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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


佐藤信介『図書館戦争』

 仕事で疲れているせいか風邪が長引いているせいか、読書があまり進まない。時間はとれないこともないのだが、通勤電車や寝る前のベッドでもページがなかなか進まず、すぐに落ちてしまう。本日も休みだったが、家事をこなした後にグッタリしてほぼ1日中を寝て過ごす始末である。

 だが睡眠だけは久々に取れたせいか、夕方頃に少し体が楽になり、録画してあった実写版『図書館戦争』を観ることにする。監督は佐藤信介、公開は2013年。
 もちろん有川浩の原作は知っていたし、本に対する規制というテーマ自体は面白そうだったが、いかんせんラノベ臭が強そうで敬遠していた作品である。だが、実写版であれば、それほどクセもなかろうと思った次第。

 何を今更ではあるが一応、ストーリーなど。
 昭和のあとが平成ではなく、正化という時代になったパラレルワールドの日本が舞台。公序良俗を乱す表現を規制するため、政府はメディア良化法を制定し、メディア良化委員会が不適切な創作物を取り締まっていた。だがときには武力も駆使するなど、その行為はエスカレートする一方。ついに図書館は弾圧に抵抗するため、「図書館の自由に関する宣言」を元に「図書館の自由法」を制定。本の自由を守るべく、図書隊による防衛制度を確立する。
 そして正化31年、笠原郁は関東図書隊の図書特殊部隊に抜擢された。かつて高校生の頃、良化隊員に本を奪われそうになったとき、図書隊員に助けてもらったのが図書隊に入った動機だった。彼女は教官である堂上篤の部隊に配属され、訓練と図書館業務に励んでいたが……。

 ええと、ほとんど予想どおりというか(笑)。
 本の検閲といえばすぐに思い浮かぶのがブラッドベリの『華氏451』。まあ、さすがにそこまでは期待していなかったけれど、本に関する部分というのは想像以上に薄くて、もっぱら主人公たちの恋愛がテーマ。やはりラノベテイストというかラブコメがメイン、あとはアクションがそこそこ頑張っている程度である。要は図書館でなくても全然かまわない映画なのだ。

 まあキャラで見せる映画でもいいのだけれど、せっかくこんなに特殊な世界観にしているのだから、まずは設定をストーリーにしっかり馴染ませてほしいものである。
 図書館とメディア良化委員界だけが武装して、表現の自由のために死者まで出すというレベルなのに、それ以外の部分はなんら今と変わらない普通の日本というのがあまりに不思議。要するに公務員同士が局地的かつ合法的に戦闘しているということなのだが、この不思議な状況が映画ではいっさい理屈として説明されていないのが問題。少なくとも国全体がファシズムとか戦争状態に晒されているぐらいの背景がないとバカバカしくてどうしようもないだろう。

 これらの弱点を果たして原作はどう処理しているのか気になるところだが、少なくとも映画版はあかん。メディア良化委員会に真っ先に処分される内容である。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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