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EU、ロシア、中国は、イラン石油制裁を避ける計画する。新しい銀行システムが米ドル貿易を回避する

The EU, Russia, China Plan to Avert Iran Oil Sanctions: New Banking Architecture, Bypass US Dollar Trade

F.ウィリアム・エングダール
グローバル・リサーチ 2018年10月24日
(翻訳:新見明 2018年11月6日)
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/eu-russia-china-plan-avert-iran-oil-sanctions/5657865

フェデリカ・モゲリーニは、イタリアの政治家。現欧州委員会副委員長兼欧州連合外務・安全保障政策上級代表。

トランプ政権の一方的な解体政治が、意図したものとは反対の結果をもたらしているのも当然だ。ワシントンがイラン核合意を破棄し、11月4日時点でイランと石油取引をする国々に厳しい制裁を加える決定は、EU、ロシア、中国、イラン、その他を協力させる新たな道を作っている。合法的に米ドル石油取引を避けて、アメリカの制裁を避けるために特別目的事業体(SPV)を創設すると、ブリュッセル官僚が近ごろ宣言したことは、世界経済でドル支配体制の終焉の始まりを意味しているかもしれない。

10月17日テヘランで行われたドイツ・イラン2国間協議の報告によると、イランに石油輸出させ続けるいわゆる特別目的事業体の仕組みは、その翌日に実行され始めるということだ。9月末にEU外交政策主任のフェデリカ・モゲリーニは、そのような独立した貿易ルートを作る計画を正式に認め、次のように述べた。

「どの主権国家も組織も、他国の誰かが貿易を許可するなどということを受け入れられない。」

特別目的事業体(SPV)計画は、冷戦時代アメリカの経済制裁を回避するために用いられたソ連のバーター(物々交換)システムをモデルとしていると言われている。つまりイラン石油は、お金を使わないで他の商品と交換するという方法でなされるだろう。この特別目的事業体(SPV)合意には、EU、イラン、中国、ロシアが加わると言われている。

EUから出た様々な報告によれば、新しい特別目的事業体(SPV)計画は、アメリカ財務省制裁を避けることができる複雑なバーター(物々交換)システムを含んでいる。例えば、イランは原油をフランス企業に出荷し、SPVを通して銀行のようにクレジットを集めることができる。それからそのクレジットは、逆方向に出荷された製品のイタリア製造業者に、イタリアの人手や通常の銀行システムを通した資金を使わずに、支払うこともできます。多国間のヨーロッパ諸国に支援された金融媒体が、イランとの取引に興味がある企業や、イランの取引相手との取引を扱うために設立されるだろう。どのような取引もアメリカにはわからない。そしてドルよりもユーロやイギリスポンドが用いられるだろう。

それは、ワシントンがイランへの全面的な経済戦争と呼んだものに対する並々ならぬ返答だ。その経済戦争とは、もし11月4日以降イランとの取引を継続するなら、ヨーロッパ中央銀行やブリュッセル基盤のSWIFT銀行間支払いネットワークに制裁を課すと脅しているものだ。1945年以降の西欧とワシントン間の関係では、そのような攻撃的な手段は見られなかった。アメリカの経済制裁があって、EU政策グループは大きな見直しを迫られている。

新しい銀行組織

その謎めいた発案の素地は、6月に「ヨーロッパ、イラン、その経済主権:アメリカの制裁に応える新たな銀行組織」と題するレポートで提出されていた。そのレポートの著者は、イラン人エコノミストのエスファンダール・バトマンケリジ とアクセル・ヘルマンというロンドン基盤のシンク・タンクELN(ヨーロッパ指導者ネットワーク)の政策フェローである。

その報告は、新たな組織は二つの重要な要素を持つべきだと提案している。まず、特別目的事業体(SPV)と結びついたイランやEUの商業銀行間の媒介として指定されている「ゲートウェイ・バンク」*に基づくということだ。二つ目の要素として、外国資産管理EU事務所(EU-OFAC)によって監督されているということだ。それは、同じアメリカ財務省をモデルとしているが、EU・イラン貿易を阻止せず、合法的に便宜を与えるのに使える。他の機能の中で提案されたEU-OFACは、そのような貿易をする企業にしかるべき努力をする証明メカニズムを作り出すことを試みるだろう。そして「EUのイラン貿易や投資に取り組む企業の法的保護を強めるだろう。」 
*[訳注]ゲートウェイ・バンク
      ゲートウェイ【gateway】とは2つ以上のネットワークやデータベ
      ースをつなぐコンピューターのこと。ゲートウェイ・バンクとはそ
     れらを用いたオンライン銀行のことか。

