争に備えて武器を与え、訓練を施し、可能な限り多数の米国民を殺そうとしたとしたらどうだろう? 中国が代表団を次から次へとオースティン(テキサス州の都市)に派遣し、 反乱軍を鼓舞し、 戦意を高揚させ、物資支援をおこなったとしたらどうだろう?中国が、艦隊や空軍の一部をテキサス州近郊の港や基地に配置させ、互いの衝突が生じ、戦闘行為が勃発した際に参軍できる準備をしたとしたらどうだろう?

 そのような動きに、米国政府ならどう対応するだろうか? ドンと腰を据えて、米国による恐れ知らずの干渉や挑発に対応する中国の指導者層のようにドンと腰を据えて応対するだろうか?

 さらに以下のことを自問していただきたい:こんな手口を前にも目にしたことがなかったろうか?2014年にCIAが糸を引いた武力政変の後にウクライナで展開されている筋書きと同じではないのか? その武力政変後に、米国はウクライナ軍に軍備と訓練を施し、ロシアとの戦争に踏み込ませたのと同じではないのか? 米国政府は意図的にロシアにとって非常に微妙な問題を選んで、 ロシア政府の方から、「外に出させる」よう仕向けたではなかったか?

 もちろん、そのとおりだった。在職22年間、プーチン大統領は戦争を始めたことはない。逆に米国は247年の歴史の中で、戦争をしなかった年はたったの16年しかない。こんな驚くべき暴力的な記録に匹敵する記録をもつ国は存在しない。 ジミー・カーター元大統領の言のとおり、「米国は地球上で最も戦争が好きな国」なのだ。

 中米間の動きをずっと注視してきた人々ならお分かりだろうが、バイデン政権は、「良い子悪い子」のおふざけの連続だ。そのおふざけの中で、米国の外交官らは尽力して中国の指導者層に媚びを売ろうとしてきた (同盟諸国をなだめるためだ)。そのいっぽうで、同時に台湾を完全武装させ、中国政府を煽ってきた。 こんな茶番の目的は、他方でいわゆる「戦略的曖昧さ」 を示しながら、もう片方で凶暴性を高めていくことだ。残念なことに、この戦略が功を奏しているようなのだ。中国の指導者層はますます苛立ちを高め、私たちに以下のように考えさせる状況が生じている。すなわち、最終的には、アメリカさんがやりたがっている戦争がおっぱじまってしまうのじゃないか、と。少なくとも、ウクライナではそんな状況になってしまっている。以下にWSWSの記事をもうひとつ示す。

先週、台湾軍は毎年恒例の複数日にわたる軍事演習を実施した。この演習は漢光演習という名で知られており、中国による台湾侵攻に対する反撃に焦点を当てたものだ。今年の演習では、以前のものより、主要な生活基盤施設や桃園国際空港を含む交通機関の要所への攻撃の対応に重きが置かれた...

報道機関の取材に応じた台湾の陳建仁行政院長は、この演習を正当化するため、以下のように述べた。「台湾でおこなわれた本日の演習の実施理由は、戦時状況の演習も含めてロシアによるウクライナ侵攻により世界的な緊迫関係が高まっていることだけではありません。それよりも中国が我が国に対して常に脅威を与え、挑発していることへの反応という意味合いの方が強いです」と。

本当のところは、中国ではなく米国が北東アジアの現状を揺さぶり、インド・太平洋地域における核保有国間の衝突事故という舞台を作り上げているのだ。ウクライナでのロシアとの戦争を焚きつけているなかで、さらにそんなことをしているのだ。無数のウクライナ兵や市民が犠牲になってきたのと同じように、米国は台湾でも同じようなことを起こす準備をしており、日本や韓国、オーストラリアなどこの地域の同盟諸国この戦争のために集結させている。(世界社会主義ウェブサイトWSWSの記事からの引用はここまで)




 これら全ての動きから推測されることは、中国と軍事衝突を起こそうという米国の計画が、非常に進んだ段階に差し掛かっていて、台湾での火種がいつ引火してもおかしくない、ということだ。

 最近の多くの世論調査の結果によると、米国民(彼らは、ここで述べたような事情を全く聞かされいないままだ)は、中国は悪どい競争相手で国家の安全をますます脅かす存在である、と思わされる状況に置かれてきた。ギャロップ社が実施した最近の調査によると、中国に対する世論の評価は下降している。以下はその報告からの抜粋だ:中国に好意を持つ米国民の割合は15%という史上最低値となった...米国民の10人中8人以上の成年が中国に対して否定的な意見を持っており、うち45%が中国に対して厳しい反感を持ち、39%がかなりの反感を持っている...

