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ジェフリー・ディーヴァー『魔術師』(文藝春秋)
ジェフリー・ディーヴァーの『魔術師』読了。けっこうなボリュームだが、相変わらずの面白さで一気読み。今回は希代の魔術師(イリュージョニスト)が相手である。
最初の事件は音楽学校で発生した。だが犯行直後に現場に踏み込んだ警官たちの前で、犯人は忽然とその姿を消してしまう。片腕のアメリアとともに科学捜査にあたったライムは、犯人がマジックに詳しいことを突き止め、カーラという若手マジシャンに協力を要請した。だが、犯人はマジックを駆使して警察の追求をかわし、さらに凶行を重ねてゆく。そして犯人像が明らかになったとき、事件は意外な様相を見せ始める……。
ライム・シリーズの持ち味は息つく暇もないスピーディーな展開と、どんでん返しに継ぐどんでん返し。あるいは主人公ライムによる徹底的な鑑識捜査による推理、さらには情報小説としての側面。そして強力かつ魅力的な悪役の存在などがあるだろう。ディーヴァーの作品には実にさまざまな魅力が詰まっている。
だが解説でも触れられているとおり、それが当たり前になってしまうと読者はさらなる刺激を望むようになり、マンネリに陥るというリスクを背負う。特にジェットコースターノベルと評されることもある本シリーズだけに、最大の持ち味はそのスピード感と意外性だ。十分に及第点ながら、『エンプティー・チェア』や『石の猿』がもうひとつ物足りなく思えてしまうのは、そういうところに原因があるはず。前作並では満足できないのである。
そういう意味で『魔術師』はここ最近の中ではピカイチである。敵役にイリュージョニストを起用し、そのマジックを駆使して戦うという設定だけで期待できるが、実際にマジックを犯罪に応用していく様は見事のひと言。しかもその応用が単なる機械的なトリックだけではなく、事件全体にかかる心理的なトリックにも及ぶところがすごい。作中では「エフェクト」と「メソッド」などというマジック用語なども使って描写されていたが、まさしくそれが本編のキーワードである。
ただ、これは二作目からずっと思っていることだが、もう無理矢理ライム・シリーズにする必要はないのではなかろうか。ライム・シリーズの根本的な問いかけは第一作で終わっている。完全なエンターテインメント作品である本シリーズに、もはやライムは似つかわしくないと思っているのだが、どんなものだろう?
最初の事件は音楽学校で発生した。だが犯行直後に現場に踏み込んだ警官たちの前で、犯人は忽然とその姿を消してしまう。片腕のアメリアとともに科学捜査にあたったライムは、犯人がマジックに詳しいことを突き止め、カーラという若手マジシャンに協力を要請した。だが、犯人はマジックを駆使して警察の追求をかわし、さらに凶行を重ねてゆく。そして犯人像が明らかになったとき、事件は意外な様相を見せ始める……。
ライム・シリーズの持ち味は息つく暇もないスピーディーな展開と、どんでん返しに継ぐどんでん返し。あるいは主人公ライムによる徹底的な鑑識捜査による推理、さらには情報小説としての側面。そして強力かつ魅力的な悪役の存在などがあるだろう。ディーヴァーの作品には実にさまざまな魅力が詰まっている。
だが解説でも触れられているとおり、それが当たり前になってしまうと読者はさらなる刺激を望むようになり、マンネリに陥るというリスクを背負う。特にジェットコースターノベルと評されることもある本シリーズだけに、最大の持ち味はそのスピード感と意外性だ。十分に及第点ながら、『エンプティー・チェア』や『石の猿』がもうひとつ物足りなく思えてしまうのは、そういうところに原因があるはず。前作並では満足できないのである。
そういう意味で『魔術師』はここ最近の中ではピカイチである。敵役にイリュージョニストを起用し、そのマジックを駆使して戦うという設定だけで期待できるが、実際にマジックを犯罪に応用していく様は見事のひと言。しかもその応用が単なる機械的なトリックだけではなく、事件全体にかかる心理的なトリックにも及ぶところがすごい。作中では「エフェクト」と「メソッド」などというマジック用語なども使って描写されていたが、まさしくそれが本編のキーワードである。
ただ、これは二作目からずっと思っていることだが、もう無理矢理ライム・シリーズにする必要はないのではなかろうか。ライム・シリーズの根本的な問いかけは第一作で終わっている。完全なエンターテインメント作品である本シリーズに、もはやライムは似つかわしくないと思っているのだが、どんなものだろう?
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