SPV(特別目的事業体)は、この指定されたゲートウェイ・バンクを使う計画に基づいている。つまりゲートウェイ・バンクは、アメリカでのビジネスをしておらず、イランとのビジネスに焦点を当てているので、ワシントンの「二次制裁」によって影響されないEUの銀行のことである。それらには、選定された国有ドイツ・ランデスバンクスや一定のスイス民間銀行を含む。例えば、イランとの金融取引を行う事のみに設立されたヨーロッパ・イラン・ハンデスバンク(EIH)のような銀行である。さらにEU官僚と結びついた一定のイランの銀行が加わる。

READ MORE:How the EU Is Helping Iran Skirt U.S. Sanctions. Sets Up Countervailing Financial Entity
EUは、どのようにイランがアメリカの制裁を回避するのを助けているか。対抗する金融組織の設立


最終結果がどうなろうとも、イランに対するトランプ政権の好戦的な行動は、主要国家を究極的に協力させている。それは、負債にふくれあがったアメリカ政府が、事実上の世界の暴君として他国を犠牲にして融資させてきたドル支配権の崩壊を究極的に意味する。

EU、ロシア、中国・・・

最近ニューヨークの国連総会中に、フェデリカ・モゲリーニは、SPV(特別目的事業体)は石油を含むイランの輸出に関連した支払いを容易にするように計画されたと述べた。もちろん関連会社がEU法の下で正当なビジネスを実行するかぎりだが。中国とロシアもSPVに含まれている。トルコ、インド、その他の国々もこれから加わる可能性がある。

予想されたようにワシントンは直ちに反応した。国連でアメリカ国務大臣で元CIA長官のマイク・ポンペオは、イランの反対会合に対して、EUの計画に邪魔され、実に落胆させられたと述べた。とりわけ彼は次のように述べた。

「これは地域や世界の平和と安全にとって最も反生産的な手段の一つである」と。

はたしてイランに対するワシントンの経済戦争計画は、地域や世界の平和や安全を促進するために計画されたのだろうか?

アメリカ抜きのSWIFT(国際銀行間通信協会)

アメリカ財務省金融戦争の最も残忍な武器の一つは、ブリュッセル基盤のSWIFT民間銀行をイランが使用できないようにする力である。それは2012年にワシントンがEUにSWIFTに従うように圧力をかけて、破壊的な結果をもたらした。それは世界中に警告を与えた重大な先例である。
  [訳注]核合意成立前の2012年、アメリカはイランへの締め付けを
     一層徹底するためにSWIFTに対して「イランを追放しろ」と
     圧力をかけています。 ... まずEUもアメリカに同調するこ
       とが必要だと主張しています。
      https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1602G_W2A310C1MM0000/

米ドルが国際貿易と金融取引の圧倒的な支配通貨であるという事実は、世界の残りの銀行や企業にたいしてワシントンに巨大な権力を与えている。それは金融上の中性子爆弾に匹敵するものである。それはまだ決まってはいないが、まさに変化しようとしているかもしれない。

2015年に中国は、CIPS(クロスボーダー・インターバンク決済システム、または中国国際決済システム)を公表した。CIPSは元々SWIFTに変わる将来中国基盤の代替物とみなされていた。それはクロスボーダーRBM決済や貿易における参加者に、手形交換や支払いを提供するものになる。残念ながら中国の株式市場危機が、北京に計画を縮小させた。インフラの骨格がそこにあるにもかかわらず。

他の地域では、2017年後半以降ロシアと中国はドルを回避する二国間の支払いシステムの可能性を議論した。中国のユニオンペイ・システムや、カルタ・ミールとして知られるロシアの国内決済システムは直接結びつけられるだろう。

ごく最近主要EU政策立案サークルは、1944年以降には前例がないそのような考えに共鳴している。8月、イランとの石油や他の貿易を阻止する一方的なアメリカの行動に言及して、次のように述べた。

ヨーロッパは、アメリカが我々の頭越しに、我々を犠牲にして活動することを許すべきではない。そのため我々が、アメリカから独立した決済チャンネルを打ち立てて、ヨーロッパの自治を強めることが肝心である。それはヨーロッパ金融ファンドや独立したSWIFTシステムをつくることだ。

ドル帝国のひび割れ

EUがワシントンに、イランとの貿易問題でどれほど挑戦するかはまだはっきりしていない。考えられることはワシントンがNSAや他の手段を用いて、EU・イラン・ロシア・中国SPV(特別目的事業体)貿易を暴露することができることである。