 多くの人々が中国に反感を持っているだけではなく、ますます多くの米国民が、中国は米国にとって最大の敵であると考えている人々が高い割合を占めている。この観点はこの世論調査で問われた他の二項目と密接に関わっている。それによると多くの米国民は、中国の軍事力と経済力が、この先10年の米国益にとって「深刻な驚異」になると考えていることがわかった。(「中国に好意を持っている米国民が15%しかないという記録的な調査結果」ギャロップ社の報告からの抜粋はここまで)


 さらにピュー研究所も、同じような暗い調査結果を示している:



 当然のことだが、中国に対する敵意がこのように大きくなっている原因には、報道機関が容赦なく扇動宣伝を繰り出し、米国にとって最も恐るべき経済上の競争相手の悪魔化を目指してきたからだ。お考えいただきたい。一例を挙げれば、米国民が中国の気球騒ぎで狂乱させられた事件だ。この気球は軌道を外れて漂流しただけで、米国の誰一人にも脅威を与えなかった。 報道機関はこんなどうでもいい話を、国際的諜報行為だという馬鹿げた話にすり替え、航路を誤った一般人の飛行船を「中国の諜報気球」とし、その気球の悪しき目的を「機密度の高い米国のいくつかの軍事施設の情報を得ること」だと報じた。こんな取るに足らない出来事が、米国政府にとっての敵国を嘲笑するために利用され、中国と戦争しようという米国民世論を育てようとしている意図が見える。


中国との戦争は避けられないのか?

 米中両側の外交政策関係者らは、繰り返し米国が中央アジアに関わろうとしている点を強調している。 その道の第一人者であるズビグネフ・ブレジンスキーが古典的著書『壮大なチェス盤』でこの件について初めて主張した。以下のとおりだ:「米国がユーラシアをどう『扱うか』は決定的に大事だ。ユーラシアを支配する勢力は、世界で最も発展していて経済生産力のある3大地域のうちふたつを抑えることになる。ユーラシアの地勢を一目見るだけで分かることは、ユーラシアを抑えれば、アフリカも自動的に従属させることになり、地政学上世界の中心に位置するユーラシアに近接する西半球とオセアニア(オーストラリア)も手にすることになる。ユーラシアには世界人口の約75%が住んでおり、世界の大半の物質的富もほとんどそこにある。企業が手にしている富においても、地面の下にある富においても、だ。ユーラシアは世界で知られているエネルギー資源のうちの4分の3を占めている」と。 (ズビグネフ・ブレジンスキー『偉大なチェス盤』、ウィキクォートよりの抜粋はここまで)


 ブレジンスキーの見方は米国政府の専門家階級やその人々を支持する人々の中で広く受け入れられてきた。例えば、ヒラリー・クリントン元国務長官はこう述べている。「ますます明らかになっていることは、21世紀における世界の戦略や経済の重点となる地域はアジア・太平洋地域になる、ということです。それはインド亜大陸から米国の西海岸までを網羅する地域のことです...」

 「アジアの成長と活力を活用することが、米国の経済と戦略に利益をもたらす中心となります...アジアにおける自由市場が、合衆国に投資と貿易と最先端の技術を得る道筋を与える前代未聞の好機になるでしょう...米国の諸企業は、アジアを基盤にした広大でますます拡大する消費者層に参入する必要があります」。(ヒラリー・クリントン国務長官「米国の太平洋世紀」、外交政策誌の記事からの引用はここまで)


 以下はアッシュ・カーター元国防長官がアリゾナ州立大学マケイン協会での演説からの抜粋だ:「アジア・太平洋地域は我が国の未来にとって決定的な地域だ...」「2050年までには、人類の半数がこの地域で暮らすことにな」り、「世界の中流階級の半数以上とそれに伴う消費量がその地域から生み出されることになる...」「既にアジアには、5億2500万の中流階級が存在し、2030年までにはその数が32億になるだろう..オバマ大統領と私が確認したいことは、この先に生まれるであろうこれらの消費者層を奪いあう競争に勝てる事業を起こすことです...次世紀になれば、この地域ほど米国の繁栄にとって大事になる地域はなくなるでしょう」(アッシュ・カーター元国防長官の演説からの抜粋はここまで)


