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小栗虫太郎『失楽園殺人事件』(扶桑社昭和ミステリ秘宝)
通勤用の鞄を購入。そのついでに新刊書店や古書店で本を買いまくる。古書店では創元や早川のちょい古いところがどっと入っており、おまけに保篠龍緒の著作までを激安で発見。久々にガッツポーズ。
読了本は小栗虫太郎『失楽園殺人事件』。
「後光殺人事件」
「聖アレキセイ寺院の惨劇」
「夢殿殺人事件」
「失楽園殺人事件」
「オフェリヤ殺し」
「潜航艇「鷹の城」」
「人魚謎お岩殺し」
本書は小栗虫太郎の法水麟太郎ものを発表順に収めた短編集。とかくシリーズものはパターンが固定してしまい、先が読めてしまいがちになるものだが、さすがに小栗虫太郎ともなると予想もつかないオチや展開が待っており一筋縄ではいかない。
そもそも小栗作品を難しくしている一因に衒学趣味があるのだが、本書に収められた多くの作品もまた哲学や宗教、芸術などが散りばめられ、それは探偵小説の味付けといったレベルどころではなく、テーマとして謎そのものにも深く関わっている。小栗は自らの理論・思想を具現化するかのような状況を創り出し、そのなかで不条理な殺人劇を奏でてゆくのだ。これぞまさに小栗ワールド。
難解とはいうものの、読み手にイメージを喚起させる力は相当なもので、法水のセリフに煙に巻かれながらも必死に状況把握に努めれば、実にオリジナリティに満ちた作品世界にひたれることが可能となる。ただし、正確にその小栗ワールドを理解できているかと聞かれれば、個人的には正直自信がないと答えるほかないのだが。
印象としては、その幻惑度は初期の作品ほど強烈である。「後光殺人事件」「聖アレクセイ寺院の惨劇」「夢殿殺人事件」「失楽園殺人事件」と続く作品群のトリックとロジックの凄まじさ&シュールさ。
特に初めて読んだ「失楽園殺人事件」は噂どおりの怪作で、法水の推理もいつも以上に強烈。また、作風が変わりだした頃の作品「オフェリア殺し」は、ハムレットを演ずる法水という趣向(しかもプロレベル)。あまりの設定に呆気にとられているうちに法水の超推理炸裂というわけで、これも捨てがたい魅力がある。結局なんだかんだ言いながらも、やはり一度は体験しておきたい作品ばかりといえるだろう。好きになれとはいわんが(笑)。
なお、本書には、なかなかお目にかかれない小栗虫太郎のエッセイも多数収録されている。この小説にしてこのエッセイ、という内容ではあるが、小栗ワールドを理解する助けとしては貴重であろう。
読了本は小栗虫太郎『失楽園殺人事件』。
「後光殺人事件」
「聖アレキセイ寺院の惨劇」
「夢殿殺人事件」
「失楽園殺人事件」
「オフェリヤ殺し」
「潜航艇「鷹の城」」
「人魚謎お岩殺し」
本書は小栗虫太郎の法水麟太郎ものを発表順に収めた短編集。とかくシリーズものはパターンが固定してしまい、先が読めてしまいがちになるものだが、さすがに小栗虫太郎ともなると予想もつかないオチや展開が待っており一筋縄ではいかない。
そもそも小栗作品を難しくしている一因に衒学趣味があるのだが、本書に収められた多くの作品もまた哲学や宗教、芸術などが散りばめられ、それは探偵小説の味付けといったレベルどころではなく、テーマとして謎そのものにも深く関わっている。小栗は自らの理論・思想を具現化するかのような状況を創り出し、そのなかで不条理な殺人劇を奏でてゆくのだ。これぞまさに小栗ワールド。
難解とはいうものの、読み手にイメージを喚起させる力は相当なもので、法水のセリフに煙に巻かれながらも必死に状況把握に努めれば、実にオリジナリティに満ちた作品世界にひたれることが可能となる。ただし、正確にその小栗ワールドを理解できているかと聞かれれば、個人的には正直自信がないと答えるほかないのだが。
印象としては、その幻惑度は初期の作品ほど強烈である。「後光殺人事件」「聖アレクセイ寺院の惨劇」「夢殿殺人事件」「失楽園殺人事件」と続く作品群のトリックとロジックの凄まじさ&シュールさ。
特に初めて読んだ「失楽園殺人事件」は噂どおりの怪作で、法水の推理もいつも以上に強烈。また、作風が変わりだした頃の作品「オフェリア殺し」は、ハムレットを演ずる法水という趣向(しかもプロレベル)。あまりの設定に呆気にとられているうちに法水の超推理炸裂というわけで、これも捨てがたい魅力がある。結局なんだかんだ言いながらも、やはり一度は体験しておきたい作品ばかりといえるだろう。好きになれとはいわんが(笑)。
なお、本書には、なかなかお目にかかれない小栗虫太郎のエッセイも多数収録されている。この小説にしてこのエッセイ、という内容ではあるが、小栗ワールドを理解する助けとしては貴重であろう。
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