ドイツ外相の最近の声明に加えて、フランスは、EU経済を二次制裁のような不当な治外法権的制裁から絶縁する手段を作り出すため、イランSPV(特別目的事業体)拡大を議論している。二次制裁は、EU企業にドルを使わせず、アメリカでビジネスが出来ないようにすることである。フランス外務省のスポークスマン、アグネス・フォン・デア・ムフルは、イランとの貿易を企業が継続できるようにすることに加えて、SPVは「このケースに限らずEUのための経済的自治の道具を作り出すだろう」と述べた。それはヨーロッパ企業を将来、不当な治外法権的制裁の影響から守る長期的な計画である。

もしこれがEUの新生SPVの場合だったら、それはドル帝国に大きな裂け目を作り出すことになる。イラン核合意交渉に関わったことのある元オバマ政権国務省官僚ジャレット・ブランは、SPVやその実施に言及して次のように述べた。

「決済メカニズムの動きが、アメリカ制裁力を長期的に劣化させる扉を開けることになる。」

現在EUは、ロシアに対する制裁のように、アメリカの一方的経済戦争や治外法権的制裁に対して感情をあらわにした言辞や不平を大声で言い立てた。しかし今日まで本物の代替物を作り出す有力な決意は不透明である。それは中国やロシアに関しても同様である。信じられないほどひどいイランに対するアメリカの制裁は、最終的に1945年ブレトンウッズ以来保たれてきた世界経済のドル支配の終焉の始まりを意味するのだろうか。

私自身の感覚では、どのような形であれSPVが、あるブロックチェーンや分散型台帳技術*の著しい技術的利点を利用しない限り(それはアメリカ基盤のXRPやリップルに似ており、日々の国際決済を安全に、しかも瞬時に世界的に行う事が出来る)、たいしたことはできない。ヨーロッパのITプログラマーがそのようなものを開発する専門技術がないわけではない。もちろんロシアもそうである。とうとう主要なブロックチェーン企業の一つが、ビタリク・ブテリンという名のロシア生まれのカナダ人によって作られた。ロシア議会はデジタル通貨に関する新しい法律を作っているところだ。ロシア銀行が未だ頑強に反対しているにもかかわらず。中国人民銀行は、国家暗号通貨チャイナコインを急速に開発し、試験している。ブロックチェーン技術はよく誤解されている。それが新たな「南海泡沫事件」*とはほど遠いと見るべきだが、ロシア中央銀行のような政府サークルでさえ誤解している。国境を越えて価値を移動する国家管理の決済システムの可能性が、全面的に暗号化され、安全であり、国家間のさらなる文明化した秩序ができるまでの、一方的な制裁や金融戦争に対抗する短期的な妥当な答えである。
[訳注]南海泡沫事件(英語: South Sea Bubble)は、1720年に
      グレートブリテン王国(イギリス)で起こった投機ブーム
       による株価の急騰と暴落、およびそれに続く混乱を指
       すが、主に損害を蒙ったのはフランスであった。ロバート
       ・ウォルポールがこの混乱を収拾、政治家として名をあ
       げる契機となった。バブル経済の語源になった事件で
       ある。 (ウィキペディアより)
[訳注]ブロックチェーンと分散型台帳技術
     Distributed Ledger Technology(DLT)は、Blockchain技
      術を含む分散台帳を実現するための技術の総称。
       Distributed Ledger(分散台帳,共有台帳とも呼ばれます)
      は、中央管理者も集中型データストレージも存在しない分
      散型台帳のこと。分散手帳を構成するにはP2Pネットワー
      クと、ノード間の複製が確実に行われるコンセンサスアル
      ゴリズム*1が必要となる。このような台帳は公開また
      は非公開のブロックチェーンシステムで実装することがで
      きる。しかし、すべての分散台帳がブロックチェーンという
      わけではない。ブロックチェーンは、分散台帳の要件をみ
      たす技術のうちの一タイプにすぎない。
       DLTは国際決算において、2016年ごろから試験的に導入
      してみる銀行が増えてきている
(Hatena Blogより)

ウィリアム・エングダールは戦略リスク・コンサルタントであり、講演者である。彼はプリンストン大学で政治学の学位を得て、石油や地政学のベストセラー本の著者でもある。オンライン誌New Eastern Outlookにもっぱら寄稿し、この記事もそこで書かれたものである。彼はグローバル・リサーチの常連寄稿者でもある。
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