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アメリカが軍事力を増強するとき、
イランは地域外交で指導性を発揮する

As US ramps up military force, Iran shows leadership with regional diplomacy

フィニアン・カニンガム

フィニアン・カニンガムは、受賞ジャーナリストで、国際関係について専門に書いてきた。

RT Home/Op-ed/ 2019年5月28日
(翻訳:新見明 2019年7月18日)
<記事原文>
https://www.rt.com/op-ed/460447-iran-diplomacy-us-tensions/


米航空母艦エブラハム・リンカーンの飛行甲板© U.S. Navy/Handout via REUTERS
ギャレット・ラバージ:イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフは、イラク外相モハメド・アリ・アルハキムと握手する© REUTERS/Khalid Al-Mousily

現在のペルシャ湾での米・イランの膠着状態を書くとき、未来の学者はこう書くかもしれない。近隣諸国への責任ある外交によって、全面戦争から救ったのは、テヘランだったと。

今週いつもの無価値なアメリカの動揺を見た。つまり、米軍は中東にさらなる軍事力を配備して、すでに7万人に達したのだ。

トランプ大統領は、さらに戦闘機や戦艦やミサイルの大隊を派遣した。かれはそれを、イランの脅威に対する「防衛」のためだという。彼はまたサウジアラビアに「緊急事態」と称して、70億ドルの武器売買のサインを済ませた。テヘランは最近の米軍増強を「高度に危険な事態だ」と非難した。

同時にそれと対照的に、イランの外交官は地域を回り、あらゆる国に相互安全保障を継続することを呼びかけた。イラン外相モハンマド・ジャバード・ザリーフはイラク訪問中、全ペルシャ湾岸諸国に反侵略条約を結ぶように促した。それより以前に、ザリーフはパキスタンにメッセージを送った。一方、イラン副外相アバース・アラーグチーは今週クエートを訪問し、同様の協約を申し出た。


(更に読む)Also on rt.com Washington sanctions threaten Middle East security – Iranian Deputy FM

「ワシントンの制裁は、中東の安全を脅かす----- イラン副外相」


イランからの外交交渉の開始は、分岐点となり得る。かつて、イランと2国間関係を持った国々は、スンニ派、シーア派のゆがめられた宗派対立を脇に置き、地域の平和構築に協力できるのか。

もしそれらが危機に対応できるなら、その連帯は、中東におけるワシントンの支配に打撃を与えるだろう。底ではアメリカがイランを近隣諸国と切り離そうと、並々ならぬ根拠のないイランやシーア派代理勢力が「侵略」したという主張を根拠なく繰り返している。つまり、本質的には分割し統治施与の戦術なのだ。

新しい地域協力の兆候は週末のザリーフのイラク訪問の間に見られた。イラク首相アデル・アブドル・マハディはきっぱりと言った。イラクは米軍の威嚇を前にしても、イランと共にある。先週バグダッドは警告した。米軍が、イラン攻撃で我が領土を使うことを許さないと。

イラクの指導者はこうも強調した。ワシントンのイラン制裁はイラク経済にも損害を与えた。さらに、二つの近隣諸国の経済的発展は、欠くことのできないものであり、バグダットをテヘランから引き離そうとする米国の圧力によっては止めることはできないと。

イラクはシーア派イスラム教を信仰していることで、イランと密接な関係がある。しかし文化的・政治的結びつきは宗教より更に大きいものである。2014年にもどって、イランはイラクを助け、アルカイダ・テログループからの国家的安全保障の脅威を和らげた。これらの民兵は、イラクの比較的回復された安全保障状態にとって欠くべからざるものとなった。他の国々も、イランがどのようにイラクを混乱から救ったかに気付いている。その混乱とは、2003年からアメリカの侵略と10年にわたる国の支配がもたらした混乱である。

Pakistan offers to be mediator between US and Iran as threat of large-scale conflict flares up
(さらに読む)
「大規模な紛争の脅威が高まるとき、パキスタンはアメリカとイランの仲介者を申し出る」


