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ジェフリー・ディーヴァー『獣たちの庭園』(文春文庫)
ジェフリー・ディーヴァーの『獣たちの庭園』を読む。ナチス政権下のドイツを舞台にした歴史ものノン・シリーズ作品である。
主人公はアメリカで殺し屋を営む男、ポール・シューマン。罠にはめられ、ついに御用となった彼に持ちかけられた交換条件は、なんとドイツの政府高官暗殺という任務だった。ときあたかもオリンピックに沸くドイツ。選手団を取材するジャーナリストとしてドイツに潜入したポールだが、現地の工作員と接触する間もなく、危機に陥ってしまう……。
ううむ、ディーヴァーの歴史もの、しかもナチスものというわけで、それなりに期待したのだがちょっと落ちる。決して面白くないとはいわないが、いつものディーヴァーのレベルではない。
たとえばストーリー展開が少々もたつき気味。ほんの数日の話なのに、物語をけっこう多角的に展開しているため、肝心のサスペンスが弱い。持ち味のどんでん返しやアクションもそれなりに盛り沢山だが、ご都合主義がかなり見られるのもいただけない。
また、キャラクター造形も弱い。主人公として、殺し屋ポールと、ドイツの刑事コールの二人を設け、追う側と追われる側を対比したのは悪くない。だがそれならそれで押し通してほしいところなのに、それ以外にも印象的な配役を設けようとしたのか、どうにも焦点が定まらない。ポールにいたっては冷酷な殺し屋というキャラクターのはずなのに、物語後半では正義感が強くて女性に弱いという、いかにもありがちなヒーローに変化する始末。
まあ、どの点をとっても決定的にまずいわけではないが、人におすすめするほどでもなく、今回は平均点といったところか。ナチス政権下を舞台にした物語なら、フィリップ・カーのグンター三部作の方が断然おすすめである。
主人公はアメリカで殺し屋を営む男、ポール・シューマン。罠にはめられ、ついに御用となった彼に持ちかけられた交換条件は、なんとドイツの政府高官暗殺という任務だった。ときあたかもオリンピックに沸くドイツ。選手団を取材するジャーナリストとしてドイツに潜入したポールだが、現地の工作員と接触する間もなく、危機に陥ってしまう……。
ううむ、ディーヴァーの歴史もの、しかもナチスものというわけで、それなりに期待したのだがちょっと落ちる。決して面白くないとはいわないが、いつものディーヴァーのレベルではない。
たとえばストーリー展開が少々もたつき気味。ほんの数日の話なのに、物語をけっこう多角的に展開しているため、肝心のサスペンスが弱い。持ち味のどんでん返しやアクションもそれなりに盛り沢山だが、ご都合主義がかなり見られるのもいただけない。
また、キャラクター造形も弱い。主人公として、殺し屋ポールと、ドイツの刑事コールの二人を設け、追う側と追われる側を対比したのは悪くない。だがそれならそれで押し通してほしいところなのに、それ以外にも印象的な配役を設けようとしたのか、どうにも焦点が定まらない。ポールにいたっては冷酷な殺し屋というキャラクターのはずなのに、物語後半では正義感が強くて女性に弱いという、いかにもありがちなヒーローに変化する始末。
まあ、どの点をとっても決定的にまずいわけではないが、人におすすめするほどでもなく、今回は平均点といったところか。ナチス政権下を舞台にした物語なら、フィリップ・カーのグンター三部作の方が断然おすすめである。
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