 上記の二つの引用を読めば、米国がこの地域に重きを置く戦略を取っていることがよく分かるだろう。中国が中央アジアに歩を進めるための唯一の入口であるだけではなく米国がこの地域で覇権を確立する際の主要な障害になっているのだ。 だからこそ、中国と取引をする戦略が必要不可欠になるのだ。その戦略とは、中国を孤立させ、制裁をかけ、封じ込め、最終的にはこの米国最大の好敵手を征服させるためのものだ。驚くことではないが、バイデン政権の2022年の国家安全保障戦略にはその計画が、明確な、まったく曖昧でないことばで記載されており、米国が戦争に向かっていることは疑いない。以下は、その48頁からなる文書からの抜粋だ:

冷戦後の時代は完全に終わり、次に世界がどうなるかに向けての強国間の競争が進行中だ...我が国はお互い協力し合う国々とはより強くより幅広い連携を可能な限り深めていく所存だ。いっぽう、暗黒な展望を持ち我が国の国益を妨害しようと努力している勢力とは闘う...我が国は軍を近代化し強化することで、強い国々との戦略的競争時代に備える...

インド・太平洋地域は世界の経済成長源のほとんどを有し、21世紀の地政学上の中心地となろう...世界全体にとっても一般の米国民にとっても、インド・太平洋地域ほど重要な地域はなくなるだろう...我が国はインド・太平洋地域の同盟諸国との鉄のように固い関係を再確認し...米国は我が国の国益を守るためには躊躇なく軍事力を行使する... 米軍は、中華人民共和国が挑発行為を示す中で、抑止力を維持し、強化するよう緊急発動する..

中華人民共和国が米国にとって地政学上最大の脅威だ。中国が唯一の競争相手なのだ。国際秩序を再編する意図を持ち、それを成し遂げるための経済力、外交力、軍事力、技術力を増大させているのだから.…. 米軍は世界がこれまで目にしてきた中で最強の軍だ……米国は我が国の国益を守る必要がある時には、躊躇なくこの軍事力を用いる….

世界中で、米国の指導的役割の必要性が、いまだかってないほど高まっている...我が国は規則に基づく秩序こそが世界平和と繁栄を間違いなく維持するという信念を共有するいかなる国とも友好関係を結ぶ... 我が国にできないことはない。我が国がこれを成し遂げるのは。我が国の未来と世界のためだ。(大統領官邸の国家安全保障戦略からの抜粋はここまで)


 まとめよう:

 ① インド・太平洋地域は、いまや米国の外政上もっとも優先される地域だ。というのも、この先世界で最も成長が見込まれる地域だからだ。

 ② 米国は自軍と米国と利益を共有する同盟諸国を導くだろう

 ③ 「我が国は軍を近代化し強化し...」、「複数の強国との戦略的競争に」勝利する。

 ④ 米国の第一の敵国は中国だ。「中華人民共和国が米国にとって地政学上最大の脅威だ...中国が唯一の競争相手なのだ。国際秩序を再編する意図を持ち、それを成し遂げるための経済力、外交力、軍事力、技術力を増大させているのだから...」

 ⑤ 「冷戦期は終わった」が、米国は「規則に基づく秩序」を維持しようと準備中だ。どれだけ血を流しても、どれだけ金がかかっても。

 一言で言うと、これが米国の外交政策なのだ。米国の指導者層と世界の米国同盟諸国は、ロシアと中国に対するこんにちの勢力闘争に勝とうと全力を尽くしている。これらの国々は自分たちが果たしたい目的をはっきりと見据えており、どんな危険もおかす用意がある。核戦争も含めて、だ。なんとしてでもその目的を達成しようとしている。台湾での動きは、米国政府の視点から見なければならない。そしてこの先、確実に有事が発生するだろう。

*
マイケル・ホイットニー(Michael Whitney)はワシントン州を拠点にした地政学及び社会学の専門家。2002年に独立系市民記者としての経歴を始め、真摯な報道や社会正義や世界平和に関わる仕事をしている。 「世界の一体化についての研究所(CRG)」の客員研究員。
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