イランは、近隣諸国と千年にわたる歴史的絆がある。スンニ・シーアの宗派対立は7世紀イスラムの初期に戻る。しかし分離が血なまぐさい暴力を伴った、有害な宗派対立になったのは比較的最近になってからである。多くのイスラム教徒にとって、宗派対立は嘆かわしく、非難されるべきことである。形式的にスンニ派とシーア派があるにもかかわらず、全てのイスラム教徒は兄弟、姉妹である。中東オブザーバー紙はこう指摘する。有害な宗派対立は、1979年のイラン革命に続いてエスカレートした。米軍がワシントンの傀儡独裁者シャーとともに、イランを追放されたときだ。イラン革命を逆転させる方法として、ワシントンとサウジアラビアのスンニ強行派政権が、シーア派イスラム教徒への緊張と反感を扇動したのだ。サウジ支配者が庇護するイスラム教ワッハーブ派は、他のスンニ派と異なり、シーア派を殺すべき邪宗として中傷している。それが部分的には、なぜアメリカがイランに対するプロパガンダ戦争において、サウジ独裁者を有効な道具として見ているかという理由である。

しかし、イランを「テロ支援国家」として悪魔化するアメリカ主導の絶えざるプロパガンダにもかかわらず、地域関係は修復が聞かないほど毒されてはいない。たとえば、イランはクエートやオマーンやカタールとかなり良好な関係を維持してきた。イランの商業や家族的なつながりはペルシャ湾社会を長く調和させてきた。ところがサウジアラビアは著しい例外として、原理主義支配者や彼らのワッハーブ派の信仰は、イランをネメシス(天敵)と見ている。

カタールに対するサウジ主導の湾岸諸国による封鎖は、2017年に始まり、有効性がなく衰えているにもかかわらず、継続しているが、それはサウジアラビア独裁君主による「ドーハはイランに近すぎる」という主張のためである。トランプ政権は最初、イランに敵対する反射的神経でカタールに向けたサウジ主導の敵対行為を全面支援した。しかし、ホワイトハウスは、それ以来、静かに湾岸諸国の関係改善を支持してきた。それはサウジ主導のカタール封鎖の経済的影響が、多くの分裂を引き起こし、逆効果であることがわかってきたからである。

それが、どのようにイランに対するアメリカとサウジの暴走が、地域経済や地域関係を阻害し、地域の実際の利益になっていないという典型的な例である。

(さらに読む)FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf FM Zarif arrives in India as US-Iran tensions flare up in Gulf
「アメリカイランの緊張が湾岸で高まるとき、ザリーフ外相はインドに到着する」


古代の歴史的知恵のある中東地域は、何世紀にもわたる共通のイスラム遺産があるのだから、わからなければいけない。企まれたスンニ派・シーア派分裂にもとづくこの何十年もの宗派紛争が乗り越えられなければならないことを。それは、利己的、地政学的理由で焚きつけられているのだ。その地域の国々は、もうわからなくてはいけない。不安定化のペテン師は千年の穏やかな影響を及ぼしてきたイランではなく、ワシントンであることを。

ワシントンが中東に与えてきた荒廃とトラウマは、そこでは誰でもわかることだ。ワシントンの不法な戦争や侵略から宗派対立を燃え上がらせ、政権転覆の手先としてテロリスト宗派を支援支援してきたのだ。ワシントンが、パレスチナ人の権利を卑劣にも抑圧していることは、何十年もの軍事支援と欺瞞的な政治的拝跪で不法占拠をするイスラエルを支援してきたことから言うまでもない。

シリアは、他宗教、多文化国家であるが、アメリカとその共謀する宗派によってほとんど破壊されてきた。切迫した運命からシリアを救うために介入したのは、ロシアと共にイランであった。イランは同様の任務をイラクで達成した。

だから今、イランの、スンニ派、シーア派にこだわらず、全ての国による地域協力と連帯の呼びかけが、アメリカとの現在の危険な膠着状態から抜け出すきっかけとなるかもしれない。もし、かなりの国々が、今週出現したイラク・イラン反戦基軸に加わるなら、その時アメリカの紛争を引き起こす野望は決定的に阻止されるかもしれない。

イラクとイランは1980年代に戦争をしたが、それは主に、イラン革命を打ち破ろうとするアメリカの陰謀によって引き起こされた。しかし今、二つの国は中東における新たな連帯の可能性を示している。

さらに宗派的提携によるのではなく、近隣の共通利害による新たな地域連帯が、長く中東を傷つけてきた有害なアメリカの介入から離脱できる可能性を秘めている。
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